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■ 議会での質問  日本共産党東京都議団


本会議 代表質問 二〇〇四年一二月八日

曽根はじめ(北区選出)

石原都政五年で福祉も教育も中小企業対策もゆがめられてきた
憲法の尊重擁護義務に反する行為は知事の職務と両立しない

福祉関係費を、四年間で七百六十四億円も削減
拡充の方向に転換を
財政きびしいというが、事実は異なる
今年度から来年度に都税収入が五千億円増
次世代育成支援対策法にもとづく、実効性ある「行動計画」を
大企業に社会的責任とらせ、若者の雇用促進を
仕事と子育てが両立できる職場環境の改善を
若年ファミリー世帯の住宅は深刻
経済的支援をはじめとした子育て支援の抜本的拡充を
子どもと学校がかかえる深刻な現状を直視して三〇人学級実現を
少人数学級にふみだした県では、明らかに改善
知事の一連の憲法否定の発言は、憲法尊重擁護義務に反する
いっさいの日の丸・君が代の強制はやめるべき
【再質問】
【答弁】
【再質問への答弁】

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福祉関係費を、四年間で七百六十四億円も削減

 私は日本共産党都議団を代表して質問します。
 いま、年金の切りさげ、来年一月の所得税・住民税の老年者控除や年金控除の改悪による増税、さらに介護保険の負担増など、国の悪政が次々におしよせています。だからこそ、東京都が、都民生活をまもる自治体本来の役割をはたすことがつよく求められています。ところが、福祉や教育、くらしにかかわる各局の来年度予算要求は、査定前で今年度予算を下まわる異例の事態です。これでいいのでしょうか。
 これまでも石原都政は、福祉関係費をどんどん削ってきました。二〇〇三年度決算をみると、九九年度にくらべ実に七百六十四億円、四年間で一割以上の削減です。全国の福祉関係決算を調べましたが、東京のように減らしたところはありません。
 削減で大きいのは、経済給付的事業です。シルバーパス、マル福、老人福祉手当、障害者医療費助成、重度障害者手当の五つだけで三百二十一億円の削減です。
 もうひとつは補助金です。この四年間に廃止や削減された補助金は百種類を超えています。なかでも都民に影響の大きいのが、国民健康保険への補助の削減です。特別区と市町村、建設国保組合などに対する補助は二百億円以上の削減です。その結果、区市町村では国保料の値上げが相次ぎ、保険料が払えず、短期証や資格証となる人が急増しています。二十三区では、さらなる国保料の値上げが提案されています。
 特別養護老人ホームの都独自補助も、二百億円をこえる削減で、「常勤職員を減らさざるをえない」「週に三回の入浴が二回しかできなくなった」などの悲鳴があがっています。わが党の調査によれば、現在の経営支援事業を、「増額・拡充してほしい」との回答は、七割近くにおよびます。
 知事、このように高齢者をはじめ都民に痛みをおしつけている現状をどのように認識しているのですか。答弁を求めます。

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拡充の方向に転換を

 石原都政は、福祉手当など経済給付的事業を切りすて、補助金を廃止・削減し、保健所など都立施設を廃止し、さらに一律マイナスシーリングをかけて、福祉予算をつめたく削ってきました。しかも、その大幅に減らした予算さえまともに執行せず、昨年度だけで六百三十二億円も使い残した結果、決算でみると予算以上の大幅削減になっているのです。
 その一方で、基盤整備など「充実する」と約束した事業はどうか。施設整備費は増えるどころか、百九十八億円も削られました。だからこそ、特別養護老人ホーム、老人保健施設、療養型をあわせた介護三施設の整備率の順位は全国最下位なんです。痴呆性高齢者グループホームの整備率も全国最下位で、定員の伸び率は、神奈川、千葉の半分、埼玉の四分の一にすぎません。シルバーピアも、訪問リハビリ、ショートステイも、今年度末の目標達成にほど遠いのが実態です。以上が、石原知事が推進してきた「福祉改革」の昨年度までの決算であります。「東京の福祉は冬の時代に入った」と言われてしかたないではありませんか。
 しかも今後さらに、第二次の財政再建推進プラン、都庁改革アクションプランにもとづいて、区市町村や福祉団体などに対する補助の中で、補助率が高いもの、長く継続されているもの、当事者のみなさんにとっては切実な少額補助などを見直すといって、廃止、削減をすすめようとしています。救急車の有料化、都立施設のさらなる廃止、縮小も検討されています。これ以上の福祉をはじめ都民施策きりすては、絶対にやめるべきです。
 そして私は、今年度の補正予算や来年度予算で、ぜひとも福祉関係予算を増額し、福祉拡充の方向に大きく転換することを求めるものです。知事、お答え下さい。
 私がいま遅れを指摘した施設整備については、今年度、特別養護老人ホームなどの国庫補助削減が大問題になりました。このため埼玉県は一床あたり三百万円の県独自補助を実施し、三億七千万円の補正予算を組みました。ホテルコストをとらない従来型特養の定員を増やすため、これも県独自補助を創設し、三億二千四百万円の予算を計上しています。その背景には特養ホームの定員を四年間で一・七倍にふやすという県の積極的な姿勢があります。また横浜市も、少なくとも要介護度四、五の待機者はすべて特養ホームに迎え入れることを表明し、九月補正予算で五億円をこえる整備費をくんでいます。一方、東京では、こうした対応をまったくとらず、八か所の整備が見送りとなりました。東京都がいかに高齢者につめたいか、歴然としているではありませんか。
 介護の必要な高齢の方が、特養ホームに入るのに四年も五年も待たねばならないという事態を、知事はいつまでに解決するのですか。特養ホーム整備の目標を大幅に引き上げ、埼玉や横浜のように独自の予算も組んで、整備を促進する必要があると考えますが、お答え下さい。

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財政きびしいというが、事実は異なる

 異常な都政運営は、福祉の分野に限られたものではありません。この五年間、未来をになう子どもたちの教育も、東京の経済をささえる中小企業対策も、住宅や環境政策も大きくゆがめられ、施策は後退させられてきました。
 石原知事は、財政がきびしいことをその理由としてあげましたが、事実は異なります。本当の理由は、超高層ビルと大型道路中心の「都市再生」に都財政をつぎこむためだったことは、この五年間の財政運営を見れば明らかです。
 大型幹線道路や臨海副都心開発などの投資的経費と首都高速道路公団への出資や無利子貸付など経常的経費に含まれた投資をあわせたトータルの投資総額は、バブル前の二倍の一兆円規模に高止まりし、これが都の借金を七兆円規模に増やし、福祉など都民施策を圧迫する最大の要因になっているのです。
 全国の多くの自治体は、さまざまな問題があるにしろバブル時代の反省のうえにたって、国言いなりの浪費的な公共事業にメスをいれ抑制することで、福祉や教育などの分野に予算を配分する方向にむかっています。こうした全国の流れとは逆の方向を向いているのが石原都政です。
 たとえば、投資的経費の中心である土木費についてみると、石原知事が最初に編成した二〇〇〇年度以降の四年間に東京都では増やしているのです。一方、首都圏の自治体はどうか。土木費を毎年抑え、埼玉県は半減、千葉県と神奈川県が六割台に削減しています。そのうえ、東京都は、首都高速道路公団への出資・貸付金などを経常的経費として毎年三千億円以上もつぎ込んでいます。「圏央道」など国が全額負担すべき国直轄事業負担金にいたっては、この五年間に増額したのは、東京都だけです。本来、東京都が負担する必要のないこうした投資だけで、この五年間に年平均八百二十億円、合計四千億円をこえる資金を投じてきたのです。これを改善するだけで福祉予算は削減どころか、増やすことができるではありませんか。

