2013年第3回定例会 文書質問趣意書 10月9日

河野ゆりえ(江戸川区選出)

江戸川区内のスーパー堤防建設問題について

                      

 東京都は今年6月、「平成26年度 国の施策及び予算に対する東京都の要求提案」を、国に提出しました。都が国土交通省に要求した項目に、「高規格堤防(スーパー堤防)事業を着実に推進」と、「土地区画整理事業の推進に必要な財源の確保」があります。この2つの項目に関連して、以下、質問します。

Q1.平成25年度の国の予算に対しても、東京都は、高規格堤防事業(以下、スーパー堤防事業と記述)の推進に予算措置を行うよう要望を出しています。スーパー堤防事業は、2012年の会計検査院による調査で、全長872kmの事業目標に対して、わずか1.1%しか完成していない事実が明らかになりました。これまでの進捗で計算すると、総 延長完成まで、2200年もの時間かかってしまうことになります。
 堤防は、川に沿って連続的に強化されていなければ、治水の役に立ちません。
 スーパー堤防は、越水や津波、高潮には効果がない構造であるというのは、これまで、様々な角度から指摘されてきたところです。東京都は、「国への提案要求」に、「水害から都民の命と暮らしを守るために堤防の安全性向上は不可欠」と記しています。しかし、進捗状況からの計算で、2200年もの時間を要し、治水効果がないと指摘されているスーパー堤防事業で、都民の生命と財産を守ることができると、お考えなのでしょうか。お答えください。

Q2. 今年8月5日付の朝日新聞は、次のように報じています。「『無駄な公共事業』として白紙になった国のスーパー堤防事業が、今年度から本格的に再開する。東日本大震災を受け、首都圏と近畿圏の人口密集地に絞って整備を進める方針に切り替えて、復活した。大洪水でも溢れない堤防を造るとしているが、その効果には依然として疑問の声が絶えない」とし、事業が実施になった各地域の関係住民の声を紹介しています。また、8月25日の東京新聞も、「ゾンビ事業動き出す」「住民に怒り、困惑」と見開きの記事を掲載しました。
 スーパー堤防関係住民や、市民団体、専門の研究者などの意見を紹介した、これらの報道を東京都は、どのように受け止めているのでしょうか。お聞きします。

Q3.平成25年度、平成26年度と、都は連続して、国への「提案要求」で、江戸川区内のスーパー堤防事業と、北小岩1丁目東部地区(18班地区)区画整理事業の促進を要求しています。
 今年度、国土交通省は、江戸川区北小岩1丁目18班地区のスーパー堤防事業に、12億円の予算をつけました。スーパー堤防事業は、河川法により、事業費の3分の1を国直轄事業負担金として、東京都が支出しなければなりません。今後、事業が進むとすれば、費用は増大します。
 さらに、北小岩1丁目東部地区の区画整理事業にも都の補助金が投入されます。この地区の区画整理事業費の見込みは約44億円、そのうち都補助金は約5億円となっています。スーパー堤防事業は国が施行、区画整理事業は江戸川区が施行者ですが、東京都にも大きな財政負担がかかってきます。
 防災、治水を看板にした巨大開発とも言える事業に、東京都が大きな財政支出をすることについて、都民の合意が得られるとお考えでしょうか。
 お答えください。

Q4.江戸川区内の北小岩1丁目18地区、また、篠崎地区では、スーパー堤防事業と区画整理事業に地域住民の強い反対運動が続いています。
  特に、北小岩1丁目18班地区では、施行面積の9%を占める地権者11人が、事業の不当性を訴えて、2011年11月11日に東京地方裁判所に提訴し、裁判がたたかわれています。地域住民が合意していない事業に対して、東京都はどのような住民意向調査を行いましたか。国に対して、提案要求を行った背景、理由と合わせて、お答えください。

  

Q5.北小岩1丁目18班地区の区画整理事業施行区域は、北は国道14号線、南はJR総武線、西は旧千葉街道、東は江戸川土手という地形で、1.4ヘクタールの狭い面積です。区画整理事業は事業決定がされましたが、そのなかには、東側の江戸川土手と道路部分は入っていません。
 今年5月30日、江戸川区と国土交通省は、「北小岩1丁目東部地区区画整理事業」と「北小岩1丁目地区高規格堤防整備事業」を共同で行うとして、「基本協定」を締結しました。この協定によって、2つの事業が共同で行われることになります。また、区画整理事業地区に入っていなかった、東側江戸川土手法面を含めた道路部分まで、事業の施行面積が広がります。これらの問題は、事業計画の変更手続きが必要なほどの、大幅な計画変更ではないか、という意見が出ています。
 今年7月、江戸川区は地域住民に対して、「今年12月16日から仮換地指定の効力が発生する」との文書を発送し、重ねて、「建築物等除却通知紹介」なる公文書が送付され、住民追い出しとも言える強引な手法が取られています。事業計画の変更が必要との意見が出ていることについて、都はどのようにお考えですか。また、裁判係争中のなかで、強引に事業に従うことを求めるような手法について、いかがお考えですか。事業に対して、東京都は財政負担を負うわけですから、住民合意に基づく事業のあり方を目指して、国や区に働きかけていただく努力を求めるものですが、どうでしょうか。それぞれお答えください。

