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質問・条例提案

2017.08.31

本会議 市場移転問題での曽根はじめ都議(北区選出)の質問

8月30日の本会議で曽根はじめ議員(北区選出)が質問にたち、小池知事にたいし、豊洲新市場の土壌汚染を「無害化」するという約束をほごにするのかと質しました。

★質問全文(質問原稿)です。

  1. 小池知事の市場移転問題の基本方針について
  2. 豊洲新市場予定地の追加対策について
  3. 補正予算案について
  4. 築地市場について
  5. 答弁
  6. 再質問、答弁

 

一、小池知事の市場移転問題の基本方針について

 日本共産党都議団を代表して知事に質問します。

 小池知事は昨年8月31日、築地市場の豊洲移転を延期すると表明しました。これは石原元知事以来歴代知事が強引に進めてきた移転計画にブレーキをかける英断でした。

 そして今年6月20日に発表した「築地は守る。豊洲を活かす」という基本方針で、知事が石原都政以来の方針を転換し、築地市場の敷地は売却せず、「築地は守る」「築地ブランドを守る」と表明したことを私たちは評価してきましたが、豊洲への移転については食の安全・安心をはじめ、その重大な問題点を指摘し、再検討を求めてきました。

 知事がその後、この問題でもっぱら強調しているのは、豊洲への早期移転の推進です。おかしいと思うのは私一人ではないはずです。多くの都民、市場業者のみなさんからも、疑問の声が上がっています。

 なかでも重大な問題は、知事の基本方針を具体化するため7月に開かれた「豊洲市場移転に関する関係局長会議」で、豊洲新市場は土壌も地下水も環境基準以下にして開場するという方針を放棄したことです。

Q1 築地の仲卸業者でつくる築地女将さん会は、「東京ガス操業由来の汚染物質は全て除去は都議会の付帯決議であるだけでなく、私たち築地市場の関係者・消費者との約束でもあるものです」「今回、都知事は謝罪はされたのですが、約束の内容について変更の申し出はなく、また合意の手順も踏まれておりません。当然、今の時点では前の約束が生きているものと私たちは考えている」と、8月23日の記者会見で訴えています。

 知事は、この市場業者の声を、どう受け止めていますか。今の時点で「約束」は生きているとの立場を明確にする必要があります。知事いかがですか。

 そもそも豊洲新市場の用地は、東京ガス工場の跡地です。東京ガス豊洲工場は、1956年に開設され、当時「東洋一」とうたわれた大規模な都市ガス製造工場でした。30年以上にわたり365日24時間操業され、石炭や原油から都市ガスを製造する過程で、大量のタール、発がん性物質のベンゼン、猛毒のシアン、ヒ素、水銀、鉛などの有害物質が発生しました。ベンゼンなどをふくむタールが地中深く大量にしみこみ、土壌や地下水が大規模に汚染されています。

 石原元知事は、土壌汚染の調査をこばんでいましたが都民のつよい批判を受けるなか、2008年に、しぶしぶ調査をした結果、環境基準の4万3千倍ものベンゼンや860倍のシアンが検出されるなど、世界でも類を見ない深刻な土壌汚染の存在が明らかになりました。

Q2 日本共産党都議団や多くの都民、専門家が指摘してきたとおり、生鮮食料品を扱う卸売市場としてふさわしくないことが明確になったもとで、移転を推進した自民党、公明党なども、2010年3月の都議会で、「無害化された安全な状態での開場を可能にすること」を東京都に求める付帯決議を議決せざるをえなくなりました。

 そして市場長も、2011年2月の都議会で、「汚染土壌が無害化された安全な状態とは、技術会議により有効性が確認された土壌汚染対策を確実に行うことで、操業に由来いたします汚染物質がすべて除去、浄化され、土壌はもちろん、地下水中の汚染も環境基準以下になることである」と明確に答弁したのです。

 2012年の3月の都議会でも市場長が、「食の安全確保は、卸売市場の基本的使命であり、豊洲新市場の開場に当たっては、あくまで汚染された土壌が無害化され、安全な状態になっていることが前提である」と答弁しています。

 土壌も地下水も環境基準以下にするという方針は、都議会の付帯決議であるだけでなく、東京都として、市場関係者や都民と約束してきたものです。この約束は果たされていません。

 ところが「関係局長会議」では、今回の補正予算案に盛り込まれた追加対策が、土壌も地下水も環境基準以下にするという方針にかわる「新しい方針」だとされました。これは、東京都と市場業者、都民、消費者との約束を、一方的に反故にするものです。知事は、約束を守れなかったことを陳謝したから、約束は反故にしてよいと考えているのですか。

Q3 一昨日の知事発言では、「食の安全・安心を確保する」という立場が明言されせんでした。「食の安全・安心の確保」を最優先にするというこれまでの立場は堅持するのですか。知事、はっきりお答え下さい。

Q4 知事の方針には、「豊洲市場の安全性を発信し、風評被害を払拭する」とあります。しかし、豊洲新市場用地の深刻な土壌汚染は事実であり、「風評」ではありません。知事は、そのことをどう認識していますか。

Q5 「豊洲市場の安全性を発信」すると言いますが、知事は、土壌も地下水も環境基準以下にできないにもかかわらず、「食の安全・安心」が確保できると言うのですか。

 

二、豊洲新市場予定地の追加対策について

 次に、豊洲新市場予定地の追加対策について伺います。

Q1 今回の追加対策について知事は、専門家会議が法的・科学的に安全だと評価している、将来のリスク管理ができると提言していると言いますが、専門家会議を構成しているのは3人にすぎません。しかも専門家会議は石原元知事が設置し、豊洲移転にお墨付きをあたえる役割をいっかんして果たしてきました。今回も市場業者のつよい反対をおしきって、追加対策の報告書を強引にまとめたのです。

 一方で、追加対策について、「多くの問題点があり、豊洲での食の安全・安心は確保できない」「いま提案されているのは、汚染実態を明らかにしないままの無謀な追加対策だ」として、きびしく批判し、検討し直すよう求めている多数の科学者、専門家もたくさんいます。知事、そうした声には耳を傾けないのですか。