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今年度から来年度に都税収入が五千億円増

 大阪府では、予算のマイナスシーリングは建設事業費にのみかけています。そこから生み出された五十億円の財源を、「子どもを育てる」「雇用を生み出す」「安全なまち大阪」の三つの重点の事業にあてています。
 東京都でも、全国にくらべ、突出している「都市再生」事業について、再検討することがどうしても必要です。都が重点として整備をすすめている三環状道路は、外郭環状道路が国直轄事業となれば、あわせて一兆円規模の支出となり、その他に羽田空港再拡張の一千億円、さらには、区部、多摩地域の都市計画道路など全体で数兆円規模の投資が予定されているのです。この路線を進めば、都財政はますます破たんの道を歩み、都民施策にしわよせがいくのは明らかです。いま、地方自治体にあるまじき、このような都政運営を切りかえることこそが求められています。
 そもそも、都市の再生というのであれば、経済や人口の東京一極集中を是正し、だれもが安心して住みつづけられる東京、地震や災害につよく、環境と共生できる東京をこそ目指すべきであります。しかし、石原知事がめざす「都市再生」は、都民の願いとは裏腹に、東京を多国籍企業に役立つ都市に切りかえていくものであり、そのための超高層ビルや大型幹線道路を最優先に建設していくというものです。そして、この五年という短い時間のなかでも、すでに東京の都市構造は、東京一極集中、都心集中がはげしさを増し、記録的なヒートアイランド現象や集中豪雨、自動車排気ガス公害などいままで経験したことのない異常な環境悪化がすすんでいます。安全性をたなあげした超過密の進行は東京をますます災害によわい都市にしています。
 いま、なすべきことのひとつは、いたずらにあらたな開発をすすめて、今後、人口減が予想される将来の世代に莫大な負の遺産を残すことではありません。何よりも、投資を適正な規模におさえることが必要です。そのうえで首都高速道路の耐震補強や耐用年数をむかえつつある橋梁の改善こそ必要です。また全体として、学校施設の改修など、既存ストックの維持、更新にこそ力をそそぐべきです。この方向こそが、都民生活の向上と東京の経済の持続的発展をはかる道であると考えますが。知事の見解を伺います。
 重要なことは、今年度から来年度にかけて、都税収入が五千億円、うち都が使える分だけでも四千億円程度の増収になると見込まれていることです。
 この増収を、七兆円規模の借金の返済など財政立て直しに役立てることは当然ですが、なにより、都民のくらしと営業を守るために、優先的に活用することが重要です。例えば、三百億円で認可保育所や学童クラブ、特別養護老人ホームの大幅増設もできます。二万戸の木造住宅の耐震、防火改修への助成や小中学校の耐震補強支援も三百億円あればおこなえます。また二百億円でシルバーパスの負担軽減や乳幼児医療費の所得制限の撤廃、介護保険の保険料・利用料の軽減などが可能です。ぜひ、この立場で予算を組んでいただきたいと思いますが、知事の見解を伺います。

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次世代育成支援対策法にもとづく、実効性ある「行動計画」を

 以下、私はいくつかの提案を行ないます。まず、少子化対策です。
 日本における女性の合計特殊出生率は下がりつづけ、東京ではついに一をわりこみました。その背景に、「子どもを生みにくく、育てにくい」日本と東京の実態があることは共通して指摘されています。一方、世界を見ると、フランスでは、家族手当など二十種類もの経済給付を充実するとともに、週三十五時間労働制を実現し、三年間の育児休業または勤務時間短縮を認めるなか、合計特殊出生率は九三年の一・六五から一・九一まで上昇しています。デンマークは、医療や、教育費は大学まで無料、青年に住宅手当を支給して自立を促進し、「子どもを生むことは権利」として認めて条件整備をすすめることで、少子化を打開しています。
 これに対し、東京のとりくみはどうでしょうか。先日、次世代育成支援対策法にもとづく「東京都行動計画」の骨子案が示されました。その内容は、他府県の「行動計画」素案や骨子案とくらべても、きわめて抽象的一般的なものです。
 そこで伺いたい。知事は、東京の深刻な少子化の現状を、どう認識しているのですか。
 日本で最も深刻な現状にある東京都こそ、最も先進的で総合的な対策をうちだし、具体的な目標と年次計画、財源的裏づけもあきらかにした実効性ある「行動計画」をつくる必要があると考えますが、答弁を求めます。

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大企業に社会的責任とらせ、若者の雇用促進を

 具体策として、私はいくつかの角度にしぼって提案します。
 第一は、若者の雇用の促進、育児と仕事の両立支援の両面での「東京ルール」の確立です。まず、方策のひとつは若者の雇用の促進です。
 今日、子どもを生み、育てることが可能な社会をつくるうえで、解決にあたらねばならない問題の第一は、若い世代の仕事の確保であり、経済的基盤の確立です。この点で、日本とりわけ東京では、大企業は過去最高の収益をあげる一方で、新規採用をおさえ正社員の数をこの五年間には百八万人も減らし、フリーターや派遣労働者など不安定雇用を増大させています。若者の雇用の状況は最悪と言わざるをえません。これで、どうやって結婚生活をいとなみ、子どもを産み、育てることができるというのでしょうか。
 打開のためには、大企業にその社会的責任を果たしてもらうことが必要です。東京には大企業の本社のおおくが集中しています。これらの大企業や財界も、それなりに企業の「社会的責任」を言わざるをえなくなっています。問題は、都民が求めているのとはほど遠い現状を改善させていくことです。
 すなわち、大企業に対して、パートや派遣労働など不安定雇用中心から正社員による雇用に切りかえること、サービス残業をやめワークシェアリングにとりくむこと、結婚して子育てできる賃金の保障など、目標をもってとりくむよう都として求めること、そして、これらの課題を企業が策定する「社会的責任」の目標に位置づけさせ、東京都が経済団体・大企業と協定をむすぶことを提案するものです。答弁を求めます。
 若者の雇用を増やしているのは中小企業ですが、その経営は大変です。高知県が実施しているように、若者を雇用した企業に助成をおこなうことが有効です。
 激務にさらされている教員や消防隊員をはじめとする職員を、都として率先して採用に努めること。一定期間、職に就けなかった若者に対しし、都として緊急雇用事業を創設して雇用を促進することなども必要です。
 全国で若者が新しく企業をたちあげることがひろがっています。山口県では空き店舗を安い家賃で提供したら若者が集まりにぎわいを回復した商店街が生まれており、都内でも高円寺では若者の古着屋が相次いで開業している商店街もあります。空き店舗を使った開業のための家賃補助や経営相談など、資金力と経験にとぼしい青年を応援する仕組みを提案するものです。見解を伺います。

