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■ 申し入れ/談話/声明  日本共産党東京都議団

財務大臣 塩川正十郎殿

2002年12月5日

日本共産党東京都議会議員団

2003年度政府予算編成に関する要望書

 戦後最悪の不況とリストラの嵐のもとで、東京の完全失業率は5.8%に達し、企業の倒産も昨年の2割増のペースで増加するなど、都民のくらしと営業はかつて経験をしたことがないような苦しみのなかにおかれています。
 このようなときに、政府に求められているのは、不況を打開し、国民のくらしと福祉、中小企業の営業を守りぬくために、あらゆる手だてをつくすことです。
 しかるに、政府は、今年10月からの医療費改悪にひきつづき、社会保障のさらなる負担増や、「不良債権処理の加速」など、景気と国民生活を冷え込ませる政策をとろうとしています。
 来年度政府予算編成にあたっては、国民のくらしと営業の防衛を最優先する立場から、大型公共事業にかたよった税金の使い方をあらためて、緊急の雇用対策や、中小企業支援、少子・高齢化対策、教育など国民が切実に求めている施策や、地球温暖化対策をはじめとする環境保全のための施策に予算を重点的に配分することが重要です。
 このような立場から、国民のくらしをまもる施策を講じることは、危機的な日本の経済と財政を再建する道にもつながります。
 以上の立場から、日本共産党東京都議会議員団は、2003年度政府予算編成に関して、以下の重要事項について、特別な措置が講ぜられるよう、強く要請するものです。

【深刻な経済危機からくらしと営業をまもる】
(1)社会保障制度の改悪をやめ、健康保険本人3割負担や介護保険料引き上げ、厚生年金の切り下げ、雇用保険料の引き上げと給付の切り下げなど、3兆円を超える負担増は中止すること。
(2)生きている中小企業の息の根を止め、債券市場に投げだす「不良債権処理の加速」を中止すること。
(3)銀行の貸しはがし、貸し渋りに対する指導を強化するとともに、信用金庫、信用組合を中小企業のための地域金融機関の要として位置づけ、支援をおこなうこと。大銀行と一律の金融検査マニュアルをあらため、実態にみあったマニュアルに改定すること。
(4)中小企業金融安定化特別保障制度を復活するとともに、別枠、超低利、据え置き期間5年程度の制度融資を認めること。
(5)大企業のリストラによる退職強要やサービス残業の無法を一掃すること。解雇四原則に基づく、解雇規制法を早期に成立させること。
(6)高校新卒者や大学新卒・既卒などの採用枠拡大を企業に働きかけること。低賃金、無年金など、フリーター、パート労働者の無権利状態の改善に努めること。
(7)高い失業率と不況の長期化に見合う、公的な失業対策事業を復活させること。自治体が、職業紹介事業を実施できるよう制度改正を行うこと。
(8)雇用保険をフランス並みに5年程度延長することなど、失業保障を拡充すること。失業者のために生活つなぎ資金を支給すること。
(9)勤労者の配偶者控除や特定扶養控除の縮小・廃止をおこなわないこと。
(10)中小企業の知的財産の保護のための法整備など緊急に取り組むこと。
(11)中小企業予算を一般会計予算の2%への水準に引き上げ、拡充すること。
(12)東京都の工業集積地域活性化事業への支援を行うこと。下請け二法の抜本強化と、大企業の横暴な下請けいじめを規制すること。
(13)中小建設業の仕事確保と下請け保護法を適用し、支援すること。
(14)9割以上の中小企業が増税になる外形標準課税は、絶対導入しないこと。大企業への減税措置をあらためるとともに、消費税の免税点制度の縮小、簡易課税制度の廃止は行わないこと。
(15)BSE(牛海綿状脳症)や輸入農産物の残留農薬物、食品表示の偽装などの根絶と被害補償を行うこと。トレーサビリティやリスクコミュニケーションのしくみづくりをすすめ、食品監視・検査体制を抜本的に強化すること。

