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質問・条例提案

2022.05.27

都市整備委員会 神宮外苑の歴史的景観と環境の保全に関する陳情の審議 原田あきら都議(杉並区選出)

(陳情4第10号 神宮外苑の歴史的景観と環境の保全に関する陳情の審議)

○原田委員 ほんの半年前の十二月十四日、忘れもしない極寒の青山高校の体育館で、暖房もないまま三時間に及んだ神宮外苑地区地区計画の住民説明会。百五十人ほどの人々が次々と再開発に対する懸念を表明しました。説明会が終わってからも、がたがた震える体を押して何人もの人たちが集まり、連絡先の交換をしていました。そのつながりから、神宮外苑を守る有志ネットが発足し、私は都市計画審議会委員ですけれども、その有志ネットの皆さんから丁寧な書簡を受け取りました。神宮外苑の歴史的な経緯、そして、その価値に私も深く傾倒し、この間勉強させていただきました。
 外苑の運動は、有志ネットの活動を皮切りに様々な方々がそれぞれ個性的に展開され、日本在住アメリカ人のロッシェル・カップさんという方が集めたネット署名は六万筆の段階で小池都知事に提出されましたが、そのほか、地元の高校生が集めた署名も六千筆という規模で提出されています。
 多くの新聞や週刊誌が千本の樹木伐採について取り上げ、最近では都市再開発そのものの在り方について議論が発展し始めています。
 五月二十日にはNHKの番組、首都圏情報ネタドリ!で神宮外苑再開発が報道され、また大きな世論が形成され、この数日、保守論客の方々もネットで拡散し、ロッシェルさんのネット署名はここに来て新たに、数日で二万筆近くの方が署名しています。
 本陳情に賛同する署名も短期間の間に三千九百筆を超えています。その署名は、多くが都内はもちろんのこと全国から郵送されてきたものということでして、全ての会派の議員がその束を見せていただいたと思いますが、私も見て本当に驚きました。封筒に入れて送付するという手間もお金もかかる作業であるにもかかわらず、これだけの署名が短期間に集まっているわけです。
 まさに神宮外苑創建当初の全国からの献木運動を想起させるような動きだと思います。神宮外苑は都民の宝であると同時に、もはや国民的な文化財だといって過言ではないと思います。
 そして、昨日、環境影響評価審議会において、環境破壊への対策の議論も情報提供も不十分とし、当初予定していた総括を行わず、継続審議となる前代未聞の事態が発生しています。
 こうした都民の外苑再開発に対する批判の声は非常に強いものがあると思いますが、都は現在どのように受け止めているのか。

○山崎都市づくり政策部長景観・プロジェクト担当部長兼務 今回の神宮外苑のまちづくりは、創建の趣旨や歴史を踏まえ、にぎわいあふれる緑豊かなスポーツの拠点としてさらに発展させていくものであります。
 既存の樹木については、一本一本を大切に扱い、樹木の状態など詳細な調査を行って、極力移植または保存するよう事業者に求めております。
 また、まちづくりに対する多くの都民の共感が得られるよう、具体的な整備計画などの詳細な情報を分かりやすく発信するよう事業者に求めております。

○原田委員 先ほど他の委員から、絵画館から青山通りを望む景観もすばらしいという発言がありましたが、まさにその景観も実は創建当初重視されて造園されたと指摘する専門家の方がいらっしゃいます。
 まさに今回の計画で、それこそ絵画館の方から青山通りに向かうイチョウ並木、その右に超高層ビルや球場の防球ネット、巨大パネル、球場ホテルが視界を汚していくわけです。
 都市整備局の皆さん、よく聞いていただきたいと思うんですけれども、外苑は、その歴史的経緯とともに、全国からの献木と勤労奉仕、百年以上を見据えた壮大な造園計画に基づいてつくられており、一掃して新しいものを植えればそれでいいという話ではありません。一部の企業や明治神宮だけで勝手に改変していい土地ではありません。都民や有識者の皆さんが強く発している良識の声に、いま一度耳を傾けるべきだということを冒頭申し上げるものであります。