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仕事と子育てが両立できる職場環境の改善を

 つぎに、仕事と子育てが両立できる職場環境の改善です。最近五年間で、夜七時以前に帰宅する父親は二〇%から一三%にへり、九時以降に帰宅する父親は増えて全体のおよそ半数をしめています。結婚・出産を理由とした女性の退職の強要や解雇も横行し女性は第1子の出産をきっかけに三分の二が仕事をやめています。男性の育児休業取得率は、わずか〇・一九%です。
 この問題についても、若者の雇用と同様、パートをふくめ育児休業、育児時間、看護休暇、フレックスタイム、さらに育児休業の分割取得や時間単位での取得など、育児休業制度の活用と、法の枠をこえた拡充をすすめることを大企業、経済界に都として働きかけることが必要です。
 男性の育児休業取得率を、とくに重点事項としてとりくむこと、民間を先導するために、東京都の男性職員の育児休業取得を抜本的に引き上げることを提案するものです。お答え下さい。
 育児休業をひろげるためには、中小企業への支援がかかせません。北海道、鳥取県、千代田区など多くの自治体が独自に支援事業をスタートしています。
 都議会は二〇〇二年第二回定例会で、中小企業が育児休業、育児時間、家族看護休暇などの充実にとりくむことができるよう都の支援の実施を求める請願を趣旨採択しました。都議会の議決を尊重し、中小企業に対する支援策を具体化していただきたい。答弁を求めます。

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若年ファミリー世帯の住宅は深刻

 第三に、住宅の確保です。東京の民家賃貸住宅に住む若年世帯では、家賃の収入にしめる割合が三割から五割にもおよんでいます。
 このような若年ファミリー世帯の住宅事情の深刻さと支援の必要性を、知事はどう認識していますか。
 ファミリー世帯むけの都営住宅の増設や入居基準の緩和をはじめ、子ども部屋を確保できる広さがあって家賃が安く、住みつづけられるよう都民住宅や公社、公団住宅などを活用した公的住宅の確保を提案するものです。
 大阪市では新婚世帯への月二万五千円の家賃補助を実施しており、年間七〜八千人の希望があります。新宿区や千代田区の月三万円から五万円の家賃助成も効果をあげています。このような家賃助成を都として実施することが必要です。見解を伺います。

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経済的支援をはじめとした子育て支援の抜本的拡充を

 第四に、経済的支援をはじめとした子育て支援の抜本的拡充です。
 いま東京二十三区をはじめ全国各地に所得制限なしの小中学生までの医療費助成がひろがってきています。都は、公平性のために所得制限は必要だと表明していますが、わが党が議会局を通じておこなった区市町村アンケートでは、所得制限を撤廃した区から、これによって「公平性が担保されている」「毎年受給資格が変わることなく、安定的に医療が受けられるようになった」という効果が報告されています。
 東京都自身も、すべての子育て世帯への支援が重要だと言っているのですから、乳幼児医療費助成の所得制限はただちに撤廃すべきです。そして、小学生、中学生への医療費助成にふみだすことを求めるものですが、見解を伺います。
 認可保育園は、少子化対策の要となる施設であり、増設をすすめることにより待機児解消の目標を明確にすることが必要ですがどうか。また、運営費補助をけずりつづけていて、どうして保育園がふえるでしょうか。都加算補助の見直しやサービス推進費の削減をやめ拡充することを求めるものです。

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子どもと学校がかかえる深刻な現状を直視して三〇人学級実現を

 次に三十人学級の問題です。
 三十人を含む少人数学級に踏み出した県は四十二道府県と急速に広がっています。
 にもかかわらず、いまだに東京都はつめたく拒否しています。石原知事も、「子どもの社会性を養うために生活集団である学級には一定の規模が必要であり、学級編成基準を四十人とする都教委の判断は妥当」とくりかえし発言してきました。
 いま、知事のこの言い分が正しいのか、それとも三十人学級をもとめる都民の言い分が正しいのか、このことがきびしく問われています。
 私は、北区の小学校三年生のクラスにいって調査してきました。その四十人のクラスでは、最前列の子どもの机は教卓の横まで出っ張り教卓の真横に座っています。後列の子どもは壁にくっついており、まさに超過密であり、先生が机の間を通るときは、かにのように横向きでないと通れません。
 授業中、明らかに多動で動きまわる子やさわぎまわる子、外国から来たばかりの子など、先生がそばについていなければなりません。
 これはべつに特別の学校の姿ではありません。東京中の小中学校の約半分の学級で、これに近い毎日が繰り返されているのです。
 二日後に同じクラスを訪ねた時は、子どもたちが二十人ずつ別教室に別れて算数の少人数授業を受けていました。四十人がそのまま二学級になった状態でした。
 ところが四〇人の時と違い、子どもたちが動き出すと先生がすぐ席に戻らせています。黒板に向かって扇状に並べた机の間も余裕があって、先生が十分子どもたちの間を回ってゆけます。皆なおちついて黒板の問題に集中でき「あ、そうか」「わかった」などの言葉が飛び交い、子どもが次々立って黒板に出て問題を解きます。明らかに四十人の授業とは違う大きな変化がありました。
 私は少人数学級にして全ての授業をこの人数でやれたらどんなにいいだろうとしみじみ思いました。
 知事、大人社会のゆがみが子どものいじめや不登校、学習離れ、発達に大きな影響をあたえています。今日、子どもと学校がかかえる深刻な現状を直視するならば、二四年前に決めた四十人学級基準ではもはや問題は解決しないことは明らかではありませんか。

