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■ 議会での質問  日本共産党東京都議団


二〇〇二年第三回都議会定例会 文書質問趣意書

提出者 秋田かくお(品川区選出)

一 商店街振興について

 東京の商業は、十年を超える長期の不況と、国の大規模小売店舗法の廃止などのもとで、衰退をかさね、ピーク時の一九八二年には十六万二千五百店あった商店が一九九九年には、二割減の十二万八千五百店にまで減少してしまいました。
 商店は、地域経済の核であると同時に、地域社会をささえるおおきな役割を果たしています。また、おおくの商店や商店街は、自らの生きのこりのために、必死の努力を重ねています。その商店と商店街の生きのこりを支援することは、東京都にとって、最重要な課題の一つというべきものです。
 この点について、二〇〇〇年に発行された東京都中小企業白書・小売業編は、「商店街に占める生鮮食品店と一般小売店の大幅な減少は、商店街機能の低下の大きな要因である」としたうえで、「それが、買い物環境としての商店街機能を損ない、商店街離れを加速させ、集客力や活力の低下につながっている。こうした傾向は、小規模商店街ほど顕著。集積の再構築が求められる」と、商店街の再構築の必要を提示しています。

1 都は、昨年三月に、「二十一世紀商店街づくり振興プラン」を策定しましたが、区市町村の振興プランの策定と、それにもとづく都の「商店街活性化総合支援」のスキームが提案されているだけで、実際に役立つ振興策はまったく提示されていません。
 しかし、商店街をめぐる環境は、さらなる消費不況のふかまりと、大規模店舗立地法の制定や、コンビニストアの増大などめまぐるしく変化しており、都段階での、こうした変化をふまえた個々の商店の支援とその集積である商店街のそれぞれに着目した支援がいそがれています。
 そこでまず、都として、都内商業の現状を正確にとらえ、今日の状況に見合った支援策を確立するための、商業振興プランの策定を提案するものですが、見解を求めます。

2 現在、都は二〇〇三年度予算の編成をおこなっていますが、商業関係予算の拡充は、商業関係者のつよい要望となっています。
 今年度の都の商業関係予算は、制度融資などを除いた「地域商業の活性化」の予算に中小企業振興基金事業のなかの商店街活性化事業をくわえても、わずかに二十三億五千万円程度にすぎません。
 このため、「元気を出せ商店街支援事業」の改善と拡充、「商店街活性化総合支援事業」の実施予算の計上などが、昨年の予算編成にあたってつよく要望されていたにもかかわらず、見送られてしまいました。
 問題は、お金がないからではありません。税金の使い方ではありませんか。
 都は、今年度予算で「都市再生」を重要施策の目玉にしていますが、今年度の「都市骨格を形成する幹線道路の整備費」は、八百二十七億円の予算が配分されており、その額はなんと商業関係予算の三十五倍です。
 また、本来、東京都が負担する必要のない、国の直轄事業負担金には、昨年度だけで、商業関係予算の十八年分にあたる四百三十四億円つぎこまれました。同じく、首都高速道路公団への無利子貸付金には三百四十四億円も投入されました。
 これらと比べて、いかに商業関係予算が少ないかは明らかではありませんか。
 東京の経済の活性化をはかるのであれば、何をおいても、中小企業予算、そして商業関係予算を大幅に増やして、施策の抜本的拡充をはかるのが筋道ではありませんか。見解を求めます。
 つぎに、具体的な施策について、何点か提案するものです。

3 まず、地域の商店街が、大型店や駅ビルなどの商業集積と対抗していくうえで、おおきな力となるポイントカードシステムの普及についてです。
 私の地元、品川区の武蔵小山商店街は、全国的にも「横綱級」と言われていますが、その武蔵小山商店街がいちはやく、とり組んできた事業の一つが、ポイントカードです。
 同商店街で、ポイントカードの導入以来、十年がたちますが、カードの所有者は十八万人にのぼり、ポイントカード加盟店一店舗あたり千二百人の固定客を獲得したことになり、商店街の活性化におおきく役立っています。
 また、戸越銀座・銀六商店街では、ノーレジ袋運動と連携したポイントカードが導入され、買い物客が手提げ袋をつかって、レジ袋をもらわない場合は、二円分のポイントを加算したり、ペットボトルや空き缶をもってきた場合にも、一円分を加算するあたらしいシステムを導入して、注目をあつめています。
 しかし、このようなシステムを導入するには、費用もかかり、商店街の事務体制も確立しなければなりません。そのため、全都的な導入状況は、一割にとどまっています。
 そこで、中小商店街でも積極的に活用できるようにするために、都として、商店街が共通して利用できるような汎用性と同時に、商店街ごとに違う規模や特性、顧客ニーズにあわせた活用が可能なシステムの開発につとめること、また、それらのシステムを廉価で提供できるような支援を早急に具体化することを提案するものです。