Q2 石原元知事は、深刻な土壌汚染が明らかになったもとでも、日本の科学技術をもってすれば汚染は除去できると強弁し、豊洲移転計画を進めてきました。その結果、860億円もの公金を土壌汚染対策に投入しましたが、今年1月に地下水から環境基準の79倍のベンゼンが検出され、再調査では環境基準の100倍のベンゼンが検出されました。

 地下水から環境基準をこえる有害物質が検出されたということは、豊洲新市場用地の土壌や地下水に、汚染物質が残っていることをはっきり示していると思いますが、知事の認識を伺います。

 東京ガス豊洲工場では、タールを直接地面に流しておがくずとまぜて燃料にする作業を、長年にわたって行っていたとの証言もあります。そのため、豊洲新市場用地の地中深くまで大量のタールやさまざまな有害物質がしみこんでいて、除去しきれていないのです。

 地下にタールなどの汚染物質のかたまりがあって、地下水に溶け出して上がってきます。かたまりの濃度は、地下水の濃度の何百倍にもなります。豊洲新市場予定地では、タールの中にベンゼンなどが溶けこんでいて、何年もの間、じわじわと地下水の中に浸みだします。数年で汚染物質が出なくなるなど、とうてい考えられません。

Q3 小池知事は、今回の追加対策が、「専門的・科学的で妥当な対策」だと発言しています。環境基準の100倍というベンゼンが検出され、汚染物質が残っていることがはっきりしたもとで、それに対する「専門的・科学的で妥当な対策」をとろうとするなら、現時点での汚染の実態について、場所、深さ、量などをきちんと調べることが当然必要ですが、知事はどう認識していますか。

Q4 知事、今回の追加対策は、地下水の汚染が確認された今年1月以降の汚染の実態をきちんと調べたうえでつくられたのですか。

Q5 今後、さらに2年間の地下水モニタリング調査を継続することが必要です。知事はどう対応するのですか。

Q6 その際、データの客観性を確保するため、複数の検査機関によるクロスチェックが不可欠です。知事の認識を伺います。

 追加対策の柱は、建物下の地下空間対策と、地下水管理システムの機能強化とされています。

 東京都は、豊洲新市場の敷地全面に盛り土をして、汚染物質が揮発して地上にあがってくるのをおさえるから、食の安全は確保されると説明していました。しかし昨年8月25日に、日本共産党都議団が、主な建物の下には盛り土がなく、地下空間になっていることを確認し、都政をゆるがす大問題になりました。

 ところが今回の追加対策は、地下空間の床に、厚さ15センチのコンクリートを新たに敷くのに加えて、換気扇をつけて有害な揮発性ガスの濃度を極力下げる、というものです。大ケガをしているのに、ばんそうこうを貼るような対策にすぎません。そもそも、工事費用が安く、工事の期間が短いという理由で選ばれた対策です。

Q7 知事に伺いますが、地下空間の追加対策は、有害な揮発性ガスが、地下空間の中に上がってくること、またそれが、換気によって地上に排出されることを前提にしたものだと思いますが、知事の認識はいかがですか。

 追加対策では、6メートル四方ごとにゴム製の目地を入れるなど、日本建築学会の指針をもとにしているとされています。しかし、当の日本建築学会が、「指針どおりの設計・施工を行ったとしても、100%ひび割れが完全に抑制されるわけではありません」と認めています。

Q8 地下水にふれやすい地下空間の床のコンクリートは、使っているうちに劣化が起こり、ひびが入り、そこから地下の汚染物質が上がってくる可能性があります。知事は、その可能性について、そういう心配はないと考えているのですか。

 また、いつ起こるかわからない直下型地震がきても大丈夫だと思っているのですか。

 地下水管理システムの機能強化についても、効果は期待できません。

Q9 地下水管理システムは、汚染された地下水の水位が上がって盛り土が汚染されないよう、地下水をポンプで汲み上げて、水位をAP1・8メートル以下におさえるというものです。

 多くの専門家や市場業者から、40ヘクタールもの広大な敷地の地下水の水位をコントロールすることなどできないとの批判が上がる中、東京都は、〃140年間の降雨情報に基づいて設計している〃〃集中豪雨や台風の時でも大丈夫だ〃と言い張ってきました。ところが、地下水管理システムが本格稼働してから10か月がすぎたのに、目標は達成されていません。

 知事は、追加対策を実施すれば、敷地全体の地下水の水位をAP1・8メートル以下に常時コントロールできる自信があるのですか。

Q10 地下水の水位の現状は、おおむねAP3メートル前後です。少し下がっても、雨が降ればまたすぐ上がります。

 日本共産党都議団は、地下水管理システムの欠陥を指摘してきましたが、東京都は、本格稼働が始まれば水位は下がる、すぐには下がらないがいずれ下がると言い続けてきました。わが党は、地下水を集める井戸の目詰まりの可能性を指摘してきましたが、目詰まりはないと否定し続けました。ところが最近になって、水位が下がらない原因は目詰まりだと言い始めましたが、目詰まりだと判断した明確な根拠は示されていません。

 1日600トンの地下水を汲み上げるシステムだと言っていたのに、実際はその1割程度、1日50トン、60トンという日が少なくありません。ところが、その本格的な原因究明もされていません。それで井戸の数、ポンプの数を少し増やすので今度は大丈夫ですと言われても、誰も信用できないと思いますが、知事はどう認識していますか。

Q11 知事、追加対策をするというなら、地下水管理の目標が達成できず、都民、都議会、市場業者への約束が守られていない現状の分析、原因の全面的解明、そして責任の所在を明確にすることが必要ではありませんか。

Q12 きれいな盛り土を敷いたから、有害物質の影響が地上におよぶことはないと、都は説明してきました。しかし、地下水管理システムはまともに機能せず、地下水の水位が下がらないため、盛り土は広範囲にわたって地下水につかっている状態です。その地下水からは、環境基準の100倍をはじめ多くのカ所から基準をこえるベンゼンが検出されています。有害物質をブロックするための盛り土が汚染されたら、土壌汚染対策の前提が崩れ去るのではありませんか。知事の認識を伺います。

