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質問・条例提案

予算特別委員会 里吉ゆみ都議(世田谷区選出)の一般総括質疑

3月9日(木曜日)の予算特別委員会で、里吉ゆみ議員(世田谷区選出)が一般総括質疑を行いました。

動画(都議会ホームページです。令和5年第1回定例会 >3月9日(木曜日)予算特別委員会・総括質疑をご覧ください)

★質問全文(都議会速記録速報版より)
1 認知症施策について
2 介護職員の処遇改善について
3    生物多様性について


1 認知症施策について

○里吉委員 認知症施策について伺います。
 第八期東京都高齢者保健福祉計画では、見守りまたは支援の必要な認知症高齢者は、二〇一九年の約三十四万人から、二〇二五年には約四十一万人に増加すると推計されています。今後、七十五歳以上の後期高齢者人口の増加に伴い、認知症高齢者も急速に増加することが見込まれています。
 都も、認知症施策について、認知症に向き合い、共生と予防両面の対策を進めると重要課題に位置づけています。
 私自身、離れて暮らす両親が共に認知症で、ほぼ妹に頼りながらですが、週末は介護のために実家に帰る日々を過ごしています。その体験も踏まえ、超高齢化社会を迎える東京で、この施策の推進を求め、質問していきたいと思います。
 かつて、認知症になったら何も分からなくなる、おかしな言動で周りが困る、本人が決めるのは難しいなど認知症に対する誤ったイメージがあふれていたために、今でも認知症と診断されることを極端に恐れる方も少なくありません。しかし、認知症になっても感情はしっかり残っています。理解できること、できることもたくさんあります。自分で決めることもできます。
 認知症は、高齢者五人に一人の時代といわれています。国も、認知症施策推進大綱で、認知症は誰もがなり得るものと述べています。
 認知症になっても、誰もが地域で安心して暮らしていけるように、認知症についての正しい理解を広げることが大切ではありませんか。知事の認識を伺います。

○小池知事 認知症の方は、周囲の理解や気遣いがあれば、穏やかに生活することができるといわれています。
 このため、都は、認知症に対する正しい理解を促進するため、シンポジウムの開催やポータルサイトによる情報発信など、広く都民に普及啓発をいたしております。
 今後とも、様々な機会を通じまして普及啓発を進め、認知症の方とその家族が、地域の中で安心して暮らせる社会を実現してまいります。

○里吉委員 知事、ありがとうございます。認知症の方は、周囲の理解や気遣いがあれば、穏やかに生活することが可能というご答弁でした。本当にそのとおりだと思います。
 でも、私がそう思えるようになったのは、母の認知症が分かってしばらくたってからです。当初は、認知症になったら治らない、だから、全部周りがサポートするしかないと思い込んで、認知症についての正しい理解もなく、そのため正しい気遣いもできなかったと思います。
 認知症とは病名ではなく、脳の記憶に関わる機能が少しずつ低下することによる、日常生活に支障のある状態の総称です。引き金になる病気は七十種類以上あるといわれ、原因になる病気によって、症状の現れ方、経過や進行は大きな違いがあります。そして、一人一人の方は、認知症の患者である前に一人の人間であり、その人らしさはきちんと残っています。
 ですから、その人その人で異なる認知症による症状と、その下での生き方を正しく理解して関われば、本人も家族も混乱することなく、穏やかに生活できると思います。しかし実際は、誤った理解で、例えば、何も分からない人という対応をされたり、日頃付き合っている方々から腫れ物に触るような対応をされたりするなど、当事者も家族も傷つくことがたくさんあります。
 さて、皆さん、認知症予防とは、認知症にならないという意味ではないということをご存じでしょうか。現在、認知症予防とは、認知症を遅らせる、認知症になっても進行を緩やかにすることを意味しています。しかし、予防という言葉を使えば、予防すれば認知症にならないと思われるのは当然です。大切なことは、認知症になっても自分らしく生きられるようにすることです。
 世田谷区は、二〇二〇年十月に、認知症とともに生きる希望条例を当事者参加で制定しています。ここでは、認知症予防の代わりに、認知症に備えるという言葉が使われています。
 認知症予防より、認知症への備えの取組を進めることが重要だと思いますが、いかがでしょうか。

