過去のページ

■ 議会での質問  日本共産党東京都議団

予算特別委員会 代表総括質疑 二〇〇二年三月十三日

かち佳代子(大田区選出)  2002年3月13日

海老取川水質、川床の調査と汚泥のしゅんせつを
母子保健院廃止、荏原病院の公社移管は、住民、地元自治体や関係機関もいれ再検討を

漁業経営者にとって死活問題のへどろ

〇かち委員 最初に、東京の空の玄関、羽田空港の裏側にあります水域の環境改善について質問します。
 (パネルを示す)場所は、海老取川なんですけれども、多摩川の河口で、こちらの方、支流になっていまして、こちらの運河の影響も受ける、流れるはずの川が流れにくいという大変特殊な環境にある、これ一級河川なんです。この川が、今、異変を起こしているということで、ぜひ聞いていただきたいんです。
 この海老取川というのは、これが羽田空港ですけれども、かつては大変きれいな川でした。子どもたちも、この川で泳ぐことも、今にしてあるんですね。大森青べかカヌークラブというところがインターネットを出しておりますけれども、写真を見ても、子どもたちが泳いでいたりするんです。そういう川なんですけれども、そして、ハゼもここでよくとれるということで、釣り人もにぎわっていたんですが、ここ二、三年、ハゼがとれなくなってしまった。なぜかといいますと、ここにヘドロがわいて、酸欠になって稚魚のときから死んでしまう、そういうふうに変わってきています。そして、ヘドロが汚水によって攪拌されてしまうという状況なんです。
 こういう異変が起きた川なんですけれども、この川は、川岸の方には武蔵野の小道という散歩道も計画されています。
 このように、貴重な水面は都民の財産ともいえると思うんですけれども、昨年八月と九月に、二回にわたって一〇〇ミリを超える大雨が降りました。この川岸に係留をしている漁船があるんですけれども、この漁船が(「不法係留じゃないんだろうな」と呼ぶ者あり)不法では−−ちゃんと許可を取っているんです。
 それで、引き潮のときには、ヘドロがたまって、陸に押し上げられてしまうというような状況になって、船を出すことができない、こういう状況になっているわけです。これは、漁業を営む人にとっては死活問題にもなっているわけですね。
 この問題を、どうしてこういうことが起きたのか、まず、その原因についてお聞きいたします。
〇鈴木下水道局長 平成十二年度に都が実施いたしました底質調査の結果では、今、図に示されました近傍の海老取運河における有機性の成分については、他の運河と比較してほとんど差がなかったことなどから、堆積などの原因については不明でございます。

