本会議 あぜ上三和子都議(江東区選出)の一般質問
2024年9月26日の本会議で、あぜ上三和子都議(江東区選出)が一般質問を行いました。
★質問全文(質問原稿)です。
★動画(都議会ホームページです。令和6年第3回定例会 > 9月26日一般質問をご覧ください)
1 障害のある人が選択できる多様な暮らしの場のあり方について
2 高齢者の終身サポート事業について
3 都立学校の教育環境について
★答弁(議事録速報版より)
一、 障害のある人が選択できる多様な暮らしの場のあり方について
まず、障害のある人が選択できる多様な暮らしの場のあり方についてです。
私は、障害者福祉の現場で働き、その後も議員として多くの障害者や家族と出会う中で、障害のある人が、どこで誰と暮らすのかについては、障害当事者の意思や家族の思いをしっかりふまえることが大切だと痛感してきました。
Q1 耳の聞こえない自閉症のあるHさんのお母さんは、地域にグループホームを作ろうと運動し、実現しました。しかし、低すぎる国の報酬単価のもと、職員不足のなかでの運営を目の当たりにして、こう話します。「手のかかるわが子を365日お願いすることはとても出来ません。今は土日は我が家で暮らすようにしています。しかし、私が万一の時は、入所施設に移るしかないのではないかと心配です。」
また、強度行動障害のあるⅯさんの家族は、自宅での介助が難しくなり、都内や近県で重度の知的障害がある人向けの入所施設やグループホームを30カ所以上見学してまわりました。しかし、すべて満員で待機者もいる状態。強度行動障害という特性への対応は職員の負担が大きすぎるとして「たとえ空きが出来ても受け入れは無理」と断られました。今は受け入れてくれた青森の施設で暮らし、お母さんは片道5時間かけて会いに行く生活です。
多くの障害のある人が暮らしの場を「選択した」というより、「選ばざるを得ない」という現状があるのです。
東京都社会福祉協議会・知的発達障害部会など6団体が「くらしの場を選ぶこと」をテーマに先日ひらいた集会では、障害当事者の問題提起などが行われ、集会のアピールでは「知的発達障害者の暮らしの場を抜本的に整備してください」と訴えました。障害のある人が選択できる暮らしの場を都として量・質ともに充実させることは、都政の重要な課題です。「遠方の施設に頼らざるを得ない」「選択した地域のグループホームに暮らし続けられない」こうした実態があります。
障害のある人の、暮らしの場の自己決定を尊重することの重要性を、知事はどう認識していますか。
Q2 現在、施設入所を希望しながら入れない都内の待機者は約1300人となっています。都が区市町村の知的障害部門を担当する職員に行った調査では、都内の障害者支援施設の定員増を求める声は8割を超えています。都立や民間の入所施設を増やす必要があるのではありませんか。
Q3 都は、今年度から3年間のグループホームの整備目標を2700人分増としています。同時に、障害のある人の高齢化や障害の重度化に対応するため重度障害者の受け入れ体制の整備が課題であるという認識も示しているのは重要で、実際、「新しいグループホームが地域にできたけれど、重い障害を理由に断られた」という声は多く聞きます。また、グループホームの運営法人も「赤字覚悟で職員体制を拡充して、重度障害者など利用者の生活を守りたいが、募集をかけても職員を確保できない」と悩みを抱えています。現場からは、「基本報酬を抜本的にひきあげることなしには安定した運営は出来ない」と声が上がっています。国に対し、都として引き続き報酬の改善を強く求めるべきと考えますが、いかがですか。
Q4 都のグループホーム体制強化支援事業は、重度の障害者の受け入れのために大事な事業ですが、「国の加算補助と仕組みが異なり、難しくて使いにくい」「補助要件が実態にあっていない」との声が現場からあがっています。現場の声をよく聞いて、使いやすい補助に改善すべきではありませんか。
Q5 いま現場では、職員の確保や昇給などに大変な苦労をしている事態で、職員の昇給のための補助をしなければ、重度の障害のある人を受け入れるグループホームを増やす事は難しいのではないでしょうか。
処遇改善のための居住支援特別手当の拡充とともに、経験年数に応じた昇給のための補助を創設すべきではありませんか。
障害のある人が暮らしの場を選択できるようにするためには、様々な施策の拡充が必要ですが、根本的な問題は、日本の障害者福祉予算が少なすぎることです。国際的に見ればGDP比でドイツやスウェーデンの4分の1から3分の1と極めて低いものです。抜本的に拡充することは障害者権利条約を実現するスタートラインです。
