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■ 議会での質問  日本共産党東京都議団


予算特別委員会 しめくくり総括質疑 二〇〇三年三月四日

吉田信夫(杉並区選出)

「私はあの憲法を認めません」、アメリカのイラク攻撃容認――石原知事
問われる都民の代表としての資格

イラク攻撃容認は、首都の知事の発言として見過ごせない
石原知事「(憲法)九十九条違反で結構」「私はあの憲法を認めません」
「悪しき有害なものはババァ」は知事自身の発言
石原都政の四年は長き都政の歴史に汚点を残すもの


○吉田委員 それでは、日本共産党都議団を代表いたしまして、締めくくり質疑をさせていただきます。(略)

イラク攻撃容認は、首都の知事の発言として見過ごせない

 さて、それでは、本題に入ります。
 本予算特別委員会で、我が党は、石原都政の四年がどうであったかのか、都民の立場に立って、第一に、石原都政のもとで東京の福祉がどうなったのか、第二に、都市再生の名で進めた幹線道路や大規模ビル開発促進が、都民生活と環境にどのような事態をつくり出しているのかを明らかにし、都政の根本的転換を求めました。
 最後に当たり、石原都政の四年を総括する上でどうしてもただしておかなければならない問題、それは、知事の平和、民主主義に対する姿勢の問題であります。
 初めに、重大な事態となっているイラク問題についてです。
 今、世界の平和にとって急迫した事態となっているのが、アメリカによるイラクへの武力行使、戦争突入の策動が強まっているという問題です。それだけに、全世界で戦争への道を許さず、イラク問題の平和的解決を求める世論と運動が史上空前の規模で広がっており、知事もご存じだと思いますが、ローマ、パリ、ベルリンなど、いわば首都の首長も積極的にイラク戦争反対のアピールを出しています。
 ところが、石原知事は、二月二十五日のTBSラジオ「バトルトークラジオ・アクセス」に出演し、イラク問題について対応を問われ、僕はやっぱりアメリカの攻撃を容認せざるを得ないし、容認すべきだと思いますと答えております。
 この発言は、平和解決を求める都民の願いに背くものであり、首都の知事の発言として到底見過ごすことはできません。アメリカの軍事行動容認発言は、この場で撤回すべきだと思いますが、どうですか。

○石原知事 先ほど馬場委員の質問にもお答えいたしましたが、我々が希求しているのは、東京の都民、私も含め希求しているのは、世界の平和であります。それを損ないかねない、先ほど申しましたけれども、すでに五百発のマスタードガス、これは猛毒であります。空ではありますけれども、二万個ですか――のウォーヘッド、つまりこれは弾頭ですね。それから、数十トンの化学兵器になる毒物の貯蔵。しかも、現に彼らは、それをかつて使ったわけです、イラクは。しかも、湾岸戦争のクウェート侵攻の当事者であります。
 そういった危険な存在は、既に百人以上の我が同胞を拉致し、殺し、そして数十トンの覚せい剤を日本に持ち込んで散布し、我々の子弟を損なっている、北朝鮮と同質の、しかもその北朝鮮とイラクは地下水でつながっている関係でありまして、世界で唯一スカッドミサイルのパーツをつくっている――もう古いから、ほかはつくってないわけですけれども、北朝鮮がこれをイラクに提供し、アメリカは既にインド洋でそれを数回押さえている。こういった地下茎の連脈の中で、私たちは北朝鮮を意識しながら、イラクという危険な存在というものを考えなくちゃいけない。
 だから、私が申し上げていることは、アメリカも視覚的にああいう仰々しい、一方的な軍の展開を見せますと、それは反発もあるでしょう。しかし、私は、結局は容認しますけれども、ある時間を置いて、その間徹底的な査察をさせて、そしてその結果クロとなったならば、反対しているロシアもフランスもドイツも一緒にイラク制裁に乗り出すべきである。これが私の持論であります。おそらくこれを異論とする人はあまりいないと思います。
 ということで、私は、基本的にアメリカが我々の意思も代行して、イラクという非常に危険な存在というものを世界の平和のために淘汰するというのは、間違った、要するに一つの戦略とは思いません。

