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■ 議会での質問  日本共産党東京都議団

予算特別委員会 しめくくり総括質疑

渡辺康信(足立区選出)  2001年3月26日

社会福祉法人等による減免支援は貴重な第一歩、さらに本格的な介護保険の減免制度を。“いくも地獄、退くも地獄”都政運営の最大の障害、臨海副都心開発は抜本見直しを

-- 目 次 --

知事のハイエナ発言は、公党を誹謗し、議会の品位を汚すもの

〇渡辺委員 私は、締めくくり質疑で、知事、各局長に質問をいたします。
 先ほど自民党山崎委員から、先日の知事のハイエナ発言について言及がありましたが、知事の発言は、公党を誹謗するものであると同時に、議会の品位をも汚すものであることは明白です。むしろ、このような知事の発言を容認する自民党の姿勢こそ問われるべきだというふうに厳しく指摘しておくものであります。
 この点については、三月二十三日の「都政新報」が、記者座談会で、福祉施策をめぐる自共対決などは、政策の違いを争う論戦として評価できる。ただ、自民、公明の共産攻撃は、そのレベルを超えた選挙対策ではないかと勘ぐってしまう。(発言する者あり)自民、公明両党は、石原与党の立場で質問を展開しており、政党としての特色がなかなか出にくい。だから、共産党をターゲットに差別化を図るという戦略だ。知事のハイエナ発言を引き出して紛糾したが、共産党攻撃には知事も一役買っている。ハイエナはいい過ぎだった。品性に欠けると共産党が抗議したが、当然だねと、「都政新報」は指摘しているのであります。これが都民の当たり前の感覚ではありませんか。
 この発言への我が党の対応については、我が党は、知事の発言を、前後の関係も含めて正確にとらえ、必要な範囲で指摘を行うため、その日の我が党の最終質問者である吉田委員が厳しく抗議したものであります。(「やるなら早くやれ」と呼び、その他発言する者あり)(傍聴席にて発言する者あり)
 また、休憩中の理事会で、予算特別委員会として知事の発言の撤回を求めるよう提案しましたが、自民党や公明党などの反対で実現に至らなかったことを指摘しなければなりません。(傍聴席にて発言する者あり)
〇松村副委員長 傍聴人、お静かに願います。

都民が求めているのは徹底した予算審議

〇渡辺委員 また、銀行課税やディーゼル規制については、我が党が提案した趣旨がその後施策として生かされたことは、我が党の提案が道理もあり、根拠もあるからこそ、こうした道が開けるに至ったことは明らかであります。
 また、水道料金についていえば、水道局が九八年度予算編成の過程で値上げを検討し、我が党への説明の中で、値上げを検討していると述べたことは、打ち消せない事実であります。
 議会での貴重な論戦で党利党略の発言が繰り返されるのは残念であり、都民は徹底した予算審議こそを求めていることを指摘しておくものであります。

緊急対策というのなら個人消費をあたためること

 まず、緊急経済対策についてご質問いたします。  今、日本経済は、放置することのできない、深刻で新しい危機に直面しております。この最大の原因は、自民党中心の政治が、一九九七年以来、日本経済の六割を占める個人消費を痛め続け、冷え込ませる経済失政を繰り返してきたからであります。
 九七年以降の三年間で、勤労世帯の可処分所得、これは月平均マイナス二万四千円であります。家計消費、これについてはマイナス一万六千円であります。かつてない事態になっています。
 失業者も、七八年の石油ショックの百二十四万人、八七年円高不況の百七十三万人を大幅に超える、現在三百二十万人を超える失業者になっておるわけであります。
 企業倒産は一万九千件、負債総額は二十四兆円で過去最大規模であります。
 政府も緩やかなデフレ状態と認定をし、デフレスパイラルに陥るかどうか、その瀬戸際に立っているといっておられるところであります。
 自民、公明、保守の与党三党の政権が緊急経済対策でやろうとしていることは、またもや大銀行とゼネコン・大企業を応援することだけであります。例えば、株式買い上げ機構をつくって、銀行や大企業が保有している大量の株を買い入れ、損失が出たら税金で穴埋めをしてあげる。そして、ゼネコン・大企業に対して、一層大規模なリストラを条件に、債権放棄、イコール借金の棒引きを行う。こんなことをやれば、失業、倒産のさらなる激増は必至であります。
 個人消費を軸に、日本経済そのものを立て直すことを抜きに、幾ら税金を投入しても、不良債権問題は解決しないし、景気も回復しない。町を歩いていても、これで景気が本当によくなるのか、金持ち優遇ではないのかなどの批判が非常に強く出されているわけであります。
 お尋ねしますけれども、緊急対策というのなら、日本経済の六割を占める個人消費を温めることこそが、緊急にやらなければならない対策と考えますけれども、知事はどのようにお考えでしょうか。
〇石原知事 ここは国会の予算委員会じゃございませんので、ご質問は国会の方で与党三党にもお聞きになったらいいと思いますが、今度、与党三党が、都市の再生をすることによって国家の再生ということで、緊急対策の一つとして、五年間で十兆円という、それについては幾つかのプロジェクトのアドバイスもいたしましたけれども、それも含めて、私が思いますに、今、国にとって必要なことは、小手先の対策ではなくて、抜本的な構造改革の道筋を示すことであると思いますし、それが国家の再生に必ずつながると思います。その再生のための早道の一つとして、私は、今回の大都市の再生ということの認識は間違ったものではないと思っております。
 このマイナスのスパイラルのデフレの中で、現に土地を含めて物が下がっているわけでありますから、買い待ちという現象が起こっているわけでありまして、これをどうやって刺激して景気を浮揚させていくかということは、これはあくまでも政府の仕事でありまして、どうぞそちらの方で適当な建言をなさったらいかがでしょうか。
〇渡辺委員 景気回復ということで、東京都の再生そのものを知事はおっしゃるわけですけれども、その中で、国にきちっとした形で、個人消費このものを積極的に拡大できるような、そういう方向で取り組みを強めていただきたいというふうに思います。

