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二〇一一年度東京都予算原案について
二〇一〇年十二月二十四日
日本共産党東京都議会議員団
政策調査委員長 大山とも子
大型開発優先、くらし・福祉につめたい予算
都民のくらし、雇用がいっそう深刻さをましているもとで、一般会計で六兆二千億円と、大阪、神奈川、埼玉の三府県を合わせた予算に匹敵する巨額の予算をもつ東京都が、総力をあげて都民施策の拡充にとりくむことが求められています。
ところが本日、石原知事が発表した来年度東京都予算原案のきわだつ特徴は、大型開発を中心とした投資的経費が二〇〇四年度以来七年連続増えつづけ、首都高速道路株式会社への出資金などもいれると総額一兆八百億円にもふくれあがる一方、くらし・福祉の予算は、一部に前進はあるものの全体としてはつめたくおさえられていることです。
なかでも、一�丹豌�円もかかり地域住民・都民からつよい反対や疑問の声があがっている外かく環状道路のほか、中央環状品川線、東京港臨海道路、大型幹線道路整備、国際競争力強化のための東京港整備、八ッ場ダム整備などに、およそ二千億円もの予算が計上されています。国庫補助がつかない東京都単独の建設事業がふえつづけ、五千億円にも達していることも、全国に例をみない異常なものです。
こうしたゆがんだ投資をすすめるため、毎年の借金（都債の発行額）は、バブル経済前の一・五倍の水準に高止まりしています。しかも、東京都が活用可能と認めている基金だけで、一兆一千七百億円におよんでいる（今年度末見込み）のに、オリンピック開催準備基金四千百十六億円は一円も使われず、なお一兆円ちかい積立金が温存されるなど、基金の活用は深刻な都民生活の実態とはかけ離れたものです。
また、築地市場の豊洲移転を、都民や都議会多数の反対をおしきって強引におしすすめるため、うまくいくあてのない土壌汚染対策や新市場建設実施設計などに、来年度から二年間で五百七十三億円もの予算をつぎこもうとしていることも、ゆるされるものではありません。
一方、福祉では、いまでも貧弱な介護保険の利用者負担軽減事業がさらに減らされるほか、区市町村にたいする包括補助、乳幼児、小中学生、ひとり親、障害者などにたいする医療費助成予算はのきなみ減額され、廃止・終了される福祉の事業は四十三事業にもおよびます。また、医師不足をはじめ医療の危機がひきつづき深刻であるにもかかわらず、医療人材確保予算を減額し、都立病院の分娩料を大幅値上げすることは、都民の願いにそむくものです。福祉予算が増えているといいますが、おもに介護保険や生活保護など国事業の規模増・負担増によるものにすぎません。
しかし、こうした中で、わが党がくりかえし提案してきた特別養護老人ホームや老人保健施設の整備費補助の増額や、児童虐待対応強化のため児童福祉司が増員されたことなどは、貴重な成果です。
いま、もっとも緊急で重要な課題となっている雇用対策も、大学などを卒業しながら就職できない若者にたいする中小企業への就職支援などの部分的前進面はあるものの、多くが国事業の枠内であり、都としての安定的雇用の創出対策はきわめて不十分です。中小企業対策予算は、今年度より四百億円も減らされます。
教育庁予算は、過去十三年間で最低になります。この中で市町村の公立小中学校へのクーラー設置助成が予算化されたことは、重要な成果です。
日本共産党都議団は、復活要求にとどまらず、予算の組み替え提案により、都民のくらし・福祉・雇用を守る都民第一の予算の実現のため、全力をつくすものです。
【福祉・保健・医療】
ウイルス肝炎入院医療費助成、介護福祉士修学資金の低所得者支援、知的障害者福祉工場運営費補助など四十三事業が廃止・終了され、母子生活支援施設や婦人保護施設が民間移譲（民営化）されます。
精神障害者の地域生活移行に大きな役割をはたしている総合精神保健福祉センターのホステルや病室も廃止されます。
認可保育所の定員を今年度より六千四百三十五人増やすこと、盲ろう者への通訳介助派遣事業の時間数を増やしたこと、ＮＩＣＵ整備のための補助の拡充、地域がん登録などは、都民のみなさんの運動とともにわが党がいっかんして提案してきたものであり、貴重な成果です。