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少人数学級にふみだした県では、明らかに改善

 実際に、少人数学級にふみだした県では、クラスの子どもたちに担任の先生の目がゆきとどくようになり、学習面はもとより生活面でも、子どもたちからは、「友達が増えた」「係の仕事をがんばるようになった」などの感想があがり、現に保健室登校や不登校が減るなど、明らかな改善が報告されているのです。知事のいう「社会性を養うため」にも少人数学級の方がすぐれていることが実証されているではありませんか。知事の言い分は明らかに間違っています。あくまでも四十人学級の方がすぐれているというのなら都民の納得できる明確な根拠を示すべきです。知事の答弁をもとめます。
 いま父母、教職員、私学関係者などがとりくんでいる三十人学級などゆきとどいた教育を求める請願署名は既に百万人を突破し、小学校校長会が三十人程度の学級を要望し、東京都市長会は都への来年度予算要望で明確に「少人数学級の都独自の実施」を要請するなど、かつてなく少人数学級の要望が強まっています。
 少人数学級未実施の五県の内、すでに石川県、佐賀県が来年度からの実施を表明したのにつづき、岐阜県も、教育長が議会で「少人数学級を検討する」意向を示しており、同じく香川県教委は、私の問い合わせに「少人数学級の要望が市町村からあれば協議する」と答えています。
 これでは全国で唯一、東京の子どもたちだけが、少人数学級の大きな流れから取り残されることになりかねません。
 私は、知事が東京の子どもたちが安心して学校でのびのび学べる教育条件の第一歩として、今こそ三十人学級にふみ出す決断をするようあらためて強く求めるものです。知事の答弁を求めます。
 少なくとも区市町村から希望があれば、少人数指導の教員定数の三十人学級への活用を認めるべきと考えますが、お答え下さい。

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知事の一連の憲法否定の発言は、憲法尊重擁護義務に反する

 最後に、憲法と民主主義にたいする知事の基本的態度についてです。
 一昨年の予算特別委員会で、わが党が憲法遵守義務に反する言動を追及したのに対し、知事は、「九十九条違反で結構でございます。私は、あの憲法を認めません」という許しがたい答弁をおこないました。しかも、その後も都議会の内外で憲法否定発言をくりかえしています。最近のテレビ番組で、「憲法なんてのは他人がつくった一つの条文、文言でしかない」「いろんなまちがいがある」とまで発言したことは、きわめて重大です。
 知事の一連の憲法否定の発言は、〃現憲法はアメリカからおしつけられたものだから、まもる必要がない〃という、とんでもないものです。
 そもそも、日本の憲法は、いろいろないきさつはありましたが、第二次世界大戦をひきおこした震源地のひとつであった日本が、再び戦争の惨禍をひきおこさない、戦争のない国際秩序を生みだそう、国民主権、民主主義をつらぬこうという立場でつくられたものでした。だからこそ、国民の圧倒的支持をうけてきたのです。
 知事は、アメリカからおしつけられたと言いますが、逆に、いまさかんにとりざたされている改憲論こそ、実はアメリカからおしつけられてきたものではありませんか。
 いちばん最初の改憲論は九条改悪論で、米陸軍が言いだしたものです。現在の改憲論も、アーミテージ国務副長官らが公言していたものであり、九条を改悪して、集団的自衛権を認める、そして日本を「戦争をしない国」からアメリカとともに地球上どこでも「戦争をする国」に変える。ここに狙いがあることは明らかです。
 知事、あなたの憲法否定の立場も、知事のこれまでの日本の植民地支配の美化やイラク戦争容認、そこでの自衛隊の武力行使容認などの発言からみれば、侵略戦争の反省のうえに築かれた憲法九条を否定し、日本をふたたび「戦争をする国」にしようというものであることは明白です。
 これにたいし、いま、世論調査でも、六割が憲法九条は守るべきと回答しており、作家の大江健三郎さんをはじめ九人のよびかけによる「九条の会」の運動をはじめ、立場のちがいをこえて憲法九条を守れの運動が広がっています。
 世界的にも、イラク戦争に世界の圧倒的多数の国々が反対したように、二一世紀の世界の大勢は国連憲章の平和のルールを尊重した「戦争のない世界」を志向しています。二〇〇〇年の国連ミレニアムフォーラムにおいて「全ての国が日本国憲法九条の戦争放棄の原則を自国の憲法において採用すること」が確認されたように、憲法九条は、この流れのさきがけとしての人類的価値をもつものであることが、世界から注目されているのです。
 知事、あなたの憲法否定の立場は、日本とアジアの平和をまもり、アジアとの関係を深めるためにも、百害あって一利なしと言わざるえません。いま首都東京がとるべき道は、日本が憲法九条をいかし、国際平和のために先駆的役割をはたすよう、自治体として努力することです。それがアジアの平和と日本経済の発展に貢献する道ではないでしょうか、答弁を求めます。
 また、知事の一連の発言は、まさしく憲法をないがしろにし、憲法尊重擁護義務に反するものです。
 日本国憲法は九十九条で、「天皇または摂政及び国務大臣、国会議員,裁判官その他公務員は、この憲法を尊重し、擁護する義務を負う」と明記しています。これは、憲法の最高法規性を確保するための厳格で重い規定であり、公務員であるかぎりこれを否定し、逸脱することは許されません。また、公務員は主権者の信託によって憲法の運用を任務としているのであって、憲法の尊重擁護は当然の責務なのです。だから知事も新たに採用された都職員にたいし、「私は、ここに、主権が国民に存することを認める日本国憲法を尊重し、且つ、擁護することを誓います」とする宣誓書に署名し提出することを義務づけているではありませんか。

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いっさいの日の丸・君が代の強制はやめるべき

 さらに重大なことは、知事の憲法否定の立場がたんなる言動にとどまらず、日の丸・君が代の強制、靖国神社への公式参拝の強行など、都政運営のなかで、実際に憲法の原則に反する行為を持ち込んでいることです。
 日の丸・君が代の強制について、知事はテレビや記者会見で、〃国が決めた指導要領に公務員としてしたがう義務がある。これを行うか行わないかの問題だ〃〃強制ではなく義務だ〃と強弁しました。
 しかし、そもそも国旗国歌であっても、起立斉唱するかしないかは、良心の自由の問題であり、「これを義務づけし」「良心の自由を制約してはならない」ことは法制定時の小渕首相発言でも、国会決議でも明確にされていることです。
 アメリカでも六〇年も前に、ある州が法律で国旗への敬礼を子どもたちに義務づけたことにたいし、連邦最高裁判所が国民の良心の自由を侵すものだと厳しい判決をくだしています。国家が国民の内心を制限したり、介入できないことは近代国家の共通の原則です。
 東京都が行っている日の丸君が代の強制が、憲法の原則に反する憂うべき事態となっているからこそ、天皇も東京都教育委員にたいし「強制でないのが望ましいと」発言せざるをえなかったのではありませんか。
 国会で決議された法律でもない文部科学省がさだめた基準でしかない指導要領をもちだして、これを教員の義務だと押しつけること自体、間違っています。
 ましてや都教委の通達は指導要領からもはみだした異常なものです。これを義務化することは許されるものではありません。さらに重大なことは、今年九月、都教委は、生徒が起立して斉唱するよう、教師が指導するようもとめる「個別職務命令」を出すことを各学校長に指示したことです。生徒が起立斉唱しなければ教員を「職務命令違反」として懲戒処分まで行えるようにしたことは、「強制」以外の何ものでもありません。
 憲法十九条の「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない」という原則を明白にふみにじるものです。
 あらためて知事に聞きます。憲法九十九条違反で結構とは、都政運営にあたって憲法にとらわれないということですか。公務員の中でも重い責任を負う知事が憲法の尊重擁護義務を負わないというなら、知事の職務とは両立しません。知事をつづけるというなら、これまでの発言を撤回し、憲法を遵守する責務を果たす必要があります。
 また、いっさいの日の丸・君が代の強制はやめるべきです。教員への「個別職務命令」は、生徒の内心の自由を侵害するものであり、憲法違反であることは明白です。学校長への指示はただちに撤回すべきです。それぞれ見解をもとめ、再質問を留保して質問を終わります。

