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調査・会見

2023.06.03

神宮外苑再開発 続・JSCレク結果報告 東京都の責任について明らかになったこと

神宮外苑再開発 続・JSCレク結果報告
東京都の責任について明らかになったこと

2023年6月3日 日本共産党東京都議会議員団 

 去る5月25日、日本共産党東京都議会議員団は党国会東京事務所との共催で、神宮外苑再開発事業について、事業者の一つであるJSC(日本スポーツ振興センター)によるレクを開催しました(「神宮外苑再開発 JSCレク結果報告」)。JSCはこの再開発の一つのカギとなる、秩父宮ラグビー場の所有者です。
 その質疑応答を通じて、JSCの抱える問題と同時に、あらためて東京都の責任も明らかになりました。

1、東京都が森喜朗元首相と相談して進めた再開発が、秩父宮ラグビー場の現地再整備の可能性を阻んだ

 レクでJSCは、老朽化がすすむ秩父宮ラグビー場の耐震性の確保は大きな課題であり、耐震改修の検討を進めていたこと、また東京都から神宮外苑再開発の話をもちかけられたことにより、現在の土地入れ替え・建替えの計画に変更された経緯を明らかにしました。
 JSCは、秩父宮ラグビー場の耐震改修計画を検討したのは2012年ごろと回答。これは既に日本共産党都議団が明らかにしたように、東京都が森喜朗首相に再開発計画を説明し、森氏が「すばらしいじゃないか」と絶賛した年です。
 2012年7月3日、都は再び森喜朗氏に再開発計画について説明し、森氏は「私としては都の案(土地交換)がいいと思う。個人的にこの話を人にしているが、協会としての意見は別途確認する必要がある。これができればたいしたもんだ。」と答えています(資料)。秩父宮ラグビー場・神宮球場の入れ替え・建替え案が、都民やラグビー関係者の頭越しに、都と森氏個人の秘密のやりとりを通じて固められていったことは明らかです。
 都の働きかけに応じ、ラグビー競技の醍醐味や、聖地とされる歴史的建造物の価値について十分に考慮することなく、イベント中心の新施設への建て替えに突き進むJSCの責任も重大ですが、一部政治家や再開発事業者と秘密裏に計画を推し進め、秩父宮ラグビー場の現地再整備の可能性を阻んだ東京都の責任があらためて問われています。

2、JSCは自らの財産について不動産鑑定など責任ある評価を持たないまま、再開発事業に投じようとしている。都は権利変換計画を認可すべきではない

 レクを通じて、JSCは、秩父宮ラグビー場の土地など自らの財産について、不動産鑑定などの責任ある評価を行わないまま、これを権利変換計画に委ね、代表施行者である三井不動産や東京都に財産の評価を丸投げすることが分かりました。
 独立行政法人であるJSCの財産は、元は国有財産であり、今でも極めて公共性の高いものです。そのため、独立行政法人通則法第48条では、財産の処分にあたり主務大臣の認可を受けなければならないことが定められています。そのようないわば公共の財産が、不当に低廉な評価をうけるようなことは絶対に許されません。そのためには、自ら相応しい体制を整備し不動産鑑定などを行い、自らの財産に対し適正な評価を持つ必要があります。
 しかしJSCは今回のような市街地再開発事業に臨むのは初めての経験であり、そのため本事業の施行者の立場を一切、UR都市機構に委ねているのが実態です。現状では、自らの財産について適正な評価を行える保証は何もありません。
 権利変換計画の認可権を持っているのは都知事です。小池知事は、以上のような状況で提出される権利変換計画を認可すべきではありません。

3、陸上恒久サブトラックの整備について、都もJSCもお互いに責任を押し付け合っている

 日本共産党都議団の調査で、当初計画されていた国立競技場の陸上競技用の恒久サブトラックの整備計画が、再開発計画との矛盾を理由に途中で断念されたことが明らかになっています(詳細はこちら)。この点についてJSCはレクで、あくまでもオリンピックの開催都市である東京都が検討、判断すべき問題と回答しました。しかし東京都は、恒久サブトラックの整備を断念した際、「新国立競技場に付属する恒久サブトラックについては、新国立競技場の整備主体であるJSCが、その必要性を判断した上で、財源と建設用地を確保し整備すべきものと考える」としていることが、日本共産党都議団の調査でわかっています(資料)。この点を指摘してもなお、JSCは「そもそも国立競技場周辺の敷地にJSCの保有する土地はない。なおかつ、もともとサブトラックが設置されていたわけでもない。そういう観点からもJSCが決める立場のものではない」と回答しました。
 国立競技場のオリンピック後の利用方針は迷走を繰り返し、陸上競技はいったん対象外とされましたが、その後復活。日本陸連は、世界陸上の開催のために、サブトラックなしで開催できるようルールを変えてしまいました。結局、この問題で東京都もJSCも無責任な立場を取ったことが、アスリートにしわ寄せする結果を招いています。

東京都は都民に対する説明責任を果たし、神宮外苑再開発を断念せよ

 この他にもJSCは、新施設建設で破壊される建国記念文庫の森についてや、同じ再開発事業者である三井不動産が新施設建設・PFI事業の入札で有利な立場に立つことについて、明治神宮や東京都に責任を押し付け、全く不十分な回答に終始しました。

 以上をふまえれば、東京都がこのまま神宮外苑再開発事業にさらなる認可を与え、後押しすることはとうてい許されません。都は今回、新たに明らかになった自らの責任について、都民に対して納得のいく説明を行うとともに、神宮外苑再開発を断念し、その立場で事業者に対して厳しく対処することを求めるものです。

以上