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■ 議会での質問  日本共産党東京都議団


2004年第2回定例会 文書質問

古館和憲(板橋区選出)

 地震発生時の応急対策の確立について
 都立老人医療センターと豊島病院について

一、地震発生時の応急対策の確立について

 1995年1月17日に起こった阪神・淡路大震災から9年、その後、宮城県沖地震、十勝沖地震など、大規模の地震が、つぎつぎと発生し、日本は「地震の再活動期」にはいったといわれています。首都圏においても、大地震の先触れといわれる地震が群発し、首都直下型地震、東海地震など、かつての関東大地震にならぶ規模の地震に、いつおそわれてもおかしくない状況といわれています。

 日本共産党は、この間、「地震は防げないが、災害は防ぐことができる」という立場から、地震被害を未然に防ぐための長周期波震動対策や、公立小中学校や個人木造住宅への耐震補助の実施などの予防対策について、提案をおこない東京都の対応を求めてきましたが、これに対して都は、積極的に応えようとせず、もっぱら国と区市町村の仕事だとしてないがしろにしようとしてきました。
 また、石原知事は、「東京都震災予防条例」を改定し、「東京における地震被害を未然防止し、被害を最小限にくいとめる」という考えをないがしろにし、地震に対する対応は、「自助、共助、公助」という考えのもとに、自分の命は自分でまもることを強調、東京都の役割はおおきく後退させられることになりました。実際の施策も、予防や応急対策から、震災後の「復興」に力点がおかれるようになりました。

 しかし、このような立場が、いかに間違ったものであるかは、阪神・淡路大震災の重要な教訓のひとつが、地震につよいまちづくりとともに、消火・救急など震災直後のすばやい対応であり、事前のそのための応急対策の確立であったこと、その後、こうした教訓をふまえ、静岡県や宮城県などが個人木造住宅や公立学校の耐震補強への助成や応急対策の強化にふみだしていることからも明らかです。

 国が最近発表した2004年度版の「防災白書」も、災害発生時の被害をどれだけ軽減するかという立場から、「減災」の必要をかかげたことにも注目する必要があります。「白書」は、事前の被害想定と照らし合わせて、どれだけ、実際の被害を軽減できるのかを行政の目的とする「減災」行政を提起するとともに、被害を詳細に想定して、救助のシステムを整備することの必要性などを強調しています。

 そこで、まず被害想定についてです。
 この問題は、昨年の第3回定例会でもわが党議員がただしましたが、東京は、「都市再生」の名のもとに、超高層ビルや地下施設などが急増し、長周期波振動による都市施設の被害などあらたな問題に直面していること、いまだに木造住宅密集地域がほとんど手つかずにのこされ、しかも建物の老朽化がすすんでいることなど、実際に地震に直面した場合に起こるであろう被害と、現在の都の被害想定とのあいだに乖離が生まれていることが指摘されています。
 そこで、こうした状況をふまえた、あらたな視点もふまえた地震被害の想定が必要なのではありませんか、見解を伺います。

 また、当面、現在の地震被害想定にもとづく、避難や人命救助などのための、体制や施設、設備などの対策について、数値目標と達成年度の明確にしてとり組む必要があると、考えますが、答弁を求めます。

 以下、応急対策にかかわって、いくつかの問題について、伺います。
 第一は、都民防災教育センターいわゆる防災館の問題です。
 都民防災教育センターは、立川および本所の防災センターと池袋消防署の3カ所に設置され、おおいときには年間9万人の来館者をかぞえ、震災や消防の学習や、体験コーナーなどでの実習など、都民の防災意識の向上や防災対策の向上などにおおきな役割を発揮しています。
 ところが、この都民防災教育センターの見直しが提起され、池袋の防災館の廃止が検討されていると聞き、驚いています。これは、知事本部(当時)がおこなった2003年度の行政評価の第二次評価で、「センター3館の役割の明確化を図る中で、各館の施設規模をふまえ、3館体制について精査をおこなう必要がある」として、「見直し」を求める評価をおこない、具体的には、池袋防災館を廃止する方向で検討がすすめられていることです。