【福祉・医療・介護の切実な要望】
(16)高齢者、サラリーマンの医療費自己負担の引き上げを中止し、政管健保の保険料の値上げは行わないこと。70歳以上の老人保健制度を堅持すること。高齢者医療費の償還払い制度はやめること。
(17)物価スライドによる年金給付額の削減計画をやめ、国民年金をはじめとする年金給付を大幅に拡充し、最低保障年金制度を確立すること。基礎年金への国庫負担を2分の1にするとともに、無年金障害者などの救済措置を早急に講じること。
(18)介護保険料の値上げをしないこと。また、保険料の減免制度を実施すること。低所得者への利用料軽減措置を継続し、さらに抜本的拡充をはかること。介護保険にたいする国庫負担を大幅に増やすとともに、介護報酬を実態に見合うものに引き上げること。
(19)在宅、施設の介護サービス基盤整備の促進をはかること。特別養護老人ホームや老人保健施設、デイサービスなどの施設整備、及び運営の充実にたいする支援を拡充すること。特別養護老人ホームへのホテルコストの導入はやめること。
(20)ケアマネージャー、ヘルパーなど人材の確保と待遇改善をはかるとともに、研修制度を拡充すること。
(21)介護予防策・生活支援事業の拡充をはじめ、介護予防策、健康づくりの施策を抜本的に強化すること。
(22)乳幼児医療費無料化制度を創設すること。児童手当の拡充、出産・妊産婦検診費用の負担軽減、不妊治療の保険適用をはじめ子育て支援、少子化対策を抜本的に強化すること。児童扶養手当の切り下げはしないこと。
(23)保育所の待機児解消をはかるため、認可保育所の増設を中心にすえ、運営費、施設整備費にたいする財政支援を抜本的に拡充すること。低年齢児、延長保育等への補助を拡充すること。父母の負担軽減をはかること。保育所の認可基準を引き上げるとともに、営利企業の参入をやめること。
(24)家族看護休暇の保障をはじめ育児介護休業制度を拡充し、家庭と仕事の両立支援を強化すること。
(25)障害者支援費制度への移行にあたり、障害者の生活実態にあった基準額となるようにすること。利用料の新たな負担を求めないこと。成人した障害者の場合あくまでも本人所得にもとづく徴収とすること。「選べる」だけのサービスが緊急に整えられるよう基盤整備への支援を抜本的に強化すること。
(26)障害者への所得保障を拡充するとともに、障害者医療費無料化制度を創設すること。重度身体障害者のための福祉ホームをはじめ多様な居住の場を制度化すること。小規模法内授産施設にたいする補助を大幅に拡充すること。精神障害者にたいする社会復帰支援策を総合的に拡充すること。
(27)小児科医師養成の強化、診療報酬の改善、小児救急医療の拡充など、小児医療体制の危機打開をはかること。国立成育医療センターにおける救急医療、地域医療を強化すること。周産期母子医療への支援を拡充すること。
(28)医療費助成の実施などウィルス肝炎対策を抜本的に拡充すること。
(29)薬害肝炎患者への補償をおこなうこと。
(30)国民健康保険にたいする国庫補助の大幅増額を行うこと。建設国保をはじめとする国民健康保険組合への支援を強めること。
(31)生活保護基準の拡充をはかるとともに、生活保護を必要とする人に対し確実に適用、支給すること。ホームレス自立支援事業を拡充すること。

【ゆきとどいた教育の実現】
(32)教育基本法の改定を行わないこと。
(33)子どもたちにゆきとどいた教育を保障するため、30人学級にただちにふみだすこと。また、都道府県や区市町村が先行実施する場合は財政補助を行うこと。
(34)教職員定数の抜本的改善を行うこと。現行の義務教育費国庫負担制度を堅持するとともに、教職員給与費における財源調整措置を廃止すること。
(35)スクールカウンセラーの小・中・高校への全校、常駐配置を急ぐこと。養護教員の配置基準を改善し全校複数配置を実現すること。学校にいけなくなっている子どもたちに学習の機会を保障し、学校の出席日数として認定している施設に対して助成すること。
(36)学校図書館に、専任の司書、司書教諭を配置するとともに、蔵書充実をはかること。
(37)障害児の学校に、実態に合わない異なる障害の児童・生徒をおしこめる方策を採らないこと。重度重複児の増加に対応し、学校、施設、教員の増配置など抜本的拡充と医療的ケアの対応をはかること。
(38)小中学校の老朽校舎の改築改修、耐震補強への国庫補助事業を再開・強化すること。普通教室の冷房化、トイレの改善を早急に完了できるよう促進すること。
(39)私立学校助成制度を堅持し、私立高校経常費助成を拡充すること。授業料減免制度への助成を、前年度実績にも適応できる制度を創設すること。少人数学級実施、老朽校舎改築改修などへの助成を拡充すること。
(40)日本育英会の奨学金を教育ローンに切り下げるのは、中止すること。

