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■ 議会での質問  日本共産党東京都議団

2002年第3回定例会  最終討論

丸茂 勇夫(大田区選出)  2002年10月15日

母子保健院廃止、都立社会福祉施設からの撤退などの福祉きりすてと「都市再生」中心から、自治体本来の姿勢にたちもどり、福祉、くらしの拡充を


 日本共産党を代表して、第二〇六号議案「東京都立母子保健院条例を廃止する条例」ほか、十二議案に反対する立場から討論をおこないます。
 いま、都民は、いっそうの不況のふかまりと、十月一日からの医療費の値上げをはじめとする社会保障の連続的改悪などによって、かつて経験をしたことのない大きな苦難に直面しています。くわえて、小泉政権は、「不良債権処理の加速」や、雇用保険、年金制度の改悪をおしすすめることで、国民のくらしと日本経済にとりかえしのつかない打撃をくわえようとしています。
 このようなときに、都政に求められることは、住民のくらしと福祉をまもるという自治体本来の姿勢に立ちかえることであり、不況と国の悪政から都民の生活と営業をまもるために全力をつくすことです。
 しかし、石原知事が、この三年半すすめてきた都政の方向は、都民がもとめる自治体としてのあるべき方向とは相違して、「改革」の名のもとに福祉や教育を切りすてる一方、「都市再生」を中心とした大型公共事業を重点的に税金をつぎこむという逆立ち政治を押しすすめることでした。
 今定例会においても、知事提案の母子保健院の廃止条例や国の老人保健法改悪に連動した医療費助成の負担のひきあげの条例、さらには、都立社会福祉施設からの撤退や民間社会福祉法人に対する補助制度の見直しなどが、きびしく問われたところです。
 焦点となった母子保健院は、産科、小児専門医療、救急の夜間診療、さらには、乳児院まで併設された総合機能をもつ都内唯一の施設であり、母と子の「命と安心のセンター」として、地域に定着してきたものであり、これを廃止することは、これからの本格的少子社会にむけたとりくみに逆行するものと言わざるを得ません。
 都の都立病院統廃合計画は、母子保健院ににひきつづき、清瀬・八王子の小児病院などを廃止することとされており、これが実施されるならば、東京における母子・小児医療が困難に直面することになることは明らかです。
 廃止理由も、きわめて根拠と説得力に乏しいものです。
 「施設が老朽化した」という点については、改善を怠ってきた都の責任こそが問われるべきものです。また、「国の成育医療センターが開設」されるので大丈夫だというと言うことについても、母子保健院の総合的機能をすべてまかなえるものではなく、とりわけ、小児の夜間救急医療についていえば、百三十万人がすむ世田谷、杉並区の小児の夜間救急が大部分の地域で空白となることはさけられないことなどが、わが党の質疑によって明らかになりました。
 知事は、母子保健院の存続をもとめる地元住民や世田谷区、世田谷区議会などの一致した要求と、短期間に寄せられた九万人を超える署名に代表される都民の声を謙虚に受けとめるべきであります。
 一部の団体・政党が「住民の不安」をあおったなどという発言もありましたが、母子保健院の存続を願う運動は、関係住民と行政一体となった自発的・自主的な行動によるものであり、このような住民の運動を敵視する発言は、住民参加と民主主義を否定するものにほかならないことをきびしく指摘しておくものです。
 本定例会では、都立高校の統廃合と学区制の廃止、中高一貫教育の導入を内容とした都立高校「改革」の報告がおこなわれ、その是非がおおきな議論となりました。
 統廃合計画は、全日制高校を二〇八校から百八十校に、定時制高校を百校から五五校に削減し、定時制高校については将来は全廃するというもので、該当校はもとより、都民各層から計画の撤回と学校の存続をもとめる声があげられ、PTA連合会や区・市の議会からも意見書があげられているものです。
 いま、高校教育に求められているのは、教育を希望するどの子にも高校教育を保障し、ゆとりとゆきとどいた教育を実現することです。わが党は、この立場から、都が強行しようとしている「改革」が、受験競争を激化させるとともに、高校生活からゆとりをうばうことになる危険を指摘したところです。
 学区制廃止や中高一貫教育など、これまでの制度を根本から変更することで高校教育を揺るがしかねない問題について、都民的な検討と合意形成もなく、都教委の一方的判断で、おしすすめられようとしていることも、見過ごすことのできない重大問題です。
 トップダウンによる「改革」の押しつけをやめ、都立高校のあり方と改革の方向について、都民参加で再検討することをつよく求めておくものです。
 わが党の論戦を通じて、石原知事がすすめる「都市再生」が、はやくも矛盾とゆきづまりに直面していることがうきぼりにされました。
 本定例会にも、破たんした臨海開発に関連する幹線道路の契約議案が提案されていますが、わが党は、超高層ビルと大型幹線道路中心の「都市再生」、なかでもセンターコア内の開発によって、二酸化炭素が増大し、東京都が策定した環境基本計画の達成すらおぼつかなくなることを独自の試算をもって示すとともに、オフィスビルの供給過剰がもたらすビル不況のおそれと日本経済への打撃、深刻な都財政への影響など、その問題点をただしましたが、石原知事は、これに対して、まともに答えることができませんでした。
 都市の再生にあたっては、環境への負荷をはじめ、居住の確保、地域経済振興、都財政と都民負担など総合的な都市政策の立場にたって、専門家、都民の参加で検討をおこなうべきことを提案しておくものです。
 石原知事が明後日から都庁展望台で開催する「都庁カジノ」について、申し述べておきます。そもそも、カジノが賭博行為として法律で禁止されてきたのは、青少年への影響、ギャンブル依存症と家庭崩壊、暴力団の介在などギャンブルの弊害がひろく社会的弊害として認められてきたからにほかなりません。カジノを合法化することについて、今日なお、国民的合意は形成されていません。
 「都庁カジノ」についても、業界の協力を得たとしていますが、この世界ではギブアンドテイクが常識であります。また、経費の一部として、一〇〇〇万円ともいわれる都民の税金によってまかなうことも許されません。知事が「都庁カジノ」を中止するようもとめておくものです。
 石原知事が議会日程を無視して、訪米を計画したことから、本定例会の会期が延長されるという異例の事態となりました。地方自治法は、議長の出席要求があった場合、知事はこれを守らなければならないとされています。にもかかわらず会議出席が不可能となる訪米日程を組んだことは、議会を軽視するものであり、知事の猛省を促しておくものです。
 自民党型政治のゆきづまりのもとで、大型開発優先の従来型公共事業から抜けだし、福祉や教育など住民のための施策を優先し、住民の声と住民参加を重視する自治体のあたらしい流れが、全国で生まれつつあります。わが党は、東京都がこれらのあたらしい地方自治の経験に学び、本来の自治体のあり方に立ちかえるべきことをつよく求めて討論を終わります。

以上