4 また、単独では導入困難な商店街が、連携して活用できるようなサポートシステムも、喜ばれるものです。あわせて答弁を求めます。

5 武蔵小山商店街の場合には、システムの老朽化がすすみ、毎年、端末機の修理代に三百万円もかかっていることから、あらたなシステム開発にせまられています。
 そこで、同商店街は、都に対しシステムの更新を申請しましたが、都のポイントカードの施策は、新規事業のみを対象としているため、拒否されるという事態においこまれました。
 このことは、今後、システムの普及にともない、システムの更新に対する助成が、あらたな課題として必要となることを示しています。でなければ、将来の更新のための負担が心配で、新規の導入を手控えることになりかねません。
 ポイントカード普及のためにも、武蔵小山商店街のシステム更新の要望に応えるべきではありませんか。答弁を求めます。

6 都が区市町村に計画策定を求めている「商店街活性化総合支援事業」についてです。
 日本共産党都議団は、この間、区市から聞き取り調査をおこないましたが、そのなかで、明らかになったことは、本当にこの事業が役立つものになるのかということでした。同事業は、これまでの個別補助事業ではなく、区市町村がたてた計画に財政支援をするという包括補助方式とされていますが、区市からは、「都がどれくらい予算をつけてくれるのかわからない」「包括補助の代わりに、これまでの個別補助がなくなるのは困る」などの意見や疑問がよせられました。
 そこで、なにより、必要な実施予算の財源を十分に確保することが必要です。また、「商店街活性化総合支援事業」の導入を理由にして、これまでの個別の支援事業や補助金をうちきるようなことがあってはなりません。明確な答弁を求めます。

7 「元気を出せ商店街支援事業」は、商店街にとって使いやすく、これだけ歓迎されている事業はありません。ところが都は、補助の見直しをおこない、個々の商店街への助成額を削減してきました。また、来年度予算で、都が助成を半減するのではないかという、心配の声が寄せられています。
 必要な財源を確保し、希望するすべての商店街に助成するようにすべきです。また、助成のしくみも、最初の助成制度にもどし、商店街の負担の軽減をはかることが必要ですが、答弁を求めます。

8 都がモデル事業として実施した空き店舗対策事業が終了しましたが、依然として、商店街振興にとって重要な事業であることに代わりはありません。
 昨年、東京都が実施した商店街実態調査によると、空き店舗がある商店街は、実に全体の六二%に達しています。同時に、それらの商店街のうち、対策を講じているとした商店街はわずかに四分の一にすぎません。
 とりわけ、生鮮三品をあつかう商店がなくなることは、商店の核店舗を失うことになり、対策がいそがれるものです。
 そもそも、全都に約三千もある商店街のうち、わずか数ヵ所のモデル事業ですませようと言うのでは、話になりません。効果をあげるには、一定の規模での事業展開が欠かせません。
 空き店舗対策事業については、モデル事業の際に指摘されていた、補助率のひきあげや補助期間の延長、地元負担の軽減をはじめバックヤードを補助対象とすることなど、実効性を確保するための改善をおこない、全都でいっせいに事業展開できるよう、本格的な事業として再構築すべきではありませんか。見解を伺います。


二〇〇二年第三回都議会定例会  秋田かくお議員の文書質問に対する答弁書

質問事項 一 商店街振興について
1 昨年、都は、「二十一世紀商店街づくり振興プラン」を策定したが、実際役に立つ振興策はまったく提示されていない。都内商業の現状を正確にとらえ、今日の状況に見合った支援策を確立するための商業振興プランの策定を提案するが、見解を伺う。
回答
 「二十一世紀商店街づくり振興プラン」は、今日の都内商店街をめぐる様々な環境変化や課題を明らかにした上で、二十一世紀型商店街づくりへの戦略的取組みを示すとともに、都の考え方、都と区市町村との役割分担を明確にした総合的なプランです。
 なお、このプランに基づき、現在、各区市町村において「商店街振興プラン」の策定に取り組んでいるところです。