都財政を巻き込む知事の一〇兆円緊急プロジェクト

 個人消費が落ち込んでいることによって景気の回復がおくれていることは、今や常識であります。三月十日の日経の社説には、生産増が企業収益の改善につながり、それが家計にも恩恵をもたらすという政府が描いた回復の図式が、明確に破綻したと分析しております。
 最近の日本政策銀行のリポート「調査」では、今の景気回復の弱さとその背景を分析し、今回は実質個人消費の低迷が長引き、かつ、その回復が弱い点が大きな特徴となっているといっておるわけであります。
 国民の苦しみとは大きくかけ離れた認識にもならざるを得ないというふうに思います。そういう意味で、積極的に、他人ごとでなく、この個人消費を本当に温めるという、そういう立場で取り組んでほしいというふうに思います。
 そこで、一つお伺いしますが、知事が与党三党に要望した十兆円の緊急プロジェクトの内容を示していただきたいと思います。
〇石原知事 既に幾つかの質問に何度もお答えいたしているとおり、第一に、災害に強く快適なまちづくりとして、羽田空港の再拡張、電線の地中化などに六兆九千億円、第二に、世界初の三千三百万の人口ヒンターランドを持ちますこの東京首都圏を電脳化するために、超高速インターネット網の整備などに一兆一千億円、第三に、新しい環境対策として、大気汚染対策や廃棄物処理の新しい施設整備などに二兆円、さらに、これは金目の問題ではございませんけれども、土地収用法や公営住宅の改正など制度改正についても提案いたしました。
〇渡辺委員 ここに、私、プレス発表したものを持っておりますけれども、本当に簡単なものしか書かれていないんですね。
 また、知事は、新聞のインタビューに答えて、国または民間企業で実施するのが基本といわれましたけれども、都の負担がなければ国民の税金が幾らつぎ込まれようと関係ないんだということは、国民のことを考えていないことをやはり示しているんではないかというふうに思います。しかも、現実には、国直轄事業負担金や再開発負担金など、都の財政が巻き込まれることは、この前の総括祉\疑でも明らかなところです。
 問題は、投資効果の高い経済対策、日本全体の景気浮揚というなら、何をおいても都民生活を第一において個人消費を拡大するための積極的提案が必要なのであります。

日本共産党は三つの分野での転換を提案

 私ども日本共産党は、今日の日本経済の危機の最大の原因が、自民党政治が進めた消費税増税、社会保障連続改悪、大企業のリストラ応援という三つの経済の失政にあることを告発するとともに、ゼネコン・大企業と大銀行への応援の政治から、国民の暮らしを応援する政治に切りかえることが不可欠のものであるということの立場から、消費税を緊急に三%に引き下げ国民の購買力を直接応援する、社会保障の連続改悪を凍結し将来不安をなくす、リストラを抑え、中小企業を支援する政治で雇用危機を打開するという三つの分野での転換を提案しておるわけです。

介護保険・・社会福祉法人による減免は切実な都民要求に応える第一歩

 そこで、まず社会保障の問題について幾つかお伺いいたします。
 その第一に、介護保険の減免についてであります。
 我が党は、介護保険の実施前から、利用料、保険料の負担軽減が重要な課題であることを提起してまいりました。そして、実施後は、具体的状況を踏まえ、昨年七月の第二回定例会、九月の第三回定例会、十二月の第四回定例会、いずれも代表質問で、都として利用料及び保険料の減免に踏み切るよう、繰り返し提案してきたところであります。
 その中で今定例会を迎え、本会議と予算特別委員会の質疑を通して、利用料減免について重要な新しい前進が見られます。それは、社会福祉法人等による利用者負担の減免措置の活用に向けた区市町村の努力に対し、都としても支援策を検討したいとの知事答弁であります。我が党は、これを、切実な都民要求にこたえ、都としての利用料減免に踏み出す第一歩として心から歓迎するものであります。
 社会福祉法人等による利用者負担減免措置というのは、国の特別対策の一つで、社会福祉法人と区市町村が実施するヘルパー派遣、デイサービス、ショートステイ、特別養護老人ホームの四つのサービス利用料を、低所得者に対し減免できるというものであります。これについては、十四日の代表総括質疑で我が党の木村委員が取り上げ、社会福祉法人への財政支援なしには前へ進まないと問題を投げかけたところです。
 そこで、高齢者施策推進室長に伺いますけれども、社会福祉法人による利用者負担の減免措置については、対象サービスや事業主体を拡大するとともに、減免に要する経費の事業費負担軽減を図る方向で具体化すべきだと考えるが、どうでしょうか。
 また、実施時期は、来年度じゅうにできるだけ早く実施していただきたいと思いますけれども、あわせてお答えいただきたいと思います。
〇前川福祉局長高齢者施策推進室長兼務 先ほど知事からもご答弁申し上げたとおりでございますが、この減免措置は、保険料、利用料の一般的な減免をやるものではございません。あくまで国が制度化している社会福祉法人による軽減措置の根幹は堅持しながら、これについて区市町村が工夫を凝らしていく、これが有意義であると考えているわけでございまして、都としては、こうした区市町村についての支援策を検討し、取りまとめたいと考えております。
 また、実施時期につきましても、あわせて検討してまいります。
〇渡辺委員 先ほどの確認ですけれども、検討したいと今ご答弁されましたけれども、積極的に講じていくという方向で取り組むべきだと思うんですけれども、それについてはいかがでしょうか。
〇前川福祉局長高齢者施策推進室長兼務 ただいまお答え申し上げましたとおり、そういった区市町村の努力につきまして、都としての支援策を検討して、取りまとめてまいりたいと考えております。
〇渡辺委員 これは、先ほど自民党さんに知事がご答弁されましたけれども、それの内容と全く同じ内容ですか。講じていくということと取りまとめていくということと、これはどう内容が違うのか。
〇前川福祉局長高齢者施策推進室長兼務 ただいま申し上げたとおりでありますが、先ほどの知事の答弁と同じでございます。

