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■政策と主張

2002年度東京都予算案で都政はどうなる

「都市再生」に手あつく、福祉・教育につめたく

 未曾有の不況、リストラの嵐、小泉政権の「不良債権処理」と医療改悪。かつてない都民のくるしみのもとで、東京都がどのような予算を編成したのか、都民のくらしと福祉をまもってほしいという、都民の願いに手はさしのべられたのか……
 石原知事が編成した来年度予算案について、全体像、さらには福祉・医療、不況・リストラ、教育、環境、行財政運営の各分野について見ていきたいと思います。

「重要施策」の6割は開発予算

 来年度予算案の規模は、税収のおちこみを反映して、四・八%減の五兆九〇七八億円にとどまりました。
 予算案の基本的特徴は、都民世論や日本共産党の提案などを反映して、環境や少子化対策などで前進がみられるものの、全体として、石原知事がおしすすめている大型公共事業中心の「都市再生」に重点的に予算が配分され、福祉や教育などの切実な都民要求には冷たい予算となっていることです。
 この点で、東京都は都民世論を意識してか、「都民生活の危機」に対応した予算(編成方針)と弁明しています。しかし、石原知事の構想を具体化するものとしてはじめた「重要施策」(グラフ)では、四千億円の予算にうち実に五七%が道路や再開発などの「都市再生」にふりむけられ、福祉・医療は一二%、雇用対策にいたってはわずか一%にすぎません。

福祉10事業切りすては計画通り

 各分野の予算を見ても、緊急の課題となっている雇用確保では、失業対策事業は国の基金事業の範囲にとどまり、製造業や商店街支援などの中小企業対策予算ものきなみ削減されています。
 福祉や医療の分野でも、施策の充実も見られますが、「財政再建推進プラン」にもとづく、老人医療費助成(マル福)や老人福祉手当などの福祉十事業は計画通りにきりすてがすすめられ、くわえて、あらたに十六の都立病院を八つに統廃合する計画にもとづく母子保健院の廃止や、伊豆山老人ホームの廃止、慢性肝炎などの通院医療費助成の廃止などがうちだされ、福祉きりすてをいっそうはげしくすすめる予算となっています。
 さらに、都民施策に対して一律十%のマイナスシーリングがおしつけられ、「行革」方針にもとづく多摩地域の経済事務所の廃止や労政事務所の統廃合、近代文学博物館の廃止などがあいついでうちだされています。
 都立の高校や大学の授業料の値上げ、高齢者の文化施設無料制度の廃止など、あらたな都民負担を強いる計画も提案されています。

8兆円に迫る借金積みまし

 借金依存型の財政からの脱却も、緊急の課題です。この点では東京都は、投資的経費を抑制したといっていますが、実際は、特別会計に移った住宅局分が見かけ上減っているだけで、実質的には昨年度とほぼ同額。
 同じ日に発表された今年度補正予算をあわせると、今年度を八百億円もうわまわる規模です。
 そのため借金=都債は一般会計だけで過去最高の八兆円(住宅局分を控除)近くまで積みましされます。
 「都市再生」や臨海開発などに資金をつぎ込むことで、「都財政の危機」に対応するどころか、危機をいっそうふかめる予算案というのが本当の姿です。

一%に満たない予算で、雇用、営業は守れない

 未曾有の不況リストラの嵐。小泉政権の「不良債権処理」のもとで、東京の失業や倒産は深刻です。
 それだけに東京都が雇用と営業の支援に本格的にふみだすことが求められています。
 しかし、労働対策、中小企業対策費(制度融資、臨海関連を除く)ともに一般会計予算の一%(雇用対策〇・3%、中小企業対策〇・4%)にもみたず、事態打開に応える予算になっているとはいえません。

国の基金事業だよりの雇用対策

 都は「重要施策」で課題の二番目に「雇用対策」をあげたと自慢していますが、予算額ではわずか、四十一億円、一%にすぎません。
2001年 東京の完全失業率(単位 %)
年齢完全失業率対前年増減
全体 5.2 0.1
15〜24歳 8.5 0.7
25〜34歳 6.2 0.5
35〜44歳 3.9 -0.1
45〜54歳 3.6 0.0
55〜64歳 5.8 0.2
65歳以上 2.3 0.0
「労働力調査」から