都は樹木の伐採計画を事前に把握していた
 日本共産党都議団は、四月二十六日に記者会見を行い、情報開示請求によって入手した幾つかの重要な資料を公開しました。その中の一つ、地区計画企画提案書という資料が出てまいりました。
 そこでお聞きします。四月二十五日に情報開示された地区計画企画提案書には、樹木の面積や新植に関する詳細な記載がありましたが、都は、これを昨年七月に入手し、把握していました。住民説明会でも都市計画審議会でも、この資料に基づく説明をしなかったのはなぜですか。

○山崎都市づくり政策部長景観・プロジェクト担当部長兼務 お話の資料は地区計画企画提案書の一部でございまして、事業者が行う緑化計画について東京都再開発等促進区を定める地区計画運用基準等のうち、緑化面積の基準に適合するか否かを確認するためのものでありまして、伐採や移植の本数を示したものではございません。

○原田委員 その資料がまさに必要だったんじゃありませんか。見てくださいよ。これは、今回の新施設の周りにどういう既存の樹木が残っているのか、新しい樹木はどういうふうに植えるのか、面積ベースで全部書いてあるじゃありませんか。これ去年の七月にあなたたち持っていたんですよ。住民説明会でも、私が都市計画審議会で求めても、こういう資料を出してこなかったんでしょう。
 改めて指摘しますが、この資料には、どの樹木が残るのか、そして、新しく植える樹木や芝生などの位置や面積などが、新ラグビー場や野球場、軟式野球場跡に建てられるテニスコートなど、施設ごとに詳細に記されています。翻ってどこの樹木がどれだけ伐採されるのか分かるわけですよ。
 事実、その後事業者は新宿区の都計審に、伐採する樹木の本数まで正確に分かる資料を提出しています。その基になった資料でしょう。ここまで詳細な計画図が東京都や事業者から出てきたのは初めてのことでした。
 樹木千本の伐採が行われることを告発した中央大研究機構の石川幹子教授は今年一月、自分の足で、計画にさらされる外苑の全ての樹木を調査し、大量の伐採を突き止めました。ところが、都や事業者は、そのことをより容易に把握できる資料を昨年七月には入手していたのに、誰にも見せてこなかったわけです。そういう姿勢が計画への都民の信頼をいまだに勝ち得ていない原因になっているんじゃありませんか。

都はイチョウ並木の兄弟木が伐採される計画を事前に知っていた
 都及び事業者は、盛んにイチョウ並木の景観は保存するといってきましたが、実際には、現秩父宮ラグビー場に向かう十八本のイチョウ並木については、計画による重大な被害を隠してきました。
 これまでイチョウ並木は保存するといってきましたが、秩父宮ラグビー場に向かうイチョウ並木、いわゆる兄弟木については伐採されることになります。都はこのことについて都民に対してしっかりと説明をしていませんが、それはなぜでしょうか。

○山崎都市づくり政策部長景観・プロジェクト担当部長兼務 都といたしましては、これまで四列のイチョウ並木については保存することを説明しております。お話のイチョウ並木を含め既存樹木については、今後、詳細な調査を実施し、極力保存または移植するよう事業者に求めております。

○原田委員 この期に及んでも、まだそんなことをいっているんですか。兄弟木についても、まるで移植、保存される可能性があるかのようにほのめかしましたが、これも我が党の情報公開請求で出てきた資料なんですけれども、公園まちづくり制度に基づく神宮外苑地区まちづくり計画、公園まちづくり計画提案書というものなんですけど、ここに何て書いてあるか。こう書いてあります。
 適切な根鉢確保が難しいため、港区道一一〇七号線沿いのイチョウ並木、イチョウの移植は困難であると考えられる。
 兄弟木のイチョウ並木について移植は困難とはっきり書いてあるじゃないですか。でたらめな答弁やめていただきたいんですね。何が今後の調査を実施し、極力保存または移植だと。
 都はこの資料を持っていたんですよ。移植は困難と書いてあることを知らなかったんですか。お答えください。