Q13 盛り土が汚染されていないかどうか、直ちに調査すべきですが、いかがですか。盛り土が汚染されていないことを証明する方法は、きちんと調査して、そのデータを公表する以外ないと思いますが、知事、お答え下さい。

Q14 豊洲新市場については、水産仲卸売場の店舗をはじめ約100店舗で、大量のかびが発生するという深刻な問題が起きました。生鮮食料品を扱う市場としてあってはならないことだと思いますが、知事はどう受け止めていますか。

 都の発表資料によれば、豊洲新市場売り場内の湿度は、7月中旬には95%という高い状況が続いています。そのため、必要に応じて数時間の空調運転を実施したにもかかわらず、魚などの陳列台、木製の机や棚、段ボール、ステンレス設備などに大量のかびが発生しました。

点検に入った業者の方は、「あまりのかびの多さにショックをうけた」「ますます豊洲市場には行けない」と訴えています。

Q15 都は、連日の雨天、台風5号の通過などが原因だとしていますが、原因がそれだけとは考えられません。地下水位が高く、地下水のすぐ上に建物が建っている状態にあるため、湿度が上がりやすいのではないか、そのうえ豊洲新市場の建物は閉鎖型で湿気がこもりやすいのではないかなど、原因の踏み込んだ解明が必要だと思いますが、知事いかがですか。

Q16 環境の専門家にお聞きしましたが、地下水が原因で湿度が高い場合、ベンゼンや水銀など揮発性の高い汚染物質が、室内に入り込んでいる可能性がある、その場合、かびにそうした汚染物質が付着している可能性もあるとのことでした。こうした問題についても調査を行い、結果を公表すべきです。知事いかがですか。

 築地市場では食品の衛生管理が不十分だから、衛生的な豊洲新市場に移転する必要があると言われてきました。しかし今回の問題で、この移転理由も崩れ去りました。豊洲新市場は生鮮食料品を扱う市場としてふさわしくないことが、またひとつ明らかになったことを指摘しておきます。

 

三、補正予算案について

 次に、臨時会に提出される補正予算案についてです。

Q1 知事は、豊洲移転を急ぐために、補正予算案をいま出す必要があると説明しています。なぜ豊洲移転を急ぐ必要があるのですか。

Q2 知事は、8月8日の第1回臨時会が終わったわずか2日後に突然、補正予算案を発表し、第2回臨時会の招集を表明しました。9月の第3回定例会を待つことなく、39年ぶりという異例の臨時会を招集する客観的必要性は、どこにあるのですか。1カ月前倒しで補正予算を提案しなければならない理由を具体的に、都民のみなさんが聞いてわかるように説明していただきたい。

Q3 補正予算案に盛り込まれた追加対策には、多くの専門家、市場業者、都民から批判の声が上がっています。実証実験も実態調査もされておらず、専門的・科学的検証に耐えうるものではありません。豊洲移転の問題で、うそとごまかしが繰り返されてきた誤りを、また繰り返す結果になることは明らかです。知事、豊洲移転を推進する追加対策のための補正予算案は撤回すべきです。

 以上3問、いずれも予算編成の責任者である知事の答弁を求めます。

 築地市場の豊洲移転問題は都政最大の課題であり、先の都議選でも大きな焦点となりました。行政のチェック機能をはたすべき都議会の責任も問われています。重大な政治的意味をもつ補正予算案の審議にふさわしく予算特別委員会を設置し、知事および関係局長がすべて出席して、知事と一問一答の質疑を十分な時間をとって行うこと、そして市場業者、市場関係者や専門家、消費者などの参考人招致を行うことが、ぜひとも必要です。わが党はこのことを繰り返し求めてきましたが、この議場にいるすべての議員のみなさんに、重ねてつよく実現をよびかけるものです。

 

四、築地市場について

 次に、築地市場について伺います。

 知事は、6月20日の基本方針の記者会見で、「築地は守る」「築地ブランドを守る」と明言されました。この日の会見で知事は、「築地市場の状況をもう一度改めて見直してみますと、築地市場の価値、そして高いブランド力というのは、これは東京都の莫大な資産であると考えられます」と述べました。そして、「築地の後は築地」ということも言えるかと思います、築地市場は長年培ったブランド力、そして地域との調和を活かして改めて活用することが、この大切な宝を活かす方法ではないかと考えますとまで発言をされました。知事のこの発言は、大変重要なものです。

 しかし一昨日の知事発言では、「築地は守る」という明確な立場は表明されず、もっぱら民間主導の再開発が強調されました。以下、築地市場、築地ブランドをどう守るのかについて質問しますが、とりわけ市場業者のみなさんの死活にかかわる問題です。具体的に、ていねいにお答え下さい。

Q1 基本方針の記者会見で、小池知事は、「築地を売却せずに市場としての機能を確保するための方策を見出していきたい」と述べています。知事が築地で確保するという「市場としての機能」とは、どういうものですか。

Q2 知事が言う「築地ブランド」とは、どういうものですか。

Q3 知事は、築地ブランドの核である仲卸を中心にした食材の目利きの技を、セリや市場内取引を確保・発展させることによって築地のブランド力を守りたいと述べています。知事はこれを、どのように具体化するのですか。

Q4 知事は築地ブランドを守ると言いますが、一方で、中央卸売市場は豊洲に移し、卸も仲卸も移転させるとしています。

 仲卸の多くが築地に戻りたいと希望しても、卸がいなければ、セリや相対などの市場内取引は成り立たないし、法的にもありえません。実際、全国どの卸売市場でも、卸と仲卸が別々の場所に分離された市場は存在しません。知事、セリや目利きを形だけ残そうとしても、それらは市場としての機能には、なり得ないのではありませんか。

Q5 知事が築地を守るというなら、現に今、築地市場でがんばっている市場業者、とりわけ中小零細が圧倒的に多い仲卸業者の、市場業者としての経営を守ることこそ必要です。