国に対し、障害者福祉予算の引き上げを求めるとともに、都として、国をリードするような障害者福祉予算にすることを強く求めます。
二、 高齢者の終身サポート事業について
つぎに高齢者の終身サポート事業についてです。
私のところには、一人暮らし高齢者から「入院に付き添ってもらえないか」「身元保証信託は約190万円と聞いた。お金がなければ身元保証をしてもらえないのか」等の相談が寄せられています。
Q1 病院や介護施設への身元保証、通院の付き添いや、亡くなった後の葬儀や家財・遺品の整理などは、これまで家族や親族が担うことが多くありました。しかし、「身内と疎遠で頼めない」「身寄りがなく頼る人がいない」という人が増え、家族制度を前提とした仕組みが成り立ちにくくなり、一人暮らし高齢者にとっては、身元保証や終身サポートは切実な願いとなっています。知事はどう受け止めていますか。
また、東京都医療ソーシャルワーカー協会が会員や医療機関・介護老人保健施設の相談員などに身元保証に関するアンケート調査を実施していますが、その結果から、金銭管理や入退院の手続きなどで受け入れる側も苦慮していることも明らかになりました。
Q2 医療機関や居宅介護支援事業所などの身元保証に関する実態調査に都として取り組むべきではありませんか。
昨今では終身サポートをする民間事業者がありますが、民間の事業者との契約トラブル、利用時や解約時の不安等の相談が、消費者相談でも増加しているとうかがっています。
Q3 都内の消費生活センターでの終身サポート事業に関わる相談は、この数年でどう増えていますか。また、主な内容と特徴をお示しください。
私は、葬儀や家財処分などをサポートする「なごやかエンディングサポート事業」を2021年にスタートさせた名古屋市社会福祉協議会にお話をうかがいました。この事業の大きな特徴は、契約相手が社会福祉協議会であるということです。そのため、利用者は安心して相談・契約できているということです。
このほど、厚労省は、身寄りのない高齢者等が抱える生活上の課題に対応するためのモデル事業をスタートさせました。この事業で大事なのは、十分な資力がないなど民間のサポート事業が使えない人が、「支援」を安価に受けられるよう、市町村に人件費分などを補助することです。しかし、予算額は少額です。
公や社協が関わり、安価に支援が受けられるようにするという考え方で、より充実させた取り組みが必要です。都が、今年度から相談窓口を設置した区市町村への補助制度をスタートさせたことは重要ですが、さらに踏み込んだ支援が必要です。
Q4 知事は、先の知事選において「おひとり様高齢者の支援」を公約として掲げました。どう取り組むのですか。
Q5 国に対し事業の拡充を求めるとともに、都として個人の負担軽減のため、財政的支援なども取り入れた東京都版「終身サポート事業」を実施すべきではありませんか。
三、 都立学校の環境改善について
最後に、都立学校の環境改善についてです。
私はこの間、子どもたちや保護者などの声をうかがったり、都立学校を訪問するなかで、学校の努力だけでは解決が難しい施設設備の状況があることを実感しました。
Q1 給水管が傷んで水漏れがたびたび生じる、天井のペンキがはがれ落ちるため網を張って落下を防いでいる、トイレがにおう、水漏れして水浸しになった、エアコンの効きが悪い、ドアが湿気でサビだらけになっているなど、すぐに修繕すべきものからまとまった改修が必要なものまで、劣化が目立つ状況があります。子どもたちが学び・生活する場である学校は、不具合はすぐに修繕し、改修を計画的に行い、施設環境を良好に保つのは当然だと思いますが、認識をうかがいます。
「10年たってやっと直してもらえる状況」もあります。
こうした状況が生じる背景には、都立学校は、改築や大規模改修が決まるまでは、築50年でも学校の要望による対応となり、明確な維持管理の方針や計画がないことがあります。
Q2 私の地元江東区では、学校施設の独自計画をつくり、年1回、教育委員会が施設点検して劣化部分を改修、築25年で外壁や劣化した内装などを小規模改修、築45年でスケルトン改修をするとしています。時代に合わせたアップグレードも行います。都でも、学校施設独自のこまめな改修の基準をつくり、計画的に実施すべきと思いますが、いかがですか。
トイレの要望は多く、子どもたちの健康と人権にかかわります。
Q3 特にトイレは劣化しやすい設備であり、江東区では10年程度で更新しています。都教委も快適なトイレ空間のために、内装も含めた改修のサイクルを早めるべきではありませんか。