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【再質問】

〇百三番(曽根はじめ君)
 知事に四点、再質問します。
 第一に、福祉関係費は七百六十四億円も減らされたのは事実です。今年度から来年度にかけて五千億円もの増収が見込まれる中で、福祉関係費をさらに減らすのか、それともふやすのか、はっきりお答えいただきたい。
 第二に、少子化の原因について、個人の価値観や人生の設計の問題だとおっしゃいましたが、個人の問題に解消できない経済的、社会的条件があることを認めるのかどうか。
 第三に、三十人学級について、社会性を養う観点から四十人学級の方が妥当だというのなら、具体的根拠を示してください。
 第四に、憲法九条の問題についてですが、知事は、私が聞いた九条の問題でも、尊重擁護義務についても、まともに答えておりません。知事の立場は、とどのつまり、アメリカが求めている戦争に参加していくために、九条が邪魔だというものではないかと質問しているんです。
 これは、国民世論の六割が九条を守れといっておりますし、世界でも、九条の戦争放棄原則を自国の憲法に採用しようという運動が広がっているんです。アジアの国々は、憲法を否定する言動や靖国神社への公式参拝について、知事のやり方に警戒感を強めています。アジアとの経済協力の発展にも大きなマイナス要因になっているんです。
 憲法改悪の旗振りではなく、日本が第九条を生かして国際平和のために先駆的役割を果たすよう、自治体として努力することが知事の役割だということを申し上げているんです。はっきり、この問題についてお答えいただきたい。
 以上です。