【雇 用】
緊急雇用基金事業が増えますが、全額国の事業であり、しかも、ほとんどが一時的雇用創出です。職業訓練事業は訓練校の統廃合をひきつづきすすめるとともに、就職チャレンジ事業を終了させ、就職率が低い委託訓練を増加させていることは、重大な後退です。
正規雇用創出のための事業については、部分的には前進がありますが、全体としてはきわめて不十分であり、福祉充実や中小企業支援の抜本強化とセットにした強力な雇用創出にとりくむことが求められます。
東京都自身が直接正規雇用を増やそうとしないことも問題です。教職員や看護師、救急隊員、図書館司書などを、都自身が積極的に増員していくべきです。同時に非正規職員の待遇改善などにより、官製ワーキングプアの解消にとりくむべきです。
【中小企業対策】
制度融資の予算は百九十七億円も減らされ、返済期間の延長や借り換え融資制度の拡充など、事業者の負担軽減策の拡充が緊急課題になっているのに、中小企業緊急円高対策で、融資条件を緩和したことなどを除くと、見るべき前進はありません。
この不況を乗り切るために町工場から切望されている、休業補償、貸工場家賃補助、リース代補助、建設労働者の仕事確保と経営安定に大きな効果がある住宅リフォーム助成制度の創設などは、つめたく拒否されています。このなかで、新製品開発等に対する支援が拡充されることなどは重要です。
新・元気を出せ！商店街事業も、進め！若手商人育成事業も減らされます。しかし、環境対応型商店街活性化事業として、六億円の予算がつきました。
【教 育】
少人数学級は、小１・中１について三十八人、小２は三十九人とすることができるという対応にとどまっています。国はすくなくとも小１について三十五人学級実施の方向なのですから、ただちに都として本格実施にふみだすべきです。
また、今年、都立高校の定時制には三百人をこえる人が入学できなかったのに、定員は増やしません。特別支援学校は、児童生徒増に見合った施設整備をしないため、教室をカーテンで仕切って使うなどの異常な事態の解消にはほど遠い状況です。そのうえ、肢体不自由特別支援学校で、ヘルパーなどの外部人材を導入して教員を削減することや、都立高校の図書館の管理を民間委託して、図書館司書の正規職員を削減することなども、大きな問題です。
私立高校などの授業料軽減補助を拡充したことは重要ですが、低所得世帯についてはただちに無償化にふみだすべきです。要望の強い公立小、高等学校へのスクールカウンセラーの増配置は貴重な前進です。
【住 宅】
都営住宅の抽選の平均倍率は三十倍から六十倍に達しているにもかかわらず、来年度も新規建設はなく、十二年連続ゼロというつめたい予算です。
固定資産税等の軽減措置の継続は重要です。しかし、都の制度は二十三区のみが対象であり、市町村の軽減措置にたいする財政支援を行うことが求められています。
【環 境】
環境対策では、都民に歓迎されていた住宅むけの太陽光発電利用機器への補助制度が廃止されるなど、環境局予算は約七十五億円、一七％も減らされます。
都市公園整備の予算は六十三億円も減らされ、保全すべき緑地の公有地化予算もきわめて不十分です。しかし、集合住宅などへの太陽熱利用を拡大するための事業が創設されることなどは重要です。
【防 災】
災害対策では、震災で深刻な犠牲を生みだす木造住宅の倒壊・火災を防止するための耐震化予算は、今年度に大きくへらされたのに、来年度もほとんど増やされていません。しかし、緊急輸送道路の沿道の建物だけですが、耐震診断ならびに改修への補助が大幅に拡充されたことは前進です。対象地域を抜本的に増やすことなどが求められています。
水害対策ではもっとも重要な、雨水の貯留とかん養を中心とした総合治水対策はきわめて不十分ですが、集中豪雨対策として貯留管整備の前倒しや学校、公園など公共施設の一時貯留施設の設置促進などが予算化されたことは重要です。
以 上
【添付ファイル】 全文がA4版3頁のPDFになっています。
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