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質問・条例提案

2019.12.18

「都民の就労の支援に係る施策の推進とソーシャルファームの創設の促進に関する条例」への態度について

「都民の就労の支援に係る施策の推進とソーシャルファームの創設の促進に関する条例」への態度について

 

2019年12月18日
日本共産党東京都議会議員団

 

1 希望する全ての都民の就労を支援する、条例の理念・目的は賛成
 就労を希望するすべての都民、なかでも様々な理由で困難を抱える方の就労を応援し、総合的施策を実施するという、条例の理念や目的は重要であり、賛成です。しかし、条例の最大の柱は、「ソーシャルファーム」への支援です。この点では多くの問題点があります。
 日本共産党都議団は、産業労働局だけでなく、障害者、生活困窮者、ひとり親、ひきこもりなど就労に困難な方の施策を所管する福祉保健局も出席する厚生委員会と経済・港湾委員会の連合審査、条例を推進してきた小池知事出席による質疑、参考人招致をはじめ、十分な時間・日数をとり、ていねいで慎重な審議を行うことを求めてきました。ところが、それは実現せず、質疑は、経済・港湾委員会の1日だけでした。

2 都民の共通認識はつくられておらず、条例化は時期尚早
 福祉的就労・福祉作業所と一般就労の中間的な「社会的企業」とされる「ソーシャルファーム」は、諸外国では定着し、効果をあげています。しかし、都内はもとより日本に、「ソーシャルファーム」はまだありません。条例をつくって支援すると言われても、「ソーシャルファーム」がどういうものかわかる都民はあまりいません。
 条例を検討した有識者会議も、「国内においてソーシャルファームの認知度はまだまだ低い」と認めています。
 法令の一部である条例は、都民の共通認識の土台の上につくるべきです。しかし現状では、「ソーシャルファーム」について、都民の共通認識の土台はつくられていません。条例化は時期尚早です。 

3 肝心の「ソーシャルファーム」の定義がない欠陥条例
 条例は、ソーシャルファームの創設支援が、「都の責務」だとしています(第4条)。また、ソーシャルファームの創設を支援する都の施策に協力することが、「都民の役割」(第5条)、「事業者の役割」(第6条)、「区市町村の役割」(第7条)だとしています。
 ところが、「都の責務」「都民・事業者・区市町村の役割」に位置づけられている「ソーシャルファーム」とは何かという定義が、条例にありません(第2条)。第10条にあいまいな規定があるだけです。
 法令の一部であり、「都の責務」や「都民・事業者・区市町村の役割」を定める条例には、明確な定義が必要です。肝心の「ソーシャルファーム」の定義がない「ソーシャルファーム条例」は、欠陥条例です。 

4 「ソーシャルファーム支援事業」に22億円もの予算要求
 条例では、今後、「ソーシャルファーム」の認証基準を定めて、財政支援をするとしています。しかし、定義がないのに、明確な認証基準はつくれません。
 ところが、来年度予算にむけた産業労働局の予算要求では、条例が成立していなかった段階にもかかわらず、「ソーシャルファーム支援事業」が新規事業として、22億円も予算要求されています。認証基準のかげもかたちもない段階で、いったいどうやって22億円もの要求額を積算したのでしょうか。
 今後、さらにふくれあがっていくことも懸念されます。こんな多額の財政支援をすることは、条例第10条で、「ソーシャルファーム」は「事業からの主たる財源として運営」するとされていることとも矛盾します。
 一方、同じく「就労困難者特別支援事業」は、4千万円にすぎません。条例の中身も、ソーシャルファームに偏重しており、すべての都民の就労支援は、きわめて抽象的です。

5 希望するすべての都民、なかでも就労困難な方に寄り添う条例に
 条例の本来の目的は、すべての都民、なかでも障害者、生活困窮者、ひとり親、ひきこもりなど、様々な理由で困難を抱える方の就労を応援することにあったはずです。条例の名称も、パブリックコメントを募集した時をふくめ、「都民の就労を応援する条例」とされていました。条例を検討した有識者会議でも、「応援という言葉はとてもいい」「共感しております」との声があがっていました。
 ところが条例の名称も、わが党が情報開示請求で入手した資料によると、条例の中身も、10月末以降、大きく変わり、「ソーシャルファーム支援」を最大の柱にしたものになりました。
 日本共産党都議団は、すべての都民、なかでも障害者、生活困窮者、ひとり親、ひきこもり、就職氷河期世代など、様々な理由で困難を抱える方の就労を応援することを最大の柱にすえた条例につくりかえる必要があると考えます。
 「ソーシャルファーム」については、条例化を急ぐのではなく、日本でなぜ進まないのかという原因分析、効果的な支援策の検討など、地に足のついた施策から着実に取り組むべきです。

6 修正案を提出し、原案に反対
 日本共産党都議団は、以上のことをふまえた修正案を経済・港湾委員会に提出しましたが、都民ファーストの会、公明党、自民党などの反対で、否決されました。そのもとで、条例の原案には反対しました。
 今後、「ソーシャルファーム」の認証基準がどのようにつくられ、どのような内容になるのか、22億円要求されている「ソーシャルファーム支援」の予算がどのように編成され、どう使われるのかを注視するとともに、就労困難な方をはじめ希望するすべての都民の就労支援を拡充・拡大するために、全力をつくすものです。

以上