もっとしっかりした利用料減免制度を

〇渡辺委員 もう一つお伺いしますけれども、国の制度は、二〇〇四年度までの期限つきです。これは知事にお伺いいたしますけれども、経過措置にとどめず、国の負担を大幅に引き上げ、もっとしっかりとした利用料減免制度をつくるように国に要望していくべきだと思いますけれども、どうでしょうか。
〇前川福祉局長高齢者施策推進室長兼務 ただいま申し上げましたとおり、制度内容もこれから検討するわけでありまして、今お尋ねの点についても今後検討していきたいと考えております。
〇渡辺委員 ぜひひとつ積極的に取り組んでいただきたいと思います。
 都の新しい減免策について、私は、第一に、国の制度では、利用料減免の対象者は、住民税非課税者のうち特に生計困難な者となっておりますけれども、所得基準を厳しくしないこと、これが第一点。第二に、減免の割合は、利用者負担の五割減額から免除までとなっておりますが、できるだけ利用者負担が軽くなるようにすること。第三に、本来利用料減免は行政の責任で行うべきものであり、社会福祉法人を初めとする事業者負担をできるだけ軽くすること。最後に、区市町村が独自に行っている利用料減免と相まって、相乗的効果が発揮できるような制度にすることが必要だと思います。このことを強く要望しておきたいと思います。
 我が党の試算では、今回の新制度に必要な都の財政負担は数億円から十億円程度、貴重な一歩ではあるけれども、まだまだとば口にすぎません。我が党は、今後とも引き続き都民のために役立つ利用料減免制度をつくっていくために、また拡充していくために、全力を尽くしていきたいというふうに思っております。

保険料滞納でサービス停止も

 次に、保険料について伺います。
 保険料が払えず滞納が続いた人は、今後どうなるんでしょうか。
〇前川福祉局長高齢者施策推進室長兼務 保険料滞納者に対する取り扱いは、法令上明確に規定されておりまして、未納期間によって取り扱いは異なります。
 例を申しますと、例えば納期限から一年以上の未納期間がある場合につきましては、介護サービスを利用した際の事業者への費用の支払いは、原則、サービス費用の一割でございますが、この全額を一たん支払っていただいて、領収書等を保険者に提出し、後から九割を保険給付分として償還を受けるという方式に変更となります。
 ただ、介護保険制度は、国民の共同連帯の理念から、すべての国民によりともに支え合うことが極めて重要であります。したがって、必要やむを得ない措置と考えております。
〇渡辺委員 一たんお金を全額払ってと、そういうことができる人ならば、保険料の滞納などというのはないわけなんですよ。その上、ある区の窓口で、私たち、一年半滞納するとサービスの利用が停止される、こういうことも聞きました。

減免制度はどうしても必要

 ここまではいくわけですね。そうならないためにですよ、そうならないために、やはり保険料について、低所得者に対して都としての減免制度はどうしても必要なんじゃないかというふうに思うわけなんです。
 国立社会保障・人口問題研究所の分析でも、社会保険料の負担が六十歳代後半以降も引き続き重い。しかも、低所得層において負担が重い。高所得層で負担が逆に軽くなっている。こういう、何というか、逆進性ということが明らかになっているんです。
 そこで、もう一つお聞きします。知事は、木村委員との質疑で、介護保険の減免について、区長会や市長会から正式に要望が出れば、都としてしんしゃくすると答弁されました。多摩市長会は、昨年の九月に、低所得者に対し都独自の保険料減免措置を講じることを正式に都に要望しているわけです。ここにございます。ぜひ都としてもこれを受けとめていただいて検討していただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
   〔渡辺委員、知事に資料を渡す〕

熟読し、参考に……石原知事

〇石原知事 熟読して、参考にさせていただきます。
〇渡辺委員 その方向でぜひ取り組んでいただきたいと思います。
 なぜ区市町村の要望が受けとめられないのかという点でいえば、昨日の朝日新聞でも、利用料の減免だけでなく、保険料の減免に踏み切る自治体がふえてきているという報道がされておりました。私は、この問題を引き続きこれからも取り上げてただしていきたいというふうに思っております。
 次に、生活保護との絡みでちょっと伺います。
 介護保険の保険料負担についても、マル福などの経済給付的事業の見直しの影響についても大変な人がいるのは、認めざるを得なくなってきているところであります。

低所得者、生活弱者の支援は、大都市問題のひとつ

 しかし、その対策は、生活保護の問題だ、国の所得保障の問題だと、こういうことが今定例会での議論の特徴ということがいえると思います。しかし、生活保護そのものの現状はどうかということを申しますと、東京の現状は深刻で、衛生局に調べてもらった数字だけれども、二十三区内で餓死したと見られる人は、九九年度だけで二十六人、過去十三年間で最高であります。ちなみに、十三年間の合計は二百十八人であります。うち世代別では、最高が六十代の六十五人、二番目が五十代の六十二人となっています。都内のある公団住宅では、ワンフロアに二十世帯いるうち、十八世帯が月額十万円以下の遺族年金で暮らしております。この中から公団家賃を払って生活するのだから、非常に厳しい現状ということはおわかりだと思います。
 低所得者、生活弱者の支援策は、東京が打開すべき重要な大都市問題の一つだというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。
〇前川福祉局長高齢者施策推進室長兼務 改めて申し上げるまでもありませんが、戦後の日本、特に東京では、世界的にもまれな均質で平等な社会が基本的には実現していると。生活水準も全体としては著しくレベルアップしたというふうに、私どもは当然のことながら認識いたしております。
 しかしながら、そういう中で新しい形での都市問題が出てきている、これも一方では事実であります。例えば急激な少子高齢化の進行の中で、地域の支え合い機能が低下するとか、終身雇用制が揺らぐとか、そういった問題も当然あるわけであります。
 こういった問題がある一方で、低所得者の問題、これはいろいろな原因がありますが、いわゆる制度的な問題が問題であるということよりも、実態として、少数ではあるけれども、例えば生活保護をみずからの意思でお受けにならないとか、あるいは別の事情があって受けられないとか、そういった方がいることは、少数であっても事実だというふうに考えております。
〇渡辺委員 それでは引き続きもう一つ。国は、制度制定以来五十年を経過した生活保護制度について検討を加えていくとしておりますけれども、都としては、生活保護制度の課題についてどう考えているのか、お答えください。
〇前川福祉局長高齢者施策推進室長兼務 生活保護制度は、発足以来五十年が経過いたしまして、これまでも、社会経済情勢の変化に対応して、保護基準や資産要件の見直しなど必要な改善が図られてきております。
 しかし、制度発足から五十年を経て、この間、各種の福祉施策や年金制度等の整備が進んだこと、また、対象者が高齢者世帯であるとか、あるいは障害傷病者世帯中心となってきたことなどによりまして、社会保障制度全般における生活保護制度の役割は、法制定時と比較して変化をしてきているというふうに考えております。
 こうした中で、国では、生活保護制度全般について検討を加えていくことが必要であるとしており、都としても、この動きを見守りながら対応していきたいと考えております。