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【答弁】

○知事(石原慎太郎君)
 曽根はじめ議員の代表質問にお答えいたします。
 私、先週、東京が提唱してつくられましたアジア大都市ネットワークのジャカルタの会議に出まして、その後、具体的に要請がありまして、ハノイに参りました。あそこの県知事、市長その他を務めている共産党の幹部の諸君と会っていろいろ話をしまして、非常に強い感銘を受けました。行政者としても非常にリアリティーのある発言があり、そのときにやっぱり、東京都の共産党を思い出しましたね。随分違うなあと思った。吉田さんとそっくりな幹部がいましたが、考え方は全然反対だった。
 で、まず福祉施策の見直しについてでありますが、いつ、だれがこの質問をされても同じことをいわれますね。その質問の根拠がどういう数字にのっとっているのか、よくわからない。ちなみに、いろいろ非難があります(「勉強しなさい」と呼ぶ者あり)あなた方も勉強されたらどうですか。まあ冷静に聞いていただきたい。
 ここにわかりやすい数字がありますけれども、歴代知事による編成予算の比較、その中の福祉のパーセンテージが、私の場合には、これ、平成十二年から十六年度までの集計ですけど九・二%。青島さんのときは八・一%、鈴木さんのときは六・四%、美濃部さんのときも六・四%でございました。それから、決算の比較ですけど、つまり福祉に幾らお金を使ったかということでは、私の場合には、集計して平均八・五%。青島知事のときが八・〇%、鈴木さんのときが六・四%、美濃部さんのは数字が古くてわかりませんが。それから、いろいろいわれましたけれども、人口一人当たりの福祉費、これは十六年度予算額でいいますと、東京がやっぱり一番多くて、約四万一千円。次が、どこも大体二万円台です。これはどうでもよろしい。
 いずれにしましても、多様化する都民の福祉ニーズにこたえるために、都は、長期的、歴史的視野に立って、見直すべき事業は見直し、必要な施策には財源を集中投入して、福祉改革を推進してきました。都独自の認証保育所制度や、民間企業に対する痴呆性高齢者のグループホーム整備費補助の創設など、国に先駆けた施策を展開し、着実に成果を上げております。
 一連のばらまき、経済給付的な、つまりお金を差し上げる事業の見直しは、利用者本位の福祉の実現を目指す福祉改革の一環をなすものとして実施したものでありまして、既に都民の理解を十分に得て、過去のものになっていると思います。
 まあ、いずれにしろ、福祉なるもの、もう少し社会工学的に考えて発言をされたらよろしい。同じことを次の選挙でいわれるとどんな結果が出るか、楽しみにしていますけれども。
 それから、施策の見直しについてでありますが、改めて申し上げるまでもなく、都が進めております都政の改革は、社会状況が変化する中で、都民ニーズに的確にこたえ、行政サービスを着実に向上させていくための積極的な、前向きな取り組みであります。これからも、聖域を設けることなく、都政の各分野で内部努力や施策の見直しに取り組み、東京の再生とさらなる都民サービスの充実を実現していきます。
 よくこういう質問の中で表現されますが、確かに東京はあちこちクレーンを組んで超高層ビルが建っていますけど、あれ、全部多国籍企業のものなんですか。私は(「いってないよ」と呼ぶ者あり)よくいってますよ、あなた方は。議事録調べてごらんなさい。何百回も聞いたよ。そういう認識が、まあ言葉のレトリックかもしれないけど、アジ演説にもならない、本当に。それはやっぱり都民というのは、そっぽ向いて聞いていると思いますよ。
 それから、福祉拡充の方向に施策を転換せよとのことでありますが、何度も申し上げて、ご理解いただけないようですけれども、だれもが安心して快適に暮らせる東京を実現するためには、狭義の福祉だけではなく、治安対策、中小企業支援、インフラ整備など、都民ニーズに的確にこたえるさまざまな施策を複合的に展開していく必要がございます。
 これまで、一連の福祉改革を含め、施策の見直しに取り組みつつ、こうした住民福祉の増進策を充実してまいりました。この間の取り組みは、多くの都民のご理解を得ているものと受けとめており、転換せよとの主張は全く的外れであります。福祉についての、繰り返して申しますが、社会工学的な認識を欠いたものとしかいえないと思います。
 次いで、社会資本整備の進め方でありますが、今後、東京にとって、既存の社会資本のストックの維持更新が重要な課題であることはご指摘をまつまでもありませんが、同時に、道路、鉄道、空港などの都市の根幹となるインフラの新たな整備は、東京の活性化や都民の生活の質の向上のために不可欠な投資であります。
 私は就任以来、こうした大都市における社会資本整備の重要性を踏まえつつ、財政再建を進めていく中で、一層重点化、効率化を図りながら着実な都市基盤整備に取り組んできており、これまでの方向を改める考えは毛頭ありません。
 ならば聞きますけど、あなた方、羽田にもう一本滑走路、要るの要らないの。(発言する者あり)
 次いで、予算編成についてでありますが、都財政を取り巻く環境は、先ほど他会派にも答弁したとおり、税収の回復が期待できるものの、決して楽観できる状況にはありません。短期的な税収の動向だけを見て、ご指摘のような施策にやみくもに予算を増額することは適当でなく、全体的に施策の必要性、優先性を十分に吟味することが不可欠であります。
 したがって、予算編成に当たっては、財政構造改革を引き続き強力に進めながら、先ほども述べたように、都市再生、治安対策あるいは防災対策など、現下の都政の重要課題に対して重点的、効率的に財源を配分し、都民の期待にこたえていきたいと思っております。
 次いで、少子化の現況についてでありますが、少子化の進展は、未婚率の上昇、晩婚化、初産年齢の上昇によるものでもありまして、最終的には個人の価値観や人生設計に帰着するものと思います。
 一方で、ある程度社会が豊かになり、高齢化が進んだ先進国においては、長期的に見ると少子化はほとんど例外なく進行していますが、ある種の必然であるとの認識も必要でありまして、また、否定的な面ばかりとらえることは、問題の本質を見失うことにもなりかねないと思います。
 行政の関与により現在の少子化の急速な進展を転換することには限界があると考えますが、いうまでもなく、子どもを産んで育てることを望む人々が安心して子育てできる環境を整備することは、絶対に必要であると認識しております。
 フランスの例を見ますと、フランスはかつて非常に人口が減って懊悩した時代がございましたが、仄聞しますと、かなり思い切った金銭的なインセンティブを、三人以上ですか、子どもを産んだ家庭に与えてあげる、これは私、非常にサジェスティブだと思うので、近々、自分自身も赴いてそういう調査をしたいと思っています。
 それから、若年ファミリー世帯の住宅事情についてでありますが、バブル経済の崩壊の後、住宅の価格や家賃は大幅に低下しております。近年は、分譲マンションを中心に住宅供給が活発化しておりまして、ファミリー世帯向けの集合住宅など、多様な住宅の供給が進んでおります。
 このような状況から、都民の住宅事情は全般的には改善してきていると見ておりまして、民間の賃貸住宅に住む若年ファミリーの世帯についても、ご指摘のような深刻きわまりない状況にはないと考えております。
 これもいつもいつも繰り返しての質問ですけど、三十人学級についてでありますが、学級編制基準については、所管する教育委員会が、その専門的な判断により定めるべきであります。教育委員会が、児童生徒が集団生活の中で社会性を養うという観点から、集団生活としての学級について一定規模が必要であるとする点には全く同感でありますが、学級編制基準を四十人とする教育委員会の判断は妥当であると考えております。
 さて、憲法九条についてでありますけど、かつて、有名な哲学者の田中美知太郎さんは、ある本にこういうことを書かれました。憲法に書くだけで平和を守れるというなら、憲法に(「聞いた、その話」と呼ぶ者あり)もう一回、あなた、聞きなさい。台風に日本の上陸を禁ずると憲法に書けばよい、それで台風が来るか来ないか、自明のことだと切り捨てましたが、けだし名言だと思います。
 同じように、中国は尖閣諸島を侵犯してはならない、沖ノ鳥島を日本の領土とみなすべきであると憲法に書いて、彼らはそれを遵守するんでしょうかね。私はやっぱり、場合によっては、自分の領土、自分の国民の財産、生命をみずから守ることなく、他人の手にゆだねることが最高の理念であるなどと信じ込んでいる国民は、世界じゅう日本人しかないんじゃないか。日本人の中で共産党ぐらいじゃないですか。北朝鮮は日本の国民を拉致、誘拐し、殺害すべきないと憲法に書いて、彼らはその手を緩めますかね。だったら、これから憲法にそれをうたったらよろしい、拉致事件が起こらないように。
 私は、どう考えても今の憲法には歴史的に正当性はないと思いますよ。だから、憲法を変えるか変えないかの前に、この都議会でも結構だ、まして国会で、今の憲法に正当性があるかないかという、ただそれだけの質問を、白黒で国会議員に投票してもらったらいいんだ。私は、その結果はかなり興味のある、自明のものだと思います。そういう国民の代表である国会議員の憲法認識というものを踏まえて、私は、現憲法を正面から議論することが必要だし、そのために有効な前提だと思います。
 それを踏まえて、私はやっぱり、破棄という言葉は強いかもしれないが、この憲法がなかったものとして、そういう認識の上で国民自身が自発的にやはり、どういう憲法をつくるかということを国会を通じて合議して、私自身、私たち自身の愛する日本語で正確につづられた憲法というものを書くべきだと思う。
 あなたは、前文で、例えば世界全体の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ云々、このワンフレーズ、正しいと思いますか、日本語として。正しいですか。間違ってますよ、これ。あなた、正しいというんなら日本語を知らない。こんな醜い言葉でつづられた前文があちこちにある。私はやっぱり、せめて前文でも──前文の理想は正しいと思いますよ。しかし、やっぱり日本語として正すことも改正の一つの必要な手段じゃないでしょうか。どうか共産党も、国際平和への貢献のためにも、新憲法の制定の議論に積極的に参加していただきたいと心から期待しております。
 なお、ちなみに、「日本共産党の八十年」という平成十五年発行の書物を読みますと、憲法草案の採択に反対した主な理由として、かつて共産党がですよ、一、天皇条項が主権在民と矛盾している。第二は、第九条は日本の主権と独立を危うくするものである。八三ページにこう書いてあります。
 それから、私が憲法を遵守するかしないか。私は、場合によったらしません。この間、こういう国際化の時代に、日本でテロが起こって、例えばラッシュの時間に二カ所でテロリストが、アメリカとロシアにいまだに温存されている、世界では一応絶滅しましたが、天然痘のばい菌を盗み出して、仮に散布したとする。それにどう対処するかという図上訓練をしました。
 既存の法律というものは全部憲法を踏まえてできています。そうしますと、何時何分、この電車でこういうテロが行われた。テロリストはつかまえたけど、目に見えない天然痘は、サリンと違って、その場ではすぐ発病しない。一週間から二週間かかる、人によって。その間、その電車に乗り合わせた人々は名乗ってください。これ、いえないんですよ。憲法の拘束がある。それから、仮に名乗り出た人も、その人たちの身柄を、家でとにかく、発病するかしないか、蟄居してください。これもできない。それから、その名前を公表することもできない。これは基本的人権というんでしょうか、プライバシーというんでしょうか、個人情報の不可侵というんでしょうか、全部憲法にひっかかってくる。
 私はそのときにどうしますかといったら、私は憲法を無視してやる。都知事として、その情報を散布する、公開することで多くの感染を防いで、多くの生命を防ぐために、私は憲法を無視してやる。超法規というのはそういうことなんだ。私はそれを首をかけてやるんだ。命がけでやるんだ。命がけで憲法を破るんだ。当たり前のことじゃないか。だれがつくった憲法なんですか。
   〔発言する者あり、拍手〕

