2014年第3回定例会文書質問趣意書 2014年10月1日

吉田信夫(杉並区選出)

一、国民健康保険の広域化への対応について

 国民皆保険を保障する命綱ともいえる国民健康保険をめぐっては、毎年のように保険料(税)の値上げがくりかえされ、高い保険料が生活を脅かすなど深刻な事態がおきています。今年度の国民健康保険料通知にたいしても、都下の区市町村にたいし9万件をこえる苦情や問い合わせが殺到しました。
 それだけにわが党は、国民健康保険料引き下げのために、国に国庫負担引き上げを求めるとともに、都としても財政支援を拡充するよう提案してきました。
 ところが国は、財政投入の責任をはたすことなく、国民健康保険の広域化を推進し、来年度からは、都道府県が定めたルールに従って医療給付費総額の実績にもとづき各区市町村に拠出金が請求される仕組みになり、それにもとづいて区市町村は保険料を設定することになります。わが党は、国民健康保険は住民に身近な自治体で運営すべきであり、国と区市町村の財政負担を後退させ、被保険者に一層の負担を求める広域化を進めるべきではないと考えます。
 来年度から広域化への重大な一歩というべき財政運営の都道府県単位の一元化が進められるもとで、都の対応が問われています。この問題を中心に、以下質問します。

Q1 国民健康保険問題の解決のためには、国保運営の困難の原因を明確にすることが前提です。国も都も、被保険者の低所得化の一方で高齢者の増加による医療費の増加という構造的問題があると認めていますが、被保険者の低所得層の増加、他方高齢化による医療費の増加、さらに所得に占める保険料負担の他の社会保険との比較など、東京における状況を具体的に明らかにしてください。

Q2 都の「国民健康保険財政安定化支援方針」では、「高額な医療費に見合う収入の確保が困難になっている」と記されていますが、構造的問題解決のためには、医療給付の増加分をそのまま保険料引き上げに反映させるのではなく、公的な財政支援の拡大が不可避と考えますが、どう考えますか。

Q3 ところが「東京都国民健康保険財政安定化支援方針」では、「給付に見合う保険料に近づける必要がある」とし、「計画的に保険料率の見直しを図る必要がある」としています。この方針では、構造的解決にはならないではありませんか。

Q4 さらに「安定化支援方針」では、国保運営の困難な被保険者の納入の困難解決のための支援を示さないまま、差押さえの強化などを含め収納率の引き上げを保険者にせまり、区市町村ごとの収納率の目標を定めています。都はいかなる権限を理由に、保険者である区市町村に収納率をさだめその実行を求めるのですか。

Q5 構造的問題解決のためには、都も強調するように、国が必要な財源策をとることが求められていますが、いまだに実行されていません。そうした現状のなかで、都としてどう対処するのですか。都として財政支援なしには、構造的問題の解決は先送りになるではありませんか。

Q6 これまで都は、保険料は保険者である区市町村によって決定されていることを強調してきました。来年度からは区市町村が決定することはかわりませんが、都が決定したルールに基づき求める拠出金額が各区市町村の保険料を左右することとなります。それだけに都の責任は重大です。単純に医療給付の増大を区市町村に押し付けるなら、保険料の引き上げを招きます。都としてどう対応するのですか。

Q7 都が拠出金の拠出方法をどう設定し、具体的にどれだけの拠出金額を示すのかは、区市町村にとってきわめて重大なことです。それだけに、保険者である区市町村の理解、合意をえてすすめることが重要と考えます。どう対応していますか。千葉県では、拠出金問題などを検討する連携会議の検討状況を公表しており、市町村別の拠出金のシミュレーションも明らかにしています。東京都は明らかにしていませんが、千葉県のように検討状況を明らかにすべできはありませんか。

Q8 国のスキームでは、保険料の格差を是正しようとすれば、高い保険料を下げるための財政負担は、保険料が低い区市町村が負担する仕組みになります。これでは、共同安定化事業によって保険料を上げざるをえない自治体がうまれます。現在のシミュレーションでは、どれだけの自治体が今年度にくらべて上がるのですか。

Q9 さらに国のスキームでは、医療費交付金よりも1%を超える拠出金は都の調整交付金で補填することになっていますが、その補填財源のために、これまで定率で交付されてきた区市町村への調整交付金が減額になるのではありませんか。どう対応するのですか。

Q10 都として共同安定化事業の拡大によって、保険料が上がる事態を回避するために、都としての対応が求められています。どう対応するのですか。

  Q11 保険料格差の是正というなら、高い保険料に合わせるのでなく、低い保険料に合わせるべきではありませんか。また是正のための補填財源は、区市町村同士での調整でなく、国と都の負担で行うべきではありませんか。都は、国の責任を強調していますが、現時点で国の追加財源措置が示されていないもとでは、都として格差是正の財政支援を行うことを求めます。

以 上