 増えたという予算の内訳も、国の緊急地域雇用創出特別交付金が中心で、しかも、基金事業の多くは区市町村分の支出で、都分は二五億円にすぎません。基金事業の前倒し実施、都としての予算の上乗せ、本格的な失対事業の実施などが急がれています。
 東京では、十五歳から二四歳では約八・五%と若年の失業率が異常に高く、緊急の対策が求められていますが、具体的な予算は組まれませんでした。
 都は、石原知事になって、高年齢者就業相談所の削減、労働研究所の廃止。中野技術専門校の廃止など労働行政から撤退をすすめてきましたが、来年度は、三鷹と立川の労政事務所の廃止、公共職業訓練費の削減、職業訓練校の教科書の有料化などが提案されてます。
 日本共産党は、都が雇用対策から手をひくことなく、緊急雇用対策本部を設置し、知事が、サービス残業の根絶や職業開拓、公的分野での雇用確保などの先頭にたつことを求めています。

本格的なものづくり支援はみられず

 中小企業対策では、多摩地域の中小企業振興センターや元気出せ商店街事業の継続など、日本共産党の提案が実りましたが、予算額は生活文化局から移管された観光予算をのぞき、前年比で後退しました。

 東京の活力をとりもどすうえで製造業の支援が欠かせませんが、第二期工業集積地域活性化事業の創設を拒むなど、ものづくりを本格的に支援する姿勢にかけた予算となっています。
 商店街支援でも、商店街活性化総合支援事業の本格実施が先送りされており、石原知事の構想に沿ったホテル税を原資とする観光やアニメ産業などの施策にあつく予算が配分されていることとは対照的です。また、カジノも調査費が予算化(千万円)されました。
 制度融資がの融資目標が千九百億円増やされましたが、要望のつよい借り換え融資は見送られました。
 組織再編では、中小企業振興センターの事業の中小企業振興公社への委託、経済事務所を廃止し、農業事務所と林業事務所の設置などが予算化されています。


お寒い農林水産対策予算

 東京の自然環境をまもり、農業を発展させることは二十一世紀のおおきな課題です。
 来年度は、「重要施策」の一つとして、横断的な「東京の森再生プロジェクト」がスタートしますが、農林水産予算は全面的に後退、削減されています。

「改革」の名のもと、きりすてすすむ福祉・医療

 来年度予算案では、日本共産党が提案してきた開業医のための小児医療研修やグループホームための用地費助成などが新しくもりこまれましたが、全体としては、「財政再建推進プラン」にもとづく福祉や医療費助成の切りすてにくわえ、都立病院の統廃合や十%マイナスシーリングによる予算の切り下げなどがいっそう激しくすすめられているのが特徴です。

老人福祉手当は来年度かぎりで廃止

 老人医療費助成(マル福)や老人福祉手当などの福祉の切りすては計画どおり進められ、来年度は、切りすて前の九九年度に比べ四三七億円もの削減となっています(乳幼児医療費助成を除いた合計)。
 老人福祉手当(寝たきり手当)は、経過措置が進み、支給額は一万三七五〇円、削減前の四分の一になり、来年度かぎりで打ちきりとなります。介護保険の負担や医療費がどんどん増えるなかで、この手当はまさに「命綱」となっています。
 シルバーパスは、今年度一万円の人は一万五千円になり、利用をあきらめる人の増加が心配されます。マル福は、六月三十日に六十六歳を越えている人のみ対象になります。年々削減され利用者サービスに影響が出ている特別養護老人ホームへの補助も、さらに減額されます(表参照)。

福祉切りすての影響
福祉局予算額 単位:億円
    2002年度 1999年度 差額   


シルバーパス 135 157 ▲22 経過措置の人(今年1万円だった
人)は、1万5千円に 
老人医療費助成(マル福) 235 322 ▲87 来年度は、6月30日に66歳以
上の人のみ対象。 07年6月で廃止 
老人福祉手当 16 99 ▲83 月額55,000円(99年度)→
13,750円に。 来年度かぎりで廃止 
特別養護老人ホーム補助 45 221 ▲176 来年度かぎりで廃止 


心身障害者医療費助成 176 248 ▲72 実施済み 
重度心身障害者手当 68 76 ▲8 経過措置の人は月額6万円(99年度)
→2万円に 
心身障害者福祉手当 65 64 1 実施済み 


