■ 議会での質問  日本共産党東京都議団


本会議 最終日討論 二〇〇三年七月九日

吉田信夫(杉並区選出)

 

 日本共産党都議団を代表して、第一五九号議案「東京都安全・安心まちづくり条例」ほか八議案に反対する立場から討論を行います。
 「安全・安心まちづくり条例」は、犯罪防止への協力を都民の責務とし、警察主導のもとで防犯の地域推進体制である協議会の設置や、民間パトロールの実施、住宅建設にも警察署長の助言を求めるなど市民生活全体に警察の権限を拡大強化するものであり、市民相互の監視体制をつよめることで、人権やプライバシーを侵害する危険をはらんだものです。条例にたいし、全国の憲法、行政法などの専門家や法曹界からも、条例の白紙撤回を求める声があげられています。
 とりわけ重大なことは、条例が地域社会に防犯カメラをはりめぐらせようとしている問題です。肖像権をめぐる最高裁判決は、令状もなしに被撮影者の意思に反して撮影ができる限界は、「現に犯罪が行われ、もしくは行われた後間がないと認められる場合」としており、こうした最高裁の判例に照らしても、防犯を理由に不特定の一般市民を常時監視することは、憲法十三条が最大の尊重を必要とするとした人権とプライバシーを侵害しかねない重大な問題であります。
 犯罪対策に全力をあげることは当然重要な課題であります。しかしその対策の基本は、犯罪の予防と取り締まりの責任と権限をもつ警察が予算と人を警備、公安中心から刑事、防犯活動中心に切りかえ、交番やパトロール警官など現場体制の強化をはかることにこそあります。犯罪の増加と検挙率の低下がいわれるなかで、警察はまず検挙率低下の原因とその対策を明らかにすることが欠かせません。そのことを棚上げし、条例によって一般都民に警察への協力を責務として上からおしつけることは本末転倒です。
 知事は、「治安の維持こそ最大の都民福祉」として、条例の制定を図るとともに、警察庁出身の治安担当副知事を選任し、さらに千人もの都職員の警視庁派遣まで行おうとしています。都民生活の安全を確保するために、都として何よりも努力をすべきは、雇用の安定や福祉の拡充など治安の土台となる課題に総力をあげてとりくむことにあることを改めて強調するものです。
 本定例会では、知事が公約にかかげた第二次財政再建推進プランの策定が大きな議論となりました。わが党は、財務局がプラン策定にむけた小冊子「途半ばにある財政再建」のなかで、私学助成や市町村補助など都民の福祉や教育にかかせない補助金を見直しの対象にあげたことを重視し、質したのにたいして、財務局長は「聖域のない施策見直し」の徹底を強調し、「補助金といえども見直しの例外でない」と削減を公言しました。その後の記者会見で知事も区市町村補助金の削減が不可避と発言したことは、補助金削減の狙いをあらためて示すものとなりました。
 すでに第一次の財政再建プランでも、高齢者や障害者の手当や医療費助成、シルバーパス、民間社会福祉施設への補助金など都民にかけがえのない施策に大なたが振るわれました。福祉局だけで総額八百八十六億円。第二次のプランではそれでも足りないとして、さらなる切捨てを行おうというのです。
 わが党は、財務局文書で例示され、廃止、縮小にむけ検討が進められている民間福祉施設へのサービス推進費補助の問題で、都内すべての私立保育園に対するアンケートを実施しましたが、未来をになう子どもたちの保育のための予算をこれ以上財源対策で削らないでという訴えが各園から寄せられました。
 しかも今回は、高額の補助金だけでなく、年額一千万円以下のいわゆる少額補助や委託金まで狙われていますが、その多くはたとえ少額でも片肺を失った人への酸素ボンベ購入費補助などその方々にはどれも欠かせない事業です。こうした分野にまで削減のナタを振るうことは絶対に許せません。
 さらにわが党は、石原都政が財源不足の理由として税収不足をあげている問題についても、実際は四年間で六千七百億円も財政再建推進プランを上回った税収があったことなどを示すとともに、石原都政の財政運営のもとで財政難がいっそう拡大したことを指摘しました。
 これに対し知事は「典型的なデマ」「三百代言」と許しがたい暴言をはきましたが、石原都政の四年間で大型幹線道路優先の都市再生に莫大な予算を投入した結果、都債残高すなわち借金を五千六百億円も増やしたことはまぎれもない事実です。
 再質問でこのことを示したのにたいし、知事は、「相対的な問題」「価値観の問題」などとしか言えず、反論できませんでした。
 財政再建というなら、超高層ビルと大型幹線道路中心の都市再生を優先し、都民の福祉や教育を犠牲にするという逆立ちした都政運営の転換こそはかるべきです。
 知事が本定例会の所信表明で、後楽園・東京ドームを活用した競輪の復活を公然と表明したことに対し、地元文京区の煙山区長が「断固反対」を表明したのは当然です。ところが知事は、この区長発言に対し、復活反対の態度をとっているのは区長だけであって区民や区議会はそうではないかのような発言を行いました。
 しかし競輪場復活反対は区長だけでなく、文京区議会議長も議会多数の意思にもとづいて「東京ドームにおける公営競輪復活に反対する要請書」を提出しようとしており、さらに地元町会からも「三十年前への逆戻りはごめんだ」など断固反対の声があがっているのです。
 その背景には、後楽園競輪が実施されていた当時にこうむった被害を住民の多くが体験しており、いま子どもや若者たちが集う後楽園が再びギャンブルの場となることへの深い危惧があるのです。知事は復活計画を撤回すべきです。
 最後に、民主政治と議会制民主主義の根幹にかかわる知事の本会議における言動についてです。知事は、わが党の代表質問への答弁の冒頭で「私の今後の基本姿勢は、共産党のいうことは全くやらない」などという暴言を行い、他の会派の代表質問にたいしても質問者を指して侮辱するしぐさまで行いました。
 知事、われわれ議員は知事と同じく選挙で有権者から選ばれた代表です。その議員の反対意見や知事にたいする批判は許さないというに等しい態度は、民主政治と議会制民主主義の根幹を否定する態度であり、知事としての品性と資格が問われる問題です。
 わが党が再質問で厳しく批判し撤回を求めたのにたいし、知事は、事実上発言を修正し、いい意見があったら是々非々で対応すると答弁せざるをえませんでした。なお知事はその際いままで「参考になったことは一つもない」などと強弁しましたが、財源確保策でいえば、過大な減債基金の取り崩しや土地開発基金の活用は、わが党が繰り返し提案してきたものであり、最近の介護保険利用料軽減対象の拡大措置も、制度実施当初から厳しすぎる所得、資産基準の緩和を繰り返し主張してきたことは周知の事実です。
 知事は、民主政治と議会制民主主義の最低限のルールをわきまえて言動すべきであることを厳しく指摘して、討論を終わります。

以上