すぐに助けてもらえないではセーフティネットとはいえない

〇渡辺委員 最近は、厚生省の保護課長でさえも、国民の生活保護制度に対する期待というのは、とにかく困ったときにすぐ助けてもらえるということであって、それができないような制度はセーフティーネットの名に値しないと、制度五十年の歴史を見れば明らかなように、初期においてはそのような性格が強かった、それがだんだん違ってきたということをいい始めているわけであります。それに比べても、今の答弁では全く現状認識が甘いのじゃないかというふうに私は思います。
 東京でも、数年前に、豊島区で、生活保護の窓口で嫌な思いをして、二度と申請はしたくないという思いを日記に書いて、母子ともども餓死した事件がありましたが、生活に困った人が気兼ねなく受けることができる実態にないことは、周知の事実であります。生活保護の相談に行くと、預貯金は、葬式代も残らないほど、ほぼ底をつくまで使い果たしてから出直すようにいわれます。生命保険は解約を迫られる。さらに扶養義務者を洗いざらい調べられたり、無条件で資産などの調査をしていいという同意書まで書かされることもあり得るわけです。これは個々の福祉事務所の問題ではありません。国の方針で、全体としてそういう対応がされておるわけであります。

日本の生活保護の仕組みは大きく立ち遅れている

 大体日本の生活保護の仕組みは大きく立ちおくれているわけです。イギリス政府が一九九六年にまとめた、OECD諸国における公的扶助という報告書がありますが、これによれば、日本は、所得や資産について最も厳しい取り扱いをしている国の一つです。生活保護を受ける前に、子供や親戚に養ってもらうのをまず優先するという親族の扶養義務を規定しているのは、OECDに加盟しているいわゆる先進国二十四カ国のうち、日本のほかは四つの国にすぎません。生活保護費の水準は上位三分の一ぐらいの位置にありますけれども、とにかく間口が狭い、受けにくい、受けている人の割合が少ないというのが、他の国々と比べて日本の生活保護の際立った特徴であります。
 実際にイギリスでは、生活保護を受けている世帯は、一九九五年時点で五百六十七万世帯、全体の二四・五%に及びます。ドイツは約一〇%といわれています。これに対して日本はわずか一%台であります。フランスは、すべての人を対象とした社会保護で貧困を解決する方向を追求してきておりますが、八〇年代に失業や貧困の問題が顕在化したことに対応し、収入調査だけで受けることができる、新しい生活保護制度がつくられました。しかも、高齢者も障害者も最低限所得が保障されていて、拠出年金でそれを満たせない場合は、国庫による補足手当が支給されているわけであります。オーストラリアでも、老齢基礎年金は、すべての高齢者に対し国庫負担で保障されています。公立病院では、医療費は原則無料です。低所得者に対する生活保護や所得保障の充実は、日本と比べ物になりません。  知事に伺いますが、日本の生活保護や所得保障は余りにも貧弱じゃないでしょうか。生活保護や所得保障を抜本的に充実させて都民生活を支えるために、知事が先頭に立って国に物を申す必要があるんじゃないでしょうか。
〇前川福祉局長高齢者施策推進室長兼務 第一点は、まず認識の問題でありますが、今お話がありましたように、ヨーロッパと比べて確かに日本の受給率が低いのは事実であろうと思います。しかし、それはむしろ我々としては誇りにしていいことではないかと、私どもは基本としてそう思っております。
 問題は、保護を必要とする人が受けられるかどうかという問題でありますが、私どもは、東京都はこれまでも、生活保護制度が適正に運用されて、真に生活に困窮している都民が保護から漏れることのないように、区市に対して具体的な運用指針を示して、適切な助言、指導を行っております。したがって、生活保護を必要とする困窮状態にあり、かつ本人に申請する意思があれば、基本的には保護の受給は可能であると考えております。
 具体的に申しますが、マクロで見ますと、率直に申し上げて、私ども、日ごろ福祉事務所の指導を行っている職員の感覚、あるいは私自身も、区の福祉事務所の方々に集まっていただいてヒアリングをやりましたが、その実感では、高齢者や障害者等で保護の必要な人は、基本的にきちんと保護が受給できていると考えております。