○教育長(横山洋吉君)
 教育に関します四点の質問にお答えします。
 まず、学級編制基準の根拠についてでございますが、少人数学級編制につきましては、国の調査報告におきましても、定説的な見解が見出せないところでございまして、ご指摘のような三十人学級編制につきましても、教育的効果があるという定まった評価はないと考えております。都教育委員会としましては、生活集団としての教育効果を考えた場合、学級には一定の規模が必要であり、国の標準法で定める四十人を上限とする学級編制基準は妥当であると考えております。
 一方、学習集団としては、教科等の特性に応じた多様な集団を編成できるよう、少人数による習熟度別指導などの充実を図っているところでございます。
 今後とも、現行の学級編制基準のもとで、基礎学力などの向上に配慮しました、きめ細やかな指導を行っていくため、少人数指導の充実に努めてまいります。
 次に、少人数指導の教員定数の三十人学級への活用についてですが、限られた教員定数の活用については、教育効果という観点から、都が主体的に判断すべきものでございます。都教育委員会としましては、これまで、少人数指導について、国の教職員定数改善計画を踏まえまして、着実にその充実を図ってきたところでございます。
 一方、国が今後、四十人を下回るような少人数学級を実施するための教員の定数増を別枠で措置するとは承知しておりませんので、これまでの成果を上げてきた少人数指導を変えてまで少人数学級を実施しなければならないとは考えておりません。
 次に、国旗・国歌の指導についてでございますが、学校における国旗・国歌に関する指導は、学習指導要領に基づき、すべての児童生徒に国旗・国歌の意義を理解させ、それらを尊重する態度を育てるために行っているものでございます。このため、都教育委員会は、昨年十月に通達を出しまして、これに基づいて、入学式、卒業式等の儀式的行事が適正に実施されるよう、各学校に対して指導の徹底を図ってきたところでございます。
 今後とも、学習指導要領や通達に基づき、国旗・国歌の指導が適正に行われるよう各学校を指導し、教育課程の適正化を図り、児童生徒に対し、国際社会に生きる日本人としての自覚や資質を育成してまいります。
 最後に、教員への個別的職務命令についてでございますが、教員は、教育公務員としての身分を有し、法令や学習指導要領に基づき、児童生徒に我が国の国旗・国歌の意義を理解させ、これを尊重する態度を育成する責務がございます。
 しかしながら、この春行われた都立学校の卒業式、入学式において、生徒に不起立を促すなどの不適正な指導の実態が一部にございましたことから、学習指導要領に基づき、児童生徒を適正に指導することを盛り込んだ個別的職務命令を発出するよう各学校を指導したところでございます。このことは、児童生徒の内心にまで立ち至って強制しようとする趣旨のものでは全くございませんで、あくまでも教育指導上の課題として進めているものでございます。

○福祉保健局長(幸田昭一君)
 住民の福祉の増進、少子化対策及び子育て支援に関する五点のご質問にお答えいたします。
 まず、特別養護老人ホームの整備についてでありますが、特別養護老人ホームは、保険者であります区市町村の計画と調整の上、都が取りまとめ、策定した介護保険事業支援計画に基づき整備を進めております。
 埼玉県や横浜市のように独自の予算を組むべきとのお話でありますが、都は、従前より、独自の用地費助成を行うとともに、施設整備費についても国制度に上乗せするなど、手厚い補助を実施し、積極的に整備促進を図ってまいりました。その結果、平成十五年度末の整備目標であります三万一千五百人に対し、達成率は九九%であり、計画に沿って着実に整備が進んでおります。
 次に、次世代育成支援東京都行動計画についてでありますが、次代を担う子どもが健やかに生まれ、育成される環境の整備を図ることは、社会全体の課題であります。都はこれまでも、大都市特有の保育ニーズにこたえる都独自の認証保育所を初め、子育て家庭を支援する先進的かつ総合的な施策を積極的に推進してまいりました。
 今回の行動計画は、こうした取り組みをさらに進めるために策定するものであり、懇談会に提示したのは、あくまでも骨子であります。今後、施策の優先度や効果などを十分考慮しながら、すべての子育て家庭を視野に入れた総合的な子育て支援策を盛り込む方針であり、素案、原案の段階で広く都民の意見を聞くこととしております。
 次に、乳幼児医療費助成制度についてでありますが、本制度は、少子社会における子育てを支援する福祉施策の一環として、区市町村に対し都が補助を行っているものであります。所得制限の基準は、国における児童手当に準拠しており、一定の所得制限を設けることは必要と考えております。
 また、対象年齢については、これまで、義務教育就学前まで段階的に拡大してきており、さらなる拡大は考えておりません。
 次に、認可保育所の増設により待機児解消の目標を明確にすべきとのことでありますが、地域における保育サービスをどのように提供していくかについては、保育の実施主体である区市町村が、その地域の保育ニーズを的確に把握し、認可保育所に限らず、認証保育所や家庭福祉員などにより、質の高いサービス提供が可能な体制を確保していくべきものであります。
 都としては、待機児を解消していくためには、まず、認可保育所みずからが受け入れ枠の拡大、定員の弾力化など、実情に即した対策を講ずるとともに、ゼロ歳児保育、延長保育など、サービス向上に向けた取り組みを行っていく必要があると考えております。
 最後に、認可保育所に対する運営費補助についてでありますが、認可保育所の運営は、基本的に国基準の運営費負担金で可能であり、都はこれに加え、延長保育やゼロ歳児保育など都市型保育サービスを実施できるよう、独自の加算を行っております。しかし、認可保育所の取り組みは進んでおりません。
 こうした状況を踏まえ、都は、今年度、都民のさまざまな保育ニーズにこたえるとともに、保育サービスの質の向上を図るため、民間保育所に対するサービス推進費補助の再構築を行いました。保育所運営費補助については、本年五月の児童福祉審議会の意見具申を踏まえ、現在、補助のあり方についてさまざまな観点から検討を行っております。
 なお、先ほど知事が、歴代知事の一般会計に占める福祉予算のパーセンテージを申し上げましたが、このパーセンテージを見ますと、石原知事が歴代知事の中で一番福祉に情熱を注ぎ、予算を獲得しているということがいえようかと思います。
   〔発言する者あり、拍手〕

