2014年第3回定例会 文書質問趣意書 10月1日

小竹ひろ子(文京区選出)

一、子どもの貧困問題解決のために

 子どもの貧困が深刻な社会問題になっています。親が夜遅くまで働いているために朝に起きられない、朝食を食べていない、ユニフォーム代や遠征費など親の負担を気づかって入りたい部活をがまんし、「お金のかからない部活はどれか」と聞いて入部する、修学旅行や遠足も欠席するなど、貧困が子どもの学校生活をゆがめ心に傷を与えています。
 子どもの6人に1人が貧困状態という深刻な状態にあります。今年発表された2012年の相対的貧困率は16.3%と、2009年に比べ0.6%増、過去最悪の状況になりました。なかでも、母子家庭の多いひとり親世帯の貧困率は54.6%をこえており、経済協力開発機構(OECD)加盟33ヵ国中最悪の水準になっています。
 子どもの貧困の解決は、緊急課題として位置づけられなければなりません。昨年議員立法で成立した「子どもの貧困対策の推進に関する法律」に基づく「大綱」が、今年8月に閣議決定されました。「大綱」は教育の支援・生活の支援・保護者に対する就労の支援・経済的支援の4分野の支援策をまとめましたが、既存事業が中心で、子どもの貧困対策に関する検討会(有識者会議)などが求めていた子どもの貧困率改善の数値目標設定や、給付型奨学金の導入、ひとり親家庭のへの児童扶養手当の対象年齢引上げ等などが、財源の裏付けがないとして検討会提言から後退しています。
「家庭に学習机などなく勉強する習慣がない」「基礎ができていない」など、子どもの貧困は深刻な問題を生んでいます。母子家庭などでは低賃金で、ダブル、トリプルワ−クで夜遅くまで働いているため、子どもにかかわるゆとりがないなどの実態があります。  9月に発表された東京都「長期ビジョン(仮称)」中間報告には、最悪の水準になっている子どもの貧困対策は全くふれられていません。一方、わが党の代表質問に都は、「貧困は子どもたちの生活や成長にさまざまな影響を及ぼすため、子どもの将来がその生まれ育った環境によって左右されることのないよう、また、貧困が世代を超えて連鎖することのないよう、福祉、教育、就労と言った面から必要な環境整備を図っていくことが重要であると認識しております」と答えています。

Q1、東京都が福祉先進都市を標榜するのであれば、子どもの貧困を解消するため、保護者の就労を含めた総合的な「子どもの貧困対策計画」を都として策定すべきです。国も、地域実情をふまえた計画策定を求めています。いかがですか。

 「子どもの貧困」を解決し、貧困の連鎖を断つ上で、教育を受ける権利の保障は欠かせません。以下、教育にしぼって質問します。
 憲法26条は、教育を受ける権利と保護者の子どもに教育を受けさせる義務、および義務教育無償を定めています。しかし義務教育無償といっても、実際には国公立小・中学校の授業料と私立も含めた小・中学校の教科書の無償にとどまっています。
 義務教育を受けるために保護者が払う経費は、学校給食費や学用品費、クラブ活動費、修学旅行費など、子ども1人あたり公立中学校では年間約17万円、公立小学校では約10万円にも上ります。塾などに行かなくてもこれだけの費用を義務教育でも
払わなければなりません。その負担は年々増え、4月からの消費税増税も追い討ちをかけ、保護者の肩に重くのしかかっています。
 こうした中、経済的な理由で就学が困難な児童生徒の保護者に学用品費や学校給食費などを支援する就学援助制度は、子どもの教育を支える重要な役割を果たしています。ところが、その就学援助制度の所得基準となっている生活保護の基準が、昨年8月に引下げられ、今後も引下げが予定されています。これにより就学援助の対象外となる世帯が生じないよう国は財政措置を講じましたが、2013年度限りにとどまっています。しかし、生活保護基準引き下げの影響回避を地方自治体まかせにするべきではありません。
また2005年には、就学援助の準要保護世帯の国庫補助金が一般財源化され、区市町村では、その所得基準を引下げざるを得ない状況も生じています。

Q2、小中学校における就学援助制度が生活保護基準の見直しによる影響を受けないよう、財政措置を講じることや、一般財源化した準要保護世帯への国庫補助金を復活するなど制度の拡充をはかることを国に求めるべきです。いかがですか。

Q3、合わせて貧困世帯のセーフティネットである生活保護基準の切り下げを行わないよう、国に求めるべきです。見解を伺います。

Q4、今年は、生活保護基準引下げによる影響が出ないよう、多くの区市町村が努力をして、従来の所得基準を維持しています。また、準要保護の所得基準は、都内区市町村によりまちまちです。東京の子どもたちがどの子も等しく安心して学べるようにする第一歩として、都が区市町村を補助して所得基準を引上げ、就学援助制度を拡充することを求めます。いかがですか。

Q5、消費税8%増税をうけた就学援助単価の増額の対応が自治体によりまちまちです。どの自治体もすべての援助費目の支給額に消費税分の上乗せをきちんできるよう、都区財政調整交付金に就学援助単価の増税分を上乗せすることを求めます。