国の報告でも最低生活をめぐる問題が再び出現

〇渡辺委員 そんな誇りを持てみたいなことでは、この餓死状態という現実に起きているこういう問題について、どういうふうに思うんでしょうか。
 それから、本当に生活そのものができない、こういうような人たちが圧倒的に最近ふえてきている、多くなっている、そういう現状を無視して、そんなことをよくもいえたものだというふうに私は思います。
 国の検討会の報告でさえも、貧困や低所得者など最低生活をめぐる問題が再び出現していると指摘している。
国がそういうことを持っているわけですから、そういうこととやはり考え方を同じくして、積極的にこういう低所得者層に対する対策に取り組むべきだというふうに私は思います。
 しかも、矛盾は大都市に集中しているんです。例えば、高齢者の場合、国民年金が三万円から四万円でも、地方に住んでいて家と畑があれば何とかやっていける。東京ではそうはいかない。家賃も物価も高い。ひとり暮らし高齢者の比率が東京は全国第二位ということを見てもわかるように、家族や地域で助け合う力も弱くなっているんです。知事は、生活保護を受ければと簡単にいうけれども、そうでないことは明らかじゃないでしょうか。しかも、区市町村の負担についても配慮していってほしいというふうにも思うわけです。
 今、生活保護の財政負担の割合は、都負担はなくて、国が四分の三、区市町村が四分の一、今でも生活保護費は、区市町村の民生費の二割を占めている。これがさらに膨らんでいくと、区市町村は到底負担し切れなくなる。国が抜本的な財源措置の改革をしない限り、生活保護制度による低所得者対策には、区市町村の財政負担能力が障壁になることは避けられないんです。安易に生活保護があるからいいじゃないかというわけにはいかないんです。

都が独自に支援策を講じる必要がある

 大都市問題であるという角度から見ても、国と区市町村は生活保護にかなり大きな支出をしているのに、東京都は基本的にはそれがない。そして、家族構成からいっても、リストラで勤労者の生活困難がとりわけ集中しているという点から見ても、東京都が独自に生活困難者に対する支援策を講じる必要、必然性があるというふうに思いませんでしょうか。
〇前川福祉局長高齢者施策推進室長兼務 二点申し上げたいと思います。
 基本的に、生活に困窮している状態の方であります。先ほど申し上げましたとおり、例えば、高齢者世帯、母子世帯等であれば、あるいは障害者世帯等で保護の必要な人については、現場の実感として、基本的にきちんと保護ができているということであります。
 ただ問題は、具体的な適用に当たって、たとえほんの少数とはいえ、稼働能力であるとか、就労意思の判断であるとか、親族への扶養照会とか、難しい課題があるのも事実である、これは私ども認めているわけであります。ただ、それについてきちんと問題意識を持っているというふうに申し上げたわけでございます。
 それから二点目、財政負担でございますが、財政負担につきましては、区市の負担分につきましては基本的には四分の一でありますが、区の場合には都区財調で、それから市の場合に地方交付税で基本的に措置いたしております。
 したがいまして、将来、仮に今受けられていない人が対象になったとしても、それによって、マクロで見て都内全体の財政がそれによって困難になることはありませんし、個々の区市においては、まして問題がないと思っております。
〇渡辺委員 福祉局長に、何というか、局長の資格がないといってもいい過ぎじゃないんじゃないですか。
 やはりもっと、低所得者層が本当に幅広く多くいるわけですから、そういう立場に立って物事を判断していただきたいというふうに思いますね。本当に冷たいと思いますよ。

生活保護は社会保障の最後のよりどころ

 生活保護は、もともと社会保障の最後のよりどころとされているものですから、そういう点では、セーフティーネットは二重三重に手厚く張りめぐらすことが必要なんです。その点でも、東京都が自治体として独自のセーフティーネットを講じてしかるべきだと私は思います。
 だからこそ、東京都はマル福など独自の経済給付的事業をつくり上げて、医療費や介護などの都民の負担を少しでも和らげ、都民生活を支える役割を果たしてきたんです、これまでは。対象者もはっきりしている、目的もはっきりしている、生活保護と違って所得制限などが緩やかで都民が利用しやすい、しかも、生活に密着していて必要性が高いところに具体的に支援の手が届く、自治体独自の生活支援策として非常によくできているというふうに思っています。だから全国に広がったし、多くの自治体は基本的に継続している。そして、東京都がその大事な経済給付的な福祉事業を廃止したり切り下げるということが、これほど大きな問題になってきているんじゃないでしょうか。
 知事に伺いますが、結局のところ、東京都は、マル福などの経済給付的事業をもとに戻すこともしない、それにかわる新しい低所得者の支援策の整備、充実に踏み出していこうともしない、都民生活への直接支援から手を引いていく、そういうことなんでしょうか、お尋ねいたします。
〇前川福祉局長高齢者施策推進室長兼務 大変心外でございますので明快に申し上げたいと思いますが、まず、低所得者について、私どもは、先ほど申し上げましたとおり、ほとんどの場合に救済しているけれども、ただ具体的に、たとえほんの少数とはいえ、問題がある場合があるのは事実だと認めているわけでございます。それを前提として、現在国でも検討しているし、私どもとしては、そういった国の検討を見ながら対応していきたいというのが大きな立場でございます。
 それから、二点目は、いわゆるさきの経済給付的事業の見直しは、これは何度も申し上げておりますが、国における年金制度あるいは医療保険制度等の充実を踏まえて、それを前提として、今度は東京都で利用者本位の新しい福祉を展開していこうと、そのために、例えば認証保育所制度、あるいは心障施設の緊急整備、あるいは新たな利用者保護のシステム、こういったものを積極的につくっていくために、これから五年間で五千二百億円、新規事業だけで千八百億円を投資しようと思っているわけでございます。
 先ほどお尋ねがあった社会福祉法人による減免措置も、広い意味では低所得者に対する対応であります。
 そういう意味で、私どもとしては、あらん限りの力を振り絞って努力している、こう考えております。
〇石原知事 生活保障に関して申し上げますと、局長申しましたように、制度が発足してから五十年たったわけでありまして、日本の社会もかなり本質的にも流動的なところがありますから、こういう過渡期に、それに即応した−−いかなる制度でも見直しは必要だと思います。国もそういう意向があるならば、またそれを東京もしんしゃくしなくちゃいけないと思いますけれども、しかし、ちょっと私申し上げたいのは、社会の制度とか、その他この他を超えて、垂直な倫理というものはどの社会にもある。
 例えば、先ほど申しましたように、生活保護を、申されたように、生活保護を受けるときに窓口で非常に執拗にいろいろなことをただされるといいますけれども、やはりそれに使うお金は国民の税金でありますから、それを扱う窓口が、日本の社会の、つまり戦前、戦中、今日までに至る垂直の倫理、例えばそれは日本独特の家族の制度であったり、親戚つき合いとか、そういったものもしんしゃくして条件というものを要するに見きわめるということは、当然の業務だと私は思いますよ。どの国がやっているから、この国がやっているから、それも全部まねて日本がやれというのは、それは通らない話です。やはりそういうものをきちっと踏まえるところに、福祉なら福祉というものに対する一つの文化性もあると、私は思います。