 しかし、池袋の防災館は、昨年度6万1519人の来館者があり、地域の防災組織や学校の見学にとどまらず、都内の企業の防災担当者がおとづれ、消防ホースをつかった実体験をおこなうなど、地域に密着した施設として、今後もその役割が期待されているものです。実際に、この「行政評価」での第一次評価では、「入館者の87%が施設に満足している」、「94%が防災についても継続した学習を望んでいる」とし、防災センターがおおきな役割をはたしていることを明らかにしたうえで、「災害発生時におけるトータル的な被害軽減つながることから、今後も社会環境の変化や都民のニーズなどに的確に対応し、より、効果的な防災知識、技術の普及をおこなっていく」と、三館体制で施策を「積極推進」していくことの必要を評価しているのです。
 そこで、池袋防災館を存続するとともに、三館体制での施策の拡充をもとめるものですが。答弁を求めます。

 つぎに、市民防災組織の支援についてです。
 あらためて言うまでもなく、阪神・淡路大地震の教訓のひとつは、あの未曾有の震災の中で、被害を最小限に食いとめるうえでおおきな役割を果たした地域住民の力です。なかでも、神戸市長田区の真野地区の住民組織は、日頃から、バケツリレーによる初期消火や、工場の消火水槽や消火設備を活用した消火活動の訓練などをつみかさね、地域のコミュニュティとチームワークづくりにつとめてきたことが力となり、震災の二次被害の拡大を防止するうえで、おおきな役割をはたしたといわれています。
 東京都の場合も、都の震災対策条例の第三四条で、市民防災組織の組織化がうたわれており、都内の町会、自治体単位で文字どおり、網の目のように組織されています。条例はまた、都の責務について、市民防災組織の「育成に対し、支援及び協力を行い、充実が図られるように努めなければならない」と定めています。

 ところが、これだけ重要な組織であるにもかかわらず、実際に、東京都がおこなっているのは、住民防災組織の結成時に、資機材の支給などがおこなわれっているに過ぎません。
 災害がおおきくなればなるほど、救援にまっさき駆けつけられるのは、消防団であり、市民防災組織です。また、この市民防災組織は、地域に根ざしているだけに、町のなり立ちと住民について知りつくしており、他に変えられないおおきな力を発揮するのです。

 市民防災組織に対して、都として、資機材の更新や拡充、さらには運営にあたっての恒常的な支援をおこなうことは、きわめて有意義なものと考えるが、見解を求めるものです。
 帰宅困難者対策は、企業都市化した東京の固有の問題であり、広域行政としての東京都の責務が問われているものです。
 私は、千代田、中央、港、新宿などの都心の区の防災担当者をたずね、話を伺いましたが、共通して訴えられたのは、帰宅困難者対策をすすめているが、大型ビルの急増によって、昼間人口がふえ、帰宅困難者がどれほどに及ぶのか予測つかないほどとなっていると言うことです。
 東京都は現在、大地震が発生した場合の帰宅困難者について、371万人と想定していますが、これは、今日の「都市再生」による都心部での従業者の増加については、考慮していず、現実の帰宅困難者の数は。想定をおおはばにうわまわることは間違いありません。
 また、対応が求められる問題も、代替え交通手段の確保、宿泊施設の確保、通信手段の確保、応急の食料の確保など多岐にわたるものです。
 そこで、まず、「都市再生」の進展というあらたな事態のもとでの帰宅困難者の予測をあらためておこなうこと。また、都のイニシャチブで、関係自治体とのネットワーク化をすすめること。代替え交通手段の確保、宿泊施設の確保、通信手段の確保、応急の食料の確保などについて、目標をさだめ、計画的に対策をはかることを提案するものです。答弁を求めます。

