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■ 議会での質問  日本共産党東京都議団

1999年第3回定例本会議 一般質問

くぼた光(港区選出)  1999年9月22日

雨水流出抑制型都市づくりなど都市型水害への積極的対策を
固定資産税のあり方を改めるよう国に求めよ

-- 目 次 --

◯十四番(くぼた光君) 私は、まず、都市型水害の対策について伺います。
 ことし、全国各地で長雨や集中豪雨による被害が発生、六月には、福岡市中心部の地下街が大規模に浸水、水没し、飲食店の女性従業員が亡くなる、さらに七月二十一日、新宿区で、エレベーターで地下室の様子を見に行った男性が、道路から流れ込んだ雨水におぼれて亡くなるという痛ましい事故が発生しています。東京の局所的な集中豪雨による浸水被害は、区部で七回も発生し、床上浸水八百棟、床下浸水千四百棟、道路冠水百八十四カ所など、近年にない水害がもたらされました。
 このように、河川のはんらんや下水があふれ、浸水するといった、いわゆる都市特有の被害が相次いでいるのは、都市が再開発などでコンクリートやアスファルトに覆われた結果、場所によっては、降った雨が水はけの悪いくぼ地のようなところに集中したり、雨が土に浸透せず、九割が下水や河川に容量を超えて一挙に流れ込むことによって、低地部分に集中的に吹き出したりしているからです。このような地下浸水はこの数年間繰り返されており、だんだん被害が拡大しているのが現状です。
 このため、昨年の大雨洪水の後には、国が対策の検討を始め、ことしの八月、地下空間における緊急的な浸水対策の実施について、として発表されました。また、福岡県は、六月の災害の後、早速福岡駅地下街や駅周辺のビルなど、浸水した地下空間を調査し、対策の検討に着手しています。

たちおくれている地下街・地下室浸水への都の対応

 こうした対応と比べると、都はようやく庁内各局間の連絡を始めたところで、大きく立ちおくれているといわざるを得ません。しかも、災害対策の基本となる東京都防災計画の風水害編は、五年前の九四年に改定されたもので、今回のような地下街や地下室などの被害は想定されておらず、当然、対策も掲げられていません。直ちに都内地下施設の実態を調査、点検し、専門家の協力も得てシミュレーションを行うなど、都内各地域の水害の被害想定を行うことが必要です。また、防災計画の見直しに着手すべきと考えますがどうか、答弁を求めます。
 福岡の調査では、雨水が入ってきた地下街で八割の店舗が避難しなかったという、地下浸水に対する危機意識の低さが報告されています。台風シーズンを迎えているわけですから、とりあえず地下街やビル管理者などへ、大雨の際の対処方法の啓発や地下街利用者への啓発ポスターなど、差し当たってのPRは今すぐにでもできることですが、都としてやる気がありますか、答弁を求めます。

雨水流出抑制型都市づくりを早急に都市計画の中に組み込んで

 こうした都市型水害を防ぐには、下水や河川の整備による対策だけにとどめず、雨水を貯留する、地面に浸透させるといった雨水流出抑制に本格的に取り組むことが必要です。例えば、私の地元港区を流れる古川とその上流の渋谷川に水が流れる流域面を調べてみると、この流域の中で公共施設と敷地面積一千平米以上の大規模民間施設が占める面積割合は、四五%にも及んでいます。しかも、そのうち雨水流出抑制対策が行われているのは、公共施設で二・一%と、ほんのわずかです。ましてや、民間に至っては〇・九%と、ほとんど対策がとられていないのが現状なのです。港区が一時間に一一五ミリという記録的な集中豪雨に襲われた八月二十九日の場合、こうした地域から流れ出た水によって古川がはんらんし、床上浸水だけでも二百件近い大きな被害がもたらされたのです。
 現在、都には、雨水流出抑制対策として、一定規模以上のビルを建設する際に、雨水貯留や雨水浸透を指導する要綱があり、また、一戸建て住宅についての浸透ますの補助制度などがありますが、ビルの場合は実態がつかまれておらず、浸透ますは助成額が低過ぎることから、全都で毎年一万五千件の設置にすぎません。こうした現状について、あるマンション分譲業者は、マンション自身の地下水害を防ぐためにも雨水貯留施設などの設置は必要と思うが、コストの面から、行政の指導がなければ設置に踏み出すことは難しいといっています。このような現状を打ち破るために、都の積極的な役割が求められています。
 都は、都市水害を防ぐために、ビルでの雨水利用や一時貯留、住宅地での雨水浸透ますへの支援の仕組みや道路の浸透式舗装など、雨水流出抑制型都市づくりを早急に都市計画の中に組み込むことが必要と考えますがどうか、また、都が率先して公共施設の雨水利用を実施することは都の考え一つでできることですが、やる気があるのか、あわせて所見を求めます。
 古川のはんらんで被害がもたらされた三田一丁目の溢水発生箇所の対岸では、都が進めている新広尾親水公園の工事現場があり、その工事との関連が問題になっています。都が開催した説明会に私も参加しましたが、被害に遭われた皆さんからは、見る見るうちに水かさが増し、あっという間に床がつかってしまった、機械がすべて水につかって、この不況のときに莫大な被害だなどの訴えや、都の対応について、溢水時が日曜日であったため、現場事務所にはだれもおらず、所管事務所に電話しても留守番電話の対応だったと、その対応の悪さを指摘する声とともに、この地域で浸水被害が出たことについて、工事用桟橋に水流が当たり、向かいの護岸の低いところから水が流れ込んだと、被害の原因が工事にあったとする指摘も行われました。
 都は、まず、原因をきちんと解明し、必要な対策を行うことは当然です。今後の大雨に対処するために、老朽化した護岸の緊急整備や新広尾公園整備に当たっては、雨水貯留施設や浸透設備を設置するなど、この地域で二度と被害を出さないよう、あらゆる手だてを講じるべきです。答弁を求めます。