城南地域の排水の三分の一が閉鎖的な水域に集中

〇かち委員 原因が不明ということですけれども、後ほどまたお聞きします。
 この近隣の水域環境なんですけれども、この海老取川には、羽田ポンプ場と東糀谷ポンプ場といって、下水処理ポンプがあります。そのもう少し上流に行きますと、森ヶ崎処理場という日本最大級の下水処理センターがあるんです。そのほかにもあと二つ、計四つもこの狭い水域に固まっている。このことが、今日的な雨天時の合流の溢水の大変大きな問題になっているわけです。
 それで、この羽田ポンプ場と東糀谷ポンプ場というような、二つありましたけれども、これらのポンプ場は、いつから稼働しているんでしょうか。
〇鈴木下水道局長 羽田ポンプ所は昭和四十四年、東糀谷ポンプ所は平成十二年に稼働しております。
〇かち委員 二つあって、一つは四十四年、東糀谷の方は一昨年から稼働したということなんですけれども、なぜ、こういうふうに二つ、後からつくったかといえば、合流式の改善、羽田ポンプ場の負荷を軽減するためにということで二つつくったわけですよね。
 ところが、その稼働状況をお聞きしますと、東糀谷の方の、一昨年から開設されたポンプ場の水は、羽田の方の半分を分けたのではなくて、もっと上流の方から引っ張ってきていると。それで、本来だったら、汚水をためるポンプを稼働しなければならないんですけれど、まだ稼働できていない。それは来年以降になるだろうと。
 そういう状況のもとで、十二年、一昨年には、二つのポンプ場から二百七万トンの水が押し出された。汚水と雨水が一緒になって押し出されているというんですが、この二百七万トンというのは一体どのぐらいのものかといいますと、城南地域のこういう排水ポンプ場から出てくる水の約三分の一を占めるんですね。大量な汚水が、この狭い閉鎖をされた、閉鎖的なこの水域に流される。そういうことになりますと、おのずとここに汚泥がたまるということは、必然的に明らかになってくるのではないでしょうか。
 それで、一昨年の夏に大雨が降って、その翌日に大変な異臭が発生をして、ちょっと汚い話になりますけれども、未処理の汚物がそのまま流れてきた。水面に浮いている。もちろん、いわゆるオイルボール、白いオイルボールも浮かんでいましたし、それからハゼが、やっぱり巻き上がったヘドロによって、酸欠になって浮いてしまう。大変な状況になっているわけです。
 こういうことが繰り返されていると、衛生的にも環境的にも大変問題が生じるのではないかと思うんですが、この川の水質や川底の調査などを本当にきちんと行って、海老取川の環境改善に系統的に取り組むべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。
〇赤星環境局長 海老取川の水質及び川床の泥の調査につきましては、地元の大田区が調査を行っております。
 東京都は、海老取川の近傍の運河において調査を行っております。
 今後とも、大田区と連携しながら、水質の監視に努めてまいります。
〇かち委員 今、行っている、環境水準の監視に努めるとおっしゃられましたけれども、この川は、環境基準となる類型指定がされていないんですね。川には、AAからA、B、C、D、E、六ランクあるんですね。きれいな川から工業用水域にわたる、多少汚れても仕方がないというような川も含めてランクがあるんですが、この川は、そのランクからも外れているんですよ。ですから、幾ら水質監視に努めるといったって、その比較する水準、基準がなければ、はかりようがないし、責任も問われないことになってしまうではありませんか。
 私は、この機会に、ぜひこの海老取川の川の環境類型を指定されることを強く要望しておきます。
 それから、越流水の実態を調査して、周辺住民に必要な情報を提供すべきだと思います。
 もう一つは、合流式下水道の改善とともに、海老取川に流れ込む汚水を流さないように改善すべきだと思いますけれども、その二つについてお答えください。
〇鈴木下水道局長 雨天時における越流水の実態調査を安全かつ確実に行うためには、採水技術の確立など多くの課題がございます。
 今後、これらの技術的な課題とあわせて、関係者などへの情報提供についても検討してまいりたいと考えております。
 次に、東京の道路事情などを勘案いたしますと、汚水管と雨水管の両方を埋設しなければならない分流方式への変更というのは、非常に困難な面がございまして、直ちに合流式下水道を改善するというのは非常に難しい問題がございます。
 海老取川につきましても、幹線管渠や東糀谷ポンプ所の整備によりまして、雨天時の放流を軽減するとともに、雨水を一時的に貯留する施設を整備したところでございまして、十四年度からは大幅な効果が期待できると考えております。
 今後とも、これらの事業を計画的に推進してまいります。