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二、都立老人医療センターと豊島病院について

「都立病院改革マスタープラン」で、都が「板橋の老人医療センターと豊島病院を統合・民営化」の方針をうちだして以降、板橋ではこうした計画にたいして、住民はもちろん板橋区、区議会、区医師会などが、「老人医療センターは『今のままで存続を』」という声を一致してあげています。
 また、豊島病院についても、現在、区移管の可能性について協議がすすめられていますが、そのベースにあるのが区民、医療関係者の間から「都立での存続」の声の強さ、大きさです。実際に、街の声は都立のままでの運営を望んでおり、「区が引き受けて民間委託」をとの方向性を望んでいるものでは決してありません。
 04年度第1回定例会で、石原知事が「老人医療センターについては民営化する」との方針を明らかにしましたが、改めて豊島病院も老人医療センターも、これまでどおり都立都営での存続させることが、都民の期待にこたえるただ一つの道であると考えるものです。
都立老人医療センターは、130年の歴史をもつ「福祉の殿堂」である養育院の中核施設として、老人総合研究所、ナーシングホームなどの老人ホームと連携した三位一体の施設として、都民ばかりか全国的にも大きな役割を果たしてきました。
 都立老人医療センターの最大の特質は、高齢者1人1人に最適な医療を行うために、欧米ではすでに取り入れられ、老人医療の中核となっている「全人的包括的医療」である「チーム医療」に先駆的に取り組んできていることです。この「チーム医療」、いわゆる全人的包括的医療は、診療報酬ではほとんど評価されていないため、民間の医療機関では取り組まれていないのが実態です。しかし、「チーム医療」を積み重ねていくことによって患者さんの社会復帰が早まり、経営面でもメリットが生まれ、老人医療費の引き下げにも貢献することが都立老人医療センターの実践のなかで証明されています。
 こうした「チーム医療」は、一昨年「第二の老人医療センター」などと都がもちあげて開設された東京都江東高齢者医療センターでも行われなかったどころか、今年から、都が病院そのものから手を引き、順天堂病院にまるごと貸し付けるなど、老人医療センターで築いてきた高齢者医療の成果それ自体を継承するものではまったくないことがはっきりとしました。

 今年2月19日、私もふくめた共産党都議団は、愛知県大府市の国立療養所中部病院を調査視察してきましたが、国では高齢者医療の位置づけをさらに高めて、今年3月1日から、この中部病院を国立長寿医療センター・長寿医療研究センターとして、機能・規模をいっそうバージョンアップしてスタートさせました。
 この国立長寿医療センターというナショナルセンターを立ち上げるにあたって、01年8月に、国が「第一回長寿医療に関する基本計画検討会」をもちましたが、そこで折茂肇都老人医療センター院長(当時)が、「長寿医療」について基調報告的な発言をするなど、国立長寿医療センター・長寿研究センターが都立老人医療センター、都老人研究所の研究・実践成果などを取り入れられながらスタートしたことは、「包括医療部(チーム医療)」などが設けられたことなどからも明らかです。

 多忙のなか応対していただいた太田壽城長寿医療センター院長は、全国で「長寿医療機関」として単一なのは、「これまでは、東京の板橋老人医療センターと多摩老人医療センターしかない」と話され、さらに「ナショナルセンターとローカル医療との関りについて」の問いに対して、「長寿医療の対象者は、高齢者患者であり、広範囲には動けない。したがって、ある地域で完結できるモデルが必要」であること。「地域モデルをつくることが、結果として地域医療に貢献するとともに、他方で長寿医療の確立、臨床や基礎研究に生かしていける」「ナショナルセンターだからこそ、地域のなかでしっかりした仕組み、地域モデルをつくっていかなければならない」と、明確にのべられたことは私の強い印象でもあり確信ともなりました。

 国がようやく重い腰を上げて、国立の長寿医療・研究が連携したナショナルセンターを立ち上げたときに、都立老人医療センターを、民営化して、その成果を雲散霧消させては絶対になりません。老人医療センターを都立直営で存続し、老人総合研究所と老人ホームとの三位一体の連携を強化し、愛知県大府市の国立長寿医療センターとともに大きな役割をはたすことこそ、二十一世紀の高齢者の医療の進むべき方向であると確信します。


1、 昨年六月には、板橋区議会が議長、副議長、地元板橋の都議会議員とともに都議会議長にたいして、老人医療センターは都立として存続することを文書で申し入れました。「都立としての存続は」板橋区長をはじめ、文字通り超党派的な要求となっている。この板橋区長、板橋区議会の一致した意向を尊重すべきではないか。

2、 都立老人医療センターについては、老人総合研究所、ナーシングホームなど老人ホームとの三位一体の施設として、世界的にも注目され、国立長寿医療センター・研究所の設立にも大きな影響を与えている。都立老人医療センターの全国的役割、とりわけ高齢者医療にはたしている、都立としての役割がいよいよ重要になっていると考えるがどうか。

