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■ 議会での質問  日本共産党東京都議団

予算特別委員会 討論 二〇〇二年三月二十六日

東 ひろたか(江東区選出)  2002年3月26日

きびしい財政状況にあっても、都民要望に応える予算編成を

 

 私は、日本共産党都議団を代表して、第一号議案「平成一四年度東京都一般会計予算」ほか十一議案に反対、予算組み替え動議に賛成の立場から討論をおこないます。
 未曾有の不況とリストラにくわえ、小泉政権の「不良債権早期処理」や医療費改悪などの「痛み」の押しつけが、都民のくらしと営業を直撃しているもとで、来年度予算に求められたのは、たとえ、きびしい財政状況にあっても、福祉・医療・教育などの切実な都民要望に応える予算を編成することでした。
 しかし、提案された予算案は、環境や少子化などの分野で改善が見られるものの、「財政再建推進プラン」にもとづく、老人医療費助成やシルバーパス、老人福祉手当などの福祉のきりすてを計画通りにすすめるとともに、都立病院の統廃合や慢性肝炎などの通院医療費助成の廃止など、あらたなきりすてがすすめられるものとなっています。
 さらに、「重要施策」に選定された事業以外には、一律十%のマイナスシーリングがかせられ、都民施策のあらゆる分野で、施策の後退がおしつけられるものとなっています。
 最悪の不況から都民のくらしと営業をまもるうえで、最重要となっている雇用対策費や、制度融資や臨海開発関係を除いた中小企業予算は、一般会計の一%にも満たない水準にとどめられ、施策の拡充は先送りされています。
 失業者や三宅島避難島民のための生活支援金の創設、都独自の緊急雇用対策基金事業、第二期工業地域集積活性化事業、商店街支援などの、都民が切実にもとめている課題に応える姿勢も見られませんでした。
 全国で大きなながれとなっている三十人学級の願いについても、こばみつづけています。
 多摩地域での施策の後退も重大です。保健所統廃合をはじめ、経済事務所、労政事務所、社会教育施設の縮小・統廃合などが一方的にすすめられ、多摩地域の自治体で、都の施策後退をきびしく批判する意見書が採択されました。
 来年度予算案は、都民に「痛み」をおしつける一方で、石原知事がうちだした「首都圏メガロポリス構想」にもとづく「都市再生」を聖域化し、大型開発や幹線道路などの大型公共事業に重点的に予算を配分するものとなっています。
 借金依存型の都政運営からどう脱却するかも、きびしく問われました。この点では、都は投資的経費を抑制したとしていますが、実際には、来年度執行となる今年度最終補正予算とあわせると今年度をうわまわる規模となり、借金を積みましするものとなっています。この結果、都債残高は七兆円をこえ、質疑を通じて、三十年たっても六兆七千億円の規模の借金に苦しむことになることが明らかとなりました。
 これらの借金の利払いだけで二千億円を超える負担が恒常化し、そのツケが都民施策にしわ寄せされていることは、重大です。
 わが党が、生活保護をうける人や、電気・ガス・水道料金など公共料金の滞納が急増している事実を指摘したことにたいし、福祉局は、経済低迷によって国民所得が縮小し、高齢者や障害者の方々が生活困窮に陥るリスクが拡大していることを認めました。
 こうしたもとでも、いわゆる経済給付的事業のきりすては計画通りすすめられており、都民生活は、いっそう深刻なものとなっています。もう、これ以上の痛みをおしつけてはなりません。わが党は、東京都が、住民のくらし・福祉をまもるという自治体本来の姿勢にたちかえり、高齢者、障害者の福祉手当や医療費助成など経済給付的事業を復活するとともに、都民への経済的支援策を抜本的に拡充することを、つよく求めるものです。
 質疑のなかで知事は、低所得者の困窮が深刻になっている問題にたいし、「むしろ共産党の怠慢を証左しているのではないか」などと答弁しました。しかし、今日の事態を生み出したのは国や東京都の責任であることは明らかです。知事の発言は、まったくスジ違いな暴言であり、断じて許されないものです。す。
血液製剤フィブリノゲンによる「薬害肝炎」と言われている問題について、知事は、国の責任を認める重要な答弁をされました。
 また、質疑をとおして慢性肝炎の、これまでの医療費助成の実績から、通院が件数で九十七%、助成額で八〇%におよぶとの事実も明らかになり、都の提案の根拠がなりたたないことが証明されました。
 ずさんな衛生行政の被害者である肝炎の患者の方々にとって、慢性肝炎から、肝硬変、肝がんへの進行を抑えるために、通院医療費の助成はまさに命綱であります。再検討し、通院、入院とも医療費助成を継続すべきであります。
 また「都立病院改革マスタープラン」にもとづく統廃合計画も、議論の焦点となりました。なかでも母子保健院は、ことし十二月末で廃止という計画であり、地元住民や自治体の声を、東京都がどのように尊重するのかが問われましたが、地元区との合意もないまま、あくまで廃止との姿勢をとりつづけています。併設されている都立乳児院は、小児科医が二十四時間対応している貴重なものであることも明らかになりました。