Q4 さらに江東区では改築の際に、子どもたち、教職員、保護者、地域の方々とワークショップを開き、アイランド式の手洗いをつくるなど設計に反映させています。都立学校でも改築・改修の際にはこうしたワークショップ等を行い、子どもたちや関係者の意見を反映させていくことを求め、質問を終わります。
【答弁】
○知事(小池百合子君) あぜ上三和子議員の一般質問にお答えいたします。
障害のある方の暮らしの場についてのお尋ねでございました。
どんなに障害が重くても、希望する地域で安心して暮らせる社会を実現するには、障害のある方の生活を支えるサービスの充実が必要でございます。
都は、引き続き、グループホームなどの地域生活基盤の整備を促進するほか、相談支援や一人暮らし体験などの機能を備えました拠点を整備する区市町村を支援してまいります。
なお、その他の質問につきましては、教育長及び関係局長が答弁をいたします。
○教育長(浜佳葉子君) 四点のご質問にお答えいたします。
まず、都立学校の施設等についてでございますが、学校施設の維持管理等を適切に行うことは当然であり、都教育委員会は、その施設等の状況に応じて必要な修繕、改修等を適切に実施しております。
次に、都立学校の改修等についてでございますが、都教育委員会は、施設の使用を通じて、その状況を把握している学校からの要望等を踏まえ、修繕や改修を速やかに実施するとともに、築年数や老朽化の度合い等を総合的に勘案し、改築や大規模改修を計画的に進めております。
次に、都立学校におけるトイレの改修についてでございますが、都教育委員会は、引き続き、トイレの洋式化を推進するとともに、各学校の設備の状況に応じて、内装等を含む改修工事についても適宜実施していくこととしております。
次に、都立学校の改修等に係る意見の反映についてでございますが、各学校においては、生徒や教職員、保護者等の意見も踏まえ、施設の改修等の要望を行っており、都教育委員会は、本要望に対して、適切に対応しております。
○福祉局長(山口真君) 八点のご質問にお答えいたします。
まず、障害者支援施設についてでございますが、国は、施設入所者数の削減を基本としておりますが、都では、平成十七年十月時点の定員数を維持することとしております。
次に、障害福祉サービス等の報酬についてでございますが、都は、障害福祉サービス事業者が長期的な視点で人材の確保、育成、定着を図り、事業運営を安定的に行うことができる報酬とするよう、繰り返し国に提案要求をしております。
次に、グループホーム体制強化支援事業についてでございますが、都は、身体や行動の特性上、特別な支援を必要とする重度の障害者を受け入れるため、国基準を上回る手厚い職員配置などを行うグループホームを支援しておりまして、毎年度事業者向け説明会を実施しております。
次に、障害福祉サービス等の職員の処遇改善についてでございますが、都は、処遇改善加算について、報酬の基本部分に組み込むなど、恒久的なものとするよう、国に対して提案要求をしております。
また、今年度からは、国が必要な見直しを講じるまでの間、福祉、介護職員に居住支援特別手当を支給する事業者を支援しております。
次に、一人暮らし高齢者への相談支援等についてでございますが、従来、家族などが担ってきた生活上の手続や死後の対応につきまして、高齢者等が元気なうちに自分の意思を反映しながら準備できるよう、都は、個々の状況に応じて支援や助言などを行う総合相談窓口を設置する区市町村を支援しております。
次に、身元保証に関する実態調査についてでございますが、都は、福祉サービスの利用の援助や日常生活費の管理などを行う日常生活自立支援事業などを通じて、判断能力が十分でない高齢者が抱える課題等について把握しております。
次に、一人暮らし高齢者への支援についてでございますが、今後、高齢者の単独世帯の増加が見込まれる中、都は、一人暮らし高齢者が地域で安心して暮らせるよう、地域包括ケアシステムを深化、推進していくこととしております。
最後に、いわゆる高齢者の終身サポートについてでございますが、国は、身寄りのない高齢者等が抱える生活上の課題に対応するため、モデル事業を実施しておりまして、今後、課題の検証等を行うこととしております。
都は、高齢者等が元気なうちに死後の対応などについて準備することができるよう、単身高齢者等の総合相談支援事業を実施しております。
○生活文化スポーツ局長(古屋留美君) 高齢者の終身サポート事業に関わる相談についてのご質問でございますが、身元保証や死後事務などの終身サポート事業に関して、都内消費生活センターに寄せられた六十歳以上の方からの相談は、令和三年度六十九件、令和四年度八十九件、令和五年度百三十件でございます。
主な内容は、契約を検討している方からの事業者の信用性に関する問合せや高額な契約の解約を求める相談等でございます。