第四回定例会を終えて
二〇〇八年一二月十七日
日本共産党東京都議会議員団
幹事長 吉田 信夫
今定例会は、かってない金融危機が雇用とくらし、中小零細企業の経営を破壊しようとしているとき、都が自治体本来の役割を発揮し都民の暮らしと生活を守るために、力を最大限発揮するかどうかがするどく問われました。
一、都民のくらし、福祉を守ることを正面にかかげての論戦で成果
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日本共産党は、都内の大企業によるリストラ・解雇の実態調査と都内大学の内定取り消しの緊急実態調査をおこない、その結果をもとに石原知事の認識と対応をただしました。知事は、「非正規労働者の解雇について企業があらゆる手立てを講じた後におこなうべき措置」とし、採用内定取り消しについては「若者たちに気の毒な人生の悲劇」、「企業として軽々におこなうべきでことではない」と答弁せざるをえませんでした。また、非正規労働者や採用内定取り消し者などにたいする特別相談会を開催を表明しました。しかし、事態はますます拡大し、深刻化しています。
日本共産党は、日野自動車に期間社員への雇い止めや派遣労働者の契約打ち切りをやめるよう申し入れましたが、いまこそ通りいっぺんの対応でなく、知事みずから、リストラ、内定取り消しをおこなっている大企業に対し、強力に要請に出むくなど、実効あるとりくみをおこなうべきです。
�∪こΔ妨悗襪發里鼎�り支援の意義を認めさせる
消滅の危機にさらされている都内のものづくりを守ることをもとめたのにたいし、知事は、「都内の中小零細企業が、きわめてきびしい状況におちいっている」ことを認め、「経済の動向におうじた施策を戦略的に展開し、技術の維持、発展をさせていきたい」とのべ、都も中小企業の資金ぐりへの緊急支援や倒産防止対策、製品開発や販路拡大などのとりくみの支援をおこなうことを明らかにしました。
日本共産党は、省エネやエコ対策など新製品や技術を開発し、販路拡大のための業者のとりくみに、都として技術やノウハウを存続させるための委託研究をおこなう制度の創設や国内外にむけて販路を拡大のための支援を提案しました。こうした対策の実現のためさらにがんばるものです。
�Ｊ篝詰住擦貌�本共産党が要求してきた多くの施策が実現
補正予算のうち、延べ五十万人分の公的雇用の創出や離職者への無利子融資、信用保証料の半額助成などは、これまで都民運動とむすんで日本共産党がくり返しもとめてきたものがようやく実現したものです。また、中小企業向けの公共工事の年度内発注量の増大、倒産防止対策、福祉施設支援など、多くの予算はわが党と都民の願いにこたえるものであり賛成しました。
しかし、全体として、いまの深刻な状況からみれば不十分であるため、日本共産党はさらなる追加緊急対策を提案しました。また、中小企業向け公共工事のなかに、中小企業の仕事にはすぐにつながらないうえ、住民の反対の強い大型道路の用地買収費百億円が含まれていたため、日本共産党は生活密着型土木工事に組み替える提案をおこないました。自民、公明、民主、生活者ネットの各党の賛同がえられず否決されました。
日本共産党は、都の直接雇用をひろげることや中小企業が非正規を正社員化した場合の助成実施や緊急融資の追加実施などに全力をあげるものです。
�せ堋�村でも中学三年までの子ども医療費実現ヘあと一歩
都は、中学３年生までの医療費について、入院費は無料に、通院費は一回二百円にする方向をうちだしました。わが党はさらに、市町村の新たな負担なしに、知事の公約どおり、入院、通院とも無料にすることをもとめました。これにたいし「市町村に必要な支援をする」との答弁があったことは重要です。さらに通院の一部負担もなくすことをふくめ、実現に全力をつくすものです。
�ゴ躓‥�な周産期医療・ＮＩＣＵも充実の方向へ
