都立瑞江葬儀所・火葬料金ゼロ円条例の提案について -東京の火葬料高騰問題の解決のために-
2025年12月4日、「都立瑞江葬儀所・火葬料金ゼロ円条例の提案について -東京の火葬料高騰問題の解決のために-」の記者会見を行いました。


(写真上から)記者会見を行う里吉ゆみ(世田谷区)、とや英津子(練馬区)、米倉春奈(豊島区)、福手ゆう子(文京区)、せいの恵子(北区)各都議(2025.12.4)
都立瑞江葬儀所・火葬料金ゼロ円条例の提案について
-東京の火葬料高騰問題の解決のために-
2025年12月4日
日本共産党東京都議会議員団
第4回定例会に、都立瑞江葬儀所・火葬料金ゼロ円条例-東京都葬儀所条例改正案を提出します。
1,条例改正案の特徴(別紙資料1 改め文/新旧対照表参照)
・火葬料について、都民は現在の5万9,600円を無料に。それ以外は現在の7万1,520円を5万9,600円にします。
・柩保管料は現在、都民が8,210円、それ以外が9,850円のところ、いずれも2,000円にします。
・控室料が現在、都民が1万200円、それ以外が1万2,240円のところ、いずれも無料にします。
火葬は、都民誰もが等しく、お金のあるなしに関わらず受けられる必要があるため、火葬料について「受益者負担」の考え方をやめ、都民は無料とします。都民以外は、原価計算とされる現在の都民料金を適用します。
柩保管料、控室料は多摩地域の公営火葬場の料金を参考にしました(別紙資料2)。
2,条例改正案の背景と意義
●民間火葬場の火葬料高騰問題は国が責任を持って法整備し、対応すべき課題
特に23区の火葬料について、東京博善の度重なる値上げに都民の困惑と怒りの声が広がり、わが党も積極的にとりあげ、都に対策を求めてきました。
特別区長会は昨年、国に対し法整備を要望し、都もここへきてようやく歩調を合わせるようになり、先日は両者による国への共同要請が行われました(別紙資料3)。
現行の墓地埋葬法には、民間企業の料金についての指導に関わる具体的な規定はなく、区による指導の実効性についての区長会の懸念は当然のものです。そもそも、国は民間事業者が火葬場を経営することを法律で認めているのですから、その指導に必要な法整備も国の責任で行うべきです。わが党は、都議会各会派に、国に対して法改正を求める意見書の提出をよびかけるものです。
国は現行法で対応可能であるという立場を崩していません。10月31日厚生労働省が自治体あてに出した通知でも、現行法を前提とした指導監督を自治体に求め、「必要な場合は条例、規制の制定・改正を行うなどして火葬場の経営管理の向上が図られることが望ましい」とまで書いています(別紙資料4)。しかし、わが党の山添拓参議院議員の質問主意書(別紙資料5)に対し、条例について「規制の具体的内容については、これにより一定の制限がなされることとなる営業の自由との関係で、必要性や合理性の面から慎重に検討されるべきもの」と答弁しています(別紙資料6)。国の姿勢は、このような課題があるという認識を持っていながら対応の責任を自治体に押し付けるものです。こうした姿勢を改め、国の責任で法改正を行うべきです。
同時に、都としても独自の条例制定について検討することを求めます。
●瑞江葬儀所ゼロ円条例は、火葬料高騰問題を根本的に打開する突破口
あわせて、都自身ができる取り組みを早急に進めるべきです。重要なのは、「隗より始めよ」の立場で、まず都立瑞江葬儀所の火葬料を無料にすることです。
瑞江葬儀所の火葬料は、2002年に7,200円だったものが、受益者負担だとして現在、都民は5万9,600円まで、この20年間で8倍に引き上げられました。2021年に東京博善は、この引き上げられた瑞江葬儀所の都外料金を根拠に火葬料の値上げを行っています(別紙資料7)。
石原都政時代に、火葬の公益性・公共性の大義を投げ捨て、安易に受益者負担に走り、値上げを続けてきたことで、東京博善の火葬料引き上げに口実を与えてきました。こうした事態を根本的に転換する必要があります。今回の条例改正提案は、その第一歩となるものです。
●火葬に「受益者負担」を持ち込むのは誤り。都は考えをあらためよ
誰もが一生のうちにほぼ必ず通る火葬の性格を考えれば、お金のあるなしでサービスを受けられるか否かが決まる「受益者負担」の考え方は、根本的になじまない、不適切なものです。
山添拓参議院議員の質問主意書で「火葬を行うことによる『受益者』を誰と考えているか」という質問に対し、国は火葬は「『〜公衆衛生その他公共の福祉の見地から、支障なく行われる』必要がある」と答弁しました。また、日本共産党が10月17日に行ったヒアリングの際には厚生労働省の担当者は「火葬が滞りなく行われるということは広く国民の利益になる」と述べ、日本共産党の都議が、火葬の受益者は広く国民ということかと確認したのに対し「そうです」と答えました(別紙資料8)。
しかし、11月18日の環境・建設委員会のとや英津子都議の質疑で、「国は、火葬の受益者は国民全体との見解を示しているが、都も同じ考えか」という質問に、建設局は「都立瑞江葬儀所を利用する方を受益者としている」と答弁しました。これは全く間違った考え方です。
多摩地域の公営火葬場の火葬料は軒並み無料か、1万円です。八王子市は「受益者負担の適正化に関する基本方針」(2017年3月策定/2024年6月改訂)で、「公の施設は、住民福祉の増進を目的とし、市民の誰もが利用する機会を有しているため、全ての経費を利用者の負担とすることは適当ではないと考えます。」として、「斎場(火葬室)」の「受益者負担割合」を 「大半の市民が必要とし、民間では提供が困難な施設-0%」に整理し、実施しています(別紙資料9)。また私たちが行った公営火葬場への聞き取りでは、「火葬料は、どうしても必ず、一生に一度は通るので、組織市にそれぞれの負担金を負担してもらっている」といった声も寄せられました。
都もこうした考え方に立つべきです。
3,都立含め公営火葬場の増設を
あわせて、都立を含め公営火葬場の増設を求めます。11月18日の厚生委員会の米倉春奈都議の質疑で、「火葬の需要が増えることははっきりしています。都立の火葬場を増やすことや、区市町村から火葬場新設の相談があった際には、都有地の提供などについて、親身に対応することが必要ですが、いかがですか」という質問に、保健医療局は「適切に対応してまいります」と答弁しました。「多死社会」の到来は確実視されています。待ち日数、希望時間、式のゆとり、季節性、距離など、考えるべき要素は多いものの、できるだけ精緻な調査・積み上げを行い、知恵を出して、都立を含め公営火葬場の増設にとりくむべきです。
この点で、公益財団法人「東京市町村自治調査会」による「多摩・島しょ地域における火葬場の需給及び運営に関する調査研究報告書」(2015年3月)が参考になります。特に注目すべき点として、第一に、災害時対応のシミュレーションを行っており、この点からも、火葬場のキャパシティには一定の余裕が求められることを明らかにしており、火葬場の増設を検討する上で、災害時の対応も考慮すべきです。また第二に、多摩地域でも民間の火葬場に依存している地域が少なからずあることが明らかにされています(別紙資料10)。こうしたことから、多摩地域に都立火葬場をつくることも選択肢の一つとするなど、多摩地域を含めた火葬能力の基盤強化を進めていくべきと考えます。
以上