○山崎都市づくり政策部長景観・プロジェクト担当部長兼務 お話のイチョウ並木につきましては、今後、詳細な調査を事業者において実施し、極力保存または移植に努めるよう求めておるところでございます。

○原田委員 質問に答えていません。皆さんが極力保存、移植を求めていくというふうに答弁しているんですが、実際には事業者は移植は困難とはっきり書いていると。そして、この資料は、皆さんはもうずっと前から持っているんです。
 どうなんですか。この資料を持っていたけど知らなかったんですか、書いてあることを。それとも、知っていながら、まるで移植が可能かのような答弁をしていたということですか。はっきり答えてください。

○山崎都市づくり政策部長景観・プロジェクト担当部長兼務 繰り返しの答弁になりますが、お話のイチョウ並木につきましては、今後、詳細に調査を実施し、極力移植するよう事業者に求めております。
   〔発言する者あり〕

○原田委員 ただいま、自民党の委員の方が後ろから、東京都は事業主体じゃないからしようがないんだという発言がありましたが、違うんです。東京都は、その事業者からこの資料を得て、移植は困難だと事業者がいっていることを知っていたんです。ところが、都民に対して十八本のイチョウ並木、兄弟木については、これから調査をして、極力保存ができるように努めていくようにいってみるというふうに−−これ虚偽答弁じゃありませんか。
 どうするんですか、これ。今、先ほど皆さんが行った答弁が、実はこの資料によって、まるで虚偽のような答弁だったということが分かりました。局長、どうするんですか、これ。知っていたんですか。このイチョウ並木十八本は、兄弟木は切られるということを知っていたんですか、局長は。

○山崎都市づくり政策部長景観・プロジェクト担当部長兼務 お話のイチョウ並木の取扱いにつきましては、この事業者の計画によることになりますが、都におきましては、今後、詳細な調査を実施し、極力移植をするよう求めているところでございます。

○原田委員 知っていたんでしょう。移植は困難と書いてあったこと。
 都民や議会に情報を提供しない不誠実な事業者。都民が情報を持っていないことをいいことに、まるで移植が可能であるかのような答弁をする東京都。そういう姿勢こそ本陳情は改善を求めているんじゃありませんか。

三井不動産のビル建設によって、神宮球場がイチョウ並木に接近
 保存するとしているイチョウ並木についても全く安心できません。報道によれば、昨日の環境影響評価審議会でも、専門家の委員からのイチョウ並木に与える影響について評価できているのかとの質問に、事業者は、今の時点で影響がないともいえないし、あるとも回答しかねるなどと答えたと。不安しかありませんよ。
 東京都環境審議会では、イチョウ並木と新神宮球場の距離について、根茎の保全上、非常に不足している、日照の影響なども懸念されると指摘されるなど、多くの専門家から、イチョウ並木への影響を危惧する声が上がっています。都としてどのように認識しているか。

○山崎都市づくり政策部長景観・プロジェクト担当部長兼務 四列のイチョウ並木は神宮外苑の象徴であり、その保全には万全を期すよう、昨日、知事名の文書で事業者に要請したところでございます。
 現在、環境影響評価の手続が進められておりまして、その結果等も踏まえ、今後、事業者においてイチョウ並木への影響を考慮して野球場の設計を行うよう求めております。