○西山福祉保健局長 都は、共生と予防の両面から認知症施策を進めており、認知症になっても、住み慣れた地域で安心して暮らせるよう、都民への普及啓発のほか、早期診断と早期対応のための認知症検診を区市町村と連携して推進するなど、総合的に取組を進めてございます。

○里吉委員 認知症になったらどうしようと必死に予防に取り組むことより、まずは認知症への今までの考え方を変えること、そして、認知症は誰もがなり得るものであることを理解して、きちんと備えることが大切です。認知症になることを必要以上に恐れるのではなく、認知症になっても、分かる、できることがあると分かっていれば、できる備えはいろいろあると私自身も改めて学びました。
 認知症になっても、何も分からなくなる、何もできなくなるわけではないということは、多くの著名人が発信しています。漫画家の蛭子能収さんは、アルツハイマー型とレビー小体型の認知症を併発していることを二〇二〇年に公表しましたが、今も現役で活躍しています。
 世田谷区では認知症の条例をつくるとき、三人の認知症本人の方に加わってもらい、議論したそうです。従来の認知症観をがらりと変えるものにしたいと意見が出され、名称も、認知症とともに生きる希望条例となったそうです。
 都は、認知症の本人が認知症施策に関わることの意義をどのように捉えていますか。

○西山福祉保健局長 国の大綱において認知症施策は、認知症の人の視点に立って、認知症の人や家族の意見を踏まえて推進することが基本とされており、都は、この考え方に基づいて施策を実施しております。

○里吉委員 認知症施策は、本人の意見を踏まえることが基本であるという認識を確認できました。
 現在、東京都認知症施策推進会議にオブザーバー参加している認知症のご本人の方々を正式にメンバーに加えるなど、認知症に関する施策作成の場に、認知症のご本人が参加することを提案したいと思いますが、いかがでしょうか、見解を伺います。

○西山福祉保健局長 東京都認知症施策推進会議には、家族会の代表が委員として参画しているほか、認知症の当事者であるとうきょう認知症希望大使の方々がオブザーバーとして出席し、周囲の人や社会への期待などについてご意見をいただいてございます。

○里吉委員 会議ではご意見もいただいているということですので、出された意見は大切にしていただきたいと思います。
 世田谷区で参加された認知症のご本人は、最初はなかなか発言できなかったそうですが、慣れてくるに従って、ご自身の考えをいえるようになったと伺いました。この取組そのものが、区の職員の方をはじめ、関わっていた方の認知症への見方も変える力になったのではないでしょうか。様々な施策や計画を話し合うときに当事者を入れるということに、ぜひ取り組んでいただきたいと思います。
 認知症は、初期対応が大事といわれます。早い段階で事実をご自身や家族が受け止めることで、今後の備えをする、生きるための工夫をすることができるからです。
 認知症初期対応の重要性について、都はどのように捉えていますか。

○西山福祉保健局長 認知症は、早期の適切な治療により、改善する場合や進行を遅らせる場合があり、また、症状が軽いうちに本人や家族が認知症への理解を深めることで、今後の生活の準備ができることから、都は、早期診断、早期対応に向けた取組を進めております。

○里吉委員 今ご答弁いただいたように、早期対応は、本人と家族が地域で安心して暮らしていけるために大切です。
 そこで、都が行っている認知症の初期の段階での診断や対応を進めるための認知症とともに暮らす地域あんしん事業のうち、初期の段階から継続的な支援ができる地域づくりを推進する認知症地域支援推進事業について、その成果と、今後、各地域に広げていくための対応について伺います。

○西山福祉保健局長 本事業は、これまで三区で居場所づくりや専門職による相談支援体制の整備などに活用されており、令和三年度に補助要件を緩和しております。

○里吉委員 認知症支援の専門員が身近な地域にいることや、地域に認知症本人や家族が気軽に集うことができる認知症カフェなど居場所があることは大切ですから、ここへの都の補助があることは重要です。しかし、まだ三区しか活用していないことが課題です。
 自治体にお話を伺いました。都の補助は二分の一支援が多く、同じようなメニューでも介護保険会計を使えば、自治体の負担は二割弱で済む、住民から支援の拡充を求める要望は出ているが、介護保険会計の枠内では、これ以上予算を増やせない、一方、東京都の補助は、二分の一補助で使いにくいとのことでした。
 東京都の補助率を引き上げるなど、区市町村と共に、認知症になっても安心して暮らせる地域づくりを進めていただきたいと思いますが、いかがですか。

