過去のページ

■ 議会での質問  日本共産党東京都議団


2004年第4回定例会 文書質問趣意書

古館和憲(板橋区選出)

一.マンションの震災対策について

 大震災に備えて、被害を最小限に防ぐマンション対策について質問します。
 首都直下地震について「いまは静穏期から活動期の段階に入った」といわれています。東京の直下型地震は、文字通り「政治・経済の中枢をおそうスーパー都市災害」となることが予測され、直接、間接の被害あわせてその被害額が百兆円にも達するとされています。
 まもなく、阪神大震災が10年をむかえますが、その大震災での特徴の一つが、マンションにたいする大きな被害でした。被災地神戸などで多くの建物の震災復旧に関わってきた建築家などの専門家は、阪神・淡路大震災の教訓の一つが、被害を受けたマンションについて、「事前にほんの少し補強されていたならば、どれほど被害が少なくてすんだだろうか」とのべ、「耐震補強によってマンションの耐震性は大幅に改善できる」ことを強調しています。
 首都直下の大地震が「活動期に入った」といわれているなかで、いまこそ阪神・淡路大震災での、マンション被害から教訓を学び、「減災」の立場から早急に対策を講じることがきわめて重要となっています。
 また、都心部を中心に超高層マンションの建設も急増しており、直下型地震にくわえ、先の新潟県中越地区大地震でも発生した長周期波振動や液状化への備えも急がれています。
 都内には100万戸を超すのマンションがあると言われ、都の報告でも約70万戸あるとされ、このうち建築後30年以上たつマンションが20万戸を超えているとされています。
 そこで、第一に、中央防災会議が発表した「首都直下型地震」の予測などをふまえて、東京を最大級の大地震が襲った場合の、マンションの被害の想定をおこなう必要があると考えます。見解をもとめます。また、その際、これらのマンションの悉皆調査をおこない、都として都内マンションの状況を正確に掌握することがかかせませんが、あわせて答弁をもとます。
 先日、私は横浜市におもむいて、マンション対策の事業を調査してきました。同市では、阪神・淡路の被害の教訓から、木造個人住宅だけでなく、震災に強いマンションを目標に、昭和56年以前のマンションを対象に、耐震診断支援事業を実施しています。地震に強いマンションにするためのメニューが、耐震補強を促進するためには「まず耐震診断」だとして、本診断(精密診断)の一つ前の診断として、本診断の必要性の判定を行う予備診断を行っています。すでに対象マンションの七割で予備診断を終えているとのことですが、予備診断がすすんでいる理由として、マンション管理にあたっている理事会の合意(総会ではない)で、理事長が申請することで開始すること。また、マンション居住者に負担はなく、国の補助を利用して国・市それぞれ折半で支出しているとのことです。このことによって、みずからのマンションの健康状態が大まかにつかめ、かつ、震災対策にも関心が集まるとのことでした。
 これにたいして、東京都では耐震診断も耐震補強もおおきく立ちおくれているのが現状です。それは、東京都の場合、維持管理や修繕・建替えは「管理組合や区分所有者が主体となって行なうことが基本」だとして、都の支援策の中心を「ガイドブック」の作成や、「分譲マンション相談マニュアル」の作成などにとどめ、相談業務についても、区や市の仕事だとして、都民の相談を直接受けることをせず、区市から寄せられるものに限定しているからです。しかも、耐震補強に関する問題などは、都の施策としてもまったく視野に入っていないというのが実態です。これでは、耐震の備えがすすまないのが当然です。
 そこで、東京都として耐震診断制度を創設すること、横浜市などが行っているマンションの耐震補強支援事業を独自に行なうことを求めますが、どうでしょうか。
 また、これらのとりくみを実効あるものにしていくためには、耐震補助とあわせて融資など資金面での支援との組み合わせが大事です。横浜市の場合、耐震改修を実施するマンションのために、「マンション共用部分リフォーム融資」として、融資限度額100万円に戸数分を掛けた額で、5000万円を限度とし、無利子で10年返済、無担保でしかも単独融資というものです。都としても同様かそれ以上の融資制度が、いまこそ強く求められています。
 横浜市のような、マンションの耐震補強のための長期、無利子、無担保、単独融資などの創設をおこなう必要があると考えますが。それぞれ答弁をもとめます。
 神戸などでは、マンションの被害で、「中破」以上の被害をうけた多くが、老朽化や保守管理の問題もありますが、とりわけ、1971年の「構造規定」の改正前の建物で被害が目立っているのが特徴とされています。このうち、一般建築のマンションでは10数パーセントの被害率ですが、ピロティ形式の建物では、実に三分の一以上が倒壊をふくむ大被害をうけました。しかも、このピロティ形式の建物被害は、その建築年代に限らず一般のマンションの2〜3倍も被害をうけていることが指摘され、耐震上のリスクがきわめて大きいことが明らかにされています。
 震災対策の専門家からは「被害の軽減こそ首都の危機管理だ」として「減災」対策にこそ力をいれるべきだとの声が広がっているなかで、都が、ピロティ形式のマンションが、どこにどのくらいあるかなどが正確にわからないなどは、心もとない限りです。
 そこで、まず、ピロティ形式のマンションの実態を掌握するとともに、その対策を早急に講じることが必要と考えますが、見解を伺います。
 超高層マンションなどが急増するもとで、地震による家具の転倒、飛来の被害の増大が予想されています。この問題は、消防庁がとりくみをはじめていますが、とりわけマンションにおける家具転倒などによる被害のおそれとその対策の必要についての啓発、必要な転倒防止器具の開発などが急がれていると考えますが、所見を伺います。
 都が2001年まで開設していた飯田橋不動産相談窓口では、不動産とりわけ、分譲マンションにかかわる相談をうけ、マンション居住者にとって頼りがいのある相談室として、また気軽に相談ができると相談室として好評でした。当時、私も直接当所をおとずれ、相談業務の状況を見聞させていただきましたが、話を聞く暇もないくらいのひっきりなしの電話で、忙しく応対していました。ところが、いまは区や市からの紹介で、しかも、専門家の対応が必要と判断されたものだけ受け付けるものへと様変わりし、気軽に相談できるものではなくなっています。
 今日のマンションの急増、老朽マンションの増大のもとで、耐震診断や維持・管理、補強・修理などの相談、管理組合がかかえる問題は急増し、深刻さを増しています。いまこそと都として「いつでも、どこからでも」対応できる相談窓口が待たれています。都民や管理組合などが気軽に相談できる相談室を、都としてあらためて設置することを求めるものです。答弁をもとめます。

以上