第四回定例会を終えて
二〇〇六年十二月十五日
日本共産党都議団幹事長 吉田信夫
一、わが党は、石原知事による超豪華な海外出張による税金の浪費問題と、ワンダーサイト事業に四男とその知人を深くかかわらせてきた都政の私物化問題をとりあげ、都政にゆがみをもたらすものとして知事をただすとともに、知事の資格にかかわる大問題として知事を追及しました。この問題に、都民からも驚きと怒りの声が広がり、都政を揺るがす事態となりました。
�＼亳驚了�が、都民にはわずかな額の補助金やサービスを切り捨て、痛みを押しつけながら、自分は一回二千万円〜三千万円以上もかけ、しかも観光目的としか思えない超豪華海外出張を行ってきたことを明らかにし、知事をただしました。
石原都政では、知事自身ばかりか夫人や特別秘書など身内も引き連れて、飛行機はファーストクラスを利用し、条例規定の数倍、最高一日二十六万円、知事夫妻で五十二万円ものホテル代を払うなど、特権的に豪華出張をくりかえしていることが特徴です。他県の知事が自らの判断で飛行機はビジネスクラスにおさえ、ホテル代は条例規定を守り、上回った場合は自己負担としたり、夫人同伴の場合も私費負担とするなど節約につとめていることと比べても本当に異常です。わが党の追及に対し知事は、「事務局がルールに従って適切におこなって」いると言って、自らの責任を回避するばかりか、これからも「どんどん出向く」とまで答弁しました。少し節約するだけでも、盲導犬のえさ代補助六十四万円などが復活できる、海外出張を都民が納得できるものに厳選し、節約に努めることを約束せよと迫ったのにたいしても、「局長が答弁したとおり」などというだけで、答えようともしませんでした。
都民からかつてないほどの批判の声があがっても、都民や職員にはひたすら痛みを押しつけながら、知事自身と身内は税金をいくら浪費してもはばからないという態度は、傲慢きわまりなく、石原氏の行政の責任者としての資質を疑わせるものです。
�∪瀘�と館長の人選にも知事の四男がかかわり、知事のトップダウンではじまったワンダーサイトは、他の文化施設の予算が軒並み大幅削減されるなかでただ一つ八倍にふやされるなど、文字通り知事の「聖域」としての扱いをうけてきたものです。行政の長の身内を公の事業にかかわらせれば、たとえ知事の意思が働かなくても、職員が知事におもねり、行政にゆがみをもたらしかねないものです。
いわんや、石原都政の場合、知事が自らの四男を「余人をもって代え難い」とまでいって重用するために、スイスのダボスでおこなわれた知事レセプションの委託契約に四男の旅費などを盛込ませて税金の迂回支出をするなど、何人もの人が四男のために公費を投入しようと画策するという弊害が生まれています。わが党がこの事実を示し、やめるようにせまったのにたいし、知事は、「必要とあらば身内を使う」、息子や息子の仲間の力を「どんどん借りていく」と答弁し、今後も都の事業に身内を重用するという許されざる態度をとりました。
また、四男への公費支出については、これを画策した今村ワンダーサイト館長ですら、「支出すべきではなかった」と誤りを認めたのに、知事はこのことについても無反省を決めこんでいます。知事のこうした態度は、公平・公正さを厳守することが求められる行政の長として絶対許されない問題であり、この問題でも知事としての資質に欠けると言わざるをえません。
知事の二つの大問題での態度は、違法でなければ、何をやってもいいという居直りであり、公人の規範とは相いれないものです。わが党はこれらの問題を、知事としての資格、都政運営の基本にかかわる大問題として、徹底的に追及していく決意です。
なお、昨年の都議選であれほど都民から「豪華海外視察」と批判されたのに、今期すでに自民党と公明党が二回も海外視察をおこない、民主党も南米の観光地、イグアスの滝の視察をおこなうなど、税金の使い方一つとっても知事と同じ立場をとる「オール与党」の存在が、知事のこうした傲慢な態度を助長していることを指摘しないわけにはゆきません。実際、今議会で自民党と公明党がこれらの問題で知事を擁護する立場をとりました。民主党は批判はしたものの、自らの豪華海外出張に対する反省の弁は一言もありませんでした。