Q6 スーパー堤防と合わせた街づくりが進んだ場合、施行地域全体が河川法による「堤防」の位置づけになり、単なる宅地ではなくなります。堤防内は、土地所有者に、建築物の制限などが課せられます。例えば、住宅を建設する場合、建築基準法の定めと合わせて、河川法の定めも守らなくてはならなくなります。地下に入れる杭の深さなどに規制があり、個人の財産権を狭める事態が発生します。治水効果が疑問視されているだけでなく、個人の財産権にまで影響が及ぶことを、どう考えますか。治水の効果が期待できないスーパー堤防事業は、撤回が妥当と考えます。これらの点についてご答弁下さい。

Q7 災害に強い東京の街づくりは、都民みんなの要望です。「自然災害は避けられないが、被害を最小限に留める対策を講じる」という、防災、減災の考えに立ち、施策を講じる必要があります。 @ 東京東部低地帯の河川堤防耐震化について、わが党が継続的に要求し、都が昨年12月に「東部低地帯の河川施設整備計画」を定め、大地震の際の河川堤防の耐震度をレベル1からレベル2に引き上げたことは、貴重な前進です。さらに、引き続き、東京都が災害への備えに力を尽くしていただくことを求めます。

A 江戸川区を含めた東部低地帯は、河川護岸からの溢水対策も重要ですが、より強めなくてはならないのが、下水道などからの内水氾濫だと言われています。 内水氾濫対策として、必要な地域への下水道貯留管の敷設、雨水枡を増やすこと、透水性舗装の普及、墨田区などが実施して来た住宅への雨水貯留タンクの補助など、様々な対策を講じるよう、都の努力を求めるものです。それぞれお答えください。

 これらは、気が遠くなるほどの歳月がかかり、巨額の財政投入をしても治水効果がないスーパー堤防事業より優先すべき課題ではないでしょうか。以上の質問について答弁を求めるものです。

働きかけていただく努力を求めるものですが、どうでしょうか。それぞれお答えください。

回答5 都は、土地区画整理法に基づき、事業計画のうち、『設計の概要』について・道路や公園などの技術的な基準に加え・環境や防災性などの観点から審査し、認可を行っています。また、江戸川区の単独事業からスーパー堤防との共同事業へ移行しても土地区画整理事業の施行区域は変わらないため、事業計画変更の必要はありません。これまで区が説明会、懇談会などにより、住民への十分な情報提供を行ってきており、適切に事業を進めていると都は考えています。

Q6 スーパー堤防と合わせた街づくりが進んだ場合、施行地域全体が河川法による「堤防」の位置づけになり、単なる宅地ではなくなります。堤防内は、土地所有者に、建築物の制限などが課せられます。例えば、住宅を建設する場合、建築基準法の定めと合わせて、河川法の定めも守らなくてはならなくなります。地下に入れる杭の深さなどに規制があり、個人の財産権を狭める事態が発生します。治水効果が疑問視されているだけでなく、個人の財産権にまで影響が及ぶことを、どう考えますか。治水の効果が期待できないスーパー堤防事業は、撤回が妥当と考えます。これらの点についてご答弁下さい。

回答6 国のスーパー堤防整備は、地震や豪雨による水害から都民を守るために必要な事業です。堤防の安全性を確保するため河川法による一定の規制はありますが、通常の区域に比べて緩和されています。

Q7 災害に強い東京の街づくりは、都民みんなの要望です。「自然災害は避けられないが、被害を最小限に留める対策を講じる」という、防災、減災の考えに立ち、施策を講じる必要があります。 @ 東京東部低地帯の河川堤防耐震化について、わが党が継続的に要求し、都が昨年12月に「東部低地帯の河川施設整備計画」を定め、大地震の際の河川堤防の耐震度をレベル1からレベル2に引き上げたことは、貴重な前進です。さらに、引き続き、東京都が災害への備えに力を尽くしていただくことを求めます。

回答7-1 都では、これまでも都民の安全・安心を確保するため、堤防などの耐震対策を継続的に進めてきましたが、東日本大震災を踏まえ、昨年12月に最大級の地震が発生した場合でも津波等による浸水を防止するため、新たな整備計画を策定し、水門、排水=機場や堤防などについて2022年までに耐震対策を完了させることとしました。引き続き、事業の推進を図っていきます。

A 江戸川区を含めた東部低地帯は、河川護岸からの溢水対策も重要ですが、より強めなくてはならないのが、下水道などからの内水氾濫だと言われています。 内水氾濫対策として、必要な地域への下水道貯留管の敷設、雨水枡を増やすこと、透水性舗装の普及、墨田区などが実施して来た住宅への雨水貯留タンクの補助など、様々な対策を講じるよう、都の努力を求めるものです。それぞれお答えください。

 これらは、気が遠くなるほどの歳月がかかり、巨額の財政投入をしても治水効果がないスーパー堤防事業より優先すべき課題ではないでしょうか。以上の質問について答弁を求めるものです。

回答7-2 東京都は、平成19年度に定めた東京都豪雨対策基本方針に基づき、対策を進めています。江戸川区を含めた東部低地帯においても、これまでに、下水道幹線やポンプ所、雨水貯留施設などを整備してきています。今後も、必要に応じて対策を進めていきます。