○吉田委員 長々といわれましたけど、知事の発言は専らイラクを批判したものであります。
 イラク問題の平和的解決の道は、イラクが国連安保理決議を無条件に誠実に実行するということはもちろんです。同時に、アメリカがあくまでも固執する軍事攻撃計画、これをいかに放棄するのか、そして、あくまでも国連の枠組みの中で平和的な解決を図るのか、ここが今、中心問題なんですよ。
 しかも、最近の査察団のブリクス委員長の追加報告を見ても、プロセスにおける協力は、イラクは十分やっている、実質における協力も、まだ問題は残るが前向きの方向になってきていると、査察の有効性とその継続を訴える内容になっているんです。だから、査察を継続し強化をすれば、平和的に大量破壊兵器問題は解決できる。そこに多くの世論があるわけです。
 ところが、知事が容認をするといったアメリカは、査察を打ち切りなさいと、もうこれで。それは自動的に武力行使に道を開くものなんですよ。だからこそ今問われているのは、査察を継続して平和解決の努力をするのか、それともこれを打ち切ろうとするアメリカ、これを支持するのか。いろんなことをいいましたけど、結局、知事は、アメリカを支持すると。
 アメリカがやろうとしているのは、査察の打ち切りなんですよ。(石原知事発言を求む)いや、まだ続いているんですよ。ちょっと知事、まだ続いているんですよ。(石原知事「わかったよ、もう。勉強してこいよ」と呼ぶ)何いっているんですか。
 知事も多分ご存じだと思いますけれども、かつて自民党の参議院議員を務められた土屋埼玉県知事は、県議会での質問にこう答えています。罪なき国民が尊い命を捨てるような戦争は絶対やってはいけないと表明し、小泉首相に対しても、国際社会の一員として解決を図るために引き続き粘り強く努力を尽くすよう、さまざまな機会をとらえて申し上げていきたいと。これが私はやはり、県民の代表、平和を願う県民の代表として当然なことだと思うんです。
 ところが、いろんなことをいいましたが、知事は結局、アメリカを支持するということは、最後の結論として強調されました。これはやはり私は、今、世界の大多数の世論が求めている平和解決の道に反するものだということを強く指摘しておきたいと思います。(「何で答弁を求めないんだよ」と呼び、その他発言するもの多し)
知事、じゃ、何かいいたいことがあったらいってくださいよ。ありますか。いいたいことありますか、私のことに。(石原知事「ああ、いっぱいあるよ」と呼ぶ)簡潔にお願いしますよ。

○石原知事 問題の知識を欠く人にはやっぱり長々ご説明しませんと、無理におぼつかないんじゃないかと思います。
 私は何もアメリカの即時攻撃を支持しているわけじゃない。最終的には、ロシアなりフランスなりドイツが、それでもなおイラクがクロだということでも協力しないならば、これはやっぱりアメリカは単独攻撃を起こすでしょう。だから、私は、さんざんいっていることですけれども、やっぱりイラクがクロだということが判明したならば、なお査察を続けて、その段階ではロシアもフランスもドイツも共同して、要するに進攻するなりして、その前にイラクが自分で武装解除すれば結構でしょうけれども、しないならばやっぱりそういう行動を起こすべきだ。それがやはり国連というものの存続なり、こけんというものを維持するために必要な方法じゃないかと思います。
 これはとにかく、罪なき人たちを、化学兵器でクルド族を殺している。ちょうどやっぱり隣の北朝鮮が、あなた方はどういう関係にあるか知りませんけれども、罪なき日本人を拉致して殺したのと同じようなことをやっている国家じゃないですか。これが世界の安全に危険な存在でないことはだれもいえないでしょう。

○吉田委員 知事は、ラジオの質問に、二つの問題があったわけですよ。一つは、視察継続を求めるんですか、フランスなどの、それともアメリカ、イギリスなどのように視察の打ち切りを求めるんですかといったときに、打ち切りを求めるアメリカを支持したんですよ。それとも、アメリカ、イギリスなどのように視察の打ち切りを求めるんですかといったときに、打ち切りを求めるアメリカを支持したんですよ。したがって、あなた、いろいろなことをいったけれども、では、その発言を取り消しなさいと私はいっているんですよ。取り消せないわけでしょう。ですから、しかも、結局武力ということを強調しておりましたけれども、知事の態度は明白だと、やはり世界の世論に反するものだということを私はいわせていただきます。

