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文書質問趣意書

2010年3月30日
大島よしえ(足立区選出)

木造住宅の耐震補強について

 木造住宅の耐震補強についてうかがいます。
 阪神淡路大震災の犠牲者の大半は、木造住宅の倒壊による圧死・窒息でした。中途直下地震による東京の被害想定報告書では、東京湾北部地震マグニチュード7.3が冬の朝5時に起こった場合、建物倒壊による死者は3060人とされているのですから、東京都が「耐震改修促進計画」でかかげている、2015年度までに住宅の耐震化率を90%に引き上げるという目標はなんとしても達成しなければなりません。しかし、都のおこなっている木造耐震改修助成の実績は毎年50件前後にとどまり、耐震改修促進事業の執行率も5.2%にとどまっています。これでは、目標達成にはほど遠いと言わざるを得ません。

Q1,耐震診断・改修をすすめることによる効果は、地震から都民の命を守るだけにとどまりません。都内でも進んでいる自治体の一つである足立区では、区民にとって身近な中小の工務店の方を診断士として養成・登録し、区民の耐震診断にまわってもらっています。このため、区民にとっては、詐欺の心配にあうこともなく、改修工事に進めることができ、また、そこでできた人間関係から、「(バリアフリーのための)手すりをつけることになった」「ドアの立て付けを直してもらった」など、ちょっとした修繕のお願いもできるようになって、業者にとっては、新たな仕事が広がっています。
 2009年の新規住宅着工件数が前年比3割減になるなど、都内の建設業者は、長引く不況に苦しんでいます。耐震診断・改修を進めることは、建設業者の仕事確保という景気対策、地域の高齢者・障害者などの安全と安心を広げるという福祉的効果など、二重三重の効果があると考えますが、都の認識をうかがいます。

A1 木造住宅の耐震診断及び耐震改修を促進するための取組は、景気対策や高齢者等への対応を主眼としたものではなく、都民の生命・財産の保護及び地域の被害の軽減を図ることを目的としています。住宅の耐震化は、自助・共助・公助の原則を踏まえ、まず建物所有者が自らの問題であり、かつ、地域の問題であることを認識し、主体的に取り組むことが不可欠です。このため、都では、耐震化に向けた建物所有者の積極的な行動を促すための普及啓発をはじめ、各種施策に取り組んでいます。

Q2,木造住宅の耐震診断・改修を、高齢者や障害者のためのバリアフリー工事をすすめる福祉施策、建設業者の仕事確保のための景気対策とあわせ、相乗的な効果をあげるため、都市整備局、産業労働局、福祉保健局などが協議する場を設けるなど、総合的な取り組みをすすめるべきだと考えますが、いかがですか。

A2 木造住宅の耐震化は、「!0年後の東京」計画の重要施策のひとつであり、既に「『10年後の東京』を目指した建物の耐震化推進会議」を設置し、関係各局の密接な連携により耐震化を推進しています。

Q3,昨年3月に都市整備局が発行した「住宅リフォームガイド」では、「リフォーム工事とあわせて次のような性能を高める工事をすれば、費用の面だけではなく工事施工の点からも効率的です」として、耐震化、バリアフリー、省エネをあげています。区市町村が実施しているリフォーム助成、バリアフリー助成などと耐震化がセットですすむような制度について検討すべきだと考えますが、いかがですか。

A3 住宅のリフォームは、建物所有者等が個人の事情に応じて行うべきものですが、バリアフリー工事と耐震改修をあわせて実施することで、費用や工事施工の面で効率的に工事を進めることができると考えています。そこで、都では、既に公表している「住宅リフォームガイド」等により、リフォームの機会にあわせた耐震改修の実施についてPRしており、今後とも、区市町村や関係団体等と連携し、普及啓発に努めていきます。

Q4,耐震改修の実績を大幅にふやすために、提案します。
 区市町村の実施している耐震改修助成では、その区市町村全域が助成対象になっているものが大半です。一方、都の木造住宅の耐震改修の助成対象地域は、7000f、都内の23区の面積比で11%に限定されています。このため、2008年度におこなった区市町村の木造耐震改修助成(総合評価1.0以上に引き上げるもの)のうち、都の助成が利用されたのは13%にすぎません。
日本共産党都議団では、都内の区市町村にアンケートをおこないました。そのなかで、都への要望では、「東京都が助成する地域対象の拡大」をあげた自治体が36にのぼり、だんとつ一位でした。具体的記述では、「都の助成対象を全域にしてほしい」という声が圧倒的でした。この区市町村からの要望をどう受け止めますか。

