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質問・条例提案

2019.12.02

「都民の就労の支援に係る施策の推進とソーシャルファームの創設の促進 に関する条例(案)」に関する日本共産党都議団の見解

「都民の就労の支援に係る施策の推進とソーシャルファームの創設の促進に関する条例(案)」に関する日本共産党都議団の見解

2019年12月2日
日本共産党東京都議会議員団

 

1 希望する全ての都民の就労を支援する条例(案)の理念・目的は賛成

 12月3日に開会される都議会第4回定例会に、小池知事は、「都民の就労の支援に係る施策の推進とソーシャルファームの創設の促進に関する条例(案)」を提出するとしています。
 条例(案)の前文で、「ソーシャル・インクルージョンの考え方に立って、希望する全ての都民の就労を支援」するとし、「就労を希望しながらも様々な理由から就労に困難を抱え、職に就けていない方や就労の困難な方を支援していく」としていること、第四条で「就労の支援に係る施策等を総合的に実施する」ことを都の責務としていることは重要であり、賛成です。


2 「ソーシャルファーム」について都民の共通認識は形成されていない

 しかし、条例(案)の主要な柱とされている「ソーシャルファーム」について、都民の共通認識は形成されていません。
 障害者をはじめ様々な理由から就労に困難を抱える方の就労を支援する、一般企業と福祉作業所の中間的な社会的企業とされる「ソーシャルファーム」は、諸外国では定着し大きな役割をはたしています。
 しかし、都内はもとより日本には、「ソーシャルファーム的」なものがいくつかあるだけで、「ソーシャルファーム」は、まだありません。
 条例(案)の検討を進めてきた「就労支援のあり方を考える有識者会議」の報告書でも、「日本で取組がまだ進んでいない」「現在の日本では、ソーシャルファームの認知度が極めて低い」としています。

3 有識者会議でも多くの疑問や意見が出された

 有識者会議では、「ソーシャルファーム」は意義ある取り組みであることを認めつつ、条例化して都の支援の対象とするには定義が不明確で、効果も定かではないという疑問や意見が多く出されました。
 第8回まで開かれた有識者会議の議事録によると、有識者の委員から「それをつくってどうなるのかもよくわからない」「ソーシャルファームとは一体何なのか」(第5回)、「ソーシャルファームをどのように定義するかについて多様な議論がある」「調査研究が必要」、「ソーシャルファームに関する記述が若干前のめりのような気がいたします」「ソーシャルファームの定義がまだはっきりしていない」(第6回)、「個人的には、まだソーシャルファームというものがすとんと落ちきれなくて」(第7回)などの疑問や意見が出されています。

4 条例(案)は「ソーシャルファーム」の定義も認証基準も不明確

 「ソーシャルファーム」は、条例(案)で最も重要なキーワードであり、条例の提案理由も、「ソーシャルファームの創設及び活動の促進のため」とされています。ところが、条例第二条(定義)に、肝心の「ソーシャルファーム」の定義がありません。
 第十条に、「事業者による自律的な経済活動の下、就労困難者と認められる者の就労と自立を進めるため、事業からの収入を主たる財源として運営しながら、就労困難者と認められる者を相当数雇用し、その職場において、就労困難者と認められる者が他の従業員と共に働いている社会的企業(以下『ソーシャルファーム』という。)」という、あいまいな規定がおかれているだけです。
 条例第十一条では、「都は、ソーシャルファームの創設及び活動を支援するため、支援対象となるソーシャルファームを認証する」としていますが、認証の基準は示されていません。
 「ソーシャルファーム」を広げるための必要な支援を行い、都民の理解を促進する努力は重要です。しかし、条例は法令の一部をなすものであり、支援する対象の定義や基準を明確にすることが必要です。

5 条例の名称も予算要求も「ソーシャルファーム」が突出

 定義も認証の基準も不明確な「ソーシャルファーム」に、第十四条では「財政上の措置を講ずるよう努める」とされています。
 11月7日に公表された産業労働局の新年度予算にむけた予算要求には、22億円もの新規事業として「ソーシャルファーム支援事業」が盛り込まれています。同じく新規事業の「就労困難者特別支援事業」は4千万円にすぎません。「ソーシャルファーム」が突出しています。
 都内にも日本にもまだない「ソーシャルファーム」を支援する予算を、初年度で22億円も要求するのは異例のことです。
 条例の名称は、パブリックコメントを募集した段階でも、「都民の就労を応援する条例」とされていました。第7回の有識者会議では、「応援という言葉はとてもいい言葉であると共感しております」という発言がありました。
 ところが最終段階に、「都民の就労の支援に係る施策の推進とソーシャルファームの創設の促進に関する条例」に変更されました。


6 有識者会議で、小池知事の20年来の友人が条例化を主張

 有識者会議は、小池知事のトップダウンで設置されました。委員のひとりである炭谷茂・社会福祉法人恩賜財団済生会理事長は、小池知事が環境大臣時代に環境省の事務方トップである事務次官をつとめた、20年来の小池知事の友人です。
 炭谷氏のもうひとつの肩書きは、「ソーシャルファーム」の普及をめざして活動している「ソーシャルファームジャパン」という団体の理事長です。
 有識者会議で、「ソーシャルファーム」の条例化をつよく主張し、条例の中で「ソーシャルファームは大事なのだということを明らかにする」よう求めたのは、炭谷氏です。
 また炭谷氏は、第5回の有識者会議で、「ソーシャルファーム」の条例化について、「1213年、ソーシャルファームづくりに自分のお金を投入してやってまいりましたけれども、なかなか進まない。やはり公的な支援というものは、意思が明確に具体的に出ていることが重要ではないか」と述べています。
 その炭谷氏も、第6回の有識者会議で、「ソーシャルファーム」は「日本の場合はまだありませんから、ないところに定義をつくるというのは大変難しい」と述べています。

7 「ソーシャルファーム」の条例化は慎重な検討を

 日本共産党都議団は、「都民の就労の支援に係る施策の推進とソーシャルファームの創設の促進に関する条例(案)」について、以下の2点を提言します。

 ① 「ソーシャルファーム」については、条例化を急ぐのではなく、「ソーシャルファーム的」なものの実態やニーズ把握、日本でなぜ進まないのかという原因分析、日本での「ソーシャルファーム」の有効性の検証をはじめとした調査研究、モデル事業の実施等による効果的な支援策の検討、都民への情報提供など、地に足のついた施策展開をとおして、都民の共通認識を形成することが必要です。

② 条例(案)は、産業労働局だけでなく、障害者、生活困窮者、ひとり親、ひきこもり支援などの施策を所管する福祉保健局に深くかかわるものです。

 経済・港湾委員会(産業労働局)と厚生委員会(福祉保健局)の連合審査を、小池知事が出席して行うことを、28日(木)の経済・港湾委員会理事会で提案しましたが、他の会派の賛同が得られませんでした。
 私たちは、小池知事が出席した連合審査の実施が必要だと考えています。条例(案)の都議会での審議は、参考人招致をはじめ、十分な時間・日数をとり、ていねいで慎重に行うことが必要です。

以上