日本共産党は都立墨東病院などの出産をめぐる痛ましい問題解決にむけ、大阪府で実施し、成果をあげている医師による搬送調整コーディネーター配置などの提案をおこないました。これに対し、大阪府もふくめた自治体のとりくみを参考にしながら対応していくとの答弁がありました。また、ＮＩＣＵの整備促進についても、「増床は急務である」との答弁をひきだしました。
産科・周産期医療の危機は深刻です。日本共産党は、医師確保対策の充実をはじめ、危機打開にむけたとりくみにひきつづき全力をあげるものです。
�Σ板唾余紊欧榔箚�、さらに都営住宅の新規建設を
来年四月から国による公営住宅の入居収入基準の改定がおこなわれ、申し込みできない人が増えることにくわえ、現入居者の家賃が値上げされます。この間、日本共産党はこの問題を都民に知らせ、今議会でも追及しました。これにたいし、都は家賃改定による引き上げを一年間のばすこと、最長十一年間の経過措置を講じる都独自の措置をとることを明らかにしたことは重要な成果です。また、住宅供給公社の一般賃貸住宅の家賃値上げを中止するよう質問し、その後、住宅供給公社に家賃値上げ中止を申し入れましたが、この中で値上げが延期されたことも貴重な成果です。
一方、子育て世代をはじめ、住宅に困っている都民がたくさんいるのに、知事が都内には住宅数が多いと、十年一日のようなすりかえの答弁で都営住宅の新築を拒否したことは、言語道断です。新規建設を再開し、住宅があまっているというなら借りあげてでも都営住宅を提供すべきです。
この立場から、日本共産党は、都営住宅の抑制策を見直し、新規建設の再開をもとめる決議を提出しましたが、自民、公明、民主の各党は反対しました。
二、都民要求実現へ三つの条例提案
今定例会で日本共産党は、社会保障制度のあいつぐ改悪・負担増や経済状態の急速な悪化がすすむ中で、自治体として生活に困っている人に手をさしのべる立場から、三つの条例提案をおこないました。
高齢者医療費助成条例は、後期高齢者医療制度への都民の怒りが広がる中で、高齢者の医療費負担を軽減するものです。
心身障害者医療費助成の改正条例は、六五歳以上の高齢者の新規申請が石原都政のもとで停止されたのを再開するものです。
都立高校生への授業料値下げ条例も勤労所帯の平均収入が二十年前の水準に低下しているときに、値下げすることは、教育費無償という世界の流れからも当然です。
しかし、これらの条例提案のいずれも、自民、公明、民主によって、「パフォーマンス」（自民・公明）、「ばらまき」（民主）などという理由で否決されました。反対したいずれの党も、ただ反対するだけで、都民のための政策条例を一度も提案したことがありません。都民の苦しみから目をそむけ、自治体独自の施策を否定しつづけるこれらの党への都民の批判はまぬがれません。
なお、自民、公明、民主の三党が障害者自立支援法の見直しに関する意見書にも反対したことは応益負担に苦しむ障害者に冷たい態度といわなければなりません。
三、くらしを守り、福祉を充実する財源は十分ある。
わが党は、都民のくらしを守り、福祉を充実させる提案をおこないました。都税収入はバブル崩壊後の落ち込んだ時期より一兆円規模でうわ回るうえ、オリンピック基金三千億円、社会資本整備基金四千億円、法人事業税国税化対策基金二千二百億円、財政調整基金五千五百億円など一兆六千億円におよぶため込みや、無利子貸付金の返済金などもあります。
さらにバブル前の二倍におよぶ投資型経費、オリンピックを口実にした過剰なインフラ整備などにメスをいれれば、必要な財源は十分確保できます。
石原知事と与党はオリンピックをやればもうかると経済波及効果をもちだしています。これにたいし日本共産党は、都の宣伝が根拠のない、すりかえの議論であり公共事業より福祉や社会保障の充実の方が効果があることを明らかにしました。知事は、これにまともな反論ができませんでした。
四、都政版「構造改革」の失敗は明らか。中止し、根本からの見直しを
営利企業の参入をすすめ、保育から利益をあげることを公然と認めた認証保育所制度の失敗がはっきりしました。