A4 都の木造住宅耐震化助成は、特に老朽化した木造建築物が集積した区域が連担するなど、震災時に大きな被害が想定される整備地域を対象としています。この地域では、震災時に住宅が倒壊した場合、道路閉塞や出火により、避難・応急活動が妨げられるとともに、大規模な市街地火災につながるおそれがあるため、公的助成を行っています。都としては、財源を効率的、効果的に活用する観点から、今後とも重点的に取り組む必要のある整備地域に的を絞って、木造住宅の耐震化助成を行っていきます。

Q5,全国一の改修実績をあげている静岡県では、県内すべての地域の木造住宅を助成対象にして、まず県が一件当たり30万円を、高齢者には40万円を助成しているのです。そのうえに、それぞれの市で5万〜40万円の上乗せするという仕組みをとっています。県が主導することによって、静岡県での木造耐震改修助成の件数は、毎年1500件を超えています。東京都の年間助成件数の実に30倍です。
 東京都でも助成対象地域を、木造密集地域の整備地域に限定せず、都内全域に助成対象地域を拡大すべきだと思いますが、いかがですか。

A5 都の木造住宅耐震化助成は、特に老朽化した木造建築物が集積した区域が連担するなど、震災時に大きな被害が想定される整備地域を対象としています。この地域では、震災時に住宅が倒壊した場合、道路閉塞や出火により、避難・応急活動が妨げられるとともに、大規模な市街地火災につながるおそれがあるため、公的助成を行っています。助成対象地域を整備地域外に拡大すると、限られた財源が薄く広く分散されることになるため、都としては、財源を効率的、効果的に活用する観点から、今後とも重点的に取り組む必要のある整備地域に的を絞って、木造住宅の耐震化助成を行っていきます。

Q6,命を守ることを最優先にする立場から、都が耐震シェルターへの助成をはじめたことはおおいに歓迎します。耐震シェルター助成の対象は、木造密集住宅の整備地域に限定していません。なぜ、このような違いがうまれるのですか。

A6 都は、阪神淡路大震災等で、多数の高齢者等が犠牲になっていることを踏まえ、住宅の倒壊から高齢者や障害者等の生命を守るために、緊急に対応すべき施策として、耐震シェルター及び防災ベッドの設置費用助成を実施しています。一方、特に老朽化した木造建築物が集積した区域が連担する、防災都市づくり推進計画に定める整備地域では、震災時に住宅が倒壊した揚合、道路閉塞や出火により避i難・応急活動などが妨げられるとともに、大規模な市街地火災につながることから、木造住宅に対する公的助成を行っています。

Q7,足立区や墨田区では、ひと部屋耐震改修や2階建てのうち1階だけの改修など、総合評定1.0にいたらないまでも、少しでも耐震性が向上する耐震改修にたいしても助成をおこなう簡易改修助成をおこなっています。区の担当者は、「2階に多少問題があっても、1階だけもてば命は助かる。簡易改修だと90万円前後と負担が軽いので、これを選ぶ家が非常に多い」「とくにうちの区は(収入の少ない)高齢の方が多いので、現実的な選択だと思う」「シェルターは部屋の中にさらに部屋をつくるようになってしまうので、部屋ので部屋が狭くなるという弱点があるうえ、いつも、その部屋にいれるわけではない」と話しています。
 耐震改修をすすめるには、「まずは命を守りたい」「経済的な負担の少ないやり方にしたい」「自分の部屋はいまのまま使いたい」など、都民の願いと実情にそくして、活用しやすい柔軟なしくみをつくることが大事です。
 ひと部屋改修など部分改修にも助成をおこなうべきではありませんか。
 総合評定1.0以上にならないまでも、少しでも耐震性を高める工事にたいしても助成すべきではないですか。
 総合評定1.0以上に一度にならなくても、何回かに分けて、改修を進め、1.0以上にする場合にでも、助成すべきではありませんか。
 それぞれお答え願います。

A7 ひと二部屋改修や単に何回かに分けて行う改修への助成については、住宅の耐震性能が十分に向上するとは限らず、地震発生時に倒壊し、道路閉塞を引き起こす可能性があることから、助成対象として適切でないと考えます。一方、建物の倒壊による道路閉塞の防止や、建物全体の耐震性が将来的に確保されることを前提とした、段階的な改修に対する助成については、既に検討を開始しています。