石原知事「(憲法)九十九条違反で結構」「私はあの憲法を認めません」

 続きまして、この四年間を振り返るときに見過ごすことのできない問題として、四年前の選挙の際には公約として都民の前に何ら掲げていなかった、自己の特定の政治的立場を都政に持ち込んできた問題があります。例えば歴代知事として初めて、靖国神社への公式参拝を繰り返し、国会が有事立法を審議していた際に、その推進を都議会に表明。全国の知事の中で極めて突出した態度でした。
 中でも最大の問題は、知事の憲法に対する態度の問題です。憲法九十九条は、ご承知と思いますが、「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」としています。知事は、この憲法の尊重擁護義務を最も重く負っている一人だと私は思います。憲法が九十九条で公務員の憲法尊重擁護義務を明記しているのは、憲法の最高法規性の確保にかかわる厳格で重い規定だというのが憲法学者の通説です。主権者の信託によって憲法の運用を任務とすることになった公務員は、運用上、憲法を擁護しなければならないという立場にあることは当然です。
 ところが、知事は、現憲法の否定を主張し続けるだけではなくて、重大なことに、その憲法改正手続きについて、憲法の規定を否定する発言を公然と都議会で行いました。昨年の第四回定例会での自民党・山本議員への答弁です。引用いたします。国会で三分の二以上の議決、そして国民投票で過半の得票を得なければ、憲法の一字一句も変わらないという規定というものを、私たちはなぜか盲信してきたわけで、そういう条文にとらわれることなく、もっと大きな見地で歴史的にこれを反省し、占領されているという異常な事態でああいう形で行われた憲法が、今日の日本にとって、日本人にとって、歴史的な正当性を持つか持たないかということを、私は国会で決めたらいいと思う、私がもし総理大臣だったら、この提案をしますね、そしてもしそれが五十一対四十九で可決されたならば、国民の総意として、この憲法は歴史的な正当性を持たないということですから、あとはそれをもとに、五十六条などは無視して、私は新しい憲法をつくるという作業は、改正ではなしに行われるべきだと思う、と。これは実は、(「いいじゃないか」と呼ぶ者あり)いいんじゃなんていってますけれども、五十六条というのは九十六条の明白な間違いですね。そういうことは一々いいませんが、ただ、やはり憲法改正という極めて重要な条項を間違えるということは、私はやはり憲法に対する姿勢が問われる問題だと思う。
 重大なことは、すなわち憲法が定めた憲法改正手続、国会の三分の二以上の発議、そして国民投票での過半数の賛成という条文にとらわれることなくやるんだと、この発言は明白に憲法九十九条尊重擁護義務違反ではありませんか。撤回すべきですよ。

○石原知事 九十九条違反で結構でございます。私はあの憲法を認めません。共産党はかつて反対したじゃないですか、非常に熱烈に。あなた方は熱烈に反対したじゃないですか。そしてあのときは自由党と民主党でしたから、この与党も、まあ今は仕方あるまい、やがてそのうちに我々自身の手でこれを改正しようということで、まあその場しのぎにのんだ。それがいつの間にか定着したわけですけども、あなた方の政党はかつて一番先鋭的に、要するに、この問題に反対したじゃないですか。(発言する者あり)残っていますよ。(吉田委員、発言を求める)いや、続けて私話しているんだから、余計なことは言わないでよ。(吉田委員「私の答弁に答えなさいよ」と呼ぶ)いや、だから、答弁してるんだよ、これは。ですから、私が申しましたのは、要するに歴史的に正当性がない、ゆえに共産党はかつても反対したこの要するに憲法というものを、手続きを踏む、踏まないの問題じゃなしに、もう半世紀たったこの今、日本人として歴史的にこれを許容できるか、できないかということを端的に問うた上で、つまりこの憲法をどう変えるか、どういうふうにしていくか、破棄するか、しないかということを決めたらいいということを申し上げただけであります。