児童育成手当 79 66 13 実施済み 
ひとり親家庭医療費助成 29 32 ▲3 実施済み 
合   計 845 1,285 ▲437   
(老人福祉手当、心身障害者福祉手当、児童育成手当は特別区を除く)

広がる都立病院統廃合への怒り

 新たな切りすてもはげしく進められようとしています。十六ある都立病院を八つに統廃合する計画にもとづき、母子保健院は今年十二月に廃止するとしています。母子保健院は、都立で唯一の乳児院も併設している病院で、夜間救急など地域の小児医療でおおきな役割を担っています。地域住民の声を無視した廃止計画につよい批判があがっています。都立伊豆山老人ホームも廃止です。
 さらに、多摩地域の十二の保健所を五つに統廃合するとして、工事に入るばかりになっていた村山大和保健所の建設は中止してしまいました。
 慢性肝炎、肝硬変・ヘパトーム(肝ガン)が難病指定からはずされ、医療費助成が打ち切りとなり、二万人以上に影響がおよびます。肝炎は、輸血や不衛生な注射などが感染の原因であり、その医療費の負担は公的責任で行なわれるべきものです。障害者のホームヘルプサービスの有料化の拡大、休養ホームへの付添人の宿泊料の有料化も打ち出されました。

急がれる少子高齢化への本格的対応

 介護保険では、利用料軽減制度に十七億円が計上されました。しかし、制度の改善・拡充が必要であり、保険料の減免もいそがれます。特別養護老人ホームの建設は新規着工十八ヶ所としていますが、介護保険がはじまって以来希望者が増えつづけており、整備促進が求められます。
 待機児解消が急がれる保育所では、ゼロ歳児保育は四三六人、延長保育は六八ヶ所増やすための予算を計上しました。「〇、一歳の受け入れ拡大は認可外保育で」というやり方が批判を浴び、認可園での受け入れを充実させたものです。しかし認可保育所の新設は十ヶ所にとどめる一方、企業経営中心の駅型認証保育所を、四十ヶ所に増やす(今年度十カ所)としています。
 都政では、石原知事のもとで、効率性や採算性が優先され、その考えが福祉・医療の分野にも持ち込まれ、「福祉改革プラン」など「改革」論があいついでうちだされています。都民要求の反映もありますが、その基本的方向は、これまで都民が築き上げてきた東京の福祉や医療をおおきく変質・後退させるものとなるものとなっています。

なぜ、こたえない三十人学級、ゆきとどいた教育の要望に

 受験競争とつめこみ教育、不登校、学力不振……
 三十人学級などゆきとどいた教育の実現は緊急の課題です。
 ところが、東京都は、この願いに積極的に応えるのではなく、一部のエリート校や受験競争を激しくする「都立高校改革」をおしすすめ、来年度の予算でも、この方向をいっそうおしすすめる内容となっています。

三十人学級に冷たい姿勢

 公立学校の三十人学級は、国の財源措置はともなわないものの、地方の判断で実施できることとなったことから、実施にふみだす自治体がひろがり、すでに福島県や山形県などで予算化されています。
 東京でも百四十七万人もの請願署名が都議会に提出され、都が来年度予算で対応するのか、注目されていました。ところが、東京都は少人数指導で対応できるとして、冷たく拒んでいます。
 ゆきとどいた教育に欠かせない教員定数も、国の第七次改善(小中)に対応して増員されましたが、生徒減少による定数減がうわまわり、小学校(七一名)と盲・ろう・養護学校(五七名)で増員となったほかは、全体で一五七名の削減となっています。

学校週五日制の予算は見あたらず

 今年四月から学校週五日制が完全実施となり、その対応が急がれています。 すでに、区市町村では、土曜休校日の居場所確保や土曜開校などのとりくみをすすめており、東京都の支援をつよく求められています。しかし、東京都の予算案には、そのための予算はどこにも見あたりません。
 都はこの間、学校の管理統制をつよめていますが、来年度予算案でも、高等学校の教頭の複数配置や主幹制度の導入などに予算を積極的に配分しています。

私立幼稚園経常費補助が二分の一に

 都内の私立小中・高校などへの助成では、長年の課題であった私立幼稚園経常費の二分の一助成が実現しましたが、全体としては、「財政健全化計画」「財政再建推進プラン」にもとづくきりこみがおこなわれ、四五億円の削減となりました。長びく不況のもとで私学経営は厳しい状況におかれており、私学助成の削減は、学費負担の増大につながりかねません。