 交通が便利な築地だからこそ何とか取引が続いている買い出し業者が、買い出しに不便な豊洲まで行けず別の店に切り替えるか、廃業してしまうのではないかという問題も、業者のみなさんの不安を広げている理由のひとつです。現に、当初昨年11月とされた豊洲開場予定が決まってから、上野や銀座の老舗のすし屋や割烹が店じまいをしています。買い出しの得意先の多くを失えば、仲卸も続けられなくなるという現実的な問題があることを、知事は認識していますか。

Q6 築地の仲卸業者の多くは、「いったん豊洲に移転したら多くの業者が、戻る前に廃業に追い込まれかねない」と心配し、「一度、豊洲へ行けば、戻ってくる業者はいないだろう。戻るには体力が持たない」と訴えています。知事は、市場業者のこうした声を、どう受け止めていますか。

Q7 卸売市場を開設するのは東京都ですが、市場を運営しているのは市場業者のみなさんです。だから市場法でも、認可にあたって市場業者の合意形成が、とりわけ重視されているのです。知事の基本方針について、築地市場の業者の合意がえられていると知事は考えているのですか。

Q8 先日、仲卸でつくる東京魚市場卸協同組合「東卸」の理事会に、小池知事の基本方針に全面協力すべきとの議案が出されましたが、21対6という大差で否決されました。豊洲移転に賛成の人も、この議案には反対しました。基本方針に対する業者の合意がえられていないことは明白だと思いますが、知事はどう受け止めていますか。

Q9 築地女将さん会は、知事あての公開質問で、「知事の基本方針にあるように、仮に一時的であれ、築地市場を移転する場合、関係者の合意形成が何よりも重要だ」と述べています。そして、女将さん会が取り組んだ署名活動で、全仲卸事業所の7割以上が移転中止の立場を表明しているように、「移転計画の中止を求める声は圧倒的です」として、「基本方針を実現するのは非常に難しいのではないか」と述べ、「仮に、合意が得られなかった場合、どのようになさるのか」と問いかけています。この、市場業者の方々の声に、知事はどう答えるのですか。

Q10 知事は7月7日に農水大臣と会い、豊洲新市場の開場に向けて協力要請をしました。どのような要請を行い、どういう回答だったのですか。

Q11 知事は基本方針を発表した6月20日、築地市場の現在地でのリニューアルについて、業者の合意が難しいと述べています。しかし、6月13日、知事に提出された市場問題プロジェクトチームの報告書では、現在地での再整備は可能だとして選択肢のひとつとされています。にもかかわらず、知事が「難しい」と判断した根拠をお示し下さい。

Q12 築地市場の現在地再整備は可能だとする建築専門家の提案が、次々と出されています。横浜の赤レンガ倉庫などのリノベーションを手がけた経験のある、東京電機大学名誉教授の今川憲英氏は、2010年ごろから築地市場の現在地再整備を研究しており、古くなった建物を解体せずに、手を加えて再生・延命させることは可能だとして、建築専門雑誌に具体的な提案を発表しています。知事は、築地の現在地での改修や建替えが、技術的には十分可能だという認識をお持ちですか。

Q13 築地を守る、築地ブランドを守るためには、築地市場を現在地で再整備することが、最も現実的な道です。多くの専門家や市場業者のみなさんと知恵を出し合い、後世に悔いを残さぬよう、その可能性を探ることを改めて提案しますが、知事いかがですか。

 築地市場の建物の歴史的・文化的な価値や市場としての理想的な設計思想を継承すべきとの声が、あがっています。

Q14 20世紀の価値ある建築・環境遺産の保全を目的とする国際的なNGOであるドコモモ日本支部から、築地市場の建物の保存を求める提言が、7月2日、知事あてに提出されています。知事はご覧になったでしょうか。

その中では、築地の建物が、82年前の竣工時、世界でも最大級の市場として設計や建物配置が工夫されていた点、戦前期の日本の最大規模の鉄骨造建築としての技術的価値とともに、湾曲した構造などの空間構成の美しさ、ユニークな水辺景観などの点でその価値を評価して、都として後世に継承するよう求めています。

 ドコモモのメンバーである、建築家の兼松紘一郎氏は、「80年以上前に、これだけの巨大市場を作った建築家集団の力は傑出していた。それを壊してしまうのは、建築家の思いも、築地市場で働く人たちや、買い出しの人たちの思いも踏みにじる行為です」と語っています。

 こうした提言や意見を、知事はどう受け止めていますか。建物の機能的な、また歴史的な価値の保全という点でも築地ブランドを生かすことは大きな意味があると思いますが、知事いかがですか。

Q15 知事は、民間主導で築地の再開発をすると言いますが、知事が言う民間主導の再開発とは、どのようなものですか。具体的にお答え下さい。

また、市場運営のノウハウがない民間主導の再開発で、市場としての機能が確保できると思っているのですか。知事の明確な答弁を求めます。

Q16 オリンピックに間に合わせるために豊洲移転を急ぐというやり方は、許されません。

そもそも築地市場をオリンピックの駐車場にすることが東京都の方針とされたのは、6月20日の知事の基本方針がはじめてです。それがあたかも規定の方針であったかのように言うのは間違いです。あくまで「選択肢の一つ」にすぎませんでした。築地が使えなかったらほかを探す、というのが当然のことです。ところが、オリンピックの駐車場を確保するために築地市場を更地にするというのは、知事、あまりにも強引なやり方ではありませんか。

Q17 知事は、築地市場の移転を急ぐことで、環状2号線の完成をオリンピックに間に合わせるとしています。これもおかしな話です。環2が間に合わなければ、オリンピックの輸送計画を見直せばよいのです。国土交通省も、環状2号線は、オリンピックのためだけの道路ではない。築地市場があるかぎり工事はできない、と説明しています。環2の完成をオリンピックに間に合わせるために築地市場を移転させるなどあってはならないことです。知事、そう思いませんか。

Q18 もともとオリンピックと、市場をどうするかは別問題であり、切り離して考えるべきものです。ところが一昨日の知事発言では、市場移転問題の「3つの取り組み」の2番目に、「オリンピック・パラリンピックに向けた準備」を位置づけて、環状2号線や駐車場の整備を着実に行うと表明しました。まるでオリンピックを口実にして、築地市場を早く移転させようと言わんばかりではありませんか。オリンピックと市場移転問題は切り離して考えるべきですが、知事の見解を伺います。