在宅、施設サービスと経済給付的事業の両方必要

〇渡辺委員 いずれにいたしましても、在宅サービスや施設サービスの充実と経済給付両方の充実が求められcgいるんです。
 それで、先ほどもいいましたけれども、いわゆる経済給付的事業、こういうものが時代おくれだということで、石原知事はこれを廃止あるいは大幅に削減したわけですよ。こういうものが、今私がずっと申し上げてきたように、日本のやはり低所得者層に対して本当に追い打ちをかけている。いわゆる政府が福祉そのものを削る、こういうような状況のもとで、石原知事はそれに追い打ちをかけて、さらに低所得者層に対して大変な状況に追い込んでいるわけですから、そういう点をしっかりとやはり見きわめていただいて、そしてこの経済給付的事業を復活させていただきたいというふうにも思うんです。
 福祉局長も、前回の予特でもって、両方できればそれにこしたことはないと、こういう答弁をしたばかりじゃないかというふうに私は思います。財政的にも、後で述べますけれども、増収分を活用して浪費を省くということになれば、それはもう財源としてはあるわけですから、そういう意味でやはり積極的に取り組んでいただきたいというふうに思います。
 特にマル福などの経済給付的事業をもとに戻すことや、さらに新しい生活支援事業に踏み出していくということを、重ねて求めておきたいというふうに思います。
 時間がかなりなくなりましたので、私、予定していた失業者とかリストラ問題については、後ほどまた改めてどこかでやらせていただきたいというふうに思います。
 そういう点では、次は財政問題について。
 以上、私るる申し上げてきましたけれども、都民の福祉、暮らしを守るという自治体本来の立場に立ち返って、切り捨てられた福祉をもとに戻す、このことを初め、介護保険の減免、さらにはリストラから都民を守ることなど、いろいろと今求めてきたところであります。これらの緊急の課題は、来年度四千八百億円の都税の増収を生かせば十分可能であることは、これまで繰り返し明らかにしてきたところであります。

二兆一〇〇〇億円の財源不足は生じない

 先ほど自民党の山崎委員は、共産党のいい分では財源不足が解消できない趣旨の発言をしましたけれども、そういうことではありません。財政再建推進プランがいうところの二〇〇〇年から四年間で二兆一千億円の財源不足についても、スタートの今年度、二年目の来年度については、木村委員が総括代表質疑で明らかにしたように、税収増と減債基金の過大見積もりの是正、浪費とむだに少しメスを入れることで、税連動経費の増加分を含めたとしても、それぞれ六千二百億円あるいは七千億円の財源不足は起きないことは明らかであります。
 次いで、再来年の〇二年度以降についても、福祉復活などの財源は十分あります。都税収入の見込みについては、外形標準課税の平年度化による減収、あるいは利子割の減収などで一千億円が減収となるほか、法人二税については、たとえ〇二年に二・五%、あるいは〇三年に二・五%、合わせて五%の減収となる厳しい見込みとしても、財政再建推進プランが掲げた税収より、二〇〇二年度が二千百億円増、二〇〇三年度が千三十億円の増収になるということであります。
 また、過大な設定となっている減債基金の積み立てを二分の一にとどめ、投資的経費をバブル前の五千億円の水準に抑えることなどにより、税連動経費の増加を加味しても、二〇〇二年は、福祉や人件費など経常経費を削減する前の水準に据え置いたとしても、差し引きゼロで財源不足は生じないのであります。二〇〇三年度でも、五百二十億円の不足にとどまる。この不足は、千九百億円の財政調整基金を充てることで解消されます。つまり、どう転んでも、福祉の復活、そして福祉改革推進プランによる障害者施設の緊急整備などの財源を確保することは十分できるものであります。

財政構造改革というのならば真っ先に大型公共事業の見直しを

 我々は、この厳しい社会情勢だからこそ、ふえた税金は都民のために使うことを提案しておりますが、同時に、根本的に都財政を立て直していく上で、首都高速道路公団への無利子貸付や直轄事業負担金など支出を適正化すること、さらには大型公共事業などの浪費とむだにメスを入れることを抜きに考えられないことも自明の理であります。財政構造改革というなら、これこそ真っ先に手をつけるべき問題であることを指摘しておきます。

臨海開発は都政運営の最大の障害

 そこで、きょうは、都政運営にとって最大の障害となっている臨海副都心開発について伺います。
 知事は、我が党の本会議代表質問に答えて、既に道路などの地域内都市基盤整備の八割は完成し、国際研究交流村や七百社を超える企業などが進出するなど、まちは発展し、活況を呈しつつあると述べました。確かに、地域内基盤整備は八割は完成し、国際研究交流村や企業が一定程度進出していること、パレットタウンなど暫定利用地区でにぎわいを見せていることも否定するものではありませんが、それは東京都にとって都合のよいところだけを見ているのではないかと疑問を感ずるところであります。
 現地に行くと、にぎわっているのはほんの一角で、駐車場に使われているのは、みんな売れずに残っている土地であります。
 そこで、実際にどれだけ企業が進出しているのか、土地利用がどこまで進んだのか、お聞きいたします。
〇齋藤港湾局長 臨海副都心開発における有償処分面積は約百三十九ヘクタールございます。これまでに、その約四五%に当たる六十二ヘクタールの処分が終わっております。このうち、民間企業に処分した面積は、約四〇%に当たる二十五ヘクタールでございます。

