2025年第3回定例会を終えて(談話)
2025年第3回定例会を終えて
2025年10月9日
日本共産党東京都議会議員団
幹事長 里吉 ゆみ
都議選後初の定例会が終わりました。日本共産党都議団は、新しい14人の議員団で、都政を厳しくチェックするとともに、物価高騰対策・暮らしの支援をはじめとした公約実現に向けて、全力で取り組みました。
1 物価高騰対策の補正予算編成を求めるとともに、中小企業の賃上げ応援条例を提案
食料品は10月から3000品目以上値上げされ、実質賃金は8カ月連続マイナスです。都庁の下で行われている食料支援には過去最高の922人が並びました。「物価高で暮らしが大変。食費を浮かすため」という若い人や女性も増えています。ところが自公政権は、暮らしを守る具体策を示さず無策で、消費税減税の願いに背を向けています。小池都政も同じです。わが党が求めた物価高騰対策の補正予算も編成せず、その一方で、都民から反対の声があがっている巨大噴水や大型道路の建設は、着実に進めるとの答弁がありました。都民の暮らしに無関心で、無駄遣いを改めようとしない姿勢が改めて鮮明になりました。
そういうもとで日本共産党都議団は、物価高騰対策・暮らし支援の具体的提案を行いました。そのひとつが中小企業の賃上げ応援条例です。ひとり15万円、年間20万人を対象に賃上げを後押しするものです。賃上げのみを要件とするシンプルな条例なので、都が実施している制度と違って早く支援が届きます。わが党の条例案は都民ファ、立憲ミライネット・無所属の会、自民、公明、国民、参政、自由を守る会などの反対で否決されましたが、今定例会では多くの会派が賃上げへの支援を都に求めました。引き続き実現をめざします。
わが党はさらに、水道料金や国民健康保険料(税)の引き下げ、修学旅行代や制服代など教育費の負担軽減、交通費を支援する学生フリーパス創設などを提案しました。また消費税減税、フリーランスの方などに重い負担となっているインボイス廃止を、国に働きかけるよう求めました。都は切実な願いにこたえるべきです。
<火葬料問題> 多摩地域の公営の火葬料は無料か1万円以下なのに、23区内で多くを占める民間の火葬料は9万円、都立も20年間で8倍も値上げして6万円です。知事が、料金を含む指導が適切に行えるように国に求めると表明したことは重要ですが、都立の火葬料を率先して下げるよう求めたわが党の提案に、都は背を向けました。それでは説得力がないという再質問にも、同じ答弁を繰り返すだけでした。民間の火葬料の引き下げを誘導するためにも、都立の火葬料の大幅な引き下げや公営火葬場の増設が必要です。
<都立・公立・民間病院への支援> 都立病院の運営も厳しくなっています。都は、「物価高騰分を確実に予算に反映する」という方針ですが、独立行政法人化した都立病院の運営費負担金や交付金は、物価高騰分を基本的に反映していません。しかも今後の運営方針について、病院機能の縮小や病床数の削減、人件費の抑制につながる話が出されています。新型コロナの教訓は、パンデミックに対応できる余裕のある医療体制が必要だということでした。都立病院が、都民に必要な行政的医療を提供し続けることができるよう、都直営に戻して拡充すべきです。公立病院、民間病院への財政支援についても拡充するよう求めました。
<住宅価格・家賃高騰への対策> わが党は、大規模再開発による地価高騰や、住宅の投機・転売を野放しにしてきたことが、住宅価格や家賃の高騰を引き起こしていると指摘し対策を求めましたが、都は深刻な問題を直視しようとしませんでした。都民の苦しみに無頓着です。国が市街地再開発に対する補助金の対象を「必要性・緊急性の高い事業」に絞り込んだことを、都は認めざるを得ませんでしたが、あくまで開発を推進する姿勢に固執したことも許されません。再開発や投機・転売の規制に乗り出すこと、さらに家賃補助や借り上げ都営住宅、都営住宅の新規建設に踏み出すことを求めました。
2. すべての人の人権を守り、排外主義を許さない論戦を展開
全国知事会は、排他主義・排外主義を否定し、多文化共生社会を目指すと明言した「青森宣言」を全会一致で採択しました。小池知事も、国籍や文化的背景等の違いを認め合う社会をめざすと答弁しました。一方、今定例会では、外国人や性的マイノリティなど特定の属性を標的とした攻撃的、差別的発言が何度も行われました。
