過去のページ

■ 議会での質問  日本共産党東京都議団

予算特別委員会 しめくくり総括質疑・関連質疑

吉田信夫(杉並区選出)  2001年3月26日

公共事業見直しの流れに逆らう八ツ場ダム建設は中止を

-- 目 次 --

〇松村副委員長 計測をとめてください。
 ただいま吉田信夫委員より関連質疑の申し出がありました。
 本件は、予算特別委員会実施要領第七項の規定に基づき、質疑委員の持ち時間の範囲内で認めることになっております。
 吉田信夫委員の関連質疑を認めます。
 吉田委員に申し上げます。
 発言は、渡辺委員の質疑の持ち時間の範囲内となっておりますので、あらかじめご了承ください。

自然破壊、住民犠牲など特別の問題かかえる八ツ場ダム

 計測を始めてください。
〇吉田委員 それでは、残された時間、関連質問といたしまして、公共事業の見直し、具体的にダム事業の見直しについて質問させていただきます。
 今、全国で、徳島県吉野川の可動堰の計画中止を初め、ダムの中止を含めて、決められた公共事業の見直しが進められております。東京都としても、当然、一度決定された事業であったとしても、現時点で、事業の必要性、緊急性、また、自然との共生、そういう観点から見直しをしていくということは避けられない課題だと思いますし、その中でも、全国で大きな焦点になっている東京都がかかわるダム事業の再検討というのは、都としても緊急の課題ではないでしょうか。
 水の確保は、当然、都民生活、そして都市生活にとって不可欠です。だからといって、ダム建設による地元住民の方々や、あるいは自然破壊の重大な影響を無視してこれを進めることは許されないと思います。しかも、ダム依存から節水型都市への転換が、今私は求められていると思うんです。
 きょう取り上げるのは、都がかかわるダム計画の中でも、自然破壊、そして町民への犠牲、さらに都財政という点でも、他のダムと比べてみても極めて特別な問題をはらんでいる群馬県長野原町の八ツ場ダム計画についてであります。

酸性水で一時は計画中止

 まず最初に指摘したいことは、この八ツ場ダムを抱える吾妻川ですけれども、酸性が非常に高いということが前から指摘をされております。かつて、そのために一度はダム計画を中止せざるを得なかったという経過もあります。この酸性を中和させるためにさまざまな努力がされておりますけれども、私も現地で見ましたけれども、例えば、五寸くぎを入れたら、十日間で本当に縫い針のように細くなる、数カ月でコンクリートが劣化するということを、地元の国の出先機関でも見させていただきました。
 そこで伺いますけれども、中和のために石灰の投入などを行っていますが、長期的には、このコンクリートのダムサイトそのものが劣化するという危険性をはらんでいると思うんですが、こういう危険性はどのようにお考えでしょうか。
〇山下都市計画局長 国におきましては、吾妻川の酸性水の中和対策といたしまして、昭和三十九年に上流部に水質改善施設を設置しております。この施設によりまして吾妻川の水質は改善されておりまして、ダムへの影響はないというふうに考えております。
〇吉田委員 局長は、現地をもしかしたら見られていないので、そういうご発言かもしれませんが、これは、昔流でいいますと建設省、関東地建の出先事務所の「水質改善の概要」というパンフレットです。そこに詳しく書かれているものを拡大しております。皆さんにお配りする資料では一番末尾につけられておりますけれども、確かにこの二カ所の石灰投入、行われていますが、それはあくまでも一部分にしかすぎないのであります。

リスク高いダム計画

 (パネルを示す)この香草工場、草津工場、そして、その石灰を堰どめするために品木ダムがあります。しかし、それ以外に、これが八ツ場ダムの計画地ですけれども、そこに流れ込む源流、これは強い酸性、pH三あるいは二というものですけれども、そういうものが流れ込んでいるんです。ですから、これ一つがあるから大丈夫だということは到底いえない。
 しかも、そのことは、私の個人的見解ではなく、この関東地建のパンフレットでも、この水質改善は酸性河川全体の四〇%にすぎないということを具体的に指摘しているんです。
 ですから、大変そもそも危険性を伴ったリスクの高い事業であります。しかも、一日六十トン、年間十六億円を投入し、当然それは堆積となりますから、せきとめるための品木ダムは、もう既に七割を超えて堆積をしている。もう必死になってしゅんせつをしていますが、これも何年もつのかというのが、実はまず極めて特殊な、この八ツ場ダムにかかわる問題なんだということを、まず第一に指摘をしておきたいと思うんです。