○吉田委員 今の知事の、平気で、私は憲法尊重擁護義務違反でいいということは、極めて重大な発言ですよ。
 それでは、知事、いいですか、九十六条の憲法改正規定を無視するということは、いいですか、憲法改正は三分の二以上の議決と同時に、国民投票を定めているんですよ。国民の投票なしに憲法を変えて構わないんだという姿勢ですか。

○石原知事 あなたはもうちょっと冷静に人のいうことをご理解なさい。私は、国民投票なしに憲法変える、変えないといっているんじゃないんだ。その前提で、今の国民が近過去を振り返ってみて、近い過去ですよ、この憲法が果たして日本人自身の意思で決められたかどうか、歴史的に正当性があるかどうか、当時の日本人、私のような、生きていますけれども、当時の日本人の意思を完全に反映したかどうかということを、要するに認定、判定するということが必要だということをいった。かつて共産党は反対したじゃないですか、あなた方の先輩は。

○吉田委員 九十六条に従う必要がないということは、国民投票も不要だということなんですよ。いいですか。これは国民主権の根幹にかかわる問題なんですよ。九十六条は、我が国の主権が国民にあるという立場ですよね。日本は法治国家であり、憲法がその最高法規であるということを保障するために置かれたものであり、国民主権原理のもとでは、主権者国民こそが憲法改正の最終権者なんだ、これが九十六条の精神なんですよ。いろいろなことをいうけれども、知事の主張というものはこれを否定するんですよ。しかも、(発言する者あり)ちょっと待った、ちょっと待った。しかも、これは本当に重大なことなんですよ。いいですか。もともと憲法を否定すべきだというふうな発言を公然とすること自身、政治的に問われるんですよ。ご承知と思いますけれども、めかけ憲法発言だとか欠陥憲法発言だとか、歴代の内閣が発言をし、辞任あるいは謝罪せざるを得なかったんです。それにとどまらず、憲法が定めた改正手続を無視した改正をすべきだということを主張することは、明白に憲法擁護違反だということはもう法的に学者の通説になっているんですよ。それをあなたはあえて公言したわけですよ。
 なお、いいですか、日本共産党が反対したじゃないかということをいいますけれども、もうこのことは明快なんですよ。我が党は、いいですか、憲法の主権在民をより徹底するという立場を貫いてきたんですよ。したがって、現憲法に当たっても、主権在民を書き込ませる努力をしたんですよ。ただ、天皇制が主権在民を徹底することと矛盾をすると、主権在民の徹底の立場からそういう立場をとったというのが第一点。
 二つ目に、憲法九条のもとで、急迫不正の侵害から国を守るという自衛権の認識の問題なんですよ。当時、憲法九条のもとで自衛権はないという解釈が行われていた中で、憲法九条のもとでも自衛権はあるべきであるという極めて基本的立場から、我が党は明確な態度をとったんですよ。これこそ民主主義のための徹底した態度ですよ。本当に知事の憲法尊重擁護義務違反で結構ですということは、ぜひ都民の皆さんに聞いていただきたいですよ。これ、重大なことです。
 私は、その一点だけでも、都民の代表としてのまさに資格が問われる事態だということを強く述べ、知事の今の発言に対して厳しく抗議を申し上げたいと思います。(石原知事、発言を求める)いいですよ、次に行きますから。(発言する者多し。宮崎副委員長「石原知事」と呼ぶ)ちょっと待って。私がやるんだよ。委員長、何いっているんだよ。私がやるんだよ。私がやる。

○宮崎副委員長 質問しておいて、答弁は求めて下さい。

○吉田委員 答弁に対して私が意見をいったんだから、何いっているんですか。〔「委員長が指名しているじゃないか」と呼び、その他発言するもの多し〕

○宮崎副委員長 どうぞ発言を続けてください。

○石原知事 ここはソビエトの議会じゃないんだからね。
 あなたがおっしゃる、確かに国民が最高主権者ですよ。じゃ、あの要するに今日まで続いている憲法が、国民の、主権者の意思にのっとってつくられたんですか。そうじゃないから、共産党は反対したんでしょう。そして、この前文を含めても、日本語になっていない。日本語としても誤りだらけのこの憲法というのを、共産党は日本語として認めるんですか。憲法として認めるんですか。だから私はもう一回、国民の総意と国民の意思を代表している国会で、つまりこれが歴史的に正当性があるのかどうかということだけでもせめて決めろといっているわけですよ。それでこれを破棄するか、しないか、どこを変えるかという議論が出てくるでしょう。今日の時代、百年河清を待つみたいにだらだら議論していたって、議論が議論になってませんよ。ずっとこの憲法の拘束で、すべき国家の義務を果たせずに来ているんじゃないですか。北朝鮮に対する日本の政府の歴代の姿勢だって、結局、このわけのわからん憲法の拘束じゃないですか。