日本共産党は差別と排外主義を許さず、すべての人の人権を尊重する社会をめざします。また小池知事も都議会も、全国知事会の青森宣言の立場で多文化共生の施策を前に進めることを求めました。
関東大震災時に当時の陸軍が朝鮮人の虐殺にかかわったことを示す陸軍関係資料が東京都公文書館にあることを、都は認めました。知事はこの歴史の事実を直視し、二度と繰り返さないと誓ってきた都民や都議会の取り組みに向き合い、追悼文を送付すべきです。
大川原化工機えん罪事件は、都が上告を断念し高裁判決が確定しました。この問題で警視総監は本会議場で謝罪しましたが、被害者が求めている第三者機関による検証の必要性を認めませんでした。また委員会質疑では、えん罪であるということを認めませんでした。えん罪であることを認めることなしに、実効性のある再発防止はできません。警視庁が敗訴した一審判決を不服として控訴した小池知事、および、その専決処分に昨年3月の都議会で賛成した都民ファーストの会、自民党、公明党、立憲民主党の責任も厳しく問われます。
夜間定時制高校について、「不登校を経験するなど多様な生徒の学びの場となっており、社会人としての自立を促すうえで重要な役割を果たしている」と、教育長が答弁しました。「重要な役割を果たしている」と認めるなら、夜間定時制高校7校の廃止計画は直ちに撤回すべきです。
障害があっても安心して余暇活動を行い、自己実現をかなえる居場所を持つことは当たり前の権利です。わが党のせいの議員の一般質問に、地域の実情に応じた居場所の確保ができるよう、引き続き取り組んでいくと都が答えたのは重要です。都内全区市町村が実施できるよう支援の充実を求めました。
猛暑による熱中症の増加、豪雨や水害の多発、農業、漁業への影響など、気候危機は都民生活を脅かす身近な問題となっています。国際司法裁判所は、すべての国が気候危機回避の対策を取る法的義務を負っているとする勧告的意見を出しました。そうした中、知事が国際競争力のために莫大な温暖化ガスを出すデータセンター設置を後押しすると表明したことは、国際的な緊急課題となっている気候危機対策に逆行するものであり、断じて許されません。
3 戦争準備への協力ではなく、平和と核廃絶を発信する東京に
イギリスの空母が8月末、東京港に寄港したことに対し、軍事訓練の一環であったにもかかわらず、都は「国際親善の目的だった」と危険な実態を覆い隠す答弁をしました。憲法と平和を守るべき自治体として、戦争準備に手を貸すことは許されません。
「ガザのジェノサイド許すな」の集会が一昨日、東京で開かれました。パレスチナを国家として承認し、イスラエルによるジェノサイドをやめさせるために、都議会としても力を合わせて取り組むことを呼びかけました。
本日、都議会終了後、被爆者団体である東友会の要請により、超党派で「被爆の実相を聞く会」が開催されました。被爆80年の年に核兵器の悲惨さを学び、広島・長崎を二度と繰り返さないことを誓いあう画期的な機会となりました。これからも党派の違いを超え、平和と核廃絶のために行動できるよう、取り組んでいきます。
4 よく議論して決める、都民にひらかれた都議会に――「議会改革の提案」を発表
今定例会で、議会のあり方検討会が設置されました。実りある議論が進むよう、日本共産党都議団は、「議会改革の提案」を発表しました。議会は民主主義実現の場そのものであり、これまで築いてきた蓄積を大切にしながら、常にアップデートしていくことが必要です。
日本共産党都議団の提案は、ひとり会派も含め全会派が議会運営に参加できるようにすることや、都議会での十分な議論を保障するために定例会の会期を延ばすこと、知事と一問一答で質疑できる機会を増やすこと、請願・陳情に対する各議員の賛否をホームページで公表すること、議員報酬の20%削減を継続すること、ジェンダーに配慮した議会へ環境整備を進めることなどです。議会のあり方検討会が、都民にひらかれた議論を大いに行い議会改革を前に進める場となるよう、各会派のみなさんに呼びかけます。
また今定例会にわが党は、裏金づくりの温床となった「政治資金パーティーを自主的に禁止する決議」を提出しました。都議会では意見書・決議の採択は全会派一致を原則としており、賛同しない会派があったため決議は採択されませんでしたが、都議会自民党の裏金問題は終わっていません。事実も明らかになっておらず、都議会自民党の反省もありません。政治とカネ問題の全容解明と再発防止、問題の根を断つために、日本共産党都議団は引き続き力を尽くすものです。
以上