○産業労働局長(関谷保夫君)
 若年者雇用と両立支援に関する東京ルールの確立とその方策についての六点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、若年者雇用に関する経済団体等への働きかけについてでございますが、企業には、国の定めるさまざまな法令や指針に基づき、雇用の確保、労働条件の整備等に向けての取り組みが求められております。都といたしましては、こうした法令等の趣旨や各種制度の周知と着実な実施を働きかけてまいります。
 次に、若年者を雇用した中小企業に対する助成についてでございますが、企業が若年者を雇用する場合の支援として、国の助成金制度が用意されております。都といたしましては、しごとセンターにおいて職業紹介などの支援を実施することにより、若年者の雇用の促進を図ってまいります。
 次に、若年者に対する緊急雇用事業の創設についてでございますが、都内企業の若年者に対する求人ニーズは旺盛であるものの、雇用のミスマッチが大きな要因となって就職に結びついていない現状がございます。そこで、都といたしましては、しごとセンターにおけるミスマッチ解消のための各種支援により、若年者の雇用の促進を図ってまいります。
 次に、商店街での若者の開業についてでございますが、都はこれまでも、新・元気を出せ商店街事業により、空き店舗を借り上げて開業者を誘致する商店街の事業等に対し、改装費や家賃等の補助を行っております。また、専門家の派遣による経営相談や、開業希望者に対するセミナー等も実施しているところでございます。
 今後とも、こうした施策を通しまして、商店街での若者の開業につきましても支援をしてまいります。
 次に、育児休業制度に関する企業等への働きかけについてでございますが、都はこれまでも、育児休業制度の活用と職場環境の改善、向上を促すため、各種セミナーや、仕事と家庭の両立支援に成果を上げている企業の紹介などを実施してまいりました。
 対象労働者の拡大などを内容といたします改正育児・介護休業法が来年四月に施行されることを踏まえまして、今後とも、労使双方に対する普及啓発に取り組んでまいります。
 最後に、中小企業における育児休業等の定着、充実に向けた支援策についてでございますが、現在、国は、企業に対する財政支援措置として、育児介護費用助成金など七種類の助成制度を設けております。
 都といたしましては、仕事と家庭の両立支援を図る上で、育児・介護休業制度の活用と職場環境の整備促進に向けた働きかけが重要な課題であると認識しております。引き続き、請願の趣旨を踏まえ、適切に対処してまいります。

〇総務局長(赤星經昭君)
 二点の質問にお答え申し上げます。
 まず、職員の採用についてでございますが、職員の採用は、事業執行に必要な人員の確保、職員の退職動向などを総合的に勘案して行っております。
 現在、東京都では、第二次財政再建推進プランにおける内部努力の大きな柱として、職員定数の削減に取り組んでおります。したがいまして、採用については、職員定数の範囲内で、事業動向などにも留意しつつ、適切に対応してまいります。
 次に、東京都の男性職員の育児休業率についてでございますが、現在、都は、次世代育成支援対策推進法に基づく特定事業主としての行動計画を年度内に公表することを目途に策定を進めており、この計画の中で検討してまいります。

〇都市整備局長(梶山修君)
 住宅に関する二点のご質問にお答えいたします。
 まず、ファミリー世帯向けの公的住宅の確保についてでございますが、住宅の戸数が世帯数を上回り、さらに今後、世帯数の減少が見込まれることを踏まえ、都は、これまでの公的住宅の新規建設を中心とした政策から、住宅市場を活用したストック重視の政策に転換してまいりました。
 公的住宅のファミリー世帯への提供につきましても、現在あるストックを活用し、都営住宅における多子世帯の優先入居、若年ファミリー世帯の期限つき入居などの措置を講じながら、入居機会の確保を図っているところであります。
 次に、家賃助成についてでございますが、バブル期における人口流出などを背景として、一部の区において、人口定着を主な目的に、若年ファミリー世帯などに対する家賃助成を実施している例が見られますが、住宅価格や家賃の低下など、その後の状況変化もあり、近年、実施している区の数は半減しております。
 したがいまして、広域自治体である都といたしまして、ご指摘のような家賃助成を実施する考えはございません。

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【再質問への答弁】

〇知事(石原慎太郎君)
 あなたもご存じのように、現在、日本は、国民の生命、財産を北朝鮮に奪われ、かつまた隣の中国に日本の領土を侵犯されつつあります。私はやっぱり、これはだれが守るか、国家に守る義務があるでしょう。しかし、今の九条ですと、守れないとはいいませんよ。しかし、我々はやはり自衛のための戦力をはっきり保有するということを明言して、九条の精神は生かしながら、しかし、日本は完璧な防衛国家になる。非常に手ごわい防衛国家になる。日本を侵犯したらとんでもない目に遭うぞという、それだけの国力、それだけの武力というものを備えて、それをすることで、私は日米安保も生きてくると思います。そういう意味で、私は、九条は改正の余地がある、改正すべきだと。それ含めて、私は、他の、憲法にいろんな不満な点がありますが、九条に関してのご質問には、それで終わります。
 他の点については、詳しく担当の局長がお答えいたします。

〇教育長(横山洋吉君)
 先ほども他会派のあれで答弁しましたが、主張しているように、三十人を上限とする規模の学級にした場合、例えば三十一人の学年では十五人と十六人の二学級、これは必然的にそういう小規模な学級が増加するわけでございます。このような状況では、学級内の人間関係が固定したり、あるいは子ども同士の切磋琢磨する機会が不足したりするなど、生活集団としては望ましくないと考えているわけです。
 したがって、都教委としては、生活集団としての教育効果を考えた場合、学級には一定の規模が必要でございまして、国の標準法で定める四十人を上限とする、つまり、二十人から四十人の幅の中でという意味ですが、学級編制基準は妥当であると考え、実施しているところでございます。

○福祉保健局長(幸田昭一君)
 福祉関係予算の拡充についてということでございますが、福祉改革を進めていく中で、必要性が薄れた経済的給付あるいは施策などは思い切って見直す一方で、新しい都民ニーズに適切にこたえるため、厳しい財政状況にあっても、福祉改革に必要な予算は十分に確保してきたと思います。
 平成十一年度以降、介護保険制度や支援費制度の導入、児童扶養手当の区市移管、公立保育所運営費の一般財源化など、福祉分野における国の制度は大きく変わってございます。こうした比較の前提となるべき制度変更などの状況を無視して、単純に予算額の多寡だけをもって議論することは意味があることとはいえず、まして、福祉の後退というようなお話は当たらないのではないかと考えます。
 それから、先ほどもお答えしたとおり、福祉、子どものを含めまして、多様な福祉施策については、現在、私ども、来年の子育て支援も含めまして鋭意取り組んでいるところでございます。今回新たに、今、施策を展開しようとしている中で、こういうものを十分ごらんいただければというふうに思っております。