○吉田委員 知事、いろいろいわれましたけれども、憲法の文言について、いや、言葉がいいとか悪いとかということは、それは法的にはあり得ることなんです。しかし、問題は、国民主権で、国民にこそ真の最終的な改正権者であるときに、それを無視して、そういうものは無視して、国会だけで過半数で決めてしまおう、それ自身が――しかも、それだけではなくて、あなたは確信犯として、憲法尊重擁護義務違反で結構ですといったんですから、あなたはもう確信犯なんです、それは。幾らいいわけをしようと、これはもう明白ですよ。
 我が党は、先ほども述べましたけれども、より民主主義の徹底、自衛権の立場から、その段階で反対を表明いたしましたけれども、現時点で憲法の五原則が将来にわたって擁護される立場から、天皇制に対しても現憲法内できちんとした、やはり行われるという立場で努力をしているんですよ。そのことを述べておきます。

「悪しき有害なものはババァ」は知事自身の発言

 私は、もうこれ以上この問題で知事と議論しても同じことですから、次に、この四年間、住民の福祉の増進に最も大きな責任を負い、さまざまな人々が暮らす地域社会の共同共生をつくり出す責任者としての自治体の首長にふさわしくない知事の発言がしばしば行われてきた問題についても触れざるを得ません。
 例えば、陸上自衛隊の記念式典で行ったいわゆる三国人発言、府中療育センターの視察後の定例記者会見での、ああいう人というのは人格あるのかね、という障害者への差別発言、さらに松井東大教授の言葉をかりたということで行われた、文明がもたらした最もあしき有害なものはババアという発言です。この四年間を振り返ったときに、これらの基本的人権をじゅうりんするような発言は、私は決して放置することはできないと思います。
 さまざまな問題がありますが、時間的な制約がありますので、中でも女性蔑視発言について取り上げます。
 知事は、二〇〇一年十一月六日号の「週刊女性」で、インタビューに答える形で異常な女性蔑視発言を行いました。コピーですけれども、この「週刊女性」ですね。この中でこういっています。「これは僕がいってるんじゃなくて、松井孝典がいってるんだけど、“文明がもたらしたもっとも悪しき有害なものはババァ”なんだそうだ。“女性が生殖能力を失って生きてるってのは、無駄で罪です”って。男は八十、九十歳でも生殖能力があるけれど、女は閉経してしまったら子どもを生む力はない。そんな人間が、きんさん、ぎんさんの年まで生きてるってのは、地球にとって非常に悪しき弊害だって…。なるほどとは思うけど、政治家としてはいえないわね。」この知事発言について、ご承知のとおり多くの女性団体が、知事発言は女性を侮蔑するというだけでなく人間の尊厳にかかわる重大な発言、女性を蔑視し、女性の人権を根底から踏みにじるもの、など厳しい批判の声が挙がりました。昨年末には、精神的苦痛を受けたとして女性たちが提訴をするというほどの怒りが広がっています。私は当然だと思うんです、これは。知事、にやにや笑っていますけれども。
 こうした女性たちの声に示されるように、知事として到底あるまじき女性蔑視、女性の人権否定の発言だと思うんです。謝罪し、撤回すべきだと思いますが、いかがですか。