○西山福祉保健局長 都は、地域の実情に応じて認知症に関する事業に取り組む区市町村を包括補助により支援しており、このうち、新たな課題に取り組む先駆的な事業は、補助率を十分の十としてございます。

○里吉委員 補助率十分の十、つまり、全額都が補助するメニューもあるということです。せっかく都として独自に認知症支援の専門員や居場所の支援などに使える補助を行っているわけですから、多くの地域で使えるように、補助率の引上げを改めて要望しておきます。
 順天堂大学医学部名誉教授の新井平伊氏によれば、アルツハイマーなどの認知症は、自立している軽度の状態が五年ぐらい、少し介護が必要になる中等度が五年から八年、ほぼ全介助の高度障害が五年から八年、全体で十五年から二十五年ほどの経過があると述べています。
 長期間の介護を担うためには、認知症の人の家族が認知症を正しく理解して、無理をしない介護を進めることが大事です。若年認知症の親を介護するヤングケアラーも含め、家族で抱え込まないようにすることが大切です。
 都内各地にある認知症の家族会などは、情報交換や交流の会、介護や医療などの学習、電話相談などを通じて、認知症の家族を支える役割を果たしていて重要です。同じような体験をした方からのアドバイスは説得力があり、すぐに役立つことがたくさんあります。何より、当事者家族だからこそ共感してもらえることも多く、安心して相談できる場所となっています。
 都は、認知症家族の会の果たしている役割について、どう認識していますか。

○西山福祉保健局長 家族会は、認知症の人の家族としての思いや悩みを共有し、様々な情報を交換することで、本人や家族を支える役割を担ってございます。

○里吉委員 家族会の役割を認める大事な答弁です。
 認知症の人と家族の会が発行している認知症の人と家族の思いに関する報告書、二〇一七年発行のものを読みました。ここには学ぶべきことがたくさんありましたが、私は、認知症の現れ方が人それぞれで、認知症についての正しい情報を学べる場として、家族会が大事な役割を果たしていることが分かりました。
 また、認知症が進んでいくと、本人との意思疎通や食事や排便といった生きるために欠かせないことに困難が生じるようになったり、目が離せないようになるなど、介護が大変になっていきます。そんなとき、同じ体験をした先輩家族も参加している家族会の存在は、本当に大きいと思います。
 私自身は、母の言動のおかしかったことや信じられない行動を話して、そういうこともあるよねと共感してもらえるだけで救われる思いをしたことが何度もありました。
 このように、大事な家族会ですが、地域によっては、会合の場所を確保することが難しいなど、開催に苦労している会もあると聞きました。
 都として、区市町村とも協力し、都内各地で家族会が活動できるような支援を求めますが、いかがですか。

○西山福祉保健局長 都は、認知症の人の家族会の立ち上げや家族会同士のネットワークづくり、若年性認知症の人の家族会の活動などを支援する区市町村を包括補助により支援をしてございます。

○里吉委員 都の包括補助や自治体からの支援があるというご答弁でした。
 都としても重要性を理解しているから、支援をしているのだと思います。それは分かっているのですが、実際には、全ての家族会に支援が届いていません。これからますます認知症とその家族も増えていくわけですから、さらに支援が行き届くように、都としても、区市町村と共に取り組んでいただくよう求めます。
 認知症になっても、尊厳と希望を持ちながら安心して暮らしていける長寿社会実現のために、東京都として、認知症希望条例を制定することを提案しますが、いかがでしょうか。見解を求めます。

○西山福祉保健局長 都は、高齢者保健福祉計画の重点分野の一つに、認知症施策の総合的な推進を位置づけ、認知症の人と家族が地域で安心して生活できるよう、様々な施策を総合的に進めております。