【環境との共生と快適な都市生活のために】
(41)温室効果ガスの6%削減目標を確実に達成するため、施策を抜本的に拡充すること。現在の「地球温暖化対策推進大綱」を早急にみなおし、実効性のある具体的施策を導入すること。
(42)東京大気汚染公害裁判の判決を真摯にうけとめ、控訴をとり下げること。国における「低公害車普及促進対策費補助金」の大幅な増額をおこなうとともに、事業者負担金を減らすためにDPF装着補助を大幅に引き上げること。
(43)自動車NOx・PM法の執行時期を当初にもどすこと。大都市における自動車交通総量規制を進めること。また、公害健康被害者補償法による地域指定を復活すること。
(44)軽油の50ppm以下の低硫黄軽油供給を促進するとともに、早急に燃料中の硫黄分の許容限度を10ppm以下に引き下げること。
(45)大気汚染による健康被害救済制度を国の責任で創設すること。その際には、メーカーの費用負担も含めて、国の責任で検討すること。
(46)都市公園の拡充や自然樹林地・屋敷林などの自然緑地保全を図るなど、地球温暖化対策を図ること。
(47)生産緑地の拡大、農地の相続税減免など都市農業支援を図ること。
(48)森林、樹林地に対する相続税などの軽減及び猶予措置を拡充すること。
(49)住宅行政からの撤退をやめ、公営住宅の建設戸数を引き上げるとともに、用地費などの国庫補助を大都市の実情に合わせて拡充し、超過負担を解消すること。公営住宅の入居収入基準及び明け渡し収入基準を大都市の実態に合わせて引き上げること。住宅金融公庫は廃止しないこと。
(50)公団住宅、公社住宅など勤労者や中所得者のための住宅の供給を継続すること。
(51)分譲マンションの管理、大規模改修、建て替えなどへの支援を強化すること。
(52)ごみの多種分別収集、減量リサイクルのための補助を抜本的に強化すること。また、家電リサイクル法は、リサイクル費用の内部化を義務づけること。
(53)交通不便地域解消のため域内交通を交通政策に位置づけるとともに、ミニバスやライトレールトランジット(LRT)への国庫補助を拡充すること。

【「都市再生」優先からくらし・福祉中心の公共事業への転換】
(54)大型公共事業優先をあらため、公共住宅、生活道路、公共交通網、介護基盤整備など生活密着型公共事業への転換を図ること。
(55)壮大なムダ使いとなる「首都機能移転」は中止すること。
(56)乱開発と一極集中をすすめる「都市再生緊急整備地域」の指定は中止すること。
(57)自然や住環境破壊、公害の拡大、財政破綻などをもたらす、圏央道、外郭環状道路、首都高速中央環状線など3環状道路は凍結し、住民参加で抜本的に見直すこと。
(58)過大なウォータープランにもとづくダム建設を抜本的に見直し、本格的な施設更新期を迎える上下水道の改良事業を国庫補助対象とし、財政援助を行うこと。

【地方財政危機打開のために】
(59)国と地方の税源配分を抜本的に見直し、所得税の地方税への移譲など大幅な税財源移譲を行うこと。
(60)地方交付税の算定にあたっては、膨大に昼間流入人口に伴う大都市特有の財政需要や国会等の首都としての財政需要を的確に反映させること。警視庁職員のうち首都機能に対応するものについては国が財源負担をおこなうこと。
(61)都債の低利借換えを認めること。
(62)首都高速道路公団への無利子貸付や各種国直轄事業の押し付けなど、地方自治体に過大な財政負担を押しつけないこと。

【三宅島災害などの救済】
(63)長期化する三宅島火山災害の避難民に、生活保護の適用を拡充するとともに、災害補償の仕組みを検討し、当面、特別の生活支援金を支給すること。
(64)三宅島火山災害で被災した住宅や民宿、店舗などの復旧支援の補助制度を創設すること。大島沖の船舶火災対策を急ぐこと。
(65)三宅島の自然公園施設を災害復旧事業の適用対象にすること。また、災害に伴う廃棄物処理国庫補助基準を見直し、現行では対象とならない長期間放置された自動車の処理などを、その対象にすること。
(66)大島沖・自動車運搬船の座礁事故については、被害者の拡大を防止するとともに、観光・漁業などへの影響調査をただちに行い、被害補償など万全の対策を講じること。

【平和な東京のために】
(67)憲法違反の有事法制は制定しないこと。
(68)横田基地をはじめ、すべての米軍基地を返還するよう米政府に強く求めること。

以上