○石原知事 共産党というのはかねてから言論ファッショだと聞いていましたけれども、私が人のいったことをクオートしていったことを、さらに曲解、要するにつまんでこういうことをいわれれば、それは誤解を生ずる人もいるでしょう。しかし、私はあくまでも松井孝典さんとの対談の中で、彼が、人類が人間として誕生してから何万年たつんですか、それからさらに何千年か前、人間が農耕というのを覚えてから備蓄が進み、つまり文明圏ですね、人間の、人間圏と彼はいいましたけれども、文明が派生して、それが人間の意思でいろいろな形で地球の自然な循環を変えたと。人間が動物を使役することも、その循環がゆがんだ一つの証左でしょう。その結果、今、今日のこのていたらくになって、人類がこの後地球という惑星に何年か生存できない段階になって、松井さんがいわくに、まさに今ごろになって地球に優しい何とかというのは、たわけた話しで、まったくこういう大きな禍根というのを招いたのは人間自身の文明だということの中で、例として彼がいわれて、私は呵々大笑いして、あなたの理屈は通らない、なるほどそういえばそうかもしらんけれども、これはやっぱり政治家の口でいえませんなといって笑って、それで、これはテレビですから、それはつまんだところもあるでしょう。しかし、そこにいたスタッフも、私の特別秘書も、みんなそのことを聞いております。これは私はある意味で松井さんのいったことに、あの人の論理にインスパイアされましたけれども、これはあくまで私がある啓発を受けただけでありまして、私の持論ではございません。

○吉田委員 自分の意見ではないと、あくまでも松井教授の意見であるということを今いわれました。それで、今資料をお配りいたしましたけれども、私は改めてこのMXテレビ、知事が対談を行った、知事のところに行っているかもしれませんけれども、確かめてみました。しかし、少なくとも知事がいったような発言の趣旨は、このMXテレビで松井教授はされておりません。見てください。「ひとつは『おばあさん仮説』というんだけど。現生人類だけがおばあさんが存在する。おばあさんってのはね、生殖年齢を過ぎたメスが長く生きるということですよ。普通は生殖年齢を過ぎるとすぐ死んじゃうわけ。ほ乳動物でも、サルみたいなものでも。あるいはネアンデルタールもそうだったんじゃないかといわれている。『おばあさん』というのが存在するのは、われわれ現生人類だけなんですよ。これがね、いろんな意味で人口増加をもたらすんですよ。そのために、アフリカにいた人類がダーっと世界中に散っていって、それでさらにこういう人間圏をつくったと。」これしかいっていないんですよ。知事がいっているような、むだで罪で非常にあしき弊害だなんということは一言もいっていないんですよ、この趣旨は。
 しかもですよ、いいですか、資料の、知事もちゃんと見てくださいよ。資料の下段、では、松井教授のおばあさん仮説というのは一体どういうものか。(知事「片言隻句だ」と呼ぶ)あなた、片言隻句なんていうけれども、ちゃんと事実なんですから、しっかり見なさいよ。いいですか。これはアーク都市塾の松井教授の講義録をそのままとったものですよ。いいですか。その中に、こういっているんですよ。「その一つの理由に“おばあさん仮説”がある。ゴリラ、チンパンジー、オランウータンなど類人猿のメスは、子供が産めなくなると数年と経たないうちに死んでしまい、おばあさんは存在しない。しかし、現生人類には存在する。何らかの理由でおばあさんが出現し、その結果人口が増加し、反映したという説である。おばあさんが存在すると、おばあさんの経験が活かされ、次の世代の出産はより安全になる。さらに、おばあさんに子供の世話をしてもらえるので、次の出産までの期間が短くなり、出産回数が増える。これらは人口増加をもたらす。こうして人口の増えた現生人類は世界中に散らばり、その過程で様々な道具を生み出し、さらに脳の回路が繋がり、言語が明瞭に話せるようになったことで、抽象的な思考ができるようになり、人間圏をつくるまでに繁栄したと考えられる。」すなわち、いいですか、松井教授のおばあさん仮説というものは、人類の今日の発展はおばあさんの存在にあるんだと、他の類人猿と違って、高く評価をしているんですよ。知事のいっているようなことは、まったくいっていないじゃないですか。事実と違うじゃないですか。これだけ私は具体的に、松井発言というものの事実を明らかにして、知事に撤回を求めたわけですよ。どうですか?