「すぐやらせます」・・・都知事

〇かち委員 では、台風シーズンが来る前に、ここに汚泥、ヘドロがたまっている、漁船が出られない、こういう状況になっているわけですけれども、これを改善するために、ぜひしゅんせつをすべきではないかと思いますけれども、これは、ここに関係するのは下水道局、そして建設局、港湾局だと思いますが、まず下水道局さん、いかがでしょうか。
〇鈴木下水道局長 下水道局では、合流式下水道からの雨天時の放流を軽減するため、幹線管渠の能力増強や雨水の貯留施設の整備を進めております。
 これに加えまして、油の固まりなどの流出を抑制するため、合流改善クイックプランを速やかに実施することが局の役割と考えておりまして、今後とも、これらの対策を計画的に推進してまいります。
〇かち委員 しゅんせつをどうするかということに対しては、全くお答えがないんですよね。だけど、この問題については、もう地元の漁協の皆さんから再三、建設局や港湾局や、そして下水道局に申し入れをなさって、それで話し合いもされているわけですよ。
 当初は、下水道局さんは、ヘドロの原因が下水道に起因する、大きな影響を持っているということもそれを認識をされて、しゅんせつについてはその範囲を決めなければいけないので、港湾局とも相談の上お答えする、そういうふうにいっていながら、今まで何の解決もされていない、しゅんせつされていないというのが現状だと思うんですね。
 それでは、建設局、港湾局はどうですか。
〇山下建設局長 昨年の台風によりまして、船舶の航行に支障が生じるおそれが出た部分につきましては、港湾局とともに、順次、しゅんせつ工事を実施しているところでございます。
 また、海老取川では、五十六隻の船舶の係留について、河川法に基づきまして占用許可しているところでございますが、許可を受けた者が、その占用にかかわる範囲のしゅんせつ等の維持管理を行うこととなっております。
〇かち委員 今、河川許可を受けた占用者がその場所のしゅんせつをすることになっているというお答えがありましたけれども、それは何に基づいておっしゃられるんですか。
〇山下建設局長 河川敷地の占用許可にかかわります建設省からの通達に基づき、私どもは指導しているところでございます。
〇かち委員 通達に、しゅんせつをすべきと書いてあるんですか。
〇山下建設局長 平成十一年の建設省河川局長通達、河川敷地の占用許可についてというのによりますと、占用を許可したときには、占用の目的を達成するために必要な維持管理を十分に実施させることといたしております。
 したがいまして、係留場所の許可を受けている場合は、土砂などの堆積により係留場所としての機能が阻害されることになりますと、これは占用者の方でしゅんせつを行い、回復させることになっております。
〇かち委員 今おっしゃった後半のところは、自分でつけ加えたんだと思いますよね。私もその文は見ております。
 でも、この同じ法の中には、こういうふうに書いてあるんですよ。河川敷地は、基本的にはその周辺の住民により利用されるものであることから、地域の意向を踏まえて行う必要がある、そして、許可を受けた者に不当な義務を課することになるものはあってはならない、こういうふうにも書いてあるんですよ。ですから、はっきりとしゅんせつを占用者が行うべきだということは、どこにも書いていないんですよ。だから皆さんは、いわれても受けることができないから、三局がそろって相談しても、結論を出さずに今まで来たんじゃないですか。
 だからこそ、私は、ここで知事の決断をお示しいただきたいと思うんです。今、本当に新しい都市再生に向かって、また東京の水域をきれいにしようというときに、昨日は、環境負荷を取り除くためには、局の壁を超えて全力で取り組むというふうにもおっしゃっていただきました。ぜひその立場で、このしゅんせつ問題解決に向けてご判断をいただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。
〇山下建設局長 占用目的達成のために、維持管理にどれだけのものが、費用をかけるかは、占用者が判断するものというふうに考えておりまして、限られた公共水域を排他独占的に使用していることから、維持管理に要する費用を負担することは妥当であるというふうに考えております。
〇かち委員 知事に。答えてください。
〇石原知事 私は、自分の選挙区でして、あそこの事情をよく知っていますが、零細の漁民があそこに何隻か船をつないでいますけれども、その人たちが占用者であることを、もっと違う原因で−−私、森ヶ崎の汚水処理場もよく知っています。はんらんしますと、非常に惨たんたる状況になって海が汚れるんですが、今後、新しい施設をつくって、それが稼働するときに少し救われるかもしれませんけど−−こんなものはすぐやらせますよ。ただ、あそこにいる自民党の衆議員はだれかな。何をしているのかな