○原田委員 部長ね、今自分が何を答弁しているか分かっていますか。イチョウ並木から八メートルほどしか離れていないところに新球場の壁が建ち、その下には大変な量のくいが打たれるわけでしょう。本気で並木への影響を考慮して設計をしろって、木の根っこをよけて建ててほしいと、くいを打ってほしいと事業者に求めるつもりがあるということですか。
 事業者にしても都にしても終始そのような調子だから、昨日の審議会の委員から、このままでは評価書の内容を担保できないと、厳しい指摘がなされるわけですよ。
 日当たりの問題についても、西日がほぼ当たらなくなり、木の育成に重大な影響があるということは、樹木の権威、藤井英二郎千葉大名誉教授が指摘をしております。
 本気でイチョウ並木を守るというなら、建築物がもっとイチョウ並木から離れるしかないんです。
 四月二十五日の記者会見では、都が、実に十年前の二〇一二年、平成二十四年に森喜朗衆議院議員を訪ね、ラグビー場と神宮球場を入れ替える案を示したことを私たちは明らかにしました。その際、森喜朗氏に見せていたイメージ図がこれまでは黒塗りで提示されてきましたが、今回、私たち都議団の議会追及によって、ついにその黒塗りが外れ、当時の東京都が森喜朗氏に見せていたイメージ図が明らかにされました。
 それを見ると、現計画で大問題となっている超高層ビルはおろか、商業施設も実はこのイメージ図にはなかったんです。その分、神宮球場は明らかにイチョウ並木から離れた位置に建設される予定だったということが見てとれます。ところが、別の開示資料を合わせると、イメージ図が現計画に近づいていく様子が分かるようになりました。
 二〇一四年、森さんに都が会ってから二年後、平成二十六年七月十日の資料が開示請求で出てきましたが、これを見ると、二〇一二年に森氏に見せたイメージ図にはなかった事務所ビルが出現するわけです。そして、そのビルから逃げるようにして神宮球場はイチョウ並木に近づくことが分かりました。
 ここで、そのことを確認したいと思います。地権者等との協議が始まった翌年の二〇一四年七月十日には、神宮外苑地区に恒久サブトラック設置が困難な理由という資料が作成され、ここで初めて、事務所ビル等という施設がイメージ図に登場します。その位置から考えて、現在の百八十五メートル、三井不動産のビルの場所に出てくる事務所ビルです。これによって、新神宮球場がイチョウ並木に近づきます。間違いありませんね。

○吉野まちづくり推進担当部長 平成二十六年七月十日の資料ですけれども、神宮外苑地区に恒久サブトラック設置が困難な理由を副知事に説明するために、関係地権者等と調整中の施設の大まかな配置を示したものでございまして、この資料でご指摘の内容について判断することはできません。

○原田委員 判断できないとの答弁でしたが、違いますなどとは否定できませんでしたね。判断できないと。
 曇りなき眼で見れば明らかなんです。事務所ビルが出現したことによって、神宮球場がイチョウ並木にぐっと近づいているわけです。そして、この事務所ビルが百八十五メートルの超高層ビルに計画変更されるときが来るんでしょう。そのとき、神宮球場がぴったりとイチョウ並木に横づけされることになるわけなんですね。

容積配分のための整備により、絵画館前広場の樹木が伐採される
 二〇一四年のイメージ図には、テニス場等のスポーツ関連施設がつくられる予定ですが、現在の計画では、これが軟式野球場の広場に移され、大量の樹木伐採を引き起こすことにつながっています。
 スポーツ関連施設は、なぜ軟式野球場に移ったのか、また、いつ移る計画になったのかお聞きしたいと思います。
 分かりますかね。要は、二〇一四年、その事務所等が出てくるときに、そのときはスポーツ関連施設、小さくないテニス場等というのが書いてあるんですね。それが新神宮球場の上辺りにあったんです。それが、ところが現計画では、そこは広場になってしまって、スポーツ関連施設テニス場等は、軟式野球場を潰すことになる、あっちの広場の方に持っていかれちゃうんです。
 なぜ、このスポーツ関連施設は軟式野球場に移ったのか、また、いつ移る計画になったのか教えてくださいという質問です。

○吉野まちづくり推進担当部長 東京二〇二〇大会後の神宮外苑地区のまちづくり検討会におきまして、憩いやレクリエーションなど様々な目的で利用できる広場空間が十分に確保できていないなどの課題を整理いたしました。
 こうした検討会での議論を踏まえ、平成三十年に策定したまちづくり指針において、スポーツ環境及び緑とオープンスペースの方針図を示しております。
 このまちづくり指針の内容を踏まえ、事業者において具体的な検討が行われ、令和二年二月に事業者が提案した公園まちづくり計画の中に施設の配置が示されました。