○石原知事 私は、あなたみたいに彼の講義を聞いたわけじゃございません。ただ、ほとんど、二度目か三度目に会った、非常におもしろい方なので、私の番組に招待いたしました。そこで、限られた時間でありましたけれども、話題として、松井さんがいわれたことに印象を強くして(「松井さんは迷惑だよ」と呼ぶ者あり)迷惑じゃないでしょう。たくさん同じことを聞いた人もいます。
 ただ、やっぱり、テレビの編集というのはありまして、いろんなところをつまんで、わかりやすく、一時間半ぐらい撮ったものを一時間にするんでしょう。その中で、要するに、テレビに映されない部分もあるわけですから、私はそれを自分なりに補って、人に一種の慨嘆として取り次いだわけでありまして、私はこれを撤回するしないじゃございません。

○吉田委員 私は、具体的に二つのMXテレビもちゃんと見ました。さらに、おばあさん理論なるものを具体的に話している、この松井教授のアーク塾の講義録も示して、松井教授の考えとは全く、中には知事の発言したようなことはないんだという事実を示したんですよ。それでも、知事はあくまでも松井教授だということでいい張るわけですね。(石原知事発言を求む)いい張るわけですね。いいですよ。まだあるんですよ。
 それで(石原知事発言を求む)じゃ、いいたいことがあったら、いってくださいよ。

○石原知事 ですから、テレビに映らなかった部分も含めて、私は、テレビでたった一度対談した限りの松井さんの言葉を、ああいう形で要約して人に伝えたわけです。

○吉田委員 問題は、じゃ、松井教授がこの問題についてどういうふうにいっているかということなんですよ。知っていますか、知事。(石原知事「知りませんよ」と呼ぶ)知らないでしょう。ひどいですよ。
 ここに「自然と人間」という雑誌があります。ここで記者が松井教授に取材をしています。そのときに、こういっているんですよ。引用もととされた松井教授に、石原知事の発言について電話で聞きました。
これはコメントしようがないね。石原氏の発言をみると、私のいっていることと全く逆のことだからね。私は、こういういい方はどこでもしたことはないし、おばあさん仮説という理論を私はいろんなところで話しているから、それを見てもらえばわかるでしょうと。
 本人が、私はそんなことをいうはずがないと。それは私の今までの理論、仮説を見てもらえば明らかだと、ここまでいっているんですよ。

○石原知事 私は、テレビの場以外の松井さんの発言に、それほど興味もございません。ただ、一度対談したときに、印象を取り次いだだけでありまして、ならば、必要があるときだったら、私と松井さんと、どこかでお目にかかって、お互いにいったことの是々非々論をすべく(「謝れ」と呼ぶ者あり)謝る必要はないでしょう。私は、私なりの印象のことを受け継いだだけでありますから。

○吉田委員 私は、松井教授自身のコメントも含めて具体的な事実で、知事の発言について謝罪と撤回を強く求めました。結局、「週刊女性」で述べた女性の人権を否定する恥ずべき暴言は、知事自身の発言だと。知事の姿勢を述べたものだというふうにいわざるを得ませんし、それは明確に都民を欺くものだということを厳しく指摘をしておきたいと思います。

石原都政の四年は長き都政の歴史に汚点を残すもの

 最後に、我が党はこの予算特別委員会の中で、石原知事の四年間の問題について、福祉の問題、さらに都市再生の問題について触れてまいりました。あらためて、限られた時間のなかで、最後に、東京の福祉と財政の四年について質疑しておきたいと思います。
 まず、先ほどから、「財政再建推進プラン」他の会派のみなさんは非常に絶賛をされておりました。そこで、まず確認したいんですけれども、この「財政再建推進プラン」では、財源確保のために施策の見直しということを掲げておりました。
 経常経費についていえば、千八百億円を施策の見直しによって捻出するということが掲げられました。それから四年が経過いたしました。この経常経費の見直し一千八百億円は、どこまでが見直しされ、具体的には財源確保がされたのですか。その中で、福祉局にかかわる財源確保額はいくらなんですか。お示し下さい。