○里吉委員 既に、先ほどお話ししました世田谷区をはじめ、全国一県十九区市町村が認知症条例を制定しています。ぜひ検討していただきたいと思います。

2 介護職員の処遇改善について

 次に、介護職員の処遇改善について伺います。
 認知症の方を含め、介護が必要となっても地域で安心して暮らし続けるには、様々な介護サービスが欠かせません。
 例えば、認知症の初期の頃は、薬を飲むチェックや食事や室温の管理に短時間でもヘルパーの方が来てくれるととても助かります。デイサービスなども利用することで、生活のリズムもつくれます。認知症が中程度になっても、小規模多機能などを使えば、地域で暮らせる方はたくさんいらっしゃると思います。
 私の両親も二人ともデイサービスなどを利用していますが、働いている方は皆さん、当事者に寄り添ってくださって、介護の専門性を毎回痛感しています。本当に感謝しかありません。しかし、職員がぎりぎりで大変だという話は、いろんなところで出されています。
 私の週末介護は、現在五年目ですが、両親の介護を家族だけで行っていたら、ここまで在宅では過ごせなかったと思います。施設で過ごすことも今後検討するときが来ると思いますが、特養ホームなどの高齢者施設の職員不足も深刻です。
 介護労働安定センター東京支部による最新の介護労働実態調査東京版によれば、介護人材の不足感がある事業所は六二・七%と、依然として高い状況です。

 都は、介護職員向け宿舎借り上げ支援事業の充実など、介護職員の確保のための取組を進めてはきましたが、極めて厳しい現状は変わりません。都内で、全産業平均と比べて賃金が月十万円以上低いのに、国の介護報酬の改定は月額九千円で、全く足りていません。介護職員の確保のためには、抜本的には、賃金の引上げが必要不可欠ではないでしょうか。
 知事は、世界に誇る長寿社会の実現、介護離職ゼロを掲げていますが、必要な介護職員の不足が解消できていません。この原因を都はどのように認識していますか。

○西山福祉保健局長 都は、高齢者保健福祉計画の重点分野の一つに、介護人材対策の推進を位置づけ、介護人材の確保、定着、育成に向け、多様な人材の介護職場への参画の促進、介護の仕事や職場のイメージアップ、働きやすい職場環境づくりなどに取り組んでおり、引き続き、様々な施策を総合的に進めてまいります。

○里吉委員 介護職員が不足している原因は複数あると思いますが、介護という高い専門性が求められているのに、その賃金が他の職種に比べ月十万円も低いことは、仕事を継続できない、またはこの仕事を選べない大きな理由になっていることは明らかです。
 都として、独自の介護職員の賃金引上げについての検討、また、宿舎借り上げ事業についても、対象にしている職種を拡大することや、認知症対応として重要な認知症グループホームや小規模多機能施設も、都が直接支援するなど提案します。いかがですか。

○西山福祉保健局長 介護サービス事業は、介護報酬等により運営されることが基本であり、都は国に対し、事業者が、人材の確保、育成、定着を図り、事業運営を安定的に行うことができる介護報酬とするよう、繰り返し提案要求をしています。
 また、介護職員宿舎借り上げ支援事業は、今年度から、対象となる事業所を拡大しております。
 さらに、グループホームなどの地域密着型サービスについては、宿舎借り上げ支援に取り組む区市町村を包括補助により支援をしております。

○里吉委員 都として、宿舎借り上げ支援事業を拡充してきたことは、介護事業者の方からも歓迎されています。包括補助を行っていることは理解していますが、やはり補助率が二分の一であることがネックで、昨年度の実施は七区市にとどまっています。
 少なくとも現場の声を聞きながら、この制度は、さらに改善、拡充していただくことを要望し、次の質問に移ります。

3    生物多様性について

 生物多様性について伺います。
 生物多様性は、人間活動の影響によって、気候変動とともに地球規模の深刻な環境問題として、世界全体で対策の必要性が急速に高まっています。
 知事は、都内においても、土地利用の変化や侵略的な外来種の侵入などによる生物多様性の損失が課題となっているとして、その対策の必要性、自然と共生する豊かな社会を目指すとおっしゃっています。
 そのためには、具体的に多様な動植物が生息している地域を守っていく必要があります。
 都では、良好な自然地や歴史的遺産と一体になった樹林などを都民の大切な財産として末永く残していくため、自然保護条例に基づき、公有地や民有地の区別なく保全地域を指定し、行為規制によりその自然環境を保全しています。現在、五十地域、約七百六十ヘクタールを指定していますが、二〇三〇年度までに新たに三十ヘクタール程度、二〇五〇年度までに百ヘクタール程度に拡大する目標です。
 都の保全地域の指定について、市街地に近接した多様な生物が生息する自然環境を有するエリアは近年減少傾向にあり、都として積極的に指定すべきと考えますが、いかがですか。