 国立成育医療センターについて、わが党は、地域医療にも積極的にとりくむべきであるとの立場ですが、地域住民のために、きめ細かい医療を提供してきた母子保健院の代わりになるものではありません。
 この問題については、昨日、予算特別委員会終了後、ただちに、知事に、厚生労働省との面談の相手、日時を伝えました。事実を確認し、知事の責任で、母子保健院の廃止を再検討されることをつよくもとめておきます。
 都心部での同時多発的な開発を促進する「都市再生」の是非も問われています。秋葉原ITセンター問題の質疑を通じて、貴重な都有地が低い価格で売却されようとしていること、アセス逃れを容認するなど、東京都の不明朗なかかわりが明らかにされました。また、六本木六丁目再開発ビルの電波障害が、多摩地域にまでおよんでいることが判明したことも重大です。
 このような大企業やゼネコン中心の、同時多発的な大規模開発が、東京一極集中を激化し、ヒートアイランドなど深刻な環境破壊や都財政難をもたらすことは明らかです。
 また、臨海副都心開発の見直しについて、年度ごとの収支、土地の処分計画など見直しの根幹にかかわる情報を開示することをもとめましたが、都はこれを拒みました。
 今回の見直しは、小手先の収支の手直しにすぎず、九七年の青島都知事のもとでおこなわれたオフィス開発を継続する見直しの延長にとどまるもので、知事がいうところの「全面見直し」にほど遠いものであります。
 あらためて、すべての情報を公開し、都民参加で抜本的な見直しをおこなうことをもとめておくものです。
 公共料金の値上げのうち、大企業に適正な負担をもとめる道路占有料の改定は当然ですが、都立大学や都立高校の授業料をはじめとする都民にあらたな負担を強いる値上げは、認められません。
 また、料金改定にあわせて「利用料金制」が提案されていますが、これは、各団体への支出金を定額制にすることと一体のもので、定額制を導入することで、団体にとって不足となる収入を、利用者の負担にもとめようとするものです。すでに導入されてる施設の多くでは、利用料金の上限額いっぱいに値上げされていることからも、実質的な値上げというべきものです。
 六五歳以上の高齢者の無料制の廃止も、定額制による収入不足を、高齢者の負担でまかなおうとするものであり、都民施設の利用を抑制することにもなりかねず、反対するものです。
 わが党が提案している来年度予算組み替え動議は、以上の立場をふまえて、きりすてられた福祉をもとにもどすとともに、母子保健院などのあらたなきりすてをやめ、福祉や医療を充実をはかること、知事を本部長とする「緊急景気対策本部」の設置、若年者就労支援事業の創設、全国の流れとなっている学校の30人学級実現の準備、学校週5日制対策、引きこもり対策などをもりこんだものです。
 同時に、臨海副都心開発など「都市再生」関連事業など、不要不急の大型公共事業や浪費にメスをいれ、全体として一般会計予算案の三・一%をくみかえることで、都民生活を守る方向にふみだせることを示したものです。各会派のご賛同をもとめるものであります。
 職員給与のカットについては、あらためて八月から一年間、給与カットをおこなう労使合意がおこなわれ、この内容の条例改正案が提案されることとなりました。
 そもそも、地方自治体の職員の給与は、争議権など労働基本権が制約されているもとで、民間の給与水準を反映するしくみである、第三者機関としての人事委員会の勧告にもとづき、労使間での合意によって決定されるという、ルールが確立しているものです。
 自民党の提案による一般会計予算案などに付された「適切な対応を講じること」をもとめる付帯決議は、労使間であらためて合意されたにもかかわらず、都にさらなる対応を強制しようとするもので、認められるものではありません。付帯決議については、反対するものです。
 最後に、原宿警察署建て替えにともなう大規模留置場建設に問題について申し述べておきます。都は犯罪者の増加を大規模留置場建設の根拠としていますが、この問題は、法にもとづく冷静な検討が求められる問題です。警察署の付属施設である留置場に昨年一年間に留置された九三%の人は、本来、国の拘置所に措置されるべきものです。国は現在、東京拘置所の建て替えをすすめており、東京都が国に代わって「代用監獄」としての大規模留置場を建設しなければならない理由はどこにもありません。
 にもかかわらず、石原知事はあくまで大規模留置場の建設をごり押しすることは、自白の強要など冤罪の温床となってきた「代用監獄」を永久化することを意味し、民主主義に反する時代錯誤といわなければなりません。
 「大規模留置場はいらない」という、地元住民や地元自治体の声に率直に耳をかたむけ、計画はきっぱり撤回することをもとめて、討論をおわります。
以上