○田原財務局長 財政再建推進プランにおきます経常経費の見直しによる財源確保額は、千八百十六億円でございます。目標額千八百億円に対する達成率は、一〇〇・九%となっております。
 財政再建の取り組みにあたりましては、全庁挙げて聖域のない施策、事業の見直しを行う中で財源を確保してきておりますので、局別に確保額をとらえるということは、整理をしておりませんけれども、お尋ねの福祉局の確保額をあえて計算いたしますと、八百八十六億円になります。
 ただし、福祉局は、この見直しと同時に、プランが想定していなかった介護保険給付費負担金の増、これが五百九十九億円でございます。それから、対象者の増加などによる老人医療費助成の都負担の増百三十九億円、新たな認証保育所事業や高齢者いきいき事業、福祉改革推進事業に係る経費の増百十二億円などの増が生じております。
 さらに、児童扶養手当の区市移管による減二百六十八億円、特別区国民健康保険調整交付金の減二百十億円という、当然に減少する経費を控除すれば、福祉局の経常経費は、この四年間で実質的に増になっております。

○吉田委員 また従来型のいい方をしましたけれども、いいですか、財源確保するための、一千八百億円をこえる施策見直しの中のほぼ半分が、福祉局にかかわる施策の廃止、縮小などの見直しによって行われたということなんですよ。半分ですよ。施策見直しによって財源確保したうちの、福祉局分が半分なんですよ。これは明らかに都民要望と逆行するものです。    
 しかも、今、いや、しかもそうはいっても、介護保険給付費などで自動的にふえた文もあるんだというふうにいいました。介護保険は国制度ですから、高齢者人口がふえるために自動的にふえます。そうすると、片方に自動的にふえる分野がある、片方では施策を見直しするということになれば、実際に福祉局が従来からやってきた施策は、相当大幅な削減をしない限り運営できないという結果になってしまうじゃありませんか。
 しかも、その一方で、経常経費の見直しといいながら、経常経費の中に、例えば首都高速道路公団への貸付金などが含まれていることは、繰り返し指摘をしてまいりました。調べてみましたけれども、この四年間で一千二百八十二億円投入されているんですよ。
 じゃ、減らしたのかといえば、福祉施策は、約九百億円近く見直しで減らしておきながら、この首都高速道路公団への貸付は二百億円もふやされている。私たちは、こういう財政運営の転換こそ、いま求められいていると。
 なお、前回実績で見れば、都民一人あたり、千葉と東京を比べれば、東京は二倍以上高いということを、福祉局長、胸を張られました。しかし、これは今の、少なくとも石原都政が自慢できることですか。革新都政以来の努力によって、高い到達を築いてきたんですよ。
 その高い到達をじゃ、伸ばしているんですか、減らしているんですか。減らしてきたんですよ。そのことを、自分たちは減らしておきながら、いや、実は高いんだというふううに自慢はできませんし、ましてや千葉県は、到達は低かったかもしれませんけれども、一生懸命、福祉施策拡充の努力をしているということを、やはり私たちは指摘をしたわけです。
 いずれにしても、こうした、片方では福祉施策は見直し、削減をすすめる。生活に密着した公共投資は減らす一方で、首都高貸付金などの大規模幹線道路の予算は逆にふやしてきた。その結果、どういうことが起きるかといえば、私たちが追及したように、結局、借金を減らす減らすといいながら、借金が膨らんでいくと。それは、将来にわたってツケが膨らんでしまうという結果になるんですよ。
 私たちの試算では、三十年たっても、この七兆円を超える都債残高というのは変わらないと。そこをやはり、今、全国で新しく、長野県だけではありません、本当に新しい地方政治の転換という努力をしているときに、私はいまこそ、都民の期待に応える都政に転換するためには、この逆立ちした都財政の運営を根本から改めていく、それが本当に求められているし、同時に、改めて今日の質疑を通じて、知事の憲法擁護義務にまったく反する、平気で憲法の尊重擁護義務違反で結構だという発言をし、女性蔑視発言についても、松井教授の具体的な事実と、また松井教授自身のまったく違うということを示して、知事に撤回を求めましたけれども、これも撤回をいたしませんでした。やはり私は、こうした石原都政の四年というのは、長き都政の歴史に汚点を残すものだというふうにいわざるを得ません。
 我が党は、全国の自治体で胎動が始まっている、住民を主人公にした自治体の姿をとりもどし、憲法が生活に生きる都政を実現するために、全力を尽くす決意を表明いたしまして、質問を終わります。