○栗岡環境局長 都は、令和二年度に、今後の保全地域の指定に向け、丘陵地の谷戸やその他の緑地における生物多様性の情報等の調査を実施いたしました。
 その結果、多摩地域の丘陵地や台地部等には、様々な種類の希少種が生息、生育する豊かな自然環境を有する土地が存在していることが分かってきてございます。
 今後とも、この調査結果や地元自治体の意見等を踏まえながら、指定について検討してまいります。

○里吉委員 生物多様性の損失が継続し、生態系がある臨界点を超えた場合、生物多様性の劇的な損失とそれに伴う広範な生態系サービスの低下が生じる危険性が高く、それらを再生することは困難であるといわれています。
 都の環境基本計画では、東京の生物多様性の劣化が進んでいる直接的な要因として、開発など人間活動による影響を第一の危機として挙げています。
 自然環境を守ろうと数十年いわれ続けてきましたが、開発が進み、貴重な自然が失われてきました。保全地域の指定の拡大に、スピード感を持って取り組む必要があります。
 豊かな自然が残された地域を公有地化するのは当然ですが、同時に、自然が壊されると問題になっている土地、開発の危険と察知した土地を都が公有地化するなど、積極的な取組が必要ではないでしょうか。都の見解を伺います。

○栗岡環境局長 都は、自然保護条例に基づき、自然の保護と回復を図るため、良好な自然地を保全地域に指定してございます。
 保全地域に指定された民有地は、建物の建築等が制限されるなど、地権者の行為が制限を受けることから、代償措置として、土地の所有者から買入れの申出があった場合には、都が土地を買い取ることになってございます。

○里吉委員 公有地化するには、土地所有者からの申出があった場合という答弁ですが、生物多様性の保全に貴重な役割を果たしているにもかかわらず、開発によってそれが失われる可能性があると判断した土地については、先手を打って地権者と交渉するべきです。希少な動植物の生息、生育地が今も失われ続けています。都として、でき得る限り積極的な対応することを求めます。
 同時に、生物多様性をめぐる危機は、順次公有地化を進めていくだけでは間に合わないところまで進行しています。
 国は、現在作成中の次期国家戦略においてネーチャーポジティブを掲げ、二〇三〇年までの陸域及び海域の三〇%を保護するサーティー・バイ・サーティーを新たな目標としても設定しています。
 民間企業も生物多様性に貢献できるよう、都としても働きかけることが必要ではないでしょうか。見解を伺います。

○栗岡環境局長 都では、民間企業による生物多様性保全に向けた取組を推進するため、江戸のみどり登録緑地制度を平成二十九年度から実施してございます。
 本制度は、積極的に在来種を植栽し、生物多様性の保全に取り組んでいる民間事業者の緑地を都が登録、公表することで事業者の意欲を引き出す仕組みであり、引き続き、制度を適切に運用してまいります。

○里吉委員 江戸のみどり登録緑地は、大きな建物を建てたときの緩和策として、やらないよりはやる方がいいという発言が、都の生物多様性地域戦略改定検討会の中でありました。
 生物多様性の保全に対する民間企業のより踏み込んだ貢献を求めていく必要があると思います。
 開発により、希少な動植物の生息地が失われようとしている一つに、GLP昭島プロジェクトという巨大物流センターの計画があります。
 敷地面積五十九万平米、東京ドーム十二個分の広さで、今は昭和の森ゴルフコースがあり、代官山緑地には樹木が生い茂り、レッドリストに載っているオオタカをはじめ、ヤマガラ、ジョウビタキなど野鳥や貴重な動植物も見られます。この場所に、物流倉庫やデータセンターなど十六棟の建物を建て、二十四時間物流センターとして稼働させるという計画に、地域では大きな反対運動が起きています。
 こうした民間の事業に対しても、都として、生物多様性の回復を求める立場から積極的に働きかけることも、今、必要になっているのではないでしょうか。
 地球温暖化対策とともに、生物多様性の保全と回復は、今に生きる私たちに課せられた重要課題であり、都として、知恵と力を尽くして取り組むことを求め、質問を終わります。(拍手)