地代がとれる土地のうち半分しか利用されていない

〇渡辺委員 結局のところ、地代がとれる土地のうち、半分しか利用されていない。しかも、今民間企業分が二十五ヘクタールといわれましたけれども、これには都財政が投入されている三セクビルも入っている。純粋に民間企業の進出分は、わずか一〇・四%にすぎません。
 九一年の第一次公募の分でも、まだ区画が契約に至っていなかったり、契約しても進出していなかったりしている。さらに第二次公募分は悲惨で、試算でLM1街区の松下電器と、先日予約契約したテーオーシーだけで、あとは全滅であります。
 私、ここにパネルを持ってきました。
このパネルの、ブルーの色が塗られているところが、公共と民間を問わず、既にビルが建てられたり契約が済んでいるところで、このピンクのところが、パレットタウンなどで暫定利用のところ、無地のところは、いまだに契約もなく、企業が進出していないところであります。民間活力をうたい文句にしてスタートをさせた計画が、民間の相手にされず、無残な事態に追い込まれている。暫定利用の地代は大幅に減額しているのであります。
 お聞きしますが、これではどうやっても採算がとれないのではないでしょうか。
〇齋藤港湾局長 ただいま、この図を見せていただきまして、なかなか十分に土地が処分できていないんではないかというご指摘をいただきましたが、これ、見ようによっては、ブルーの部分が既に処分が終わっているということでありますので、まだまだ長期かかる計画でありますけれども、進んでいるということもいえるんではないかというふうに思っております。
 また、どうやっても採算がとれないんではないかというご質問でございますけれども、私どもとしては、今日の厳しい経済環境のもとで、臨海副都心開発を今後とも着実に進めていくために、三会計統合を初めとして、収支の両面にわたる大胆な改革に取り組む必要があるというふうに思っております。
 そのうち、収入確保に向けた取り組みとしては、昨年、事業者誘致促進本部を設置し、常時公募の実施、共同溝の開放、仲介成功報酬制度の創設など、さまざまな対策に既に着手しているところでございます。
 また、事業者から早期整備の要望が強く、誘致の上からも不可欠な交通利便性の向上に向けて、平成十四年十二月にはりんかい線の大崎延伸を、また平成十七年度には「ゆりかもめ」の豊洲延伸及び晴海通り延伸を実現するよう、工事を鋭意進めているところでございます。
 以上のことから、今後の土地処分は、都の工夫と努力が相まって、着実に進むものと見込んでおります。事業の採算は十分とれると考えております。
〇渡辺委員 本当に気楽な考え方で、それでは本当にこの臨海問題は解決しないということをみずから証明しているという感じです。幾ら弁明しても、無理があるんですよ、実際に。実際の土地利用が惨たんたるありさまであることは、さっきも明らかにしましたけれども、問題は、これから、あなた方が今いわれたように、土地処分が着実に進むかどうか、また進んだとしても、採算がとれるかどうかということなんですね。
 まず土地の利用ですけれども、あなた方は、処分が進むといったけれども、一体いつからそういうことをいってきたのか、あるいはいつから募集を行ってきたのか。
 第一次募集が最初に行われたのが、十一年前の九〇年ですが、いまだに売れ残っている。二次公募は三年前の九八年二月、こちらは三区画のうち一区画が契約、一区画が予約契約、昨年七月募集した二区画はいまだに応募がない。しかも、臨海高速鉄道が開通すればとか、「ゆりかもめ」が豊洲につながればなど、希望的な観測はいっておりますが、そんなに甘いものではないんじゃないですか。
 何回もいっておりますが、今、東京都の方針に基づいて、都心部であちこちで再開発が進んでいる。例えば東品川、汐留、環状二号再開発、愛宕山、秋葉原など、現在進行形の大規模開発がメジロ押しじゃありませんか。
 最近汐留に進出を決めた資生堂、もともと臨海副都心の一次公募に応募して、当選した企業です。汐留の方がメリットがあるということで、臨海から撤退した企泣jです。最近では、晴海で再開発されたトリトンスクエアがあります。最近の動向は、ビル需要が若干回復しているとしながらも、選別化が進んでいるといわれている。
アクセスが改善されるといっても、公共交通が縦横に走っている都心のビルと競争にならないのは、当然であります。

企業進出がすすんでも借金の返しようがない

 さらに百歩譲って、港湾局がいうように、企業の進出が進んだとして、果たして黒字になるかどうかという問題です。私なりに試算してみたが、これまでの実際の収支を来年度末の見込みで見ますと、収入がおおむね五千三百五十億円、支出がおおむね一兆三千八百億円、既に八千五百億円近くの支出超過となっております。この穴埋めを、転貸債や二つの埋立会計からの借入金で賄っている。このため、借金の利払いで臨海副都心開発事業会計は毎日一億円の赤字で、今後三会計統合によって、その分の利払いが軽減されたとしても、毎年の赤字は百五十億円から二百億円前後続いていくわけですから、借金の返しようがないわけであります。
 お聞きしますが、二つの埋立会計から借りている三千六百二十億円は別にしても、既に借金をしている基盤整備費の五千二百億円のお金をどうやって返していくというのでしょうか。
〇齋藤港湾局長 基盤整備費の約五千二百億円をどうやって返すのかということでございますが、これは、未処分の土地が七十七ヘクタールございます。また、既に長期貸付をした土地が六十二ヘクタールございますので、その底地を売るということを考えているわけですが、そうすれば、これが三十一ヘクタール分になりますので、合わせて百八ヘクタールの処分可能の土地があるということであります。
 現在、価格が、平均ですが、平米当たり百十四万円見込んでおりまして、これを売ることによって最終的に債務を返済していく、こういう考え方でおります。したがって、土地処分ということについては、十分努力をしなければいけないと考えておりますが、決して採算がとれないというふうには思っておりません。

