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■ 議会での質問  日本共産党東京都議団


本会議 最終日討論 二〇〇三年三月七日

古館和憲(板橋区選出)

都民のくるしみに思いをよせ、都民にあたたかい手をさしのべよ
憲法を否定し、好戦的発言をくりかえす石原知事は、都民の審判をまぬがれない

 私は、日本共産党都議団を代表して、第一号議案、「平成十五年度東京都一般会計予算」ほか五十四議案に反対、日本共産党及び自治市民共同提案の東京都老人福祉手当に関する条例の一部を改正する条例案に賛成する立場から討論をおこないます。
 今定例会は、未曾有の不況にくわえ、小泉内閣の社会保障三兆円負担増と不良債権処理の加速策のおしつけが、都民のくらしと営業に一段と深刻な影響をおよぼしているもとで、ひらかれました。
 それだけに、この都民のくるしみの思いをよせて、都政があたたかい手をさしのべるかどうかが、問われました。
 このようなもとで、石原知事が提案した来年度予算案は、緊急の雇用対策でも、必死に生き残りのために努めている中小企業への支援の点でも、生活に困窮している都民の救済という点でも、都民の福祉と健康をまもるという点でも、みるべき手だては見られないものでした。
 しかも、石原知事は、わが党がこうした都民の声を紹介し、失業者のための生活費支援をはじめ、若年者の雇用促進、融資制度の拡充、介護保険の負担の軽減、医療費負担の軽減のための各種医療費助成の復活など、緊急で切実な要求の実現を、もとめたのにたいして、耳をかたむけることなく、都民のくるしみをに正面から応えようとしない姿勢をとりつづけました。
 また、この三月末で老人福祉手当がうちきりとなりますが、これも知事の冷たい姿勢を示すものです。都は、介護保険が導入されることによって、老人福祉手当がなくなっても影響は少ないとして廃止したのですが、決定から三年を経過した今日の時点にたってみれば、この東京都の主張がいかに、現実離れしたものであるかは明らかです。
 昨年十月からの医療制度の改悪で、在宅医療費が大幅に値上がりし、自己負担が従来と比べて三倍から四倍にふくれあがり、ねたきりのお年寄りをかかえる家庭の経済をおおきく圧迫しています。
 都が廃止の最大のよりどころとした介護保険についても、現実は、重い負担によって所得の低い世帯では、サービス利用の抑制が生まれ、くわえて、この四月からは介護保険の見直しで、家事援助で三割以上の値上げとなることが予想されています。
 老人福祉手当の役割は終わったどころか、逆に、「命綱」としての役割を前よりもいっそう増しているのではないでしょうか。
 日本共産党と自治市民が共同で提案した改正条例は、こうした現実をふまえ、たとえ一度決定されたものでも、その後の事態の変化をふまえて、廃止決定を再検討し、寝たきりのお年寄りをかかえる家庭をささえるための福祉手当を、四月以降も継続することを目的としたものです。各会派の賛同を呼びかけるものです。
 来年度予算案を中心とした審議のなかで、問われたもう一つの問題は、石原都政のこの四年間が都民に何をもたらしたかということです。
 その第一は、石原知事が、福祉や教育など都民施策を切りすてる一方で、「都市再生」の名で大型開発に税金を重点的に配分するという、逆立ち政治を都政にもちこみ、推進したことです。
 わが党が指摘したように、石原知事は、就任直後に、「何がぜいたくかと言えば、まず福祉」だと述べ、財政難を口実にあらゆる都民施策を見直すための「財政再建推進プラン」を策定し、まず、シルバーパスをはじめ老人医療費助成、老人福祉手当などのいわゆる経済給付的事業の切りすてをすすめました。
 これらの経済給付的事業の切りすてにより、この三年間で百二十万人に影響が及び、あわせて一〇〇〇億円をこえる負担増になり、お年寄りや障害者の生活に深刻な打撃を与えるものとなっています。こうした切りすてによって、この四年間に削減された福祉費は三〇〇億円にのぼります。
 また、「財政再建推進プラン」がかかげた経常経費の見直しは、四年間の削減目標千八百億円を超過達成し、そのうちほぼ半分の八百八十六億円が、福祉予算で捻出されていたことが、これもわが党の追求で明らかにされたところです。
 「福祉改革」「医療改革」などの名による都立病院や都立保健所の統廃合、都立社会施設からの撤退などがあからさまにすすめられました。改革の目玉としてうちだされた営利企業による認証保育所は、おおくの施設で、高い保育料、狭い施設、職員の劣悪な条件など、安心して子どもを預けられるという条件では、やはり認可保育園にくらべて、おおくの不十分さがあることが、実施後のわずかな期間にもあきらかになりました。
 しかも、認可保育所への人件費補助の削減がおこなわれれば、保育料の値上げにつながることを、都が認めたことは、きわめて重大です。