 以上、知事の築地市場移転問題についての基本方針と、今回の補正予算案について質してきましたが、これをわずかな期間の臨時議会で、多数で押し通すようなことがあれば、石原都政以来の都議会のやり方と変わる所はなく、都議選は何だったのかが、きびしく問われます。小池知事への、市場業者だけでなく、都民全体の信頼も大きく損なわれるでしょう。それは、今回の提案の内容もやり方も、知事が掲げてきた都民への約束と相容れないものであるからにほかなりません。

 知事は、いったん提案した補正予算案であっても撤回して、都議会はもちろん、当事者である築地関係者や、食の安全・安心を願う都民の声を十分に聞き、それらを踏まえた合意点を探るための努力を惜しまぬことを強く求め、再質問を留保して質問を終わります。

 

答弁

知事
 曽根はじめ議員のご質問にお答えをさせていただきます。
 まず、無害化の約束についてのご質問がございました。
 豊洲市場用地をめぐるこれまでの議論の中で、土壌、地下水を環境基準以下にする、すなわち無害化を達成するということが大きな課題となってまいりました。この目標に向けて、これまでに例のないほどの水準の土壌汚染対策が行われ、汚染の大幅な改善は図られたものの、結果として環境基準以下という目標は達成をされておりません。
 都民、事業者との約束が果たされていないということを真摯に反省をいたしまして、先般の都議会で、また、築地市場に私自身出向きまして、都知事としておわびをしたところでございます。その上で、現実的な取り組みを進める必要があると判断をいたしまして、無害化にかわる新たな方針を定めたところでございます。
 その方針では、専門家会議の提言を踏まえまして、専門的、科学的で妥当な対策を講じて地上の安全に万全を期すとともに、地下水管理システムの適切な運用によって中長期的に水質の改善を図っていく。これに加えまして、これらの取り組みや客観的なデータについて正確な情報発信を徹底していく、このようなことといたしております。
 この新たな方針のもとで、こうした取り組みを着実に積み重ねていくことで、安全で安心な豊洲市場について、都民や事業者の理解を得られるように努めてまいる所存でございます。
 そして、この無害化にかわる新たな方針についてでございますが、豊洲市場をめぐるこれまでの都議会におけるご議論、付帯決議に至る経過などについて、私も十分承知をしているところでございます。
 都議会、そして都民との約束はもちろん重いものと考えておりますが、結果として環境基準以下という目標が達成されていない現状を真摯に反省をしつつ、現実的な取り組みを進めていく必要があると判断をいたしまして、無害化にかわる新たな方針を定めたものでございます。
 今後、この新たな方針に基づく取り組みを着実に積み重ねていくことによりまして、都民や事業者のご理解を得られるように努めてまいりたく存じます。
 食の安全と安心の確保についてのご質問でございます。
 生鮮食料品を扱う場であります卸売市場でございます。食の安全・安心の確保が最優先されるべきであることは、就任以来一貫して私も述べてきたとおりでございまして、この考えはこれまでとは変わっておりません。
 豊洲市場の用地に関する認識についてのお尋ねでございます。
 専門家会議は、豊洲市場について、これまで実施したさまざまな測定結果から、地上部分の大気は基準値を満たしている。地下水については基準超過が確認をされており、地上部は安全と評価をして、地下は管理するべきというのが専門家会議の考え方でございます。こうした専門家の見解を初めとして、豊洲市場に関する正確な情報を発信することによって、都民の理解の促進に努めていきたいと考えております。
 豊洲市場の安全性についてのお尋ねでございます。
 豊洲市場に関する専門家会議の見解は、先ほど述べたとおりでございます。こうした見解を踏まえた上で、今後、追加対策工事を実施し、そして正確な情報発信を通じまして、安全・安心を確保してまいる所存でございます。
 追加対策についてのご質問でございます。
 専門家会議は、都から独立した会議体として豊洲市場用地における安全対策を検討していただいてまいりました。地下水汚染が確認された状況を踏まえて、専門的、科学的知見に基づいて必要な追加対策を提言していただいております。追加対策を着実に実施する、そして、対策の状況や地下水調査などの正確な情報発信を通じて、都民の安全・安心を確保してまいりたいと考えております。
 地下水調査の結果についての認識でございます。
 専門家会議におきまして、地下水管理システムの稼働によって残存していた汚染地下水が移動した可能性がある、局所的に土壌汚染が残存していた可能性があるとの指摘がございます。
 追加対策の妥当性についてでありますが、専門家会議について、専門家会議はさまざまな測定結果をもとに、専門的、科学的な見地から追加対策をご提言いただいております。こうした追加対策を着実に実施して、機能強化された地下水管理システムの揚水機能によりまして、汚染地下水を徐々に回収する、そして、中長期的に水質の改善を図っていくというものでございます。
 ご指摘のように、これまでの調査で高い濃度が確認された箇所がございますが、それらを中心に、専門家会議のもとで、四十六カ所で地下水の調査を行いまして、これによって市場用地全体の地下水質の傾向を把握してまいる所存でございます。
 地下水の水位管理でございます。
 専門家会議におきまして、豊洲市場の用地におけます地下水管理システムの稼働状況を踏まえ、早期に目標管理水位まで地下水を低下させるとともに、地下水位上昇時の揚水機能を強化する必要があるとのご提言をいただいております。具体的な地下水管理システムの機能強化策につきましても、専門家会議によって、対策方法として妥当であるとのご判断をいただいております。
 これらの取り組みを着実に進めまして早期の地下水位の低下を目指すとともに、地下水の管理を適切に行ってまいります。
 地下水管理システムの機能強化についてのご指摘でございます。
 今申し上げましたとおり、専門家会議で、豊洲市場用地における地下水管理システムの稼働状況を踏まえた上で、地下水管理システムの機能強化策の妥当性、これを評価していただいた、このように認識をいたしております。
 地下水の現状に対しての認識についてのご質問でございます。
 専門家会議では、局所的に土壌汚染が残存していた可能性があると、先ほど申し上げたとおりでございますが、地下水管理システムによって地下水位を安定的に管理をするとともに、汚染地下水を徐々に回収をして、中長期的に水質を改善していくということとしております。この専門家会議では、地下水の汚染状況や地下水位の現状を踏まえた上で、早期に目標の管理水位まで下げるための対策を提言していただいており、地下ピット内への新たな揚水ポンプの設置、観測井戸の揚水井戸化などの機能強化を実施いたしてまいります。
 カビについてのご質問がございました。
 豊洲市場の建物内の湿度が高まったことによりまして、市場業者が設置した木製の棚であるとか、ステンレス設備の表面などにカビが発生しているとの報告を受けております。市場業者の皆様にはご心配をおかけいたしておりますが、必要な対策を早急に講じていくように、市場当局に指示をしたところでございます。
 豊洲市場への移転についてでございます。
 豊洲市場への移転は、築地市場の施設や設備の老朽化、場内の過密化、高度な品質、衛生管理が困難な状況などなど、築地市場が抱える大きな課題を抜本的に解決するために実施をするものでございます。移転の方針が定まった現段階におきましては、可能な限り早期の移転を実現することが重要と考え、移転に向けましてはスピード感を持って取り組んでまいる所存でございます。
