2015年第1回定例会文書質問趣意書 3月25日

里吉ゆみ(世田谷区選出)

高校就学支援金制度の改善について

 高等学校授業料の無償化の一歩がようやく2010年度より実施され、2012年政府は長年懸案とされてきた国際人権規約の「高等教育の漸進的無償化」の条項を受け入れ批准しました。
 高い学費を引き下げ奨学金制度を拡充することは憲法と教育基本法が定める教育の機会均等への道のりでもあり、国際人権規約を批准した国の責任でもあります。
 しかし国は2014年度より所得制限を導入し、標準世帯で910万円以上の所得の家庭の生徒は、授業料は全額自己負担となりました。そのために年11万8800円(都立高校の授業料と同額)の高校就学支援金を受け取るには「高等学校等就学支援金申請書」と「課税証明書」を前年度分と当該年度分の2回分提出しなければならないなど、家庭にとっても学校にとってもその手続きは、複雑で大きな負担になっています。 
 さらに就学支援金と同時に特に低所得対策として今年度から開始された奨学給付金も、就学支援金とは別の申請が必要です。私立高校は、その他に都独自の授業料軽減補助がありますから、さらに複雑になります。学校関係者からは「1回の手続きで、どちらの申請手続きも終わらせられないか」「手続きが複雑で、わかりにくいため、片方だけの申請しか行わない保護者もいて大変」などの声があがっています。
 ある私立高校では、年度末になって未納学費の相談で保護者と連絡を取ったところ、就学支援金が受け取れる対象だったにもかかわらず、申請をしていなかったことがわかったそうです。以前の制度であれば、入学直後に生徒に申請書を書いてもらい、誰一人もらいそびれることなく就学支援金を受け取ることができました。学校事務の方は、「低所得に支援が増えたことは良いことだと思うが、一番大変な家庭の生徒が申請漏れで受け取れない今の制度はやはり困る」と訴えていました。特に今年度は初年度ということもあり、大きな事務負担となったと聞いています。

Q1 都立高校、私立高校それぞれで、書類不備や、書類が出せなかった、出さなかったなどの理由で支援金が受け取れない等の影響を受けたケースを把握しているかどうか伺います。

Q2 家庭の状況にかかわらず、全ての意思ある高校生が安心して勉学に打ち込める社会をつくるという制度の趣旨にてらせば、資格のある生徒は全員受けられるような改善が求められると思いますが、いかがですか。

Q3 私立高等学校での、就学支援金、都独自の授業料補助(特別奨学金)、奨学給付金の三つの制度は創設の経緯も異なる制度で、申請もそれぞれ違う書類が必要となっています。しかも、より支援を必要としている低所得の方ほど、時間的にも他の面でも余裕がない場合が多く、たくさんの書類を読んで、理解して、申請を何回も出すというのは大変な作業です。
 手続きを一回でまとめてできるようにするなど、さらに簡素化できないでしょうか。都の今後の対応について伺います。

 就学支援金制度の申請では、申請にあたり保護者が離婚している場合は、何年何月何日に離婚したから課税証明は一人分しか出せませんと書くように指示されていることが、国会で問題になりました。
Q4 来年度に向けて改善していただきたいと思いますが、運用の変更なども含めてどのようにするのか伺います。

 私立学校では、以前の制度では6月には就学支援金が学校に支給されていましたが、新制度になって11月以降になりました。
 所得制限のなかった昨年度までは、全員に同額118800円の就学支援金が支給されたので、授業料と就学支援金を相殺した金額を請求することができました。しかし所得制限が導入され、就学支援額も4段階になり、一人一人への請求額が定まりません。結局全員に授業料を全額請求して、あとから就学支援金を各家庭の口座に返すという学校もいくつもありました。
Q5 支給決定を迅速に行えるよう国とも協議して取りくむべきです。見解を伺います。

Q6 私立学校の事務手続きの簡素化や事務費も含めた支援の充実を求めます。

Q7 都立高校でも、制度の周知や申請書類の受け付け、就学支援金が入金されたときに授業料と相殺する事務手続きなど、学校での事務の負担が増えています。困難を抱える家庭の生徒の多い学校では、制度をわかってもらうだけでも大変な苦労があると聞いています。学校の負担を減らせるよう、事務の改善を求めます。

Q8 また都立高校の事務職員の削減はおこなうべきではありません。専門学科や全定併置の高校の事務職員の定数を削減前に戻すことを求めます。

Q9 都内の高校には外国人の子どもも多く在籍しています。これらの保護者が制度を正確に理解できるよう、都教委として、漢字にふりがなのついたパンフレットや、英語、中国語、韓国語、タガログ語、ポルトガル語などさまざまな言語でのパンフレットや申請書を作成し、学校が説明しやすく、また保護者が申請しやすくする配慮を求めます。いかがですか。

Q10 都立高校でもひとり親の場合の理由の記入について配慮が必要です。また、都立高校では就学支援金の申請者が生徒本人とされ、家計状況をどこまで子どもに知らせるかはその家庭の方針により様々であるのに、配慮が足りないのではないかという指摘もありました。来年度は改善していただきたいと思いますが、運用の変更なども含めてどのようにするのか伺います。

 就学支援金を受けられるのは、在学期間が通算36か月(全日制の場合)であることから、退学してもう一度別の高校に入り直すなど、卒業までに通算36か月を超える場合の制度として2年を上限とする学び直し支援金制度(国制度)が創設されました。支援を受けられる期間が長くなるのは良いことですが、制度がより複雑になり、また在学期間の確定など事務作業もより煩雑になっています。
Q11 生徒や保護者に、在学期間が36か月を超えても支援金を受けられることをきめ細かく周知することを求めます。同時に制度をより複雑にするのでなく、学ぶ意欲のある生徒を支援するのであれば、在学期間を区切らずすべての高校生を就学支援金の対象にするなどの改善を国に求めるべきです。いかがですか。

Q12 奨学給付金の金額が、第1子(国公立3万7400円、私立3万8千円)と第2子(国公立12万9700円、私立13万8000円)で異なること、居住地が都内でない場合は居住している県に申請が必要なことも、申請に必要な書類や手間を増やし、制度をややこしくしています。そもそも第1子であっても現在は第2子のみ対象となっている校外活動費などの支援は必要です。都として国に、少なくとも第1子と第2子とも現在の第2子の支給額に統一するよう要望することを求めます。

 学費無償化は世界の流れとなっています。また、所得制限を設けたために、もっとも困難を抱える家庭や生徒が申請手続きができず制度から遠ざけられるケースも生じています。
Q13 就学支援金の所得制限をなくしすべての高校生が受けられる制度にすることを国に要望するとともに、都の独自制度も含めた所得に応じて支援を手厚くする制度も、必要なすべての高校生が受けられるよう、また事務負担も軽減できるよう、国とも協議してわかりやすく単純な制度に改善していただくことを求めます。

以 上