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■ 議会での質問  日本共産党東京都議団


本会議 討論 二〇〇四年三月三〇日

河野 百合恵(江戸川区選出)

二つのプランによる各種補助金の見直し、都立施設の廃止・縮小すすめる来年度予算案に反対

 私は、日本共産党都議団を代表して、第一号議案、「平成十六年度東京都一般会計予算」ほか六十五議案に反対する立場から討論をおこないます。

 十年以上におよぶ不況にくわえ、小泉内閣の社会保障の改悪をはじめとする七兆円もの負担増による「痛み」が急激に加速しようとしている今日、東京都が「住民の福祉の増進」という自治体の原点に立ちかえって、都民のくらしと営業をまもることに全力をあげることは喫緊の課題です。
 ところが、石原知事が提案した来年度予算案は、経済のグローバル化と公的分野の市場経済化、さらには「小さな政府」のおしつけをすすめようとしている財界および多国籍企業の戦略にそったものであり、「都市再生」とその一方で、二つのプランにもとづく福祉や教育などの切りすてが、おおきな特徴となっているものです。
 知事がシルバーパスや老人医療費助成などの経済給付的事業を中心とした施策の見直しにつづいて策定した「第二次財政再建推進プラン」は、市町村補助をはじめ、七百三十三項目にのぼる、都民生活のあらゆる分野におよぶ補助金を対象としたもので、来年度予算案においても、二十一項目の市町村補助、私立保育園などへのサービス推進費補助、幼稚園保護者負担軽減補助などの削減が具体化され、都民サービスの低下と都民への負担増をもたらそうとしています。
 なかでも、焦点となった私立保育園へのサービス推進費補助は、わが党の質疑をつうじて、サービス推進費補助が質の高い保育を確保するうえで欠かせない支援制度であること、民間企業の参入を前提とした認証保育はあくまでも補完的なものとすべきことなどを明らかにしました。わが党は、ひきつづき、職員の経験年数にもとづいたサービス推進費補助の継続と拡充、公立保育園への補助の創設など、公的保育の拡充をつよく求めておくものです。

 このような福祉施策の切りすてをすすめた結果、来年度予算案では、福祉局予算が三年連続で後退、三年で五百八十八億円も削減されるという結果になり、全国の政令都市を有する自治体のなかでこの五年間で福祉予算を減らしたのが東京都だけという、異常さが明らかにされました。
 また、教育では、定時制高校の統廃合をおしすすめるだけでなく、来年度も予算化が見送られた片道一時間以上もかかる障害児学校のスクールバスや転用教室などの改善の緊急性があらためて明らかにされました。全国の四十三の道府県が何らかのかたちで実施にふみだした三十人学級をはじめとする少人数学級を、都教委がかたくなに拒んでいることも許されません。

 長引く不況のもとで苦しむ中小企業予算は、九年連続で後退させられました。知事査定でカットされた「輝け店舗支援事業」については、おおくの区市や商店街から、復活のつよい要望がだされていることが、わが党の調査でも明らかになりました。
 「第二次都庁改革アクションプラン」にもとづく都立施設の廃止・縮小や民営化では、青少年センターや新宿労政事務所、多摩地域の高齢者授産場の廃止などの条例が多数提案されていますが、いすれも都民生活に欠かせない施設であり、都民や利用者の反対の声が寄せられているものです。
 なかでも、授産場の廃止は、これまで多摩市長会と協議をつづけてきたもので、市側に対しては、これまで必要な施設として受け取りを求めておきながら、市側の合意が得られないとわかると、廃止するというもので、このような乱暴なやり方は、これまでの都政では見られなかったものです。
 大久保病院の公社化や都立公園の指定管理者制度の導入、PFIなど、民間活力の活用が全面的にすすめられようとしていますが、これらの背景には、財界による公的分野の市場開放の要求があることはあきらかであり、このような市場原理に公共サービスをゆだねることは、都民の負担増やサービスの低下を招きかねないものであることを指摘しておくものです。

 石原知事が、これらの都民施策の切りすての一方で強力にすすめている、超高層ビルと大型幹線道路中心の「都市再生」は、その是非が問われるものです。
 これまでわが党は、「都市再生」がヒートアイランド現象など東京の環境をいっそう悪化させ、超高級マンションの供給の一方で、若者や低所得者、高齢者のための住宅難に拍車をかけるものであることを解明してきましたが、くわえて、「都市再生」予算などを中心に、来年度も投資経費がバブル前の二倍の一兆円規模に高止まりし、都財政と都民サービスを圧迫するものとなっていることなど、都財政にとっても、とりかえしのつかないものとなりかねないことをあらためて指摘しました。
 また、借金がほぼ七兆円、都政史上最高の水準に達していることを示し、投資経費の抑制を求めたのに対して、財務局長が予算特別委員会で、他の道府県や国の起債依存度と比較して低く、問題ないという驚くべき見解をしめしました。しかし、他の道府県は地方交付税交付団体であり、借金をしても国がその元金については面倒を見てくれる仕組みになっており、借金は自分の財源で返済しなければならない東京都と同列に扱うことはできません。国についても、課税権があり特定財源やNTT債の売却益などを活用できる国と同列に論じることができないことは自明の理ではありませんか。このような巨額の投資を将来もつづけるならば、やがて、八兆円を超える借金に苦しむことになることを指摘しておくものです。

