2014年第4回定例会文書質問趣意書   12月22日

曽根はじめ(北区選出)

北区内の特定整備路線について

 東京都が「木密地域不燃化10年プロジェクト」の一環として特定整備路線を計画してから3年が経過しようとしており、都はこの間「特定整備路線28路線全てについて、平成26年度中に事業認可を受ける」との方針を繰り返し強調しています。
 しかし北区内の特定整備路線である補助81号線、補助86号線、補助73号線については、いずれも説明会は開かれたものの、地権者を含めて沿道住民の理解を得られたと言える状況でないことは明らかです。
 補助81号線については、北区長の異例の要請を受けて、都は区内計画道路の大部分を特定整備路線から除外せざるを得なくなりなりました。さらに特定整備路線に残された谷田川通り以南の方や、豊島区部分の方々から、都市計画の廃止を求める陳情も出されています。
 補助86号線については沿道の3つの地域で、それぞれ計画撤回・見直しを求める住民運動が起きています。志茂1丁目地域については当該する志茂1丁目町会のかなりの部分が道路を拡幅せず現状のままを要望しています。赤羽西4丁目付近では、静勝寺を中心に稲付城以来の史跡保存の立場から道路建設に反対しており、赤羽西5・6丁目では赤羽自然観察公園とスポーツの森公園の利用者等が道路整備による公園の分断に反対し、この地域がすでに公園や緑地で延焼防止の十分な機能を持っていることから延焼遮断帯を新たに整備する必然性が無く、都市計画道路としても他の道路で代替するよう求めています。
 補助73号線は、現道が無い上に圧倒的に民有地であり、集合住宅や商店街店舗の倉庫なども多く、地域のコミュニティーや商業活動に多大な影響を与えることから、整備のための買収や立ち退きが困難を極めると予測され、さらには補助85号線(通称区役所通り)との接合部分における十条駅前再開発事業が、準備組合から組合設立に至らないまま再開発ビル事業の採算問題で計画練り直しが必要とされつつあるなど、道路が目標年次に完成する見通しが全く立たなくなっている現状です。
 こうした状況の下で北区内の3つの特定整備路線については、改めて沿道住民をはじめ関係住民に対して、計画の緊急性とともに法律や行政手続きについての正当性を積極的に示せなければ、住民の理解と協力が得られないことは明らかと考えます。
 本質問においては3つの路線の法的根拠や事業化の見通し、代替案の検討などについて質問し、また各路線について個別の課題について質問します。

Q1. 都市計画道路の第3次事業化計画との関係については、北区内の3つの特定整備路線のうち、補助86号線の志茂1丁目部分と、補助73号線の区役所通りから90メートルの駅前部分以外の部分、さらに補助81号線については2004年度から2015年度までの優先整備路線から除外されました。また計画路線内の建物の建替え基準が緩和されたこともあり、86号線や81号線の予定地ではこの10年以内に新たに建て替えや新築を行った住宅が多数に上ります。その多くが特定整備路線に指定されたことで「立ち退いてまた新築を建てれば2重ローンを抱える」との深刻な悩みを抱えています。都の買収費用では移転改築費用を賄うのは困難であり、近隣に代替地も用意されていません。
 都の第3次事業化計画では阪神大震災を教訓に幹線道路の延焼遮断効果について既に検討されているのですから、その際、優先整備路線から除外された地域については少なくとも特定整備路線の見直しも検討すべきではありませんか。

Q2. 3つの路線の関係住民については、私たちの調査によれば、すでに住民への説明会も終了しているにもかかわらず現在の段階でいずれも地権者の約半数またはそれ以上が事業の前提となる測量に協力することを認めていません。このまま予定通り近日中に事業認可を申請すれば、大半の住宅等を測量しないままの申請となり、重大な混乱を招きかねません。地権者の協力を得られる新たな打開策はあるのですか。