わが党の調査で認証保育所の虚偽申請が次つぎに発覚し、開設二ヵ月後に突然閉鎖し、認証がとり消される事態が生まれました。日本共産党は、明るみにでた問題は営利企業による認証保育所制度の構造的欠陥が表面化した氷山の一角であることを指摘し、営利企業の参入の中止と制度の抜本改善をもとめました。しかし、知事は「ごく一部の事業者の不正だ」として小手先の対応ですまそうとしていることは、子どもたちの未来に禍根を残すものといわざるをえません。
知事が都立病院にかける費用をへらす立場からすすめた「都立病院改革」の失敗も、墨東病院の周産期医療をめぐる事態から明らかになりました。にもかかわらず都は、今定例会に都立老人医療センターと老人総合研究所を廃止して、独立行政法人化する議案を出しました。日本共産党の委員会質疑のなかで、独立行政法人化によって、老人医療センターが担ってきた高齢者医療、行政医療の継続が、効率優先で大きく後退する危険が浮きぼりになりました。にもかかわらず、自民、公明、民主の各党の賛成で可決したことはきわめて重大です。
日本共産党は、現時点に立って、「小さな政府」「民でできるものは民で」という「構造改革」路線を凍結し、再検討することをもとめるものです。
日本共産党は、医療現場をはじめ都民サービスが後退する矛盾が深まるなかで、与党の中からも見直しの意見が出はじめていることからも、アウトソーシング路線と職員総定数抑制方針をあらため、必要な職員体制の確保をもとめるための決議を提案しました。しかし、自民、公明、民主の各党は、この決議にも反対しました。
五、新銀行東京ー破たんの原因は都にあることが浮きぼりに
日本共産党は、都側と新銀行側のやりとりの記録であるブリーフィング会議の内容を示して、都がマスタープランを押しつけたことこそ新銀行破たんの最大の原因であることを追及しました。自己破産して間がないような企業に対する融資を都が新銀行に強要している事実を示したのにたいし、都はこれを否定せず、「マスタープランを尊重するようもとめるのは当然」との答弁をくりかえしたのです。ここまでゆがんだ都による圧力が経営破たんの大もとにあったことが浮きぼりになりました。
日本共産党は、マスコミで報道されている「口利きリスト」をもとに調査した結果では、口利きと政治献金の関係が浮かびあがり、口利きで融資をうけたとされる企業の多くが実態のないものであったことが明らかになり、都に全容の解明をもとめました。これにたいし、都側は銀行側から「恣意的な審査はない」と聞いたといいはりました。さらにその根拠をもとめたところ、都側は何の根拠も示せず、最後には〃公的な金融機関だから恣意的な審査はない〃と言いはるだけでした。
知事は、いい加減、都民をごまかすことをやめ、潔く自らの責任の大きさを認め、口利き、乱脈融資の実態を明らかにするとともに、新銀行からのすみやかな撤退を決断すべきです。
また、わが党が提案した、新銀行の早期破たん処理をもとめる決議案に、自民、公明民主の各党が反対したことは、都民の批判をまぬがれないことを指摘しておくものです。
六、むだづかいのオンパレード、都議会海外調査は中止すべき
わが党の調査で、自民、公明、民主三党がおこなっている全国一高額の海外調査の実態が明らかになりました。経費を青天井に積みあげる、節約どころか使いたい放題、深夜まで添乗員をつけ、わずか三十分の移動でも十数万円もはらって専用車を乗りまわす、日程にもない観光地を見るために百四十キロも遠まわりして専用車を走らせるなど驚くべきものです。盗用問題にとどまらず、「観光旅行」「浪費」といわざるをえない実態をこれ以上つづけることは許されません。
日本共産党は、あらためて、現在の都議会海外調査を中止し、抜本的に再検討することを都議会各党に要求するものです。
以上
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