○原田委員 二〇一八年のまちづくり検討会において課題を整理したとのことですが、まだなぜスポーツ関連施設が軟式野球場の広場に持っていかれたのか、よく分かりませんでした。軟式野球場の方にこのスポーツ関連施設が行くことによって、あの広場の周りの樹木、大量に伐採されるわけですよ。もう少しお聞きしたい。
 二〇一四年イメージ図のスポーツ関連施設の計画はなくなり、現計画では、そこには広場7号、8号と緑地6号ができることになります。この広場や緑地は超高層ビルを建設する上で、制度上どのような役割を果たすのか。また、この広場や緑地がないと、現計画上の超高層ビル建設は成り立たないといえるかどうか。

○山崎都市づくり政策部長景観・プロジェクト担当部長兼務 神宮外苑地区は、大規模スポーツ施設等に多くの人々が訪れる一方、来訪者が気軽にスポーツ等を楽しんだり、緑に親しめる空間や機能が不足しているなどの課題がございます。
 このため、都が策定いたしましたまちづくり指針では、絵画館やイチョウ並木の眺望や風致を保全しつつ、地区の中心となるまとまった広場空間の確保や、青山通り沿道等における土地の高度利用によるにぎわい創出を図ることなどを誘導方針として示しております。
 今回の計画はこの指針を踏まえ、東京都再開発等促進区を定める地区計画運用基準に基づき、地区の中央広場である広場7号等を主要な公共施設等に位置づけ、容積の適正配分の特例を適用して、野球場やラグビー場、事務所棟などの施設整備を行うものでございます。
 これによりまして、地区の特性に応じた景観形成や機能導入、建築物の高さ、規模の誘導等が図られ、当地区の望ましい将来像の実現が可能となるものでございます。

○原田委員 私は、スポーツ関連施設をどかした後にできる広場や緑地は、超高層ビル建設にとって、より高く建てるための制度上不可欠な施設だったのではないですかと聞いたわけですよね。すると答弁として、にぎわいのためにつくるんだみたいな答弁をいった後、こういいましたよね。東京都再開発等促進区を定める地区計画運用基準に基づく、容積の適正配分の特例を適用と。こういう答弁が出てきたと。
 つまり、今、部長も明確におっしゃいましたけど、容積緩和をしてあげる特例は、より高いものを建てるための特例は、この広場がつくられないと適用できないんだと答えたわけです。
 要するに、民間企業の極端な利益の追求が、より多くの樹木伐採を引き起こす計画に動いていったことが分かるわけですが、都としてはこうした計画の変遷や結果を全部知っていたわけで、これらを見て、どの点が創建の趣旨にかなう計画であると認識したのかお答えください。

○山崎都市づくり政策部長景観・プロジェクト担当部長兼務 まず、先ほどのご質問の、ご指摘の中、お話の中で、広場がないと容積の適正配分の特例が適用できないというご説明でございましたけれども、再開発等促進区を定める地区計画運用基準では、広場や緑地を設ける以外にも、良好な環境を創出するなど周辺の市街地環境への配慮や区域内環境の向上に、より貢献した建築計画の実現に資することにより、容積の適正配分の特例を適用することができることとなっておりまして、開発計画全体の考え方により、適切に運用するものでございます。
 創建の趣旨にかなう計画であるかとの認識についてでございますけれども、神宮外苑の歴史的、文化的価値は、創建時に聖徳記念絵画館を中心として西洋的な庭園や緑地等が整備され、多くの人々に開かれた庭として機能してきたことなどにございます。
 今回の計画では、神宮外苑地区の歴史的、文化的価値を適切に継承することができるよう、民間事業者において、四列のイチョウ並木を保存し、眺望保全に係る絵画館の前庭部分は創建時の芝生の姿を基調として再整備するとともに、前庭に連なる中央広場等から成る緑空間を整備するなど、実質の緑の割合を増加させながら、開かれた庭として再生していくものでございます。
 また、既存の樹木については、一本一本を大切に扱い、樹木の状態など詳細な調査を行って、極力保存または移植することとしております。

○原田委員 事業者が認めているだけでも八百九十二本が伐採されるわけですよ。それこそイチョウ並木の兄弟木は全部伐採ですよ。移植は困難と書いてある。適切に保存するとしてきたイチョウ並木も今や風前のともしびであります。