生活困窮者追い出しにつながる都営住宅家賃減免見直し中止を

 次に、都営住宅の減免問題について質問いたします。  財政再建推進プランでは、百億円規模の公共料金の値上げとともに、五十億円規模の減免制度の見直しが計画され、都営住宅家賃の減免の見直しがその中心になるとされています。財源対策として、減免制度の見直しが提案されたこと自体初めてです。このため、家賃が高い港区のような都心区の都営住宅居住者は、とりわけ強い不安を感じています。それは、再開発が続く港区で、住みなれた町に安心して住んでいくためには、都営住宅に入る以外になく、しかも、減免に頼らなければならないのが実態だからです。
 先日、私は、家賃減免が適用されている高齢ご夫婦の話を伺ってきました。長年住んだ戸建ての借家が再開発で取り壊されることになり、都営住宅に移った方で、私らの年金だと区内の借家では家賃が払えない、都営住宅に当たったおかげで、何とか港区に住んでいられると、とても喜んでおられました。
 そもそも家賃減免制度は、一九七六年の大幅な家賃値上げの際に、生活に困っている世帯のために負担軽減対策として制度が始まり、使用料免除として拡充され、今日までその仕組みが守られてきたのです。応能応益家賃に変わった三年前も、むしろ減免制度が必要だとされ、継続されてきたのです。このとき、港区の都営住宅の家賃は大幅に引き上げられました。都心区だから便利などと、応益性が高く評価される家賃制度ゆえに、減免制度の意義は都心ほど大きいのです。
 もともと都営住宅の家賃は低所得者を対象としており、減免制度は生活に困っている人を対象に行っているものです。私がお話を伺った七十九歳の元気なひとり暮らしのご婦人の場合は、月九万円の年金で暮らしていますが、もし減免制度がなくなったら、年金の半分以上に当たる五万円が家賃に消えてしまいます。皆さん、光熱費も払い、管理費も払った上で、一日千円にも足りないお金で生活ができると思いますか。知事、家賃が払えなければ出ていけというのですか。そうでないというなら、家賃減免制度の見直しの作業を中止するよう指示するべきではありませんか。明快な答弁を求めます。

都心区の重い固定資産税解消へ国への働きかけと軽減措置を

 最後に、固定資産税の問題について質問します。  港区では、土地の価格が大きく下がったとはいえ、依然として固定資産税は高いままで、生活を圧迫し続けています。新橋に住むある方は、今から十年くらい前、親から受け継いだ約四十坪の土地に、飲食店とみずからの住居、貸し事務所から成るビルを建てました。ことしになって、都税事務所が固定資産税の滞納を理由に銀行へ差し押さえを通告したため、即座に取引停止になり、親戚から借金をして滞納はなくなったものの、ビルは事実上銀行管理で、店の経営も奪われ、住居からも追い出されそうになっています。商売で失敗したのならまだあきらめがつくが、都心に住んでいることだけで商売ができなくなるなんてと、怒っておられました。
 この方の固定資産税は、現在、年間三百三十万円、十年前の約四倍にもなっています。しかし、地価は大幅に下がり、テナント料も下がり、収入も減っているんです。土地のバブルは終わったのに、固定資産税はバブルの状態が続いているんです。しかも、この方は、住宅割合が全床面積の二五%に満たないがゆえに、住宅の特例が全く適用されず、住んでいるのだから少しでも負担を軽くしてほしいと、都税事務所に何度足を運んでもらちが明かず、すべて非住宅用地として課税されるのです。せめても住宅部分の特例が適用されれば、百三十万も減額されるのです。固定資産税を普通に働けば払える額にしてほしいというのが、この方に限らず、都心で頑張って商売を続け、住み続けてきた方々の共通の願いです。  東京の商業地の公示地価はバブル前の水準以下に戻ったのに、固定資産税は当時のまだ四倍、それは、土地の評価額を公示価格の七割にするという、税だけは上がり続ける仕組みがとられたからにほかなりません。
 しかも、港区の土地の価格は全国的にも最高水準であり、土地評価額も飛び抜けています。加えて実際の税金を決めるための課税ベースも、全国で最も高い水準にある東京都の中で、さらにずば抜けて高い課税となっています。このような仕組みのために、港区民は二重にも三重にも重い固定資産税が課せられているのです。家業を継ぎ、オフィスやテナントに床を貸して生計を立てている居住者の多くは、住宅の特例が適用されないという別の不公平がさらにかぶさってくるのです。
 知事、地価が大幅に下がったのだからせめて税金は下げてほしいと願うことは、それほど理不尽な要求でしょうか。バブルの中でも家業を守り、住み続けるために頑張ったこういう方々が、都心に住んでいるというだけで、なぜこんな仕打ちを受けなければならないんでしょうか。このように不公平な扱いで格別重い固定資産税負担を強いられていることをどうお考えですか、固定資産税の仕組みを改めるように国に求めるお考えはありませんか、知事の所見を伺います。
 さらに、都は、都心に住む都民が固定資産税の重圧から解放され、安心して住み続けられるよう軽減措置を独自につくることなど、あらゆる手だてを尽くすことを要望し、私の質問を終わります。