 新銀行への一千億円の是非も問われましたが、日本共産党の追及によって、すこしでも返済がとどこおれば、ただちにRCC(債権回収機構)や再生ファンドにおくられるシステムとなっており、貸ししぶり、貸しはがしに苦しむ地域の中小業者の役に立たないことが、明らかにされたことは重要です。新銀行はただちに中止し、その予算は、制度融資の拡充、商店街支援など、都民のために役立てることをもとめるものです。
 いま、全国の自治体のなかから、大型公共事業を見直す動きがひろがっており、このことに真摯に学ぶことがもとめられています。さしせまった都財政の立てなおしも、都民サービスの向上も、ムダな大型公共事業に大胆にメスをいれることなしに、あり得ないことを申し述べておくものです。
 日本共産党が提案した、予算の組みかえ案は、「都市再生」など不要・不急、浪費型の公共事業や新銀行への投資などを見直し、予算の四・六%を組み替えることで、都財政の立てなおしにふみだすとともに、これまでに切りすてられたシルバーパスなどの経済給付的事業の復元、若者就労支援をはじめ三十人学級、小学生への医療費助成、個店対策の実施など切実な都民要求に応えようとするものであり、この方向こそが、都民要望にこたえる道であるものと確信するものです。

 さて、今定例会では、「都立大学改革」、東京都交響楽団への有期雇用制度の導入、夜間中学校の日本語教員の削減などについて、議論がおこなわれましたが、共通していることは、これらの問題で明らかになった東京都の問答無用の押しつけに対して関係者、都民の怒りが急速にひろがりを見せていることであり、また、各会派が本会議や予算特別委員会などでとりあげ、都のやり方に対して、疑問や批判を表明したことです。
 とりわけ、昨年八月以降、東京都によるトップダウン方式による大学破壊がすすめられてきた「都立大学改革」は、総長を先頭に、大学関係者がこぞって都の「改革」に反対の声をあげ、複数の教授が退職するなどきわめて異常な事態を迎えました。マスコミも都の強権的なやり方に一様に疑問の声をあげ、法曹界からも批判が寄せられています。今日の事態の責任は、あげて無謀な「改革」をおしつけている石原知事にあることは明白です。「都立大学改革」は中止することをあらためてもとめておくものです。
 東京都交響楽団への有期雇用制導入についても、今日なお楽団員の合意はえられていません。東京都教育委員会が、都立高校などでの卒業式などにおいて、日の丸・君が代を強制していることについて、生徒、父母、学校関係者から、内心の自由の権利をおかすものだとして反対の運動がひろがり、裁判での争いにまで発展するにいたっていますが、この問題でも、混乱の原因をつくりだした石原知事の責任がきびしく問われなければなりません。
 東京都港湾管理条例および東京都青少年健全育成条例はいずれも、民主主義と表現の自由にかかわる重要な条例であります。まず、特定の国籍の船の東京港への入港を阻止するための東京都港湾管理条例ですが、これは、第二十二条第二項で、知事の恣意的判断で、条例の発動を可能とするものであり、このようなやり方が認められることになれば、今後、同様の条例を制定することで、知事の権限が無制限に拡大される危険のつよいものです。
 また、青少年健全育成条例については、事前の審議会での答申を無視して、有害図書の包括指定につながる内容と罰則規定の条項がもりこまれていますが、これらは表現の自由を踏みにじる危険のたかいものであり、いずれも、日本共産党は反対するものです。

 最後に、小泉政権の「改革」と連動して、石原都政の都民施策の見直しがすすめられるなかで、資産を有する一部の富裕層と高齢者、低所得者、若者などとのあいだの所得格差は増大しており、富めるものはますます豊かになり、貧しきものはますますその貧しさをまし、憲法第二十五条がさだめる「健康で文化的な最低限の生活」すら破壊されようとしていることは重大です。日本共産党は、都民のみなさんとの共同をひろげ、都政が都民のくらしと営業をまもるという姿勢に立ちかえらせるために、全力をつくす決意をのべて、討論を終わります。

以上