母子保健院廃止計画を発表して三カ月で予算押し切るのは言語道断のやり方

〇かち委員 次に、母子保健院の存続を求めて質問いたします。
 都立病院改革マスタープランに対しては、都内各地で、住民と自治体を挙げた厳しい都民的な批判が広がっています。その中でも母子保健院は、ことし十二月末廃止が打ち出され、地元世田谷区でも大変心配をして、今議会を見守っていると思います。母子保健院の存続を願う住民と地元自治体に対し、東京都がどう対応するか、都立病院改革の最初の具体化ですので、ぜひそのことを踏まえてご答弁いただきたいと思います。
 都立病院の改革マスタープランは、この四月から早速、乳児院の入所停止、漸次停止をしていって、十二月に廃止となっておりますけれども、このマスタープランは、来年度予算にどのように反映されているのでしょうか。
〇今村衛生局長 母子保健院は、マスタープランの計画に基づきまして、平成十四年十二月末をもって廃止することを予定しております。このため、平成十四年度の予算案におきましては、それまでの間に要する管理運営経費として、十五億九千八百万余円を予算計上しているところでございます。
 また、平成十四年度中の廃止を予定していることから、定数措置はなされておりません。ただし、廃止に至るまでの間、事業の継続に必要な人員については、引き続き配置してまいります。
〇かち委員 改革の内容はともあれ、計画を発表して次の予算にのせるのに、三カ月しか期間がない。これは、都だけで進められる問題ではなく、地元自治体や関係機関とも、十分に合意と具体策が具体化されなければ、進められないことだと思うんです。それをこの三カ月で押し切って、もう来年度予算では、こういうふうに自明の事実として強行されようとしているわけですね。これは本当に言語道断のやり方だと思います。問答無用のやり方ですね。
 世田谷区から、母子保健院について要望が出されていると思いますけれども、どういう内容ですか。
〇今村衛生局長 今、三カ月しかないとおっしゃいましたが、そのために今ご審議をお願いしているわけでございまして、世田谷区長からは、都立病院改革会議マスタープランの検討段階でいただいた要望書では、都立病院改革会議報告の計画化に向けては、世田谷区や区民、地元医療関係者の意見を取り入れることを要望するとともに、世田谷区民の医療環境保持の立場から、母子保健院存続を強く要請するとなっております。
 また、都立病院改革マスタープランの策定に当たっては、世田谷区や地元医師会等とさまざまな機会をとらえて意見交換を重ねるとともに、その要望を踏まえた上で、地域医療の確保についてその考え方を盛り込んだところであり、おおむねご理解を賜っているものと認識しております。
〇かち委員 何をもって、ご理解を賜っているというふうにおっしゃるんでしょうか。私は、いまだ合意は得られていないと思います。
 先日の世田谷区議会本会議で、我が党議員の代表質問に主管部長は、世田谷区としては、母子保健院の果たしてきた役割にかんがみて、代替策ではなく存続を求めていくと、はっきり答弁されているんです。
 私は、直接、世田谷区にも行って、お話を伺ってまいりました。行政幹部の方ですが、東京都は、マスタープランができるまでは区の要望に沿うよう努力するといっていた、ところが、結果的には何も取り入れてくれていない、計画発表から廃止まで、余りにも早過ぎる、強引だと訴えておられました。
 衛生局長は、先日の我が党の本会議代表質問で、マスタープランの策定に当たっては、地元世田谷区を初め関係機関の要望も踏まえた上で、地域医療の確保について考え方を盛り込むというふうに答弁していますが、それは具体的にはどういうことですか。
〇今村衛生局長 母子保健院が担っております一般の産科機能や小児医療等につきましては、国立成育医療センターを初めとする周辺の医療機関の協力を求めていくとともに、広尾病院を初めとする他の都立病院での受け入れ体制を十分に整えるなど、地域医療等の確保について、その考え方を盛り込んだところであります。
〇かち委員 三月からもう既に廃止に入っていこうとするのに、要望を求めていくであって、要望が受け入れられたという事実はどこにもないじゃないですか。これで、いつまでも求めていく求めていくで、廃止の方だけを着実に進めていくんですか。それでは約束が違うじゃないですか、機関とも自治体とも。