文化行政は冬の時代

 これまで、教育庁と生活文化局で分担していた文化行政が、生活文化局に一元化され、あわせて、近代文学博物館や生涯学習センターの廃止などが来年度予算案であいついで打ちだされています。都立施設としての高尾自然博物館の廃止の検討もすすめられています。
 都立図書館の統廃合を視野にいれた見直しに対して、都民の反対運動がひろがっています。
 公共料金の値上げでは、都立大学・都立学校の授業料、入学料の引き上げにくわえ、文化・スポーツ施設利用料金の利用料金制(条例でさだめた範囲で施設が料金を決める制度)による事実上の値上げ、六五歳以上の高齢者の無料制の廃止も提案されています。
 ゆきとどいた教育を求める世論と都民運動が欠かせません。

地球温暖化など、日本共産党の提案みのる

 地球温暖化をふせぎ、都民の健康と自然環境をまもることは、二一世紀の課題です。
 日本共産党は、ディーゼル車規制や希少動植物の保護など、先駆的な提案をおこなってきましたが、来年度予算案でも、ヒートアイランド対策、PCB無害化対策、産廃Gメンなどが実現しました。

ビルのCO2削減義務化も

 石原知事は、開会中の都議会で、オフィスまど大規模事業所での二酸化炭素(CO2)の排出削減を義務化する「地球温暖化阻止・東京作戦」を発表しました。これは、アメリカが京都議定書の調印をこばみ、小泉政権も企業への義務づけを先送りしようとしているときだけに、注目されます。
 また、東京都は、「重要施策」のトップに環境問題をおき、地球温暖化対策や東京の森再生プロジェクトなど新規プロジェクトを立ち上げるとしています。
 地球温暖化を防ぐための、新しいエネルギーの開発では、燃料電池のための水素ステーション、風力発電2基設置などの予算も組まれました。
 ディーゼル車排ガス対策では、粒子状物質減少装置(DPF)の消防車四百台へのの装着や、民間事業者への先行装着への助成などが予算化されました。しかし、中小企業にとっては重い負担となるもので、日本共産党は、思いきった助成の拡充を求めています。
 産廃Gメンは、千葉、神奈川など首都圏規模の自治体と連携してとりくむというもので、来年度は専任担当者を九人配置し、産業廃棄物の不法投棄や野焼きなどを監視、とりしまりをおこなうものです。

森林再生で横断プロジェクト

 「東京の森林再生プロジェクト」は、これまで、環境局、産業労働局、水道局などタテ割りでおこなわれていたものを横断的にすすめるものです。
 環境局には、間伐材対策や鳥獣保護などが移されましたが、多摩地域の林業は産業として成り立ちにくく、人手が入らず「荒れ」がひろがっていることから、こうした地域の間伐をおこなうための予算が三億四千八百万円計上されました。

思いきった予算が不可欠

 環境局の予算(三六八億円)は、ハード担当の建設局のわずか七%しかありません。
 同時に、十%マイナスシーリングやスクラップアンドビルドの方針によって、予算の削減や施策の見直しもすすめられています。
 東京の自動車排気ガス汚染は、全国ワーストテンに二酸化窒素が六箇所、浮遊粒子状物質も五箇所も入るなど最悪ですが、排気ガス測定所の予算は毎年のように削減され、緑地公有化予算も同様に減らされています。

2000年度・二酸化窒素の1日平均値の
年間98%値の上位測定局
     
順位 測定局名 都府県 市区 98%値
1 中山道大和 東京 板橋区 0.086
2 松原橋 東京 大田区 0.085
3 遠藤町交差点 神奈川 川崎市 0.081
4 梅島 東京 足立区 0.080
5 池上新田公園前 神奈川県 川崎市 0.079
5 今里交差点 大坂 大坂市 0.079
7 北品川交差点 東京 品川区 0.078
7 上馬 東京 世田谷区 0.078
9 大坂橋 東京 目黒区 0.077
10 納屋 三重 四日市 0.076