売れる土地をすべて売却しても一六九〇億円のマイナス

〇渡辺委員 借金の返済はできると、こういう話ですけれども、とんでもない答弁だというふうに私は思うんですよ。
 きょう、港湾局長は、総括代表での木村委員の質問にいろいろ答えましたけれども、三会計統合を実施すれば、他会計の借入金三千六百億円が消滅するといいました。そういうことで棒引きだということを港湾局はいっておりますけれども、これは五千二百億円の企業債をどうするかという問題なんですね。この五千二百億円の企業債、これが、今お話があった借入金の返済はできるんだといっているわけですけれども、本当にできるのかどうかという点で、できるというのは、本当に私は甘い認識だというふうに思いますよ。
 ちょっとパネルをつくってきましたから。配ってください。
 これは、収支の見通しを一応パネルであらわしたものです。十三年度以降の収支の見通しを見ますと、今後支出が必要となるものは、こちらが収入でこちらが支出ということで、まず支出の方で、今後支出が必要となるものは、起債の償還費が五千二百億円、それから起債の利子二千億円、今後の基盤整備費、これは開発者負担も含みますけれども二千四百億円、合わせて九千六百億円ということで、こちらの支出ということになっておるわけであります。
 一方、地代収入については、方針では四分の一を売却としているけれども、実際には売却が中止になっており、公的施設や三セクビルなど以外は売却するということを仮定して今後の収入を見ますと、未処分地の売却は、平米九十八万円ということで私たち計算しましたけれども、六千二百億円、それから貸付方式の売却への転換、これが八百六十億円、それから長期貸付分八百五十億円、合計で七千九百十億円、差し引きいたしますと、千六百九十億円のマイナスということになるわけです。
 この二つの埋立会計からの三千六百二十億円の借入金を棒引きしてやっても、ほとんどの土地は人手に渡ってしまう上、それでも一千七百億円近く不足する。しかも、借金をうまく計画どおりに返せたという話で、土地利用がずれれば、そこでまた金利がかさんでいくと、こういうことになるわけですね。したがって、これはどうやって返すのかということで、これは知事にちょっとお聞きしたいと思います。

石原知事、いくも地獄、退くも地獄

〇石原知事 これはね、みんなさんざんわかっていることなんですよ。だから、それだったら、あなた方も考えて代案を出したらどうなんですか。こんなものはだめだ、採算立たないからやめろ、それでその金は福祉に回せ、あと公園でもするんですか。それはあなた方があこがれているソビエト・ロシアだったら、ここに原発建てるかもしれない。そうもいかない。(発言する者あり)そうはいかないんですよ。
 ですから、とにかく船は出てしまったんだから。前来たときに私いったとおり、これ、行くも地獄、退くも地獄なんだ。しかし、この船を途中で沈めるわけにいかぬでしょう。そのためにみんな策を出しているんですよ。
 あなた方、今までもぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃおっしゃるけれども、じゃあどうやって−−生産性のある打開策を示されたらどうなんですか。そんなものを持ち出さずに、だめだ、だめだとけちつけるだけで、これ大変難しい試合をしているんだ、これ。理事者も議会全体もしているんだよ。こんな試合は負けるに決まっているから、あなた方だけは途中でやめて、要するに試合放棄するみたいな話しなさんな。それは、あなた、国民とか都民の代表とはいえませんよ。
   〔傍聴席にて発言する者あり〕
〇松村副委員長 ご静粛に願います。
 傍聴人に申し上げます。ご静粛に願います。

共産党は最初から反対、対案出せは、あべこべ

〇渡辺委員 私たち共産党は、最初からこの問題について、臨海副都心開発については……(「出せよ、委員長」と呼び、その他発言する者あり)うるさいな、黙んなさいよ。
〇松村副委員長 傍聴人に申し上げます。
 ご静粛に願います。静かにしてください。今、質問しています。
〇渡辺委員 臨海開発は、我が党としては、最初から一貫して反対をしてきているただ一つの政党ですよ。それも、ほかの政党と一緒にして考えることは、私は許せませんよ、実際に。
 それからもう一つ。今知事は、あなた方が考えなさいよと、考えてみたらどうですかと、こういう話も(知事「対策を出せといっているんだ」と呼ぶ)そういうことをいうこと自体、問題は、当事者のあなた方が考えるということが本筋ではないか。本筋ですよ。そういうものを棚に上げて、自分たちがやってきたものが行き詰まったら、そういうことで私たちが批判してきた、やめろといってきた、そのことに対して、それはあなたたちも対案を出しなさい−−あべこべじゃないですか、これは。
 私は、まず第一に、無責任な態度をとっているのは東京都なんですから、私はそういうところを指摘しておきたいと思う。(知事「指摘だけじゃないか」と呼ぶ)

都民参加で抜本的な再検討が必要

 まず第一に、負の遺産として都民の前に明らかにすることだ、その内容を明らかにすることだ。(知事「指摘だけならだれでもできるよ」と呼ぶ)そして、その解決は確かに難しいというふうには思いますけれども、問題の所在と反省を都民にきちんとした上で、やり方はいろいろあるんですから、考えるべきじゃないかというふうに思うんです。
 まず一つは国の責任、この点は、この計画自体、かつての金丸副首相のツルの一声で今日のような大規模な計画になった経過からいって、計画に対して国の官庁が深くかかわっている点からも、国にもっと責任を負ってもらう。
 次に、銀行に応分の責任をとらせるということ。臨海開発では、銀行は、基盤整備を進めた臨海副都心建設株式会社にゼネコンから人を派遣させて、金のかかる設計をやらせて、事業会計に五千億円を超える借金をさせて、その利息でもうけるだけでなく、ゼネコンにも資金を貸し付けて二重にもうけている。事業会計だけで十一年間に一千五百億円も利息で利益を上げている。こういう銀行は、全国のゼネコンなど、不良債権を何兆円も棒引きしてやっているんですから、そういう点では、全部とはいわないけれども、権利放棄させるということは当然じゃないかというふうに思います。その上で、都として中長期的な破綻処理を進めていくことにもなるのではないか。問題は、今、ストップをかけることだというふうに思います。
 そして、私は、時間がございませんから、時代の流れに沿って、これらの問題については都民参加で十分抜本的な再検討をするということが必要だというふうに思います。
 そういう意味で、時間がね、私の後に、この後、公共事業の問題で吉田委員が引き続き関連質問をいたしますので、そちらに譲ります。
 以上です。(拍手)