Q8,今年度の都の事務事業評価でも、耐震改修促進事業の実績があがらない理由として、都市整備局も、建物所有者の耐震化に対する意識の低さとともに、「耐震化に係る費用負担の不安などを原因として、所有者が耐震化に踏み切れない現状がある」ことをあげています。また、3月18日の都市整備委員会でも、木造住宅の耐震改修が進まない理由について、耐震化に取り組むか否かは所有者の意思にゆだねられていることと同時に、耐震改修に際し、自己負担が発生し、改修の方法によっては多額の経費がかかり、工事にかかる費用面の資金繰りが困難であると答弁された。であるなら、「費用負担への不安」「費用面の資金繰りの困難」にこたえるため、都としてどのような対策を考えていますか。

A8 住宅の耐震化は、自助・共助・公助の原則を踏まえ、まず建物所有者が自らの問題であり、かつ、地域の問題であることを認識し、主体的に取り組むことが不可欠です。しかし、特に老朽化した木造建築物が集積した区域が連担する、防災都市づくり推進計画に定める整備地域では、震災時に住宅が倒壊した場合、道路閉塞や出火により避難・応急活動などが妨げられるとともに、大規模な市街地火災にっながることから公的助成を行っています。また、23区内では、昭和57年1月1日以前からある家屋で、平成27年12月31日までに、耐震改修工事等を行った住宅にっいて、固定資産税・都市計画税の減免措置を実施しており、建物所有者の負担の軽減を図っています。

Q9,「費用への不安」「資金繰りの困難」にこたえるために以下のことを提案するものです。
 都の改修助成では、改修工事のモデルケースを150万円としており、その半分の75万円のうち、国が45%の33万円、都が27.5%の21万円、区市町村が27.5%の21万円を負担するとして、都の助成の上限額を21万円にしています。しかし、実際には、200万円を超えるケースも少なくありません。150万円以下の工事でも、都民の負担は75万円と重いものです。都の助成の上限額、助成割合を引き上げるべきではありませんか。
 都内の区市町村や他県でもおこなわれているように、経済的な力の弱い高齢者世帯、障害者世帯、非課税世帯に対して、助成額の上乗せをすべきではありませんか。
 それぞれお答え願います。

A9 住宅の耐震化は、自助・共助・公助の原則を踏まえ、まず建物所有者が自らの問題であり、かつ、地域の問題であることを認識し、主体的に取り組むことが不可欠です。しかし、特に老朽化した木造建築物が集積した区域が連担する、防災都市づくり推進計画に定める整備地域では、震災時に住宅が倒壊した場合、道路閉塞や出火により避難・応急活動などが妨げられるとともに、大規模な市街地火災にっながることから公的助成を行っています。また、阪神淡蕗大震災等で、多数の高齢者等が犠牲になっていることを踏まえ、住宅の倒壊から高齢者や障害者等の生命を守るために、緊急に対応すべき施策として、耐震シェルター及び防災ベッドの設置費用助成を実施しています。都としては、耐震化に向けた建物所有者の意識を高め、積極的な行動を促すことが重要と考えており、普及啓発にさらに取り組むとともに、各種施策を着実に実施していきます。従って、ご指摘のような助成額や助成割合の引き上げは考えていません。

Q10,耐震シェルターや防災ベッドにたいしての都の助成割合は設置費用の4分の1以内ですが、1世帯あたりの限度額は7万5千円としています。つまり、設置費用のモデル額を30万円としているのです。しかし、都が補助対象として指定している耐震シェルターで、設置費用が30万円以下の設備は「一部屋型 木造耐震シェルター」25万円、「ベッド型 防災ベッドBB-202」21万円ぐらいで、他は30万円以上、なかには、耐震シェルター鋼耐震が143万円から、耐震シェルター「レスキュールーム」277万円などと30万円を大幅に超えているものもあり、実情とあっていません。都が補助対象を限定して指定しているのですから、都が費用を4分の1負担するためには、費用額にふさわしく上限額をひきあげるのが当然ではありませんか。

A10 住宅の耐震化は、自助・共助・公助の原則を踏まえ、まず建物所有者が自らの問題であり、かつ、地域の問題であることを認識し、主体的に取り組むことが不可欠です。都は、阪神淡路大震災等で、多数の高齢者等が犠牲になっていることを踏まえ、住宅の倒壊から高齢者や障害者等の生命を守るために、緊急に対応すべき施策として、耐震シェルター及び防災ベッドの設置費用助成を実施しています。都の事業で紹介している耐震シェルター等は、ベッドを囲う簡易な装置から部屋全体を補強する構造まで幅広い内容になっています。都では、生命を守るために最低限必要な機能を有していることを前提に助成額を設定しているものであり、上限額を引き上げる考えはありません。

以上