  〔知事石原慎太郎君登壇〕
◯知事(石原慎太郎君) くぼた光議員の一般質問にお答えいたします。
 固定資産税についてでございますが、バブルとその崩壊後の地価の大変動のあおりで、現行の固定資産税制度がいろいろな問題を抱えていることは、よく承知しております。
 東京都は、かねてより国に対し、固定資産税が基幹税目であることを踏まえつつ、負担の均衡化、適正化を進めるように強く要望してまいりましたし、今後もいたすつもりでございます。
 なお、その他の質問については、東京都技監及び関係局長から答弁いたします。

  〔東京都技監成戸寿彦君登壇〕
◯東京都技監(成戸寿彦君) 雨水循環型都市づくりと公共施設の雨水利用についてでございますが、都は、これまでも総合的な治水対策を推進するとともに、都の施設における雨水利用を進めてきております。また、本年四月には水循環マスタープランを策定し、これまで個別に進められてきた治水、利水、環境の各分野の施策を総合的、体系的に推進することといたしております。
 今後とも、都市型水害を防ぐためにも、雨水の貯留、浸透施設の設置を推進するとともに、公共施設の雨水利用にも引き続き取り組んでまいります。

  〔総務局長横山洋吉君登壇〕
◯総務局長(横山洋吉君) 二点の質問にお答え申し上げます。
 まず、地下施設などの実態調査や地域防災計画の見直しについてでございますが、先般、国において、地下空間における緊急的な浸水対策について取りまとめましたが、都としましても、これを踏まえ、関係部局から成る検討会を設置し、検討を行ってきているところでございます。
 今後、区市町村などの関係機関とも連携して、実態調査や地域防災計画の見直しを検討してまいります。
 大雨の際の対処方法のPRについてでございますが、ただいま申し上げた関係部局から成る検討会においても、地下空間における緊急的な浸水対策の一つである、事前の周知、啓発を課題に取り上げております。この検討会での検討を踏まえ、効果的な普及啓発を講じてまいります。

  〔建設局長古川公毅君登壇〕
◯建設局長(古川公毅君) 古川の護岸整備と新広尾公園の雨水流出抑制対策についてですが、この川は、大正から昭和の初期にかけて護岸を築造しており、現在でも一時間五〇ミリ程度の降雨に対処する能力を有しています。さらに、地元の代表者や学識経験者による渋谷川・古川流域懇談会の提言を踏まえ、地域に親しまれる川の再生に向け、平成十年度に護岸工事に着手したところであります。
 また、新広尾公園については、都の護岸工事に引き続き、港区が、透水性舗装や浸透ますの設置など、総合的な治水対策に配慮した、水辺に親しむ公園として整備する予定です。
 今後とも、安全で親しまれる川を目指し、地元の理解と協力を得ながら、着実に事業に取り組んでまいります。

  〔住宅局長戸井昌蔵君登壇〕
◯住宅局長(戸井昌蔵君) 都営住宅家賃の減免制度の見直しについてでございます。
 公営住宅法におきましては、入居者が病気など特別な事情がある場合に、家賃を減免することができると定められております。東京都はこれまで、こうした規定に基づきまして減免制度を実施してまいりましたが、この制度は、特別な事情がある入居者におきましては、家賃の負担の軽減に一定の役割を果たしてきたと考えております。
 しかし、法改正に基づく応能応益家賃制度の導入や、近年、減免の件数が急激な増加傾向にあることなどから、負担の公平性を確保するとともに、適正な管理を行うため、現在、減免制度の見直しについて検討しているところでございます。