国立競技場建設で移植された樹木の多くが立ち枯れ
 大体、移植も百数十本に及ぶんですよ。移植というのはすごく大変な手間が必要で、時間もお金も技術もかかるわけです。
 なので、お聞きしますけれども、本計画では大量の移植を行うとありますが、国立競技場で移植された樹木の多くが立ち枯れなど深刻な影響を受けていることが報道されています。そのことを都は認識していますか。移植については、どのようなやり取りを事業者と行っているのですか。

○山崎都市づくり政策部長景観・プロジェクト担当部長兼務 報道については承知をしております。
 国立競技場を管理運営するJSCは、樹木医による点検を行う中で、一部の樹木に生育状態が良好でないという指摘を受けていることから、改めて調査を行うことにより、その要因を把握し、適切な対応を行うと聞いております。
 本計画では、国立競技場周辺におけるJSCが改めて実施する調査結果も踏まえつつ、樹木医の意見も聞きながら樹木の状態などを詳細に調査し、移植が可能な樹木については適切に移植するよう事業者に求めております。

○原田委員 国立競技場のときだって、適切に移植するっていっていたんですよ皆さんは。そして、とんでもない事態になっているわけです。樹木を枯らさないように、元気に復活させようと思ったら、百数十本も移植なんて、正直できるはずがないんじゃありませんか。
 国立競技場のときも、JSCの数字によれば、千五百四十五本が伐採、百三十本が移植されましたが、良好な状態で移植が成功している樹木は、たった三本といわれています。そうした実態を脇に置いて、よくも適切に移植するよう事業者に求めるなどと軽々しくいえたものであります。態度が軽いだけではありません。もはや、都民の目を欺く計画にもなっていることを指摘します。

「公園まちづくり制度」で整備される「緑地等」に、三分の二が伐採される建国記念文庫の森を算入
 外苑再開発では、東京都自ら考案した公園まちづくり制度という制度を適用し、都市計画公園区域を、外苑からですよ、三・四ヘクタールも削除し、その削除した土地に超高層ビルや商業施設を建てることになっています。さすがに、手放しで認めれば公園の用地を使った乱開発といわれてしまうので、公園まちづくり制度では削除する公園区域の六〇%は緑地等を設置することになっているわけです。
 私はこれまで、この緑地等というのが、実は緑地だけでなく、歩道だったりエレベーターだったり、緑でも何でもないものまで含まれているということを指摘してきました。この緑地等で、さらにおかしな実態が見えてきました。お聞きします。
 外苑には建国記念文庫という施設があり、その周りは大きな木々で囲まれていますが、今回、新ラグビー場建設で、この建国記念文庫の森が三分の二伐採されることが分かっています。
 ところが、残る三分の一の森が、なぜか公園まちづくり制度で新たに設置する緑地等に含まれていることが分かったわけです。大量に伐採されて、残った樹木を新たに設置する緑地等に含むのは、明らかに間違いではありませんか。

○山崎都市づくり政策部長景観・プロジェクト担当部長兼務 平成二十五年十二月に策定いたしました東京都公園まちづくり制度実施要綱において、緑地等は、地区施設または主要な公共施設のうち、緑地、広場その他の公共空地をいい、人工地盤上のものを含み、屋内の部分を除くと定義しており、既存の樹木も、新たに植栽する緑も同様に評価しております。

○原田委員 一体何と答弁しているんですか、もう。
 つまり、超高層ビルなどの開発を認める条件として新たに緑地がつくられるわけですが、その緑地はですよ、建国記念文庫の森を三分の二伐採してつくられる緑地だというわけです。信じられますか。不誠実を通り越して、都民を欺く行為じゃありませんか。

計画は樹冠被覆率について考慮なし
 最後に、この計画は、環境問題の角度から見ても全く考慮を欠いているといわざるを得ません。
 樹冠やその影によって地面が覆われる面積が高いほど温度を下げ、ヒートアイランド現象を軽減する効果がある。したがって、この樹冠に覆われる率を都市で上げていこうという考え方が国際社会でも、この東京都でも、そういう考え方があります。
 本計画では、百年の大木も、芝生も、植え込みも同じ面積で数えられてしまっているわけです。しかし、現在欧米では、この樹冠被覆率を都市で上げていこうという、引き上げていこうという声が高まっています。都としても、樹冠被覆率についてどのような認識を持っているのか。