 臨時会への補正予算の提案についてのご質問でございます。
 市場移転問題に関しましては、六月二十日に示しました基本方針を踏まえて行政組織としての取り組みを取りまとめた関係局長会議におきまして、豊洲市場への早期移転を円滑に行うことが最優先事項と確認をしたところでございます。それに向けまして、追加対策工事を速やかに完了させる、豊洲市場への移転に向けた環境を早期に整える。そのために、第三回の定例会を待たずして臨時会を招集し、都議会の皆様にこうやって補正予算案をご審議いただいているものでございます。
 補正予算案に盛り込んだ追加対策でございますが、補正予算案に盛り込んだ地下ピット、そして地下水管理システムに係る追加対策工事ですが、豊洲市場の土壌汚染に関して、専門家会議が科学的な知見に基づいてさまざまな検証を重ねた上で、有効な対策としてご提言をいただいた内容となっております。
 都といたしましては、補正予算の成立後、この対策工事を着実かつ確実に実施をすることによりまして、豊洲市場の移転に向けました環境を早期に整えてまいります。
 築地再開発における市場の機能についてのご質問がございました。
 築地の再開発については、市場会計の持続可能性を担保するため、経済合理性を確保しながら、民間の主導によって行うことといたしております。築地の地域特性や可能性、ポテンシャルなどから検討をスタートさせまして、その後、民間からのヒアリングなどを実施して、ステップを踏みながら、開発コンセプトなどを具体化していく予定でございます。
 こうした動きの中で、将来、築地に戻ることを希望する仲卸の業者に応えるためのさまざまな方策につきまして、豊洲市場への移転後の状況を踏まえながら検討を進めてまいります。
 築地ブランドについてのお尋ねがございました。
 築地市場には、日本橋魚河岸の時代から続く長い歴史、そして伝統、豊富な品ぞろえ、目ききの力、活気とにぎわいなどといったさまざまな魅力がございます。そして、何よりも、築地市場で働く事業者の方々の日々のご努力の中で生み出されてきたものでございまして、こうした魅力が築地ブランドであると私は考えております。
 その具体化でございますが、築地の再開発に当たりましては、築地エリアが有する食文化、浜離宮、水辺といったポテンシャルを生かして、多様な観点からまちづくりを検討していくことといたしております。そのため、築地再開発検討会議を設置をし、築地の地域特性やポテンシャルの検討からスタートし、豊洲へ移転した後の状況も踏まえながら、ステップを踏んで検討することといたしております。
 基本方針についてのお尋ねでございます。
 この基本方針は、この間の幅広い議論を踏まえつつ、さまざまな意見も参考にし、熟慮を重ねて打ち出したものでございまして、豊洲と築地の両方を生かすという趣旨の私自身の考え方を示したものでございます。六月、公表をいたしまして、その後、直ちに築地市場を訪問いたしました。業界団体の代表の方々に内容をご説明し、率直な意見交換も行ったところでございます。引き続き、市場の業者に寄り添った丁寧な対応に努めて、基本方針に対する理解を求めてまいりたいと考えております。
 そして、市場業者の声につきましては、豊洲市場への円滑な移転に向けては、市場業者の方々のご理解を得ながら取り組んでいく必要がございます。市場業者の方々の声には真摯に耳を傾けながら、丁寧な対応に努めてまいりたいと考えております。
 農水大臣への要請についてのご質問もございました。
 私からは、豊洲移転の基本方針を公表したこと、今後追加対策をしっかりと講じること、市場業者の皆さんの意見を聞きながら移転へ向けての調整を行うなど、ご説明をいたしました。そして、大臣からは、早期移転という基本方針を示したことは前進であり、認可申請については卸売市場法に基づいて適切に対応すること、今後とも、都の考え方をしっかりと聞いて打ち合わせを進めていきたい旨のご発言がございました。
 築地の再整備が困難と判断した理由についてのお尋ねでございます。
 築地市場の現在地再整備については、これまで何度も議論がなされたものの、営業しながらの工事が困難であること、業界との調整が難航したことなど、さまざまな問題から実現に至らなかった経緯があることを存じております。こうした経緯や市場のあり方戦略本部での検証、そして、さまざまなご意見を参考にしながら、築地再整備は改めて困難と判断したものでございます。
 築地市場の建物の価値につきましては、文化的、歴史的な観点から捉えるということは一つのご見解としてあり得ることかと思います。しかしながら、築地市場は、現在、あくまで中央卸売市場として運営しているものでございまして、施設設備の深刻な老朽化や場内の過密化、品質、衛生管理など、多くの課題があることも事実でございます。そのため、豊洲市場への早期移転を円滑に進めることを最優先事項としたものでありまして、その実現に向け、全力で取り組んでいるところでございます。
 民間主導の築地再開発についてのご質問でございます。
 民間による再開発事業におきましては、これまでも地域特性に応じてさまざまな機能の導入が図られております。築地の再開発に当たりましても、民間の知恵とノウハウを生かしていくことが重要かと存じます。
 今後、民間からのヒアリングなどを行いながら、まちづくりの方針を具体化し、その後、提案募集、事業者の選定など、民間主導による再開発の検討を進め、こうした動きの中で、将来、築地に戻ることを希望する仲卸業者の声にお応えするためのさまざまな方策について、豊洲市場への移転後の状況を踏まえながら検討を進めていく考えでございます。
 二〇二〇年大会の駐車場の整備でございます。
 豊洲市場への早期移転は、築地市場の狭隘化、老朽化した現状、衛生面の課題を解決するため、今般、豊洲と築地の両方を生かすという方針を打ち出しまして、その具体化に取り組んでいるところでございます。
 一方、大会時の車両基地、いわゆるデポは輸送の拠点でありまして、選手村や競技会場など、関係する施設の位置関係、大会時の交通状況に応じまして、柔軟かつ適切な輸送運営の実現に向けまして、複数配置をする予定としております。
 豊洲市場への早期移転を進めていく中で、候補の一つでありました築地市場跡地を大会時のデポとして活用することをあわせて推進をして、円滑な大会運営の実現に取り組んでいくこととしたものでございます。
 同じく、二〇二〇年大会に向けた環状第二号線の整備についてのご質問にお答えをいたします。
 現在、東京のさらなる発展に向けまして、基本方針を踏まえて豊洲市場への早期の移転、オリンピック・パラリンピックに向けた準備の推進、築地再開発、三つの取り組みを進めているところでございまして、これらはいずれも重要な課題でございます。環状第二号線の完成のためだけに市場移転を急いでいるというものではございません。
 そして、オリンピックと市場移転問題についてのご質問でございました。
 豊洲市場への移転というのは、築地市場の老朽化、過密化、品質、衛生管理などの課題、先ほどから申し上げているとおりでございます。これらの課題を抜本的に解決するために実施するものでございまして、移転の方針が定まった現段階におきましては、可能な限り早期の移転を実現することが重要と考えております。
 また、移転後の跡地でございますが、基本方針におきまして、東京二〇二〇大会の輸送拠点として活用するということといたしておりまして、市場移転を進める上で、環状第二号線や輸送拠点の整備といった計画と調整をしていく必要がございます。こうしたさまざまな要素も総合的に勘案しながら、移転に向けまして、スピード感を持って調整をしていきたいと考えているところでございます。
 なお、その他のご質問につきましては、中央卸売市場長からの答弁とさせていただきます。