3、 「当初の豊島病院との統合民営化」方針を、事実上修正せざるをえなくなったなかで、知事が一方的に「老人医療センターの民営化」を表明したが、「なぜ民営化なのか」「直営ではなぜだめなのか」の説明がない。なんらまともな検討もないままだされた民営化方針は撤回し、二十一世紀の高齢者医療、研究に都立老人医療センターがはたすべき役割について、都民と高齢者医療研究の専門家、地元板橋区と区医師会などの関係者が参加して、十分に検討すべきと考えるがどうか。 それぞれ答弁を求める。

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 都立豊島病院については、都と板橋区との間で区移管についての協議会が設置され議論が始まっています。ところが、その協議の主たる内容が、区移管の時期、区移管後の病院の運営形態、土地・建物・医療機器などの資産の取り扱いなどとなっています。この検討にあたって基軸にすえなければならないのが、「公立の病院としてどのような医療を行うことが必要か」ということです。
 いうまでもなく、公立病院の役割は、第1にその地域で不足している医療分野に責任をもつ。第2に都民・区民とりわけ低所得者や障害者、難病患者などの患者に対して医療をうける権利を保証する。第3に民間ではなかなか担いきれない不採算医療に責任をもつ。第4に、医療僻地への医療の保証を行うことなどです。このことを抜きにして、区移管だけを先行させることは、決してあってはならないことです。

 いま、板橋での自治体運営の病院を考える際に念頭に置くべきものが、都内で一番病床数が多い地区が板橋区だということです。その病床数第一位の板橋区が、例えば、豊島病院で現在、一般小児ベッド数が30床あるのに、区の小児医療についての計画では、その2倍の60床に増床したうえで、病床利用率も95.1%とほぼ満床になることを見込んでいます。しかし、現在の都立豊島病院が年間通じてほぼ満床なのは周産期のNICU、GCUであって、一般小児ベッド30床の利用率が65%程度となっています。一般小児で、無理やり利用率を高めようとすると、区内民間医院等の小児科を直撃することになりかねません。

 板橋区内の地域医療連携が良好なのも、不採算医療といわれる行政的・重点的医療を都立都島病院が行ってきたからです。
 豊島病院がおこなっている精神科救急は、都内4カ所でしかやられていない。感染症は城北ブロックでは唯一で、お産から新生児治療までの一貫した新生児治療・未熟児室を備えた周産期医療のセンター機能や、都内初の末期がん患者の緩和ケアなど、各界から注目されている医療を行っています。これは都立だからこそできるのではないでしょうか。
 「区立病院」構想について区側が、区議会でのわが党区議の質問に対して、「委託がいい」との意向をしめし、直営での運営を否定し、お金のかかる行政的、重点的医療については消極的な見解を表明していますが、これらは本来、都が責任をもってやるべきものであり、区が運営する病院では担いきれないものだからです。

 区が委託した病院が、行政的・重点的医療を行わないで、90%のベッド利用率(現豊島病院は86.9%)を実現しようとすれば板橋区内の民間病院、医院の診療と競合し、かえって地域医療連携を破壊することになりかねません。
 改築オープン直後の豊島病院は、「完全紹介予約制」の過度な宣伝で、改築前よりも都民が以前よりもかかりづらくなった事態に対しても、地域住民などとともに、「いつでも誰でもかかれる病院に」という方向へと、かなり是正され、現在に至っています。民間ではやりきれない不採算部門、行政的・重点的医療を率先して担っていくことにこそ公立病院が担う役割があります。

 都内一番のベッド数をもっている板橋で、都立病院が担っている行政的医療、重点的医療を、引き続き都民に保障することこそ、いまもっとも求められている物と確信します。そこで伺います。


4、 都立豊島病院の行政的医療・重点的医療こそ、都民・医療関係者、とりわけ板橋をはじめ城北地域において、なくてならない必須条件であり、今後とも必要不可欠なものだと考えるが、どうか。

5、 直営でこそ、こうした都民的な役割が発揮できるものであり、直営での存続を図るべきだと考えるがどうか。それぞれ、答弁を求める。

以上