○山崎都市づくり政策部長景観・プロジェクト担当部長兼務 お話の樹冠被覆率は、地面の面積に対する枝や葉が茂っている樹冠の投影面積の割合を示したものでございます。
 都においては、必要に応じて、街路樹の樹冠拡大による夏の暑さ対策として、樹形を大きく仕立てる計画的な剪定方法を行うなどの事業を実施しております。
 一方で、公園緑地の整備におきましては、暑さ対策以外にも広場や樹林、散策路といった空間の特性と利用状況、防犯等を考慮しながら、場所に合わせて高木、低木、芝生など植栽を行う必要があると認識しております。

○原田委員 なるほど、都としては、この樹冠被覆率については認識をし、樹冠の拡大に取り組もうとしているわけですね。
 今回の計画はですよ、その点でいうと、百年の大木を伐採して−−これ物すごい樹冠被覆率です、百年の大木を伐採して、三メートルの木に植え替えちゃうわけですよ。今のような樹冠被覆率を持とうと思ったら、また数十年後とか百年後とか、そういう世界と。
 それにしては、まあ、だから東京都としては樹冠の拡大に取り組もうとしているわけなんですけれども、この間、外苑再開発の資料からは全くそういったものが見えてこなかったわけですよね、いろんな資料に。そうですよね。東京都が大事にしている樹冠被覆率。
 でも、今回の計画では、そんなことは一切考慮されずに、百年の大木も、三メートルの細い木を何本か植えればそれでいいんだという観点に立っているわけですよね。
 これもちょっと聞いてみましょうか。事業者は樹冠被覆率というのを何か大事にしている記載とか、どっかにあるんですか。

○山崎都市づくり政策部長景観・プロジェクト担当部長兼務 先ほどご答弁申し上げましたのは、街路樹におきまして、そういう樹冠の拡大による夏の暑さ対策などの事業を実施しているというものがある一方で、公園緑地の整備におきましては、その暑さ対策以外にも、広場や樹林、散策路といった空間の特性と利用状況、防犯等を考慮しながら、場所に合わせて、高木だけでなく、低木、芝生などを組み合わせまして植栽を行う必要があるとの認識をお答えしたものでございます。

○原田委員 まさに、八百九十二本木を伐採して、移植とは名ばかりの、ほぼ伐採ですよね。百数十本の移植が行われて、代わりに植えられるのは三メートルの低木、それから三メートルぐらいの木、それから植栽、芝生。全く、この樹冠被覆率という、今、国際社会では公園をつくっていく、自然環境を都市の中につくり出していくというときに非常に大事にされている感覚はゼロだと、この計画は。そういうことを示していると思います。
 改めて、本日の質疑で、事業者及び東京都が神宮外苑の百年を見据えた壮大な計画に対する尊敬の念を持ち合わせていないことが明らかとなりました。緑や環境を守るという点でも、情報公開という点でも、改めなければならない点が幾つもあることが浮き彫りになりました。三千九百人の陳情賛同者が求めていることは、極めて私は当然のことと考えます。
 しかしながら、本陳情は決してさきの都市計画決定を否定してはおらず、再開発を否定しているわけでもありません。あくまでも、都市計画決定の中での樹木など環境への配慮を求めているにすぎない陳情です。再開発に賛成の立場でも十分賛同できる陳情なんじゃないでしょうか。
 本日の陳情審議は、神宮外苑再開発に対する各党会派として初めて賛否を表明する場ともいうことができると思いますけれども、何よりも、今回の陳情に関していえば、まずは緑を何とかしてもらいたい、そういう陳情なわけですから、ぜひその各党会派の姿勢は重要だと思っています。
 全国的にも注目されていると思います。ここにいる委員各位の賢明なるご判断を呼びかけ、質疑を終わります。