中央卸売市場長
 十五点のご質問にお答えいたします。
 まず、追加対策についてでございますが、専門家会議は、専門的、科学的知見に基づき、地下水汚染が確認された状況を踏まえて必要な追加対策を提言しております。
 今後の地下水モニタリング調査についてでございます。
 豊洲市場用地では、操業に由来する汚染が確認された箇所を対象に、土壌汚染対策工事により汚染土壌を掘削除去し、汚染地下水は一旦基準以下とした上で、平成二十六年十一月から二年間、モニタリング調査を実施してまいりました。その結果、調査を実施した二百一カ所のうち約三分の二の箇所につきまして、基準以下の状態が二年間継続したことを確認しており、これらの土壌汚染対策法上の区域変更等に関して、環境局に届け出た上で終了となります。
 今後の地下水の調査につきましては、専門家会議の提言を踏まえて、当面、濃度が高いところを中心に選定した四十六カ所で実施し、都民に的確な情報提供を行っていくこととしております。
 なお、土壌汚染対策法上、形質変更時要届け出区域の解除や管理区分の変更を行うためには、基準を満たしている状態が二年間継続していることが必要であり、基準を超えた七十四カ所につきましては、今後の地下水質の状況も踏まえ、取り扱いを検討することとしております。
 クロスチェックについてです。
 現在、豊洲市場におきまして、地下水質の調査を実施している調査会社は、地下水モニタリングの再調査の際に、専門家会議のもと、四社でクロスチェックを実施しており、精度が確保されていることを確認していることから、改めてクロスチェックは予定しておりません。
 地下ピット内での換気についてでございますが、専門家会議では、一定程度、換気を行うことにより、地下ピット内の空気の揮発性ガス濃度が基準値以下に低下することが確認されました。追加対策で、床面にコンクリートを打設し、ガスの侵入を低減させるとともに、毎日必要な量の換気を行うことから、揮発性ガス濃度が上昇する可能性は低いと考えております。このため、換気により排出される空気の揮発性ガス濃度は、基準値等を下回るものと考えておりますが、ピット内の空気測定で確認も行ってまいります。
 地下ピット床面のコンクリートについてでございますが、専門家会議の提言では、換気により揮発性ガスの濃度上昇を防止することとしており、床面のコンクリートのみでピット内へのガスの侵入を完全に遮蔽することは想定しておりません。コンクリートは、その性質上、ひび割れは生じますが、ひび割れ抑制に配慮した施工とするとともに、適切な時期に調査及び補修を行うことで、ガス侵入の低減機能を維持してまいります。
 なお、床面のコンクリートは、大地震を想定して液状化対策を施した安定的な地盤の上に設置することとしております。
 地下水管理の目標についてですが、昨年十月の地下水管理システムの本格稼働以降、地下水位は徐々に低下しておりますが、同システムの井戸やポンプの目詰まり等により揚水量が十分に確保されていないため、敷地全体の地下水位は、現時点で目標管理水位まで到達しておりません。
 こうした状況を踏まえて、専門家会議からは、揚水機能の強化が必要との提言をいただいておりまして、地下ピット内への新たな揚水ポンプの設置や観測井戸の揚水井戸化等の機能強化を着実に実施することにより、早期の地下水位の低下を目指すとともに、地下水管理を適切に行ってまいります。
 地下水の現状を踏まえた対策についてでございますが、豊洲市場では、地下水管理システムにより地下水を適切に管理することが肝要であり、速やかに地下水位を下げる必要があることから、追加対策に必要な補正予算案を上程したところでございます。
 今後、追加対策を着実に実施し、大気や地下水の測定結果などを正確に発信していくことにより、豊洲市場の安全・安心を確保してまいります。
 カビ発生の原因についてですが、地下水位の高低にかかわらず、晴天時や湿度の低いときについては、これまでカビの発生は確認されておりません。今回のカビの発生については、今月の記録的な長雨に加え、台風の通過に伴って、建物内の湿度が上昇したことによるものと考えております。
 カビの調査についてですが、先ほどもお答えしたとおり、カビ発生の原因については、長雨や台風に伴い、建物内の湿度が上昇していたことによるものと認識しております。市場業者からは早期の清掃を求められており、都といたしましては、こうした要望を踏まえまして、被害のあった店舗の拭き取り清掃を迅速に実施しているところであり、改めての調査は考えておりません。
 市場の機能についてでございますが、卸売市場法では、中央卸売市場においては、卸売業者、仲卸業者、売買参加者等が市場内で取引を行うことを前提にさまざまな制度が定められております。
 都といたしましては、豊洲市場を中央卸売市場として継続的に運営していくこととし、築地における機能については、将来、築地に戻ることを希望する仲卸業者の意向や卸売市場法改正の動向も踏まえながら、今後、検討していくこととしております。
 仲卸業者の経営についてですが、市場運営に当たっては、市場業者の経営が健全であることが不可欠であることから、都はこれまで個別事業者に対する経営安定化のための取り組みを行ってまいりました。その中でも、仲卸業者は小規模な事業者が多く、また、流通環境の変化に伴い、築地市場の事業者数が約二十五年で半減するなど、経営が厳しい状況にございます。
 豊洲市場移転に際しては、顧客離れなど、市場業者が抱える不安の声に耳を傾けながら、引き続き、仲卸業者の経営基盤の強化を図ってまいります。
 仲卸業者の移転についてでございますが、市場業者は厳しい経営環境の中で、豊洲市場移転に向けてさまざまな不安を抱えていることは認識をしております。
 そのため、都は、これまでも市場業者の要望を踏まえ、低利融資や設備補助など、豊洲市場への移転に伴う経済的な負担を軽減するためのさまざまな支援を行っております。
 東卸組合の理事会の結果についてですが、理事会において議案が否決された趣旨は、東卸組合として、組合員の意見を聞いていない段階で基本方針に関する決議をすることは時期尚早との判断をしたものであり、基本方針自体を否定したものではないと聞いております。
 築地の現在地再整備の可能性についてですが、築地市場の現在地再整備について、新しい工法や手法による提案がなされていることは承知しております。しかしながら、現在地再整備は営業を継続しながらの工事となり、工事の長期化や業界調整の難航など、相当の困難が予想されます。築地市場の施設の老朽化や狭隘化への対応は急務であり、そうした中で現在地再整備を進めることは、現実的ではないと考えております。
 最後に、築地の現在地再整備の検討についてでございます。
 これまでの幅広い議論などから、豊洲市場への移転が最も現実的な道であると考えております。築地の現在地再整備は、技術的な提案はともかくとして、事業者間の調整や営業を続けながら工事を行うことが困難なことは、過去の経緯を見れば明らかであると考えております。
 追加対策工事やさまざまな移転準備を進め、豊洲市場への早期移転に向けた環境を整えてまいります。