Q3. 都市再開発事業では、再開発組合を設立し、地権者全員について組合加入を義務づけるため、少なくとも3分の2以上の地権者の同意がなければならず、地権者には現在と同等かそれに近い権利床が保障されます。ところが道路事業では、近隣に代替地もなく権利も十分保障されないにもかかわらず、いったん事業認可されれば最終的には土地収用法に基づく強制的な立ち退きが控えています。
 したがって特定整備路線に多数の地権者が明確に反対している場合には、2020年までの期限内に完成させることを理由に強権的な手法をとることはしないと約束すべきですが、どうですか。

Q4. 北区内の3つの路線は、いずれも昭和21年4月25日の戦災復興院の告示第15号をもって都市計画決定の法的根拠とされています。
 しかしこの際、告示に「内閣総理大臣ノ決定アリタリ」と明記されているにもかかわらず、その根拠となる閣議決定の文書が存在しないとの研究者の指摘があります。
 この際の決定経過については、閣議決定はされたが決定文書が残っていないとの説と、戦時立法措置として閣議決定は省略されたとする説、さらにはこの告示直前に復興院が自らの決定で閣議決定を代行できるよう上申書を提出していた記録があることから、この代行措置が取られたとの解釈が存在しますが、都はどのように認識していますか。

Q5. いずれにしても、当時の復興院による都市計画道路の決定には、現行法に定められた公聴会や都市計画案の縦覧と意見書の提出など住民が意見を述べる場も全く存在せず、密室の机上で線引きが行われ、それがそのまま法律として決定されたことは明らかです。今日までその決定が、路線位置に関して住民意見を一切取り入れる必要がないことの根拠とされていることには、国民主権の立場から大きな疑問を抱かざるを得ません。都は改めて路線ごとに事業化を進めるにあたって、少なくとも今日の都市計画法に基づく法的な根拠づけを行うことが必要だったのではありませんか。

Q6. 北区内の都市計画道路については、10年前に補助85号線の赤羽台3丁目部分について、八幡神社の参道との整合をとる等の目的から、路線の一部変更に踏み切りました。すでにこうした措置も取られていることを考慮すれば、都市計画道路の整備が、あまりに多数の住民の利益と競合したり重要な都の史跡の価値を損ねるような場合、路線の変更を検討する余地はありうると考えられますが、どうですか。

Q7. 補助86号線の赤羽西4丁目付近の道路計画について、昭和40年代に北区が事業化の説明会を住民に行った事実があると聞きますが、その記録はあるのですか。その際、事業化に至らなかった理由はなんだったのか、また今回改めて事業化するにあたって、その当時の住民意見は検討されたのですか。当時は、トンネルによる道路建設の計画提案に対して、地権者から強い反対があったと聞きますが、今回は当初計画でトンネルか掘割かを示さなかったのは、批判を回避するためですか。

Q8. 補助86号線の志茂1丁目付近については、都による延焼遮断効果のシミュレーションの結果、延焼遮断効果はほとんど上昇しないと聞きました。当該部分は第3次優先整備路線から除外されていただけに、住民からは、2020年までに完成させるという特定整備路線の指定そのものに大きな疑問が上がっていますが、どう答えますか。

Q9. 補助73号線については地元住民から、いかに道路建設が住民にとって犠牲が大きく、測量や買収が困難であるかを、知事が現場を視察して認識してほしいとの強い要望が出されています。知事も「現場に足を運ぶ」との姿勢を示しており、ぜひ実現させていただきたいが、どうか。

Q10. 補助73号線に期待されている延焼遮断効果については、その東側150メートルに並行して走るJR埼京線を立体化事業で地下化することによりオープンスペースができることから、ほぼ同じ効果が期待できます。埼京線を高架でなく地下化することによる費用の増額分は、補助73号線を整備する費用や住民立ち退き・コミュニティー破壊などの犠牲に比べてより小さな負担で済むと思われますが、どうですか。