移転のための宅地造成で貴重な自然が破壊

 次に私が指摘したいのは、やはり最大の問題であります地域住民への影響であり、また、地元の自然環境に対する影響であります。
 もちろん私は現地に調査に行きました。ご承知かもしれませんけれども、この八ツ場ダムの計画地は、ひっきょうの山奥という地域ではありません。川原湯温泉を抱え、人口七千人の町なんですね。その町の三百十六ヘクタールが水没します。立ち退き対象世帯は約四百世帯に近いだろうと。人口にしたら、約一千人の方が立ち退きの対象になるんです。
 しかも、この八ツ場ダムの場合は、他の場合には全く別な地域に移転をして生活再建を図るということが多いんですけれども、ずり上がり方式といって、今住んでいるところのさらに高い山奥、山腹、中腹を宅地造成して、そこで生活再建をするというやり方をとろうとしておりますので、ダムによって吾妻渓谷そのものが水没され、破壊されるだけではなく、ずり上がりによって、さらに高いところの山腹、丘陵地、こういうところが、学校を移転しなければならない、温泉街を丸々移転しなければならないそのために、大変な宅地造成が行われているんです。
 時間がありませんから、駆け足で説明しますけれども、これが現況ですよね。(パネルを示す)まだほとんど工事はされていません。その現況の、実は山奥に入りますと、山深く入ったところに、ずり上がりで移転するための宅地造成が、まだ一部ですよ、一部ですけれども、こうやって始まっているんですよ。
 もちろん水源確保ということがあったとしても、こういう吾妻渓谷の水没、さらにその両側の山はえぐり取られる、こういうことを知事としてどのようにお考えでしょうか。お答えください。
〇石原知事 私は、知事に就任して間もなく、日比谷公会堂で、利根川を利用している東京都を含めて各県の何とか同盟という会合に初めて出まして、非常に強い印象を受けたんですが、非常に長い歴史を持つ治水事業でありますし、また水源事業でもあるんですけれども、昔から、税というのは政そのものだといわれておりましたが、私、そのとき、もう一つやっぱり水の活用、治水と水源確保というものを、税にむしろ並ぶぐらいの大きな大きな政の主題だなという認識を新たにいたしました。
 いろんな問題が派生して出るでしょうけれども、東京を節水都市にするというのは、おっしゃるのは簡単でありますけれども、なかなか数多くの都民なり、昼間人口を占めている他県の方々も、東京を運用するために、それほど日ごろ節水に協力してくれるということも、なかなかこれは難しい問題でありまして、その需要にこたえるべく水源というのを確保するというのは、都市というものの機能を確保するため、国家のためにも、私は不可欠の問題であると思います。そういう観点で、私は八ツ場ダムを着想されたと思っております。

二十一世紀には自然と共生を

〇吉田委員 確かに水の確保というのは、知事としては、当然責任者として難しい問題だというふうに考えられると思いますけれども、今はやはり、水源確保、そのためにダムということではなくて、さまざまな雨水利用を含めた、節水を含めた総合的な対策をとるということが時代の流れではないでしょうか。しかも、たとえ水源確保であったとしても、今いったような現実の自然環境の破壊ということが行われていることに、東京都として改めて再検討することが求められていると思うんです。
 偶然といいますか、きょう毎日新聞に、この八ツ場ダムと並んで、既にこれは工事が行われた−−関口鬼石町長の八ツ場ダム建設に反対をするという「発言席」の記事が出ています。知事、お忙しいから多分読まれていないと思うんですが……。(知事「読みました」と呼ぶ)読みましたか。
 この中でも、二十一世紀には自然と共生する水害対策が必要だと。そして、コンクリートで固められた治水対策で喪失される美しい国土は二度と復活できないんだということをいっているわけですから、ぜひやはり、改めて現時点で私は再検討していただきたいと思うんです。
 それで、都市計画局長に伺いますけれども、このダム計画、国の計画ですが、承認した時点では、完成年度、当時は二〇〇〇年度だと思いますけれども、そのときの水源確保必要量は幾つで想定されていたんでしょうか。
〇山下都市計画局長 国からの八ツ場ダムの建設に関する基本計画に係ります意見照会に対しまして、昭和六十一年三月三十一日付で回答しております。そのときの都の想定需要量は、一日当たり七百四十万トンでございます。
〇吉田委員 今お話ありましたけれども、八ツ場ダム、国計画を承認するという都知事の回答を示したときの完成年度は、実は二〇〇〇年度、今年度だったんですが、そのとき、東京都は一日七百四十万トンの水を必要とするであろうという想定だったんですね。しかし、一番直近の推定で、二〇〇〇年度の必要量をどういうふうに東京都が今持っているかといえば、六百二十万トンなんです。既に百二十万トンの乖離が生じているんですね。

東京都の水受給計画は過大、ダム計画は全面的再検討を

 それだけではありません。じゃ、実際六百二十万トン必要としているのかといえば、このグラフを見ていただきたいんですけれども、平成十一年度の一日最大で配水した、その年最高の配水量というのは五百三十五万トンなんですよ。六百二十万トンという目標から見ても、現実はさらに下がっているという現実の経過があるわけですよね。
 しかも、知事は水源の確保ということをいろいろ心配されるでしょうけれども、小河内ダムの問題もありますし、また、今後このダムを除いても三十数万トンの確保が見込まれるということもあるわけですから、先日の都市・環境委員会のときに、局長は、当然国の第五次フルプランとあわせてダム計画を見直していくというふうに答弁されましたけど、知事、もう一度、これだけ社会状況も変わり、需給計画の格差もあり、そして現地に大変な負担が押し寄せている、今だったらとめられる、その方が負担も少なくなるということを、地元の方々も望んでいるわけですから、私はぜひ全面的な再検討を求めたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。
〇石原知事 今おっしゃった東京都における水道の需要量については、私、つまびらかにしておりませんから、担当の局長から詳しく聞いた上で、判断すべきものは判断します。
〇吉田委員 ぜひ、需給計画自身についても、正確に、確かめていただくだけではなくて、自然環境の問題、町の、例えば本当に生活再建がこのままでできるのかというふうな問題も含めて、全面的にこの機会に再検討していただきたいということを求めまして、私の質疑を終わります。(拍手)
〇松村副委員長 渡辺康信委員及び吉田信夫委員の発言は終わりました。