一、知事による自治体の立場から逸脱した姿勢は、この間の都政運営全体をつらぬくものです。知事は「何が贅沢かといえば福祉」だとして、老人福祉手当や老人医療費助成の廃止など福祉施策の容赦ない切捨てをおこない、この間、福祉関係費を五百四十億円、中小企業予算は四割も減らしました。全都道府県で最悪という異常な事態です。少人数学級はついに全国で唯一の未実施となってしまいました。
その一方で、知事は豊かな財源を毎年投資型経費に一兆円規模で投入するという逆立ち運営を続けてきましたが、とりわけいま知事のトップダウンによる税金浪費の失敗がつぎつぎと浮き彫りになっています。一千億円の血税を投じた新銀行は、中小企業に役立たないだけでなく財政的にも業務損益を百二十三億円に拡大し、経営破たんに直面しつつあります。知事が処理を引き延ばしてきた臨海ビル三セクも都民の税金で支援したにもかかわらず破綻し、その処理のために都の債権を放棄することで大銀行の債権を保障するという逆立ちぶりです。さらに重大なことは、知事がトップダウンでオリンピック招致をすすめ、投資総額八兆円をこえる大規模開発に都民の税金を投入することで都政のゆがみをいっそう拡大しようとしていることです。わが党は、こうした逆立ち都政の転換のため、引き続き全力をつくします。
一、本定例会では、都民の福祉とくらしに直結した重大な条例が提案されました。住宅基本条例の全面改定は、住宅供給における公共住宅の役割を削除し、公共住宅の役割を救貧対策にせばめ、今後、公営住宅から撤退する方向にふみだそうとするものであり、わが党はきびしく批判し反対しました。同時に、都営住宅の新規建設の再開や単身者、子育て世帯への入居拡大などつよくもとめました。
認定こども園の基準に関する条例は、保育園などの施設や職員の基準を国基準よりもさらに低下させ、保育料の値上げをまねくことを指摘し、都として保育水準の低下や保育料の値上げとならないよう対応すること、待機児解消のために認可保育所の増設を強く求めました。心身障害者扶養年金を廃止する条例にも反対し、年金制度の継続と経済的支援策の拡充をもとめました。
今定例会では、自民党、民主党、公明党、生活者ネットが、これらの都民施策を後退させる条例案をはじめすべての議案に賛成する態度をとったことは重大です。また、子どもの医療費助成を小中学生まで拡大し所得制限廃止を求める陳情についても、これらの「オール与党」そろって反対したことは、都民要望を踏みにじるものであり、容認できません。
わが党は、新たな庶民増税それと連動した社会保障負担が都民生活を直撃しているなかで、都が都民の暮らしに思いを寄せ、支援することを求めるとともに、委員会質疑や文書質問などを最大限活用し、切実な都民要望の実現めざし努力しました。都の重点事業がオリンピック関連事業などに偏重していることを指摘し、三十人学級の実現など福祉やくらし、教育を重視したものにあらためるよう求めました。ワーキングプア対策として正規雇用の拡大や最低賃金の引き上げなどの対策を求め、震災対策では都営住宅や民間住宅の耐震化促進をはじめ、切実な要望を提案しました。このなかで、低価格入札について下請け、労働者いじめ、品質や安全性で重大な問題がおこっていることを質したのたいし、建設局がこの事態に「懸念」の意を示し、総合評価方式などへの改善をすすめるなどの答弁を得たことは重要です。
一、知事は、本会議での答弁で、来年の知事選への出馬の意向を表明しましたが、福祉やくらしの施策の貧困さ、野放図な投資のあり方、違憲、違法の教育行政、知事による都政の私物化など、都政のどの分野も行き詰まり、矛盾を拡大しています。石原都政の継続は、都政と都民生活をさらなる破綻に追いこむものであり、これを許すわけにはゆきません。わが党は、都民のみなさんと力をあわせ吉田万三氏とともに都政の転換をめざし全力をつくすものです。
以上
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