Q6、また就学援助制度の対象者を掘り起こし、受給漏れをなくすためにも、これを扱う学校事務職員の役割は重要です。少なくとも国基準に見合う正規職員の配置を各学校に行うことを求めます。

 1年間の学校給食費は、小学生が平均で4万円を超し、中学生では5万円を超えています。消費税増税も加わりその負担は年々重くなっています。文部科学省が2014年1月に発表した給食費未納調査でも、学校関係者が「34%が親の経済的理由だ」と答えています。
 お隣の韓国のソウル市では学校給食無償化を実施しています。国内でも1951年に山口県和木町の小学校で始まり、中学校に拡大しました。近年では少子化対策として、学校給食の完全無償化が、北海道三笠市、兵庫県相生市などの自治体に広がっています。山梨県早川町、丹波山村は2012年から、給食費、教材費・修学旅行費なども合わせて実質義務教育無償化を実現しています。
 就学援助は申請しなければ受けられません。低賃金でダブル、トリプルワークで必死に子育てをしている母子家庭やDVを受けている外国籍の母親など、一番困難を抱え必要としている人が、受給漏れになっているケースをなくすためにも給食費の無償化が求められています。
 また、多摩地域の市町村の中学校給食は、デリバリー給食など給食費前払いの注文制になっている自治体があります。これらの中学校では給食の喫食率も高くなく、お弁当も給食も食べない生徒がいます。朝食欠食の子どもの多くが母子家庭など貧困家庭だといわれているなど、1日の食事を給食に頼る子どもがいることを考え合わせると、少なくとも食を保障し、どの子もおいしく暖かい給食を食べられるようにすることが重要です。そのためにもデリバリー方式でなく自校調理などによる給食の実施と、給食費無償化の方向を目指すべきです。
 東京が給食費等の無償化を実現すれば、全国に大きな影響を与えるでしょう。

Q7、学校給食無償化の一歩として、都内のすべての小中学校でおいしく暖かい完全給食を実施し、保護者の給食費負担を軽減するため、食材費に対する補助制度を確立すべきですが、見解を求めます。

 高校教育にとっても、貧困問題は深刻です。

Q8、2010年度に高校授業料の無償化が実現しましたが、今年4月より所得制限が導入され就学支援金制度となりました。高校生の学びを社会で支えるという理念の応対も問題ですが、同時に、所得制限の導入は現場の混乱を招いています。本来支援金を受け取れる家庭の子どもであるにもかかわらず、所得の証明が出せないために、受けられないケースが生まれかねません。
 高校授業料無償化は世界の流れでもあります。貧困の連鎖を断ち切るためにも、国に対し無償化を要求していくべきです。見解を伺います。

Q9、都として年収350万円以下の家庭の高校生は、私立学校でも授業料ゼロになるよう、授業料補助などの制度の拡充を求めます。

 アルバイトをしながら高校に通う生徒も多くいます。高校は教科書をはじめ学用品などすべてが自己負担です。専門高校の教科書は2,000円以上もするものもあり、授業料以外の学費の負担は、公立高校で24万円、私立高校では約46万円にのぼるなど、負担は大変です。

Q10、高校生の学ぶ権利を保障するためにも、高等学校における就学援助制度を実施すべきだと考えますが、いかがですか。

Q11、国の就学支援金と同時に設けられた、高校生等奨学給付金制度の支給額および所得基準を都独自に拡大することを求めます。

 また、夜間定時制高校に通う生徒にとって、給食制度は欠かせないものです。給食が1日分の食事と言う生徒、給食費の1ヶ月または3ヶ月分が前納できないため、給食を食べられない生徒もいます。1食380円の負担とはいえ、まとめて払うことが困難であったり、ファストフードやカップラーメンなど、より安い食べ物すませたり、コンビニエンスストアでアルバイトをしていて賞味期限切れ直前の弁当ですませている生徒もいると聞いています。関係者から思春期、成長盛りの高校生の食事として栄養面でも問題があり、心配だとの声があがっています。

Q12、都教委は定時制高校の給食の提供方法を見直すとしていますが、縮小・廃止の方向での見直しは認められません。自校方式を基本にあたたかい給食を提供すること、そして給食費負担の大幅な軽減を求めます。

 貧困の連鎖を断ち切る上でも、大学や専門学校への進学は重要です。貧困世帯の進学率は低く、例えば東京の生活保護世帯の大学進学率は22.8%で、都内全世帯の高校卒業生の63.0%を大きく下回っています。進学希望の子どもたちは、高校時代にアルバイトをして入学金を貯めるなど、苦労をしています。学費も生活費も自力で用意しなければならないため、多くの子どもたちが進学を諦めています。

Q、貧困世帯の大学進学率を上げるために、都として数値目標を設定し、支援策を講ずることは重要と考えますがいかがですか。

 東京の子どもの貧困をなくし、貧困の連鎖を解消するため、教育を受ける権利の保障は重要であり、その立場から現行制度を見直し充実を求めるものです。

以 上