質問事項
一の2 今年度の商業関係予算は、制度融資を除いた「地域商業の活性化」の予算に中小企業振興基金事業のなかの商店街活性化事業を加えても、二十三億五千万円程度にすぎない。東京の経済の活性化を図るのであれば、中小企業予算、そして商業関係予算を大幅に増やして、施策の抜本的充実を図るのが筋道ではないか。見解を伺う。
回答
 長引く消費の低迷、商品の低価格化など商店街等の経営を取り巻く環境は、一段と厳しさを増しています。
 こうした状況を踏まえ、今後とも、限られた予算の中で、意欲ある商店街等の取組に対する施策の充実に努めてまいります。

質問事項
一の3 中小商店街でもポイントカードを積極的に活用できるようにするために、商店街が共通して利用できるような汎用性と同時に、商店街ごとに違う規模や特性、顧客ニーズに合わせた活用が可能なシステムの開発につとめること、また、それらのシステムを廉価で提供できるような支援を早急に具体化することを提案するが、見解を伺う。
回答
 都は、「活力ある商店街育成事業」及び「中小企業振興基金事業」により、商店街等が提案するポイントカード事業等の意欲ある取組について支援しているところです。
 今後とも、商店街が提案する自発的、意欲的な取組を支援してまいります。

質問事項
一の4 ポイントカード事業を単独では導入困難な商店街が、連携して活用できるようなサポートシステムの整備について、見解を伺う。
回答
 法人商店街を補助対象とする「活力ある商店街育成事業」は、法人商店街と未組織商店街とが共同して同一の事業を一体的かつ統一的に実施することを可能としており、ポイントカード事業も補助対象として、商店街が連携して事業に取り組んだ事例もあります。
 また、「中小企業振興基金事業」においても、区の商店街連合会が個々の店舗の参加を募り、区内共通ポイントカード事業を実施した場合に、支援した事例があります。
 今後とも、商店街が提案する自発的、意欲的な取組を支援してまいります。

質問事項
一の5 品川区武蔵小山商店街では、ポイントカード事業を導入し商店街の活性化に大きく役立っている。しかし、システムの更新を申請したが、都の施策は新規事業のみを対象にしているため拒否された。ポイントカード普及のためにも、同商店街のシステム更新の要望に応えるべきだが、見解を伺う。
回答
 平成十四年度の「活力ある商店街育成事業」については、商店街組合等から申請された事業計画について外部の学識経験者も委員とする「東京都活力ある商店街育成事業審査会」において審議し、その結果を参考に補助対象事業を決定したところです。

質問事項
一の6 商店街活性化総合支援事業は、包括補助方式のため、必要な実施予算の財源を充分に確保することが必要である。また、同事業導入を理由にこれまでの個別の支援事業や補助金を打ち切るようなことがあってはならない。見解を伺う。
回答
 「商店街活性化総合支援事業」は、「二十一世紀商店街づくり振興プラン」に基づき、各区市町村の平成十三年度及び平成十四年度における商店街振興プランの策定に対する補助事業であり、希望するすべての区市町村の計画づくりを支援する予算を確保してきたところです。
 なお、この事業に関して個別の支援事業等を廃止した経緯はありません。

質問事項
一の7 「元気を出せ商店街事業」は、商店街にとって使いやすく歓迎されているが、都は助成額の削減を行っている。必要な財源を確保し、希望するすべての商店街に助成すべきである。また、助成の仕組みも最初の助成制度に戻し、商店街の負担軽減を図ることが必要だが、見解を伺う。
回答
 「元気を出せ商店街事業」は、当初予算額では、いずれの年度も前年度予算額を下回っておらず、また、平成十年度及び平成十一年度においては、補正予算を組んで対応してきており、これまで「元気を出せ商店街事業補助金交付要綱」の条件に合致するすべての商店街に助成をしてきたところです。
 なお、現行の制度は、平成十二年度に補助率等を改正したものですが、これは限られた財源の中、より多くの商店街が事業を活用できるよう改めたものです。

質問事項
一の8 空き店舗対策事業は、モデル事業の際に指摘されていた、補助率の引き上げや、補助期間の延長、地元負担の軽減をはじめバックヤードを補助対象とすることなど実効性を確保するための改善を行い、全都で一斉に事業展開できるよう、本格的な事業として再構築すべきだが、見解を伺う。
回答
 「商店街空き店舗活用推進事業」については、モデル事業として実施してきているところですが、平成十四年度をもって事業終了を予定しており、すでに新規の指定を終了しています。
 なお、空き店舗の解消が顧客吸引力の上昇や売上げ増加などにより、商店街全体の活性化に寄与すると考えられるため、空き店舗対策については、今後も引き続き研究してまいります。