 

再質問、答弁

 知事に四十二問質問をしましたが、知事が答弁されたのは二十七問だけでした。答弁を聞いて、さらにただすべき問題が多数あります。したがって、知事との一問一答の審議の必要性はますますはっきりしました。全ての答弁に再質問したいのですが、時間の制約から、二問に絞って再質問をいたします。
 まず、無害化方針の撤回の問題です。
 石原元知事は、さきの百条委員会での私の尋問に対して、土壌も地下水も環境基準以下にするという約束はハードルが高過ぎたかもしれないと証言しました。これに対して小池知事は、びっくりしたと感想を述べていました。しかし、先ほどの知事の答弁は、土壌も地下水も環境基準以下にするというハードルは現実的でなかった、だから一方的に破棄するというものです。
 これには私の方がびっくりしました。市場業者、都民の皆さんも同じだと思います。土壌も地下水も環境基準以下にするという約束は、食の安全・安心を確保する東京都の公式の方針として、また、豊洲移転の前提条件として繰り返し明言されてきたのです。約束は双方の合意で成り立つものです。変更する場合は双方の合意が必要ではありませんか。
 知事、謝罪したからそれでよい、一方的に破棄してよいというのですか。改めてはっきりお答えください。
 二問目は、市場業者の合意の問題です。
 知事は、市場業者の方々に丁寧に説明するなどと述べましたが、結果として、市場業者の合意がない場合は豊洲移転は進めない、このことを、知事、はっきり答弁してください。
 以上、二問、知事の答弁を求めます。

知事
 曽根はじめ議員の再質問にお答えをいたします。
 まず一点、無害化の約束についてのご質問でございます。
 先ほどもお話しいたしましたが、豊洲市場の用地をめぐるこれまでの議論、付帯決議に至ります経過など、十分承知をいたしているところでございます。そして、都議会や都民との約束というのは極めて重いものだと考えております。一方で、目標に向けた対策を行って汚染の大幅な改善は図られたものの、結果として都民の約束が果たされていない現状、こうした現状を真摯に反省をいたしまして、都民におわびをさせていただき、そして、無害化にかわる新たな方針を定めたものでございます。
 この方針に基づいて、リアル、現実に立脚した取り組みを着実に積み重ねていくことで、都民や事業者の理解を得られるように努めてまいりたいと考えております。
 そして、築地市場の事業者への対応についてのご質問がございました。
 豊洲市場への円滑な移転に向けましては、市場業者の方々のご理解を得ながら取り組んでいく必要がございます。だからこそ、私は基本方針の発表後、直ちに市場を訪問いたしまして、業界団体の方々とも率直な意見交換を行ったところでございますし、また、今後とも、厳しい経営環境のもとに置かれた事業者の皆様方の不安、そして、課題に耳を傾けまして、事業者に寄り添った丁寧な対応に努めていく、このことを先ほど述べたとおりでございます。