国立成育医療センターは、あくまで高度専門のナショナルセンター

 それでは、国立医療センターで地域医療を行ってほしいということ、それから母子保健院の代替機能を果たしてほしいということについて、具体的に国にどういう要望をされて、そして、国はどういうふうにお答えになっているんですか。
〇今村衛生局長 国立成育医療センターの、都の休日・全夜間診療事業や周産期医療対策事業への参画につきましては、現在、同センターで検討をしていただいているところであります。都としては、今後も引き続き、協力依頼をしていきたいと思っております。
 なお、成育医療センターからは、成育医療に関するモデルとして、小児救急や周産期医療、正常分娩にも取り組んでいくと明確に伺っておりまして、同病院のパンフレットにも、その旨が明記されております。
 これらのことから、成育医療センターは、地域医療に協力していただけるものと確信しております。
〇かち委員 私も、霞が関の厚生労働省の成育医療センターの担当者のところに行って聞いてまいりました。都の小児科の休日・全夜間診療事業に参画する意思はということに対しては、ナショナルセンターなんだから、国全体を対応しているんだから、もう一次、二次の救急はやる意思がない、地域医療にも参画する気はないということをはっきりといっています。
 救急といっても、やるのは三次救急ですよ。三次救急といえば、病院間搬送が当たり前じゃないですか。そして、産科については受け入れるかもしれませんけど、いわゆる皆さんが対応してほしいというのは、地域医療なんですよ。でも、その地域医療にはこたえられないというのが、これが現実です。
 そういう状況の中で、世田谷区は一体どうなってしまうのかということですけれども、国立成育センターというのは、入院が五百床、外来が九百人。世田谷区の地域医療のよりどころであった大蔵病院は四百七十五床、国立小児病院四百床、これが廃止です。これでもう八百床、廃止です。そして、外来も、二つ合わせて千三百人の外来がなくなってしまうんです。この上に、母子保健院の百十床、二百人外来、なくなってしまって、では成育センターが受けてくれるかといったら、それはもうナショナルセンターだから受け入れない。そういうことでは、世田谷区の地域医療に多大な混乱と影響を与えるのは明らかではありませんか。
 計画を発表してからわずか一年で廃止という、この乱暴なやり方は、ぜひ見直しをしていくべきだと思います。
 私は、母子保健院のホームページを開いてみますと、その中には、お子様が生まれる前から、生まれるとき、生まれた後まで、いつでもお役に立てる病院ですと。これを見て、私はすばらしいと思いました。それで、当院は、心温まる医療・養育サービスの提供に努力し、皆様に信頼される病院となるよう努めてまいりますと、このように書いてあります。
 実際にそういうことをやってきたのが、母子保健院ではありませんか。だからこそ、本当にもう各界、各層、立場を超えて、世田谷区民ばかりではありません。本当にここを利用している幅広い人から、ここを存続させてほしい、こういう声が今大きく広がっているんです。
 知事に伺います。十二月放映の日本テレビ、ビデオを見ていただいたかと思いますが、規模は小さくても、こういう住民と密着し、信頼され、頼りにされている母子保健院などは残すべきだと思いますが、いかがでしょうか。
〇石原知事 あのテレビはいただいたので、ビデオを拝見いたしました。先ほど来申しておりますように、この都立病院の問題もいわゆる面と点、森と木といいましょうか、つまりベクトルとすれば鳥瞰と虫瞰といいましょうか、都が担当すべき仕事としては、やはり面というものを考えて都立病院も改革していかなきゃならないと思っております。
 いずれにしろ、都立病院は都民すべての財産でございまして、これが提供する医療サービスは、決してその都立病院があるその地域に限ったものではないんです。この番組を拝見しましたけれども、小児医療の問題は一定の地域に限定したもので、都と区市町村の役割分担を十分に取り上げていないと私は理解いたしました。
〇かち委員 母子保健院は私は非常に都立の中でもユニークなというか、非常に個性的な病院だと思うんですね。妊娠から出産、周産期、小児医療、救急、そして子育てセンターの役割を果たしている乳児院、そして東京都も働く両親を支援するモデルケースとして行ってきた病後児保育、こういうことをトータルとして、本当に子どもの生まれるから、一定の育つまでのその大事な期間を、本当にそこの部分をトータルに総合的に展開しているのが母子保健院です。この病院は都の中でも貴重な存在です。
 この病院を改革するといいますと、すぐ、面でとか総合的にとかおっしゃいますけれども、今小児医療の実態が壊れているわけでしょう。もう医師が高齢化している、小児が少なくなっている、こういう中で開業医も続けられない。だからこそ本当に皆さんは小児の一次、二次の救急を何とかしてほしい、これが区民、都民の皆さんの切実な願いになっているんです。こんなに高い都民ニーズはないじゃないですか。これこそ行政医療ではありませんか。これをやはり責任を持つ、それが都の役割だと思うんです。病院改革というのは何でもすぐ統合して大きくすればいいというんじゃなくて、こういう個性的な、非常に大きな役割を持っている母子保健院をぜひ残すべきだと思います。私は、改革に当たって、改めて検討し直すことを強く要望いたします。