 認証保育所は、あくまで、認可保育所の不足を補完する役割にとどまるものです。わcF党は、認可保育所の拡充と待機児解消のために引きつづき奮闘するものです。
 知事が強力にすすめる「都市再生」が、日本経済を再生するどころか、不況を深刻化させ、東京の環境や住まい、都財政まで破たんにみちびくものであることが、わが党の追求であらためてうきぼりとなりました。
 なかでも、わが党が、「都市再生」による大規模なビル供給によって、ビル不況が招来されることを民間のシンクタンクの報告も示して質したのにたいして、知事は、「新規のビルを建設している当事者に聞いてほしい」と答えたことは、知事の責任をたなあげするもので、無責任きわまりないものです。
 また、秋葉原ITセンターの開発で発生する二酸化炭素が水元公園三つ分の緑を必要とすること、自動車渋滞についても、三環状道路が完成したとしても、センターコア内の開発で生まれる自動車交通発生量の方が十四万台も多いことも、わが党の調査で判明したところです。
 今定例会に提案されている「東京のしゃれた街並みづくり条例」は、「都市再生法」にもとづく、緊急整備地域以外の地域でのミニ開発を可能とするためのものであり、無秩序な開発が全都的にすすめられることになり、都市の再生にとって、最優先の課題である木造密集地域などでの整備には役立つものでないことが専門家からも指摘されているもので、反対します。
 このような「都市再生」の推進は、都財政をさらなる破綻に導くものになりかねません。知事は、四年前に「借金財政ノー」の公約をかかげましたが、この四年間にしたことは、大型開発のための投資を温存し、借金を五千六百億円もつみましたことです。このため、都の借金の残高は、三十年後も七兆円規模、都民一人あたり五十八万円の水準となることを知事は直視すべきであります。
 知事が都市の再生というのであれば、東京一極集中を是正し、都市の成長を管理する方向にふみだすことをもとめておくものです。
 さて、わが党が予算特別委員会に提出した予算の組み替え提案は、「都市再生」にかたよった税金の使い方を切りかえることで、緊急の不況対策、老人福祉手当など切りすてられた福祉の復活と、介護保険の負担軽減、乳幼児医療費助成の所得制限の撤廃など福祉と医療施策の拡充、三十人学級など子ども中心の教育の実現とヒートアイランド現象の対策などの環境対策など、都民の切実で緊急の要望を実現し、あわせて、借金依存型の都政運営からの脱却に踏み出すものです。
 残念ながら、各会派の賛同は得られませんでしたが、この提案の方向は、都民の願いと合致しているものと確信するものです。
 予算特別委委員会で、わが党が、石原知事の憲法改正発言にかかわって、公務員たる知事としての、憲法九十九条が定めた憲法尊重擁護義務について質したのにたいして、石原知事が、「九十九条違反で結構」、「私はあの憲法を認めません」と現憲法を否定する重大発言をおこないました。
 そもそも、憲法九十九条は、知事を含め公務員の憲法尊重擁護義務をきびしく定めています。憲法を否定し、尊重擁護する意思がない石原氏の立場は、知事の立場と両立しないものであり、知事としての資格が問われるものです。
 また、石原知事は、イラク問題でも、アメリカの武力攻撃を容認する態度を表明し、さらには、イラクを「淘汰」するのは間違っていないと発言しました。これは、都民の戦争反対の願いをふみにじり、平和的解決をもとめる世界のながれに敵対するものにほかなりません。
 憲法を否定し、好戦的発言をくりかえす石原知事の言動は、都民のきびしい審判をまぬがれないことをもうしのべておくものです。
 また、質疑を通じて、「文明がもたらしたもっとも悪しき有害なものはババア」という女性蔑視発言は、ほかならず、石原知事自身によるものであったことが明白になりました。あらためて、発言の撤回と陳謝することをもとめておくものです。
 ここで一言申し述べておきます。先ほどの、予算特別委委員長の委員長報告のなかで、わが党委員が、質疑の際に使用した資料について、「不適正」なものなどと発言しましたが、そもそも、議員が、調査によって得た資料をもって質疑をおこなうことは、議員の調査権の行使にほかなりません。これを問題視すること自体、議会としてのチェック機能を放棄することにつながりかねないものです。
 さて、来る都知事選挙は、憲法を否定し、平和と民主主義を敵視、福祉・教育などの都民施策を切りすてる一方で、「都市再生」をすすめる逆立ち都政をつづけるのか、それとも、憲法を都政にいかし、平和、民主主義、都民のくらしと福祉最優先の都政に転換するのかが、問われる重要な選挙となります。
 まともな都政への転換を願う都民のみなさんとの共同をひろげ、「住民が主人」の都政を実現するために全力をつくす決意をのべて、討論を終わります。