2000年度・浮遊粒子状物質の1日平均値の
年間2%除外値の上位測定局
     
順位 測定局名 都道府県 市区町 2%除外値
1 松原橋 東京 大田区 0.161
2 中山道大和 東京 板橋区 0.140
3 遠藤町交差点 神奈川 川崎市 0.130
4 環七通り亀有 東京 葛飾区 0.128
5 池上新田公園前 神奈川 川崎市 0.125
6 梅島 東京 足立区 0.122
7 熊谷肥塚自排 埼玉 熊谷市 0.119
8 大坂橋 東京 目黒区 0.116
9 川口市神根 埼玉 川口市 0.115
9 鴻巣神社自排 埼玉 鴻巣市 0.115
9 柏西原 千葉 柏市 0.115
9 自排宮島 静岡 富士市 0.115
9 新森小路小学校 大坂 大阪市 0.115

 また、オオタカや小笠原島のアカガシラカラスバトなどの絶滅の可能性のある希少動植物の保護の指定も先送りされました。
 このようにメニューとしてはあっても、実際には、役立てられていないものが少なくありません。予算の抜本的拡充が必要です。

「都市再生」ですすむ環境破壊

 石原知事がすすめる「環状メガロポリス構想」と地球環境保全とはあいいれません。
 来年度予算では、都心部で汐留や秋葉原などのオフィス開発がどんどんすすめられ、多摩地域でも高尾山にトンネルを通す計画や、「玉川上水歴史環境保全地域」に放射五号道路を通す計画も、都民の反対をおしきって強行されようとしています。
 環境破壊をおしとめる世論と運動がいそがれています。

都政をゆがめる「都市再生」への集中的投資

 来年度予算編成で、都民のくらしと福祉をまもることとあわせて、もう一つ解決がもとめられcXことは、大型開発優先、借金依存型都政からどう脱却するかです。
 しかし、石原知事は、幹線道路や都市再開発などの大型開発に、「都市再生」というあたらしいよそいをほどこすことで、税金をつぎ込む道を選択しました。
 国においても、昨年、小泉政権が「都市再生本部」を設置し、三次にわたる「都市再生プロジェクト」で、圏央道や羽田空港の再拡張などの事業をうちだし、来年度予算案で盛りこみましたが、都もこれと一体の予算を組んだものです。
 これは、「東京への投資は効果が高い」などと、東京への集中的投資を合理化することで、ゼネコンや大企業の仕事を確保することにねらいがあります。

汐留・秋葉原などに大盤振る舞い

 都の来年度予算案は、「首都圏メガロポリス構想」にそって、汐留や秋葉原などのセンターコアや、臨海副都心などでの大規模な再開発、それらを支える三環状道路(圏央道、外郭環状道路、首都高速中央環状線)などの建設を一気にすすめるための事業に優先的に予算を配分しています。
 来年度の都税収入は、不況の影響で三五〇〇億円以上落ちこむ見込みですが、これらの「都市再生」の事業は、「重要施策」として聖域とされ、他の一般施策と違って、十%の一律マイナスシーリングの対象からもはずされるという優遇ぶりです。
 石原知事は、「都市再生」は国の金でやらせるなどといってきましたが、実際には、国の予算化は低く、しかも、直轄事業負担金などの形で、負担が強制される仕組みになっています。
 同じ公共事業でも、都営住宅の新規建設はゼロ、全国で最低水準の介護基盤整備もたなあげされたままですから、福祉の切りすてとあわせて、石原都政の逆立ちぶりを示すものです。

三〇年後も六兆円を超える借金地獄

 財政がきびしいといいながら、投資的経費が減らされていないことも特徴です。東京都が負担する必要のない首都高速道路公団への無利子貸付金などをくわえると、投資関連経費は約一兆円の規模です。これが福祉や教育などの予算を圧迫しています。
 こうした事業の財源の多くが借金=都債(三七一五億円)に依存していることも深刻です。
 先述の投資関連経費に、過去の投資の借金返しのための公債費をくわえると一兆六千億円で、予算の約二割がつぎ込まれていることになります。
 すでに一般会計の借金は八兆円におよぼうとしていますが、このような路線をとりつづけるならば、借金を大きく減らすことはできず、三〇年たっても、ことしの予算規模を超える七兆円規模の借金にくるしむことが予想されます。
 日本共産党は、このような逆立ちした都政の転換を求めるとともに、都民のくらしと福祉をまもるために、予算の組み替え提案もおこなう予定です。