医師が常時いる病院併設の乳児院の役割も高まっている

 もう一つは、それに付随する乳児院の問題です。乳児院は全都に十一カ所ありますけれども、医療と併設をしている乳児院というのは本当に少なくて三つ、その中で公立はたった一つ、この母子保健院併立なんですね。昨日からの質疑にもありましたけれども、今子育ての養育能力が落ちているとか、また、虐待、被虐待の問題がふえている。ですから、そういう影響は必ずここにも出ているんです。都立の母子保健院の一、二歳児の半分は被虐待児だといわれています。脳挫傷、脳陥没、大腿骨骨折、小児でこんなことが実際にあるんですよね。こういうとき、また、親の介護力がない、ここにも総合的にいろいろな専門職がかかわって、保育する能力を回復していく、そういう役割を果たしているんです。この母子保健院は残すべきだと思いますけれども、同業の東京都社会福祉協議会の乳児部会から東京都衛生局に要望書が出されていると思うんですけれども、どんな内容ですか。
〇今村衛生局長 東京都社会福祉協議会乳児部会長から、昨年の七月三十日付でいただいた要望書では、都立乳児院としての役割、機能が継承できる新たな施設の整備についても、都としてぜひともその実現に向けての努力をお願いしたい、と述べられているものであり、私たちは、母子保健院の乳児院の存続を必ずしも求めているものではないのではないかと考えております。
〇かち委員 よくそういう解釈をされるなと思いますけれども、やはり民間の乳児院では、虚弱児だとか医療の必要のある子どもたちを本当に責任持って持てない、だから都立で何とか対応してほしいんだというのが趣旨じゃないですか。どうしてそういうふうに解釈されるのか、不思議でなりません。
 もし都立のこの母子保健院がなくなったら、あと医師が常時いるのは日赤医療センターの附属しかないんですよね。私、ここに行ってまいりましたけれども、ここはもう七十名定員で満杯。しかも、本当にいわゆる被虐待の子どもたち、それから重症心身障害児、本当に所狭しと、こういう医療を必要とする子どもたちがいっぱいなんです。もうこの子たちを受けてくれる上の施設もないというのが現状なんです。こういう状況の中で、この都の施設をなくしてしまうということが、いかに弱い子どもたちに犠牲をもたらすかということをぜひ心に受けとめて、もう一度ぜひ検討し直していただきたいと思います。

荏原病院の公社移管の方針は、住民と地元区も参加して、根本から再検討を

 最後に一言、地元の荏原病院の問題について申し上げます。
 マスタープランでは、荏原病院と大久保病院、多摩老人医療センターは患者の六割から七割が地域住民で占められていることから、都立病院から除外して、経営主体を公社に移すといっています。荏原病院は大田区を初めとした城南地域住民の医療要求にこたえ、他の都立病院に比べても率先して地域医療に取り組んできて、貢献もしてきたわけです。その結果、評価されるどころか、逆に都立から切り離されてしまう。これは地元としてはどうしても合点がいかない問題です。このことを見ても、今回の都立病院改革マスタープランというのは、住民にとってかけがえのない地域医療から都立病院が手を引いて、経営効率のよい大病院だけにしようというものといわざるを得ません。
 大田区議会からも、改革に当たっては今の医療レベルを下げない、区の意見をよく聞くようにという要望が出されています。
 また、荏原病院が改築、再開したときに、七年前ですけれども、住民の強い要望を都が受け入れて、紹介状がなくてもかかれる病院にということで約束が交わされているんです。こういう経過を踏まえれば、地域医療にノウハウのある公社に委託をしなければならない、その道理はないのではないでしょうか。
 こういうことを踏まえて、今後、住民と地元区も参加して、荏原病院の公社移管の方針は根本から再検討されることを強く求めて質問を終わります。(拍手)
〇星野委員長 かち委員の発言は終わりました。